円柱座標変換

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テンプレート:複数の問題 円柱座標変換(えんちゅうざひょうへんかん)とは、3次元ユークリッド空間 数ベクトル空間)の、非線形座標変換の一つである。円柱座標変換の逆写像[注釈 1]のことを、円柱座標系という。円柱座標系は、極座標系の一種である[注釈 2]

円柱座標変換は、電子レンズなど、軸対称な系の計算によく用いられる[注釈 3]

定義

定義

円柱座標変換Φとは、

(xyz)=Φ(r,θ,ζ)=(rcosθrsinθζ)  (1-1-1)

で表される、r -θ-ζ空間からx -y -z 空間への多変数ベクトル値関数のことである。式(1-1-1)で定義されたΦに相似変換、場合によっては正則なアフィン変換を施したものも、円柱座標変換ということがあるので、特に混乱が生じる場合には(1-1-1)で定義されたΦを標準的な円柱座標変換ということにする。

r-θ-ζ空間、x-y-z空間の正体

数学的には、r -θ-ζ空間、x -y -z 空間は、共に3次元実数ベクトル空間3)である[注釈 4]r -θ-ζ空間においては、第一軸方向をr 方向(r 軸)、第二軸方向をθ方向(θ軸)、第三軸方向をζ方向(ζ軸)とする。x -y -z 空間においても同様に、第一軸方向をx 方向(x 軸)、第二軸方向をy 方向(y 軸)、第三軸をz 方向(z軸)とする。この三軸によって定まる座標系を、「x -y -z 空間の標準座標系」(O-xyz 系)という[注釈 5]

定義域

式(1-1-1)の円柱座標変換Φr -θ-ζ空間のすべての点において、矛盾なく定義がされている。例えば、

Φ(3,2π,7)=(307)  (1-3-1)

のように、どのような (r, θ, ζ) に対しても、ただ一つの行き先を定めることができる[注釈 6]

しかし、本記事では特段の断りがない限り、Φ の定義域は式(1-3-2) に定める領域 V に制限されているものとする。V は、r -θ-ζ の部分集合であり、閉集合である(開集合ではない)。

V={(rθζ)| 0r0θ2π<ζ<}  (1-3-2)

つまり、Φ に代入されるものは、

{0r0θ2π<ζ<  (1-3-3)

のすべての条件を満たす点全てに限って考えることにする。

Φ の定義域を式(1-3-2) の V に制限してもよい理由は、全射性が保たれていることによる[注釈 7][注釈 8]

円柱座標系との関係

テンプレート:See also x -y -z 空間に、標準座標系(O-xyz 系;「r -θ-ζ空間、x -y -z 空間の正体」の項参照)が定められているとする。このとき、円柱座標系P とは、

(rθζ)=P(x,y,z)=(x2+y2θ(x,y,z)z)  (1-4-1)

で表される、x -y -z からr -θ-ζ空間への多変数ベクトル値関数のことである。但し、θ(x , y , z) は、以下の定義式(1-4-2)で与えられるスカラー値関数である。θ(x , y , z) の定義域はx -y -z 空間の原点以外である。その他の成分は、x -y -z 空間全域で定義されている。従って、円柱座標系P の定義域は、x -y -z 空間の原点以外である。

θ(x,y,z)={tan1(y/x)(x>0,y>0)π2(x=0,y>0)π+tan1(y/x)(x<0)3π2(x=0,y<0)2π+tan1(y/x)(x=0,y<0)  (1-4-2)

円柱座標系は、以下の手順で、幾何学的に理解することもできる。

  • 任意の点Pからxy平面に下した垂線の足をQとする。
  • 線分OQの長さをrとする。
  • 線分QPの長さをζとする。
  • x軸と線分OQのなす角度をθとする。

