超球の体積

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初等幾何学における球体は決められた点から決められた距離以内にある点の全体が空間において占める領域であった。同様のことを テンプレート:Mvar-次元ユークリッド空間で行って テンプレート:Mvar-次元超球体が定義される。

本項ではテンプレート:Mvar-次元超球体の体積、および超球体の表面に相当する超球面の面積について述べる。

超球体の体積

テンプレート:Math theorem ここで(n2)!オイラーガンマ函数テンプレート:Math階乗函数の非整数引数への一般化)により定義される

(n2)!=Γ(n2+1)={(k+12)((k1)+12)(1+12)πif n=2k+1k(k1)21if n=2k

であり、「!!」は二重階乗

n!!={n(n2)(n4)31if n is oddn(n2)(n4)42if n is even

である。

具体的な値はテンプレート:Mvarの偶奇によって異なる。

最初のいくつかの次元
次元 半径 テンプレート:Mvar の球の体積 体積 テンプレート:Mvar の球の半径
0 1 全ての球の体積は1
1 2R V/2
2 πR2 V1/2π
3 43πR3 (3V4π)1/3
4 π22R4 (2V)1/4π
5 8π215R5 (15V8π2)1/5
6 π36R6 (6V)1/6π
7 16π3105R7 (105V16π3)1/7
8 π424R8 (24V)1/8π
9 32π4945R9 (945V32π4)1/9
10 π5120R10 (120V)1/10π
テンプレート:Mvar テンプレート:Math テンプレート:Math

奇数の場合

テンプレート:Mathの場合は、

V2k+1(R)=πkπ(k+12)!R2k+1=2(2π)k(2k+1)!!R2k+1=2(2π)k13(2k+1)R2k+1

テンプレート:Mathである事を用いると、

V2k+1(R)=2(k!)(4π)k(2k+1)!R2k+1

とも表記できる。

偶数の場合

テンプレート:Mathの場合、

V2k(R)=πkk!R2k=(2π)k(2k)!!R2k=πk12(k1)kR2k

漸近評価

前述のテンプレート:Mathの具体的な記述にスターリングの公式n!2πn(ne)n.テンプレート:仮リンク

x1s<Γ(x+1)Γ(x+s)<(x+1)1s.

を適用することで、以下が成立する事がわかる: テンプレート:Math theorem これは一辺の長さがテンプレート:Mvarの超立方体の体積テンプレート:Mvar対する超球体テンプレート:Mathテンプレート:Mathのとき指数関数的に小さくなる事を意味する。

漸化式

超球体の体積を漸化式で表すと、下記のとおりである:

Vn(R)={1if n=0,2Rif n=1,2πnR2×Vn2(R)otherwise.

上述の漸化式はテンプレート:Mathテンプレート:Mathと関係づけるが、テンプレート:Mathテンプレート:Mathを関係づけると下記のようになる:

Vn(R)=Rπ(n12)!(n2)!Vn1(R)=anR(n1)!!n!!Vn1(R)

ここで、

an={2if n=2k+1πif n=2k

具体的に書けば、

Vn(R)={2R(2k)(2k2)642(2k+1)(2k1)531V2k(R)if n=2k+1πR(2k1)(2k3)531(2k)(2k2)642V2k1(R)if n=2k

体積から半径を求める公式

テンプレート:Mvar-次元球体の体積 テンプレート:Mvar をその半径 テンプレート:Mvar で表す代わりに、上記の公式を逆に解いて半径 テンプレート:Mvar を体積 テンプレート:Mvar の函数として表すこともできる:

Rn(V)=(n2)!πn/2Vn=n!!2n/2πn/2Vn={(2k+1)!!2(2π)kV2k+1if n=2k+1k!πkV2k+1if n=2k

超球面の面積

ユークリッド空間n+1における半径 テンプレート:Mvarテンプレート:Mvar-次元超球面

Sn(R)={(x1,,xn)n+1|x12++xn+12=R}

の面積テンプレート:Mathn+1における半径 テンプレート:Mvarテンプレート:Mvar-次元超球体

Bn+1(R)={(x1,,xn)n|x12++xn+12R}

の体積テンプレート:Mathには

An(R)=ddRVn+1(R)=(n+1)Vn+1(1)Rn

という関係がある。これはテンプレート:Mathテンプレート:Mathに対するテンプレート:Mathの和集合である事から従う。テンプレート:Mathの具体的表記から、以下が従う: テンプレート:Math theorem よってテンプレート:Mathの場合は、

