米田の補題

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米田の補題(よねだのほだい、テンプレート:Lang-en-short)とは、小さなhom集合をもつ テンプレート:Math について、共変あるいは反変hom関手 テンプレート:Math, テンプレート:Math から集合値関手 テンプレート:Math への自然変換と、値となる集合 テンプレート:Math の要素との間に一対一対応が存在するという定理である。「米田の補題」という名称は、米田信夫に因んでソーンダース・マックレーンにより名付けられた[1][2][3]。その主張は、マックレーンによれば、米田の仕事に早くから現れていたという[4]。ただし、テンプレート:仮リンクによれば、この補題が初めて (明示的に) 論文に登場したのは テンプレート:Harvtxt である[5]

米田の補題は、普遍性という概念の根幹に関わる重要な補題であり、また、圏論において「間違いなく最も重要な結果である」[6]「もしかしたら最も利用されているただ1つの結果かもしれない」[7]と言われている。

概要

主張の内容

テンプレート:Math を局所的に小さい(locally small)圏とする。すなわち テンプレート:Math の各対象 テンプレート:Mvar, テンプレート:Mvar に対して テンプレート:Math は集合であるとする。対象 テンプレート:Mvar を固定するとき、共変hom関手 テンプレート:Math は対象 テンプレート:Mvar に対して、集合 テンプレート:Math を割り当て、射 テンプレート:Math に対して写像 テンプレート:Math を割り当てる関手であった。さらに、 テンプレート:Math を集合値関手とし、テンプレート:Math から テンプレート:Mvar へのすべての自然変換のクラス テンプレート:Math について考える。

このとき、米田写像(Yoneda map)と呼ばれる全単射y:Nat(HA,F)F(A)が存在し、この同型は テンプレート:Mathテンプレート:Math について自然である、という主張が米田の補題である。また、テンプレート:Mvar が反変関手 テンプレート:Math である場合も、反変hom関手 テンプレート:Math との間にy:Nat(HA,F)F(A)という全単射が存在して、これは テンプレート:Mvarテンプレート:Mvar について自然となる。このことはどちらも米田の補題と呼ばれる。

米田写像の対応

関手 テンプレート:Mvar は共変 (テンプレート:Math) とする。このとき、共変hom関手 テンプレート:Math から テンプレート:Mvar への自然変換 テンプレート:Math は、任意の テンプレート:Mbf の射 テンプレート:Math に対して τYHA(f)=FfτX が定義から成り立つ。いま、テンプレート:Math の場合に、テンプレート:Mvar での恒等射 テンプレート:Math がどのように写るかを追うことで、等式τY(f)=Ff(τX(idA))を得る。ここから、自然変換 テンプレート:Math の情報は τX(idA)F(A) から全て得られることがわかる。

証明

米田写像 テンプレート:Mvar を、自然変換 テンプレート:Mvar に対して y(τ)=τA(idA) で定める。テンプレート:Mvar が全単射であることを示す。

単射性テンプレート:Math に対して、自然変換 テンプレート:Math が存在して テンプレート:Math であったとする。このとき、任意の射 テンプレート:Math に対して テンプレート:MvarτY(a)=Ff(a) を満たす。これにより テンプレート:Mvar の全てのコンポーネントが一意に定まる、すなわちそのような テンプレート:Mvar は一意に定まるため、テンプレート:Mvar は単射である。

全射性テンプレート:Math を任意に固定する。テンプレート:Math の対象 テンプレート:Mvar それぞれに対して、写像 テンプレート:MathτX(f)=Ff(a) で定める。このとき、テンプレート:Mathテンプレート:Math に対して Ff(τX(g))=F(fg)(a)=τY(fg) が成り立つことから、テンプレート:Math はある自然変換 テンプレート:Math のコンポーネントである。定義から テンプレート:Math であるため テンプレート:Math が成り立つ。すなわち テンプレート:Mvar は全射である。

補題の帰結

普遍性

集合値関手 テンプレート:Math が、ある テンプレート:Math と自然同型であるとき、テンプレート:Mvar表現可能関手 (representable functor) といい、テンプレート:Mvarテンプレート:Mvar の表現対象 (representing object) あるいは単に テンプレート:Mvar の表現という。テンプレート:Mvar が表現可能関手であるとき、米田の補題の帰結として次の主張が成り立つ。 テンプレート:Math theorem 逆に、上記定理の条件を満たす テンプレート:Mvarテンプレート:Math の組を テンプレート:Mvar の普遍要素 (universal element) と呼ぶ。より一般に、関手 テンプレート:Mathテンプレート:Math に対して、テンプレート:Mvarテンプレート:Mvar への普遍性 (universality) とは、テンプレート:Mathテンプレート:Mbf の射 テンプレート:Math の組であって、任意の テンプレート:Mathテンプレート:Mbf の射 テンプレート:Math に対して、テンプレート:Mbf の射 テンプレート:Math がただ1つ存在して、テンプレート:Math が成り立つことを言う。