また、円柱座標系と円柱座標変換は、相互に逆変換となっている。

微分

微分

円柱座標変換の偏導関数は、

Φr(r,θ,ζ)=(cosθsinθ0)  (2-1-1)
Φθ(r,θ,ζ)=(rsin(θ)rcos(θ)0)  (2-1-2)
Φζ(r,θ,ζ)=(001)  (2-1-3)

である。これらの定義域は、r -θ-ζ空間全域である。

従って、円柱座標変換の点 (r , θ, ζ) におけるヤコビ行列J Φ(r , θ, ζ) およびヤコビアン det(J Φ(r , θ, ζ)) は以下のようになる。ヤコビ行列、ヤコビアン共に定義域はr -θ-ζ空間全域である。

JΦ(r,θ,ζ)=(cosθrsinθ0sinθrcosθ0001)  (2-1-4)
det(JΦ(r,θ,ζ))=|cosθrsinθ0sinθrcosθ0001|=r  (2-1-5)

従って、円座標のときと同じく、特異点(ヤコビアンが 0 となる点)は、r = 0 となる点全て、つまり (0, θ, ζ) の形であらわされる点全てである。これらの点は全てx -y -z 空間上ではz 軸に移る。

法線

標準的な円柱座標変換Φに対し、Nr , Nθ , Nζ を以下のように定義し、それぞれr 法線、θ法線、ζ法線と呼ぶ。これらの定義域は、r -θ-ζ空間全域である[注釈 9]

𝐍r(r,θ,ζ)=(Φθ(r,θ,ζ))×(Φζ(r,θ,ζ))(Φθ(r,θ,ζ))×(Φζ(r,θ,ζ))=(cosθsinθ0)  (2-2-1)
𝐍θ(r,θ,ζ)=(Φζ(r,θ,ζ))×(Φr(r,θ,ζ))(Φζ(r,θ,ζ))×(Φr(r,θ,ζ))=(sinθcosθ0)  (2-2-2)
𝐍z(r,θ,ζ)=(Φr(r,θ,ζ))×(Φθ(r,θ,ζ))(Φr(r,θ,ζ))×(Φθ(r,θ,ζ))=(001)  (2-2-3)

ここで、“×”はベクトル積を意味する[注釈 10]。これらの幾何学的な意味は、後述するが、幾何学的な意味でも、これらは法線になっている。

円柱と円柱座標

この節では、後述の説明のために記号を定義する。

円柱と円柱座標

M を、xyz空間で半径r0 、高さz0ふたと底のある、中身のつまった円柱(以降「ソリッド円柱」と呼ぶ)とする。式で書くと

M={(xyz) |x2+y2r00zz0}  (3-1-1)

である。さらに、「ソリッド円柱」に該当するもの全ては、このM相似変換を加えれば集合として実現できるので、以下は、M のみについて考える。

次に、このM を、円柱座標変換Φとr -θ-ζ空間内の直方体(六面体)L を用いてパラメータ付け(パラメトライズ)することを考える。r -θ-ζ空間内の直方体L

L={(rθζ) |0rr00θ2π0ζz0}  (3-1-2)

と定義する。L の3辺の長さはそれぞれ、r0 , θ0 , 2πである。M は、L のΦによる集合である。すなわち

M=Φ(L)  (3-1-3)

である。上式の等号は、集合として等しいことを意味する。

円柱表面

式(3-1-1)のソリッド円柱M の表面をMと書き、円柱表面、円筒面、M の表面、あるいはM の境界面と呼ぶ。表面∂M は、以下のΔ1 , Δ2 , Δ3 に分割することができる。

Δ1={(xyz) |x2+y2r0z=0}  (3-2-1)
Δ2={(xyz) |x2+y2=r00zz0}  (3-2-2)
Δ3={(xyz) |x2+y2r0z=z0}  (3-2-3)

Δ1 , Δ2 , Δ3 をそれぞれ、下面、側面、上面という[注釈 11][注釈 12]

逆に言うと、Δ1 , Δ2 , Δ3 を貼り合わせたものが∂M である。集合演算を用いると、

M=Δ1Δ2Δ3  (3-2-4)

