開集合

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例:青い円周テンプレート:Nowrap を満たす点 (x, y) の集合。赤い円板テンプレート:Nowrap を満たす点 (x, y) の集合。赤色の集合は開集合、青色の集合はその境界、これらを併せた集合は閉集合である。

数学位相空間論における開集合(かいしゅうごう、テンプレート:Lang-en-short)は、実数直線における開区間の概念を一般化する概念である。もっとも簡単な例は距離空間における場合で、そこでは開集合の概念は、各点を中心とする球体を含むような部分集合と一致する。しかし、一般には開集合は非常に抽象的なもので、「開集合の任意個の合併は開集合である」「開集合の有限個の交わりは開集合である」「全体空間は開集合である」という性質を満たす限りにおいて任意の集合族を開集合族とすることができる。空間に対する開集合族の選び方の各々は位相と呼ばれる(位相の特徴付けの項も参照せよ)。全ての集合には、任意の部分集合が開集合である離散位相と、空集合と全体集合のみを開集合とする密着位相という、二つの自明な位相が定義できる。

しかし実用上は、離散位相と密着位相の中間にある非自明な位相を考えることが多く、開集合の概念は位相空間における点の「近さ」について述べる方法を提供する基本的な道具立てである。開集合族がひとたび決められたならば、近さの概念を言い表すのに用いられる連続性連結性およびコンパクト性が定義される。

開集合およびそれを含む位相の概念は点集合位相において中心的な重要性を持つものであるが、数学の他の主要分野における構造化の道具としても用いられる。そのような位相の例には、代数幾何学におけるザリスキー位相代数多様体の代数的特性を反映する)や、微分位相幾何学における可微分多様体上の位相(空間内の各点が有限次元ユークリッド空間内の開球体に同相な近傍を持つ)などがある。

動機づけ

直観的には、開集合は二を区別する方法を与える。例えば、位相空間内の一点について、もうひとつの(相異なる)点を含まない開集合がとれるならば、それら二点はテンプレート:Ill2と言う。このようなやり方で、同じ位相空間のふたつの集合が「近い」ということを、その空間上に具体的な距離函数を定義することなしに言及することができる。したがって、位相空間は距離空間の一般化とみなすことができる。

実数全体の成す集合 テンプレート:Mathbf には、自然なユークリッド距離(函数 テンプレート:Math)がある。これを用いて、与えられた実数に対して、その実数の近い点(つまり、与えられた実数を テンプレート:Mvar として、テンプレート:Mvar からの距離が テンプレート:Mvar 内にあるような点)全体の成す集合について述べることができる。本質的に、テンプレート:Mvarテンプレート:Mvar 以内にある点は、テンプレート:Mvar の精度で テンプレート:Mvar を近似するものである。着目すべきは、テンプレート:Math を常に保ったまま テンプレート:Mvar をより小さくしていけば、テンプレート:Mvar をより高い精度で近似する点が得られることである。例えば、テンプレート:Math とすれば、テンプレート:Mvarテンプレート:Mvar 内の距離にある点全体は、ちょうど開区間 テンプレート:Open-open に属する点(つまり、テンプレート:Math から テンプレート:Math までの任意の実数)の全体になっている。同様に、テンプレート:Math とすれば、テンプレート:Mvarテンプレート:Mvar 内の距離にある点全体は開区間 テンプレート:Open-open に他ならず、明らかにこちらの点のほうが テンプレート:Math の場合と比べて精度が高い。

このように、テンプレート:Mvar をどれほどでも小さく定義すれば、テンプレート:Mvar の近似の精度はどれほどでも高くできる。特に、開区間テンプレート:Open-open の形の集合は テンプレート:Math の近くの点に関するたくさんの情報を与えるものとなる。そこで、具体的なユークリッド距離の代わりに、このような集合を テンプレート:Mvar に近い点の記述に用いることができる。この画期的な考えは広範にわたって重大な結果をもたらす。特に、テンプレート:Math を含む(テンプレート:Open-open ではない)別な種類の集合の集まりを定義することで、テンプレート:Math とほかの実数との距離に関する異なる結果を求めることができる。例えば、そのように「距離を測る」集合は テンプレート:Mathbf のみと定めれば、テンプレート:Math を近似する精度はこの テンプレート:Mathbf ただ一つなのであるから、テンプレート:Mathbf の元である任意の実数が テンプレート:Math に近い(ある意味では、テンプレート:Math と任意の実数との距離が テンプレート:Math であると思える)ということになる。このような測り方はつまり、テンプレート:Mathbf に入るならば テンプレート:Math に近く、テンプレート:Mathbf に入らないならば テンプレート:Math に近くない、という二択条件と考えればよい。

