楕円積分

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以下の定積分をそれぞれ、第一種、第二種、第三種の楕円積分(だえんせきぶん、テンプレート:Lang-en-short)という。ただし、1k1である。

F(x,k)=0xdt(1t2)(1k2t2)E(x,k)=0x1k2t21t2dtΠ(a;x,k)=0xdt(1at2)(1t2)(1k2t2)

定数k母数(modulus)、aを特性(characteristic)という。母数kの代わりにパラメーターm=k2、あるいはモジュラー角α=sin1kを用いることもあり、慣れない人を混乱させる種になっている。日本語の場合は、特性aを助変数(通常はparameterの訳語)と称することもあるので更に注意が必要である。

楕円弧長など、三次式、或いは四次式の平方根積分五次以上の高次方程式は楕円積分に帰着し、初等的に求まらないことが知られている。

ルジャンドルの標準形

最初に示したものはヤコービの標準形であるが、ヤコービの標準形において積分変数t=sinθと置けば(置換積分)、幾らか簡単なルジャンドルの標準形が得られる[1]

F(φ,k)=0φdθ1k2sin2θE(φ,k)=0φ1k2sin2θdθΠ(a;φ,k)=0φdθ(1asin2θ)1k2sin2θ


特定の母数の場合

ヤコービの標準形

k=0の場合は逆三角関数に、k=1の場合は逆双曲線関数になる[2]

F(x,0)=0x11t2dt=0sin1x11sin2θ(sinθ)dθ=sin1xF(x,1)=0x11t2dt=0tanh1x11tanh2θ(tanhθ)dθ=tanh1xE(x,0)=0x11t2dt=sin1xE(x,1)=0xdt=x

ルジャンドルの標準形

F(φ,0)=E(φ,0)=φF(φ,1)=0φ11sin2θdθ=gd1φE(φ,1)=0φ1sin2θdθ=sinφ

ただし、gd1φは逆グーデルマン関数である。また特にa=k2のとき、第三種楕円積分は第二種楕円積分で表すことができて、

Π(k2;φ,k)=11k2{E(φ,k)k2sin2φ21k2sin2φ}=11k2{E(φ,k)+d2dφ2E(φ,k)}

となる。

第一種完全楕円積分

第一種完全楕円積分は、ルジャンドルの標準形における第一種楕円積分の積分範囲をθ=π/2までとしたものである[3]

K(k)=F(π2,k)=0π/211k2sin2θdθ

k2sin2θテイラー級数に展開した後、ウォリスの公式を用いて項別に積分すると

K(k)=0π/2(1k2sin2θ)12dθ=0π/2(1+n=1(2n1)!!2n(k2sin2θ)nn!)dθ=π2+n=1(2n1)!!(2n)!!k2n0π/2sin2nθdθ=π2+n=1(2n1)!!(2n)!!k2n(2n1)!!(2n)!!π2=π2(1+n=1((2n1)!!(2n)!!)2k2n)=π2n=0((2n1)!!(2n)!!)2k2n

となる。ただし、(1)!!=1[4]と定義する。

第二種完全楕円積分

第二種完全楕円積分は、ルジャンドルの標準形における第二種楕円積分の積分範囲をθ=π/2までとしたものである[5]テンプレート:Indent k2sin2θのテイラー級数に展開した後、ウォリスの公式を用いて項別に積分すると テンプレート:Indent となる。ただし、(1)!!=1と定義する。

ルジャンドルの関係式

次の恒等式ルジャンドルの関係式という。 テンプレート:Indent

ランデン変換とガウス変換

次の恒等式をランデン変換という。 テンプレート:Indent 次の恒等式をガウス変換という。 テンプレート:Indent

楕円積分の応用

楕円の弧長

楕円x2+(y/c)2=1の弧長は、 テンプレート:Indent となる。離心率k=1c2を用いれば、上式は、 テンプレート:Indent となり、第二種楕円積分が現れる。 したがって、楕円の円周上でx座標が0の点からx座標がxの点までの弧長はL(x)=E(x,k)となる。 ここでk=0とすれば楕円は真円になり、弧長はL(x)=E(x,0)=sin1xとなる(ここではsinx軸の方向になっていることに注意すること。)。 テンプレート:See also

単振子の周期

テンプレート:See

脚注

テンプレート:Reflist

参考文献

  • テンプレート:Cite book
  • 竹内端三「楕円函数論」岩波全書(1936年5月15日)、ISBN 978-4-000213271.
  • Cody, W. J.: "Chebyshev approximations for the elliptic integrals K and E", Math. Comp., vol.19, pp.105-112 (1965).
  • Roland Bulirsch: "Numerical calculation of elliptic integrals and elliptic functions", Numer. Math.,vol.7, pp.78–90 (1965).
  • Paul F. Byrd,and Morris D. Friedman: Handbook of Elliptic Integrals for Engineers and Scientists, 2nd Ed., Springer-Verlag, ISBN 978-3-642-65138-0 (1971).
  • Toshio Fukushima: "Fast computation of complete elliptic integrals and Jacobian elliptic functions", Celest Mech Dyn Astr, vol.105, pp.305328 (2009).
  • Fredrik Johansson: "Numerical Evaluation of Elliptic Functions, Elliptic Integrals and Modular Forms" (2018).

関連項目

外部リンク

  1. ルジャンドルの標準形のφとヤコービの標準形のxとの間には、sinφ=xの関係がある。詳しくは置換積分を参照。 実際に置換積分を行う際には、t=sinθよりdtdθ=cosθ1t2=1sin2θ=cosθとなり、dt1t2=dθと変形されることに留意せよ。
  2. 第二種楕円積分では、k=1と置くと双曲線関数でもない一次式のxとなる。
  3. ヤコービの標準形においては、積分範囲はt=1までとなる。 K(k)=F(1,k)=01dt(1t2)(1k2t2)
  4. 詳しくは二重階乗の記事を参照。
  5. ヤコービの標準形においては、積分範囲はt=1までとなる。 E(k)=E(1,k)=011k2t21t2dt