のようになる。

次に、Δ1 , Δ2 , Δ3 を、円柱座標変換を利用してパラメトライズすることを考える。D1 , D2 , D3 を以下のように定める。

D1={(rθ) |0rr00θ2π}  (3-2-5)
D2={(θζ) |0θ2π0ζz0}  (3-2-6)
D3={(rθ) |0rr00θ2π}  (3-2-7)

D1 , D2 , D3 は、それぞれr -θ平面、θ-ζ平面、r -θ平面の部分集合となっている。また、D1D3 は集合として全く等しいものである。

また、x -y -z 空間に値を取るベクトル値関数I1 , I2 , I3 を以下のように定義する。I1 , I2 , I3 の定義域は、本来的にはそれぞれr -θ平面、θ-ζ平面、r -θ平面であるが、ここでは、それぞれの定義域をD1 , D2 , D3 に制限して考えることにする。これらI1 , I2 , I3 を、それぞれΔ1 , Δ2 , Δ3 のパラメータと呼ぶ。

(xyz)=𝐈1(r,θ)=Φ(r,θ,0)=(rcosθrsinθ0)  (3-2-8)
(xyz)=𝐈2(θ,ζ)=Φ(r0,θ,ζ)=(r0cosθr0sinθζ)  (3-2-9)
(xyz)=𝐈3(r,θ)=Φ(r,θ,z0)=(rcos(θ)rsin(θ)z0)  (3-2-10)

Δ1 , Δ2 , Δ3 は、それぞれD1 , D2 , D3I1 , I2 , I3 による像集合となっている:

{Δ1=𝐈1(D1)Δ2=𝐈2(D2)Δ3=𝐈3(D3)  (3-2-11)

ここで、“=”は集合としての等号である。例えば、Δ1 = I1(D1) とは、Δ1I1 (D1) が集合として等しいことを意味している[注釈 13]

Δ1 , Δ2 , Δ3 それぞれの法線ベクトルを、NΔ1 , NΔ2 , NΔ3と書く:

𝐍Δ1(r,θ)=(Φr(r,θ,0))×(Φθ(r,θ,0))(Φr(r,θ,0))×(Φθ(r,θ,0))=𝐍ζ(r,θ,ζ0)=(001)  (3-2-12)
𝐍Δ2(θ,ζ)=(Φζ(r0,θ,ζ))×(Φr(r,θ,ζ))(Φζ(r0,θ,ζ))×(Φr(r,θ,ζ))=𝐍r(r,θ,ζ)=(sinθcosθ0)  (3-2-13)
𝐍Δ3(r,θ)=(Φr(r,θ,ζ0))×((Φθ)(r,θ,ζ0))(Φr(r,θ,ζ0))×((Φθ)(r,θ,ζ0))=𝐍ζ(r,θ,ζ0)=(001)  (3-2-14)

NΔ1 , NΔ2 , NΔ3 の定義域は、それぞれD1 , D2 , D3 である。ここで、Nθに平行なものがないことに注意されたい。

ベクトル場

x -y -z 空間で定義されたベクトル場Xx -y -z 座標系について表示すると

𝐗(x,y,z)=(Xx(x,y,z)Xy(x,y,z)Xz(x,y,z))  (4-1-1)

となる。これを円柱座標表示に変換することを考える。まず、スカラー値関数Xr (r , θ, ζ) , Xθ (r , θ, ζ) , Xζ (r , θ, ζ) を、

{Xr=𝐗𝐍rXθ=𝐗𝐍θXζ=𝐗𝐍z (4-1-2)

と定義する。正確に書くと

{Xr(r,θ,ζ)=𝐗(Φ(r,θ,ζ))𝐍r(r,θ,ζ)Xθ(r,θ,ζ)=𝐗(Φ(r,θ,ζ))𝐍θ(r,θ,ζ)Xζ(r,θ,ζ)=𝐗(Φ(r,θ,ζ))𝐍ζ(r,θ,ζ) (4-1-3)