一般に、テンプレート:Math の近似に用いる、テンプレート:Math を含む集合族として開近傍系が定まり、その元は開集合と呼ばれる。実は、これらのことは実数の集合 テンプレート:Mathbf に限らず任意の集合 テンプレート:Mvar に対して一般化することができる。その場合、集合 テンプレート:Mvar の与えられた点 テンプレート:Mvar に対して、テンプレート:Mvar の近似に用いる テンプレート:Mvar の「周囲」の(つまり テンプレート:Mvar を含む)集合の族を定義することができる。もちろん、そのような族は(公理と呼ばれる)ある種の性質を満足するようにしなければならない(そうでないと距離を測る方法がきちんと定義できない)。たとえば、テンプレート:Mvar に属する任意の点は テンプレート:Mvar を何らかの精度で近似するはずであるから、テンプレート:Mvar は当該の集合族に入っているべきものである。ひとたび テンプレート:Mvar を含む「より小さい」集合を定義し始めれば、テンプレート:Mvar をより高い精度で近似する方向へ向かっていく。このようなことを念頭に、テンプレート:Mvar の周りの集合族が満足することが求められるほかの公理も定めることができる。

定義

開集合の概念は、その抽象性の度合いも含めて、様々なクラスに対して定式化することができる。以下にいくつかを挙げる:

ユークリッド空間の場合

テンプレート:Mvar-次元ユークリッド空間 テンプレート:Math の部分集合 テンプレート:Mvarであるとは、任意の テンプレート:Math に対し、実数 テンプレート:Math存在して、テンプレート:Mvar とのユークリッド距離テンプレート:Mvar より小さい任意の テンプレート:Mathテンプレート:Math も満たすようにできるときに言う[1]。あるいは同じことだが、テンプレート:Math の部分集合 テンプレート:Mvar が開となるのは、テンプレート:Mvar の各点が テンプレート:Mvar に含まれる テンプレート:Math 内の近傍を持つときである。

距離空間の場合

距離空間 テンプレート:Math の部分集合 テンプレート:Mvarであるとは、任意の点 テンプレート:Math に応じて適当な実数 テンプレート:Math を選べば、テンプレート:Math なる任意の テンプレート:Math に対して テンプレート:Math となるようにできるときに言う。同じことだが、テンプレート:Mvar が開となるのは、テンプレート:Mvar の各点が テンプレート:Mvar に含まれる近傍を持つときである。

これはユークリッド空間の例を一般化するものである(実数の直積にユークリッド距離を入れたものは距離空間である)。

一般の位相空間の場合

一般の位相空間において、開集合としてはほとんど何でもありで、下敷きにする集合が同じであっても開集合族として選ぶものが異なれば、位相空間としては異なるものとなる。

集合 テンプレート:Mvar とその上の部分集合族 テンプレート:Mvar に対し、テンプレート:Mvarテンプレート:Mvar 上の位相または開集合系であるとは、

テンプレート:Mvar に属する集合を開集合と総称する。

開集合の無限個の交わりは開集合とは限らないことに注意すべきである。例えば、正の整数 テンプレート:Mvar に対する テンプレート:Open-open の形の開区間すべての交わりは、一点集合 テンプレート:Math であり、これは実数直線内の開集合ではない。開集合の可算交叉として構成することのできる集合を[[Gδ集合|テンプレート:Mvar-集合]]と総称する。

このような開集合の位相的定義は距離空間における開集合の定義を一般化するものである。距離空間において上のように開集合を定義すれば、その開集合全体の成す族はその距離空間上に位相を定める。したがって、任意の距離空間は自然な仕方で位相空間となる。しかし、任意の位相空間は距離空間になるとは限らない。

性質

開集合からなる有限または無限個の族の合併は、ふたたび開となる[2]。有限個の開集合からなる族の交わりは開集合である[2]

