カッツ・ムーディ代数

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数学において、カッツ・ムーディ・リー代数テンプレート:Lang-en-short)とは、一般カルタン行列を用いて生成元と関係式によって定義できる、通常は無限次元の、リー代数である。独立に発見したヴィクトル・カッツテンプレート:仮リンクに因んで名づけられている。カッツ・ムーディ・リー環は有限次元半単純リー環の一般化であり、ルート系既約表現旗多様体との関連といった、リー環の構造に関係した多くの性質は、カッツ・ムーディ・リー環において自然な類似を持つ。

カッツ・ムーディ・リー環の中でもアフィン・リー環と呼ばれるクラスが、数学や理論物理学、特に共形場理論テンプレート:仮リンクの理論において、特に重要である。カッツは、組合せ論的な恒等式であるマクドナルド恒等式の、アフィン・リー環の表現論に基づいたエレガントな証明を発見した。Howard Garland と テンプレート:仮リンクロジャーズ・ラマヌジャン恒等式が類似の方法で導出できることを証明した[1]

カッツ・ムーディ・リー環の歴史

カルタン整数から有限次元単純リー環を構成するエリ・カルタンヴィルヘルム・キリングによる最初の方法は型に依存していた。1966年、ジャン=ピエール・セールは、クロード・シュヴァレーテンプレート:仮リンクの関係式テンプレート:Sfnテンプレート:仮リンク による簡略化テンプレート:Sfnと合わせるとリー環を特徴づけるものが得られることを示したテンプレート:Sfn。したがってカルタン整数の行列(これは正定値である)からのデータを用いて生成元と関係式のことばで単純リー環を記述することができる。

テンプレート:仮リンクは、1967年の thesis において、カルタン行列が正定値でないようなリー環を考察したテンプレート:Sfnテンプレート:Sfn。それでもなおリー環は生じるが、無限次元である。同じ時期に、Z-テンプレート:仮リンクがモスクワで研究されていた。テンプレート:仮リンクが、やがてカッツ・ムーディ・リー環と呼ばれるようになるものを含むリー環の一般的なクラスを導入し研究したテンプレート:Sfnヴィクトル・カッツもまた polynomial growth の単純あるいはほとんど単純なリー環を研究していた。無限次元リー環の豊かな数学的理論が徐々に発展した。他の多くの人々の研究も含む主題の詳細は テンプレート:Harvtxt にある。テンプレート:Harvtxt も参照。

定義

カッツ・ムーディ・リー環を定義するには、まず以下のものを与える。

  1. 階数テンプレート:Mvarテンプレート:Math テンプレート:仮リンク テンプレート:Math.
  2. 複素数体上 テンプレート:Math 次元のベクトル空間 𝔥.
  3. 𝔥テンプレート:Mvar 個の線型独立な元 αi  の集合と、双対空間 𝔥*テンプレート:Mvar 個の線型独立な元 αi の集合であって、αi(αj)=cji を満たすもの。αi たちは半単純リー環の単純ルートの類似であり、αi たちは単純コルートの類似である。

するとカッツ・ムーディ・リー環は、ei,fi(i{1,,n})𝔥 の元を生成元とし、以下の関係式によって定義されるリー環 𝔤 である。

  • [h,h]=0 for h,h𝔥;
  • [h,ei]=αi(h)ei for h𝔥;
  • [h,fi]=αi(h)fi for h𝔥;
  • [ei,fj]=δijαi, ただし δij はクロネッカーのデルタである;
  • テンプレート:Math (したがって テンプレート:Math)のとき、ad(ei)1cij(ej)=0 かつ ad(fi)1cij(fj)=0. ここで、ad:𝔤End(𝔤),ad(x)(y)=[x,y]𝔤随伴表現である。

リー環(無限次元でもよい)も、テンプレート:仮リンクがカッツ・ムーディ・リー環であれば、カッツ・ムーディ・リー環と考えることができる。

カッツ・ムーディ・リー環のルート空間分解

𝔥 はカッツ・ムーディ・リー環 𝔤 に対するカルタン部分環の類似である。

x0𝔤 の元であって、ある λ𝔥*{0} に対して

h𝔥,[h,x]=λ(h)x

を満たすならば、xルートベクトルと呼び、λ𝔤ルートと呼ぶ。(慣習により零汎関数はルートとは考えない。)𝔤 のすべてのルートの集合をしばしば Δ で、あるいはときどき R で記す。与えられたルート λ に対し、𝔤λ によって λルート空間を表す。すなわち

𝔤λ={x𝔤:h𝔥,[h,x]=λ(h)x}.

𝔤 の定義関係式より ei𝔤αifi𝔤αi が従う。また、x1𝔤λ1 かつ x2𝔤λ2 であれば、ヤコビ恒等式より [x1,x2]𝔤λ1+λ2 である。

理論の基本的な結果は、任意のカッツ・ムーディ・リー環は 𝔥 とルート空間たちの直和に分解できるということ、すなわち、

𝔤=𝔥λΔ𝔤λ

であることと、すべてのルート λ はすべての zi を同じ符号整数として

λ=i=1nziαi

と書けるということである。

カッツ・ムーディ・リー環の種類

カッツ・ムーディ・リー環の性質はその一般カルタン行列 C の代数的性質によって制御される。カッツ・ムーディ・リー環を分類するためには、分解不可能な行列 C の場合を考えれば十分である、つまり、添え字集合 I の空でない部分集合 I1, I2 の非交和への分解であってすべての iI1jI2 に対して Cij = 0 となるようなものは存在しないと仮定してよい。一般カルタン行列の任意の分解は対応するカッツ・ムーディ・リー環の直和分解を導く:

𝔤(C)𝔤(C1)𝔤(C2),

ここで右辺の2つのカッツ・ムーディ・リー環は添え字集合 I1I2 に対応する C の部分行列に付随する。

カッツ・ムーディ・リー環の重要なサブクラスは対称化可能な一般カルタン行列 C に対応する。この行列は DS と分解可能で、ここで D は正整数の成分の対角行列であり、S対称行列である。C は対称化可能かつ分解不可能という仮定の下で、カッツ・ムーディ・リー環は3つのクラスに分割される:

有限型とアファイン型の対称化可能で分解不可能な一般カルタン行列は完全に分類されている。それらはディンキン図形テンプレート:仮リンクに対応する。不定型のカッツ・ムーディ・リー環についてはほとんど分かっていない。これらのカッツ・ムーディ代数に対応する群はジャック・ティッツによって任意の体上構成されたがテンプレート:Sfn

不定型のカッツ・ムーディ・リー環の中ではほとんどの研究は双曲型のものに焦点を当てている。これは行列 テンプレート:Mvar は不定値だが、テンプレート:Mvar の各真部分集合に対し、対応する部分行列が正定値あるいは半正定値となるものである。双曲的カッツ・ムーディ環は階数が高々 10 であり、それらは完全に分類されているテンプレート:Sfn。階数 2 のものは無限にあり、3 から 10 には 238 個ある。hyperbolic groups: compact and noncompact に一覧がある。

関連項目

脚注

テンプレート:Reflist

参考文献

外部リンク

テンプレート:Normdaten