である。ここで、・は内積を意味する。定義式(4-1-3)から明らかなように、これらの定義域はr -θ-ζ空間全域(r = 0 となる点を含む)である。

ここで以下が成立する。””は、合成関数の意味である。

{Xr=(XxΦ)cosθ+(XyΦ)sinθXθ=(XxΦ)sinθ+(XyΦ)cosθXζ=XzΦ   (4-1-4)

またはこれを逆に解くと

{XxΦ=XrcosθXθsinθXyΦ=Xrsinθ+XθcosθXzΦ=Xζ   (4-1-5)

が分かる。

また、次の等式がr = 0 となる点を含むすべての (r , θ, ζ) に対して成立する。

𝐗(Φ(r,θ,z))=(Xr𝐍r)(r,θ,z)+(Xθ𝐍θ)(r,θ,z)+(Xz𝐍z)(r,θ,z)   (4-1-6)

式(4-1-6)を、ベクトル場の円柱座標表示という。より正確な言い方をすると、「x -y -z 空間で定義されたベクトル場X の円柱座標表示」という。

積分

体積分

ここではx -y -z 空間で定義されたスカラー値関数f の、式(3-1-1)の円柱M 内部での積分

Mf dxdydz  (5-1-1)

の計算方法を説明する。円柱M について

M={(xyz) |x2+y2r00zz0}={(xyz) |r0xr0r02x2yr02x20zz0}  (5-1-2)

が成立することに注意すると、f の積分は以下のように累次積分に帰着されることが分かる。

Mf dxdydz=z=z0z=z0x=r0x=ry=r02x2y= r02x2 f(x,y,z) dxdydz  (5-1-3)

また、式(3-1-2)の直方体L に対しM = Φ(L )(式(3-1-3))であることと、ヤコビアン(式(2-1-5))に注意して、積分の変数変換公式を用いると、

Mf dxdydz=L(fΦ)(detJΦ) drdθdζ=r=0r=r0θ=0θ=2πζ=z0ζ=z0 r(fΦ)(r,θ,ζ) drdθdζ  (5-1-4)

が分かる。

以上、まとめると、

Mf dxdydz=z=z0z=z0x=r0x=ry=r02x2y= r02x2 f(x,y,z) dxdydz=r=0r=r0θ=0θ=2πζ=z0ζ=z0 r(fΦ)(r,θ,ζ) drdθdζ (5-1-5)

がわかる。

面積分

ここでは、ベクトル場の円柱表面∂M 上での面積分の計算方法を説明する。

x -y -z 空間で定義されたベクトル場X に対して、円柱面∂M 上の面積分を

𝐌𝐗=Δ1𝐗+Δ2𝐗+Δ3𝐗   (5-2-1)

で定める。但し、右辺の各項は

Δ1𝐗=r=0r=r0θ=0θ=2π(𝐗(𝐈1r×𝐈1θ)) dθdr   (5-2-2)
Δ2𝐗=ζ=0ζ=ζ0θ=0θ=2π(𝐗(𝐈2θ×𝐈2ζ)) dθdζ   (5-2-3)
Δ3𝐗=r=0r=r0θ=0θ=2π(𝐗(𝐈3r×𝐈3θ)) dθdr   (5-2-4)

である。ここで、

𝐗(𝐈1r×𝐈1θ)=𝐗(𝐈1r×𝐈1θ)𝐈1r×𝐈1θ𝐈1r×𝐈1θ=(𝐗𝐍ζ)𝐈1r×𝐈1θ=rXζ (5-2-5)

同様に、

𝐗(𝐈2θ×𝐈2ζ)=r0Xr   (5-2-6)
𝐗(𝐈3θ×𝐈3ζ)=rXζ   (5-2-7)