普遍要素の性質は一点集合からの普遍性と言えて、普遍性は テンプレート:Math の普遍要素として表現できるため、普遍性・普遍要素・表現可能関手はそれぞれ互いの概念を包含する[8]

米田埋め込み

米田写像の自然性から、対象 テンプレート:Math に関手 テンプレート:Math、あるいは テンプレート:Math を割り当てる操作は、関手

H:𝐂op[𝐂,𝐒𝐞𝐭](H:𝐂[𝐂op,𝐒𝐞𝐭])を構成する。米田の補題から Nat(HA,HB)HB(A)=hom(A,B) であるため、テンプレート:Math (テンプレート:Math) は忠実充満であることが言える。このことから、テンプレート:Math (テンプレート:Math) を米田埋め込み (Yoneda embedding) とも呼ぶ。米田埋め込みは テンプレート:Mvar [9]テンプレート:Math [10][11]などの記号によって表されることもある。

関手 テンプレート:Math に対して、テンプレート:Mvar の「要素の圏」(category of elements) テンプレート:Math とは、テンプレート:Mathテンプレート:Math の組とその関係を保つ テンプレート:Mbf の射からなる圏 (すなわち、米田埋め込み テンプレート:Math を用いたコンマ圏 テンプレート:Math) のことである。テンプレート:Math から テンプレート:Mbf の情報を取り出す関手を テンプレート:Math と表すとき、テンプレート:Mvarテンプレート:Math の余極限 (と同型) である[12]。つまり、任意の集合値関手は表現可能関手による余極限として表される。

前層の部分対象分類子

部分対象分類子の可換図式

有限の極限を持つ圏 テンプレート:Mbf 上のテンプレート:日本語版にない記事リンクとは テンプレート:Mbf からの反変関手 テンプレート:Math のことであり、このとき前層の圏を テンプレート:Math で表す。圏 テンプレート:Mbfテンプレート:日本語版にない記事リンクとは、(存在するならば) テンプレート:Mbf の対象 テンプレート:Mathモノ射 テンプレート:Math (テンプレート:Math終対象) であって、任意のモノ射 テンプレート:Math に対して、テンプレート:Math かつその可換図式が引き戻しとなるような χj:XΩ がただ1つ存在するようなものを言う。

前層の圏 テンプレート:Mbf への米田埋め込みを テンプレート:Math で表すとする。いま、テンプレート:Mbf に部分対象分類子 テンプレート:Math が存在するならば、特に テンプレート:Math (テンプレート:Math) についてHom𝐂^(YC,Ω)=Nat(Hom𝐂(_,C),Ω)Ω(C)が成り立つ (右の同型が米田の補題から従う)。部分対象分類子の定義から、左辺の集合は テンプレート:Mvar の部分対象の集合と互いに1対1対応する。従って、等式全体が テンプレート:Mvar について自然であることから、テンプレート:Mbf は必ず部分対象分類子を持ち、それは表現可能な前層 テンプレート:Mvar の部分対象を調べればよいことがわかる[13]

豊穣圏での補題

豊穣圏とは、通常の圏におけるhom集合 (すなわち対象の間の射の集合) の代わりに、順序集合加法群、その他の対象 (一般には、あるモノイダル圏 テンプレート:Mvar の対象として記述される) を割り当てるような一般化した構造であり、例えばこの意味で通常の圏は テンプレート:Mbf-豊穣圏、2-圏は テンプレート:Mbf-豊穣圏と言える。豊穣圏の理論では、テンプレート:Mvar の条件によって (具体的には完備かどうかによって) 米田の補題は強いものと弱いものに分けられる。 テンプレート:Math theoremテンプレート:Math theorem

ただし豊穣圏の理論において「関手圏」テンプレート:Math のhom対象 テンプレート:Math にあたるものは、関手 テンプレート:Mathテンプレート:仮リンクである。[A,V](A(K,_),F):=xAV(A(K,x),Fx)

脚注

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参考文献

関連項目

テンプレート:圏論