開集合の(位相の定義された全体空間に対する)補集合閉集合と呼ばれる。開でも閉でもある集合(開かつ閉集合)も存在しうる。空集合および全体空間は開かつ閉集合の例となる[3]

使用

開集合は位相空間論において基礎を成す重要性を持つ。開集合は位相空間やほかの位相的構造の定義に用いられ、近さの概念や距離空間一様空間などの空間における収束性に意味を持たせる。

位相空間 テンプレート:Mvar の任意の部分集合 テンプレート:Mvar は必ず開集合(空集合でもよい)を含むが、そのような開集合の中で最大のものは テンプレート:Mvar内部と呼ばれる。テンプレート:Mvar の内部は テンプレート:Mvar に含まれる開集合すべての合併をとることで構成できる。

テンプレート:Mvar が位相空間であるとき、写像 テンプレート:Math連続であるとは、テンプレート:Mvar の任意の開集合の逆像テンプレート:Mvar の開集合となるときに言う。テンプレート:Mvarであるとは、テンプレート:Mvar の任意の開集合のテンプレート:Mvar の開集合となるときに言う。

実数直線上の開集合は、それが可算個の開区間の非交和となるという性質によって特徴付けられる。

注意

位相が違えば開かどうかも変わる

与えられた集合が開集合かどうかは考えている位相に依存するが、「位相 テンプレート:Mvar を備えた集合 テンプレート:Mvar」に言及する際に、「位相空間 テンプレート:Math」と言わずに「位相空間 テンプレート:Mvar」と略すことがある。

いま、同じ集合上に二つの位相が存在するとすれば、その部分集合 テンプレート:Mvar が一方の位相では開だが、他方では開でないということが起こり得る。たとえば テンプレート:Mvar を任意の位相空間とし、テンプレート:Mvarテンプレート:Mvar の任意の部分集合とすれば、テンプレート:Mvar 自身も部分空間の位相と呼ばれる位相によって位相空間となる。相対位相は「テンプレート:Mvar の部分集合 テンプレート:Mvar が開であるには、テンプレート:Mvarテンプレート:Mvar のもともとの位相に関する開集合と テンプレート:Mvar との交わりに書けることが必要十分」とするものである。これは テンプレート:Mvar の開集合でない部分集合が テンプレート:Mvar の開集合となる可能性を持っている。テンプレート:Mvar はもとの空間 テンプレート:Mvar の位相で開となるが、テンプレート:Math は開でないものとするとき、テンプレート:Math は相対位相で テンプレート:Mvar の開集合だが テンプレート:Mvar のもともとの位相では開でない部分集合である。

このことの具体例を挙げれば、テンプレート:Mvar を開区間 テンプレート:Open-open に属する有理数全体の成す集合とするとき、テンプレート:Mvar有理数全体の成す空間 テンプレート:Mathbf の開部分集合だが、実数直線 テンプレート:Mathbf の部分集合としては開でない。これは実際、全体空間を テンプレート:Mathbf とするとき、各点 テンプレート:Math に対し、正の数 テンプレート:Mvar が存在して、テンプレート:Mvar との距離が テンプレート:Mvar 以内のすべての「有理」点が テンプレート:Mvar に入るようにすることができ、他方、全体空間を テンプレート:Mathbf とするならば、どのような テンプレート:Math を取っても、正の数 テンプレート:Mvarテンプレート:Mvarテンプレート:Mvar 以内にあるすべての「実」点が テンプレート:Mvar に入るようなものは存在しない(テンプレート:Mvar は有理数でない数は含まないから)ということによる。

開と閉は互いに排他的ではない

位相空間の部分集合は、開であるもの、閉であるもの、開かつ閉であるものもあるし、開でも閉でもないものもある。

例として、実数直線 テンプレート:Mathbf に通常の位相(ユークリッド位相)を入れたものを考える。これは以下のようなものである: 実数からなる任意の開区間 テンプレート:Open-open は開集合であり、そのような区間からなる任意の合併もまた開集合である。例えば、そのような開区間の合併 テンプレート:Math は(両区間が交わっても交わらなくても)開集合になる。

脚注

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出典

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関連文献

関連項目

外部リンク

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