なので、

Δ1𝐗=r=0r=r0θ=0θ=2πrXζ(r,θ,ζ0) dθdr   (5-2-8)
Δ2𝐗=θ=0θ=2πr0Xr(r0,θ,ζ) dθdζ   (5-2-9)
Δ3𝐗=r=0r=r0θ=0θ=2πrXζ(r,θ,0) dθdr   (5-2-10)

である。従って、

𝐌𝐗=r=0r=r0θ=0θ=2πr(Xζ(r,θ,ζ0)Xζ(r,θ,0))dθdr  +ζ=0ζ=ζ0θ=0θ=2πr0Xr(r0,θ,ζ) dθdζ   (5-2-11)

が分かる。

ガウスの発散定理

x -y -z 空間で定義されたベクトル場X に対して、

M𝐗=MdivX dxdydz   (5-3-1)

が成立する。この事実を、円柱面におけるガウスの発散定理という。ここで、

div𝐗=(Xxx)+(Xyy)+(Xzz)   (5-3-2)

はベクトル場X発散である。以下、証明を行う。

証明の準備

(5-1-5)、(5-2-2)、(5-2-3)、(5-2-4)より、

ζ=0ζ=ζ0θ=0θ=2πr0Xr(r0,θ,ζ) dθdζ=M((Xxx)+(Xyy) )dxdydz   (5-3-3)
r=0r=r0θ=0θ=2πr(Xς(r,θ,ζ0)Xζ(r,θ,0))  dθdr=M(Xzz)dxdydz   (5-3-4)

を示せばよいことがわかる。

x,y成分についての証明

まず、式(5-3-3)を示す。

x -y 平面上の曲線c (t ) を、

c(t)=(r0costr0sint)   (5-3-5)

とする。また、変数z を固定して考えることで、x -y 平面上の二次元ベクトル場

𝐀(x,y)=(a(x,y)b(x,y))=(Xy(x,y,z)Xx(x,y,z))   (5-3-6)

を考える。また、平面曲線と、二次元ベクトル場に対しては、(5-3-6)に対するグリーンの定理

cA=x=r0x=r0r02x2r02x2(bxay)dxdy   (5-3-7)

が成立することは、既知とする。

このとき

θ=0θ=2πr0Xr(r0,θ,ζ) dθ=θ=0θ=2π((XxΦ)r0cosθ+(XyΦ)r0sinθ) dθ=θ=0θ=2π(Xx(r0cosθ,r0sinθ,ζ)r0cosθ+Xy(r0cosθ,r0sinθ,ζ)r0sinθ) dθ=t=0t=2π(Xy(r0cost,r0sint,ζ)Xx(r0cost,r0sint,ζ)) (r0sintr0cost)dt=t=0t=2π(ac(t)bc(t)) (dcdt)dt=x=r0x=r0y=r02x2y=r02x2(bxay)dydx=x=r0x=r0y=r02x2y=r02x2(Xx(x,y,z)x+Xy(x,y,z)y)dydx   (5-3-8)

が成り立つ。従って、

ζ=0ζ=ζ0θ=0θ=2πXr(r0,θ,ζ) dθdζ=z=0z=ζ0θ=0θ=2πXr(r0,θ,z) dθdz
z=0z=ζ0x=rx=ry=r2x2y=r2x2(Xx(x,y,z)x+Xy(x,y,z)y)dydxdz   (5-3-9)

z成分について

次に、

r=0r=r0θ=0θ=2πr(Xς(r,θ,ζ0)Xζ(r,θ,0))  dθdr=M(Xzz)dxdydz   (5-3-10)

を示す。

z=0z=ζ0Xζ(r,θ,ζ) ζdζ=Xζ(r,θ,ζ0)Xζ (r,θ,0)   (5-3-11)

なので、

r=0r=r0θ=0θ=2πr(Xς(r,θ,ζ0)Xζ(r,θ,0))  dθdr=r=0r=r0r(θ=0θ=2π(Xς(r,θ,ζ0)Xζ(r,θ,0))dθ)  dr=r=0r=r0r(θ=0θ=2πζ=0ζ=ζ0Xζ(r,θ,ζ)ζdζdθ) dr=r=0r=r0θ=0θ=2πζ=0ζ=ζ0(Xζ(r,θ,ζ)ζ)rdζdθdr=r=0r=r0θ=0θ=2πζ=0ζ=ζ0((Xzz)Φ(r,θ,ζ))rdζdθdr=r=0r=r0θ=0θ=2πζ=0ζ=ζ0((Xzz)Φ(r,θ,ζ))(det(JΦ(r,θ,ζ)))dζdθdr=z=0z=ζ0x=rx=ry=r2x2y=r2x2(Xz(x,y,z)z)dydxdz   (5-3-12)

スカラー関数に作用する微分作用素

x-y-z空間における偏微分

f を、x -y -z 空間で定義されたスカラー値関数とする。このとき、r ≠ 0 をみたす任意の (r , θ, ζ) に対して以下の(6-1-1)~(6-1-3)の等式が成立する:

(fx)(Φ(r,θ,ζ))=cosθ(((fΦ)r)(r,θ,z))sinθr(((fΦ)θ)(r,θ,z)) (6-1-1)
(fy)(Φ(r,θ,ζ))=sinθ(((fΦ)r)(r,θ,z))+cosθr(((fΦ)θ)(r,θ,z)) (6-1-2)
(fz)(Φ(r,θ,z))=((fΦ)ζ)(r,θ,z) (6-1-3)

上記の3式は、しばしば略記的に以下のように表記される:

{(fx)=cosθ(fr)sinθr(fθ)(fy)=sinθ(fr)+cosθr(fθ)(fz)=(fζ) (6-1-4)

勾配作用素

テンプレート:節スタブ 勾配 grad :

(gradf)(x,y,z)=((f/x)(x,y,z)(f/y)(x,y,z)(f/z)(x,y,z))=((fx)(x,y,z))(100)+((fy)(x,y,z))(010)+((fz)(x,y,z))(001) (6-2-1)

を円柱座標変換すると

...

以下、証明を行う。(grad f )(Φ(r , θ, ζ)) と、Nr (r , θ, ζ) の内積を取ると、

[(gradf)(Φ(r,θ,ζ))](𝐍r(r,θ,ζ))=((fx)(Φ(r,θ,ζ)),(fy)(Φ(r,θ,ζ)),(fz)(Φ(r,θ,ζ)))(cosθsinθ0)=cosθ((fx)(Φ(r,θ,ζ)))+sinθ((fy)(Φ(r,θ,ζ)))=cosθ[cosθ(((fΦ)r)(r,θ,z))sinθr(((fΦ)θ)(r,θ,z))]+sinθ[sinθ(((fΦ)r)(r,θ,z))+cosθr(((fΦ)θ)(r,θ,z))]=((fΦ)r)(r,θ,z) (6-2-2)

であり、同様に、Nθ(r , θ, ζ) , Nζ(r , θ, ζ) についても、

[(gradf)(Φ(r,θ,ζ))](𝐍θ(r,θ,ζ))=1r((fΦ)θ)(r,θ,z) (6-2-3)
[(gradf)(Φ(r,θ,ζ))](𝐍ζ(r,θ,ζ))=((fΦ)ζ)(r,θ,ζ) (6-2-3)

が成り立つ。従って「ベクトル場の円柱座標表示」と同様にして、上の等式が示せる。

ラプラシアン

ラプラシアンについても、r ≠ 0 をみたす任意の(r , θ, ζ) に対して以下の等式が成立する。

(Δf)(Φ(r,θ,ζ))=1rr(r((fΦ)r))(r,θ,ζ)+1r2(2(fΦ)θ2)(r,θ,ζ)+(2(fΦ)ξ2)(r,θ,ζ) (6-2-3)

ベクトル場に作用する微分作用素

発散

X を、x -y -z 空間で定義されたベクトル場とするとき、発散 div の円柱座標系表示として以下の等式が成立する。

(divX)(Φ(r,θ,ζ))=1r((rXr)r)(r,θ,ζ)+1r(Xθθ)(r,θ,ζ)+(Xzz)(r,θ,ζ)

回転

回転 rot の円柱座標系表示については、次の等式が成立する。

(rotX)(Φ(r,θ,ζ))=((rotX)r(r,θ,z))𝐍r(r,θ,ζ)+((rotX)θ(r,θ,z))𝐍θ(r,θ,ζ)+((rotX)θ(r,θ,z))𝐍ζ(r,θ,ζ)

ただし

(rotX)r(r,θ,z)=1r(Xζr)(r,θ,z)(Xθζ)(r,θ,z)
(rotX)θ(r,θ,z)=(Xrζ)(r,θ,z)(Xζr)(r,θ,z)
(rotX)ζ(r,θ,z)=1r((rXr)r)(r,θ,z)1r(Xrθ)(r,θ,z)

である。

曲線・運動

運動

x -y -z 空間における運動を表す曲線

c(t)=(x(t)y(t)z(t)) (8-1-1)

が、r -θ-ζ空間に値を取る曲線

γ(t)=(r(t)θ(t)z(t)) (8-1-2)

と、円柱座標変換&Phi:を用いて、

c(t)=Φ(γ(t)) (8-1-3)

と表せるとき、γ(t ) を「曲線c (t ) の円柱座標表示」、あるいは「運動c (t ) の円柱座標表示」と呼ぶ。

式(8-1-3)は、

{x=rcosθy=rsinθz=z (8-1-4)

の両辺を時刻t に関する関数と考えること、つまり、

{x(r(t),θ(t),z(t))=r(t)cosθ(t)y(r(t),θ(t),z(t))=r(t)sinθ(t)z(r(t),θ(t),z(t))=z(t) (8-1-5)

と考えることと同じである。

速度ベクトル

x -y -z 空間における運動を表す曲線c (t ) の速度ベクトルv(t ):

v(t)=(dcdt)(t) (8-2-1)

について以下が成立する。

(vx(t)vy(t)vz(t))=((dx/dt)(t)(dy/dt)(t)(dz/dt)(t))=(cosθ(t)r(t)((dθ/dt)(t))sinθ(t)sinθ(t)r(t)((dθ/dt)(t))cosθ(t)(dz/dt)(t)) (8-2-2)

但しvx , vy , vz は、それぞれv(t ) のx 成分、y 成分、z 成分を意味する。

また、

{vr(t)=v(t)Nr(c(t))vθ(t)=v(t)Nθ(c(t))vz(t)=v(t)Nz(c(t)) (8-2-3)

のように定義すると、

𝐯(t)=vr(t)𝐍r(c(t))+vθ(t)𝐍θ(c(t))+cz(t)𝐍z(t) (8-2-4)

である。また、以下が成立する。

{vr(t)=(dr/dt)(t)vθ(t)=r(t)((dθ/dt)(t))vz(t)=(dz/dt)(t) (8-2-4)

加速度ベクトル

同様に曲線c (t ) の加速度ベクトルa(t ) :

a(t)=(dvdt)(t) (8-3-1)

については以下が成立する。

𝐚(t)=ar(t)𝐍r(c(t))+aθ(t)𝐍θ(c(t))+az(t)𝐍z(c(t)) (8-3-2)

但しax , ay , az は、それぞれ a(t ) のx 成分、y 成分、z 成分を意味する。また、

{ar(t)=a(t)Nr(c(t))aθ(t)=a(t)Nθ(c(t))az(t)=a(t)Nz(c(t)) (8-3-2)

である。

さらに、以下が成立する。

{ar(t)=[((d2r/dt2)(t))((dθ/dt)(t))2]aθ(t)=[2((dr/dt)(t))(((dθ/dt)(t)))+(r(t))((d2θ/dt2)(t))]az(t)=(d2z/dt2)(t) (8-3-4)

脚注

  1. 厳密には、円柱座標系は大域的には逆写像を持たない。ただ、特異点上を除き、その近傍においては、局所的な逆写像を持つ(円柱座標系と円柱座標変換、逆写像定理の項目を参照のこと)。
  2. 極座標系は、直交曲線座標系の一種であるから、円柱座標系は直交曲線座標系であり、直交曲線座標系は直交座標系の一種なので、円柱座標系は直交座標系の一種である。
  3. 軸対称でない系に対しても適用可能である。また、本稿でも、特に注意をしない場合には軸対称でない系を除外していない。しかし、軸対称でない系に対してはあまり威力のない手法である。
  4. 3次元実数ベクトル空間3とは、集合としては
    3={(x1x2x3) |x1,x2,x3}        (1-2-1)
    である。つまり、3つの実数x1 , x2 , x3を用いて
    (x1x2x3)  (1-2-2)
    の形で表せるもの全てを集めてきたものである。
  5. 3次元実数ベクトル空間3における第一軸、第二軸、第三軸とは、それぞれ以下のn1 , n2 , n3 で定まる方向である。
    𝐧1=(100), 𝐧2=(010), 𝐧3=(001)    (1-2-3)
    本記事におけるn1 , n2 , n3 は、線形代数学の教科書ではふつうe1 , e2 , e3 と書かれている。ただ、ベクトル解析の教科書では、e1 , e2 , e3 という記号は、『「本項目におけるn1 , n2 , n3 の意味」なのか、後述(「円柱座標変換系の法線ベクトル」の項目)の「Nr , Nθ , Nζ 」なのかが本によってまちまちであり、その区別も曖昧であるため、厳密に区別するべくこのような記号体系とした。尚、i , j , k という記号も、ベクトル解析の教科書や物理学の教科書でよく使われるが、これも教科書間で意味が異なって使われることがあるので採用しないことにした。
  6. 写像としてWell-definedである。
  7. われわれの流儀では、単射性は確保されていない。Φ の定義域をさらに制限して、
    {0<r0θ2π<ζ<
    とすれば単射性が確保できるが、今度は全射性がなくなる。逆写像を求める場合には単射性を重視したほうがよいが、積分を考える時には、定義域が閉集合であることと全射性を重視したほうがよく、一概にどちらの定義域を採用したほうがよいとは言えない。
  8. ここでは、全射性とはx-y-z 空間の全ての点を、上記の定義域内の点 (r , θ, ζ) を適切に選ぶことで
    (xyz)=Φ(r,θ,ζ)
    の形で表せることを意味する。
  9. 一方、値域はx -y -z 空間の接バンドルといわれる空間である。このような数学的構造を「写像に沿うベクトル場」という(一般にベクトル場といわれるものとは別の存在)。ただし、Nr , Nθ , Nζ は、r -θ-ζ空間で定義され、3に値をとるベクトル値関数とみなすことができるので、本記事ではそのように考えることにする。
  10. 参考までに、
    (Φθ(r,θ,ζ))×(Φζ(r,θ,ζ))=r(cosθsinθ0)  (2-2-4)
    (Φζ(r,θ,ζ))×(Φr(r,θ,ζ))=r(sinθcosθ0)  (2-2-5)
    (Φr(r,θ,ζ))×(Φθ(r,θ,ζ))=(001)  (2-2-6)
    である。
  11. Δ1 , Δ2 , Δ3 も、x -y -z 空間の部分集合である。
  12. M は、M の位相的境界と同じものとなっている。
  13. I3 のθの前の負号が不自然と考える人もいるかもしれないが、ここでは、単に法線の向きがすべて“外向き”になるようパラメータ付けすると、ガウスの発散定理を考えるうえで都合が良いからという理由に留める。

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