A2k+1(R)=2πk12(k1)k=2πkk!R2k+1

テンプレート:Mathの場合は、

A2k(R)=2(2π)k13(2k1)R2k=2(2π)k(2k1)!!R2k=2(k!)(4π)k(2k1)!R2k

とも表記できる。

証明

上記の公式に関して多くの証明が存在する。

体積は半径の テンプレート:Mvar 乗に比例する

テンプレート:Mvar-次元球の体積についてのいくつかの証明においての重要なステップであり、それ以外にも有用性のある一般的な事実は、半径 テンプレート:Mvarテンプレート:Mvar-次元球の体積は テンプレート:Mvar に比例すること、つまり Vn(R)Rn である。このときの比例定数は単位球の体積に等しい。

上記の関係は帰納法による簡単な証明がある。基底段階は テンプレート:Math であり、比例することは自明である。帰納段階は、次元 テンプレート:Math で比例することが真であると仮定する。テンプレート:Mvar-次元球体と一つの超平面との交わりは テンプレート:Math-次元球体であることに注意する。テンプレート:Mvar-次元球体の体積を テンプレート:Math-次元球体の体積の積分 Vn(R)=RRVn1(R2x2)dx として書く時、帰納法の仮定により テンプレート:Math-次元球体の半径から テンプレート:Mvar-倍の因子を括りだして Vn(R)=Rn1RRVn1(1(x/R)2)dx と書くことができる。変数変換 テンプレート:Math を施して導かれる Vn(R)=Rn11Vn1(1t2)dt=RnVn(1) は次元 テンプレート:Mvar における比例関係を示すものになっている。帰納法によって、全ての次元で比例関係は真である。

2次元漸化式

テンプレート:Mvar-次元球体と テンプレート:Math-次元球体の間の体積の漸化式の証明は、上記の比例式と円筒座標系における積分を用いて与えられる。球の中心を通る平面を固定する。テンプレート:Mvar を球面の中心と平面上の点との距離とし、テンプレート:Mvar を方位角とする。テンプレート:Mvar-次元球体と、半径と方位角を固定して定まる テンプレート:Math-次元平面とを交わらせれば、半径 テンプレート:Mathテンプレート:Math-次元球体が与えられる。球の体積は、従って テンプレート:Math-次元球体の体積の、取りうる半径および方位角に亘る逐次積分 Vn(R)=02π0RVn2(R2r2)rdrdθ として書くことができ、この方位角座標に関する積分は直ちに計算できる。比例関係を適用することで、この体積が Vn(R)=(2π)Vn2(R)0R(1(r/R)2)(n2)/2rdr に等しいことが示される。テンプレート:Math と置換することによって積分を評価することができ、Vn(R)=(2π)Vn2(R)(R2n(1(r/R)2)n/2)|r=0r=R=2πR2nVn2(R) を得る。これが2次元漸化式である。

体積公式の帰納法による証明に同じ手法を用いることができる。帰納法の基底段階は テンプレート:Math-次元球体と テンプレート:Math-次元球体であり、ここで テンプレート:Mathテンプレート:Math という事実を用いて簡単に直接確認できる。再帰段階は上記と同様であるが、テンプレート:Math-次元球体の体積に比例関係を適用する代わりに、帰納法の仮定が適用される。

1次元漸化式

比例関係は テンプレート:Mvar-次元球体と テンプレート:Math-次元球体の体積の関係に関する漸化式の証明にも使われる。比例式の証明の際に見たように、テンプレート:Mvar-次元球の体積は テンプレート:Math-次元球体の体積の積分として書くことができる。置換の代わりに、比例関係を被積分関数に現れる テンプレート:Math-次元球体の体積に適用し、Vn(R)=Vn1(R)RR(1(x/R)2)(n1)/2dx を得る。被積分関数は偶関数であるため、対称性によって積分区間を テンプレート:Closed-closed に制限することができる。区間 テンプレート:Closed-closed 上で テンプレート:Math なる置換を適用することができるから、式は Vn1(R)R01(1u)(n1)/2u1/2du と書き換えられる。この積分はベータ関数 テンプレート:Math と呼ばれるよく知られた特殊関数のある値に等しく、求める体積はベータ関数を用いて Vn(R)=Vn1(R)RB(n+12,12) となる。階乗と二項係数との関係とほぼ同じ意味で、ベータ関数はガンマ関数を用いて表されるから、その関係式を適用して Vn(R)=Vn1(R)RΓ(n+12)Γ(12)Γ(n2+1) が得られる。値 テンプレート:Math を用いて1次元漸化式 Vn(R)=RπΓ(n+12)Γ(n2+1)Vn1(R) が得られる。

2次元漸化式と同様に、体積公式の帰納法による証明を得るために同じ手法を使用することができる。

球座標における直接積分

体積を球座標における体積要素の積分によって計算することができる。球面座標系は動径座標 テンプレート:Mvar と偏角座標 テンプレート:Math を持つ。ここで テンプレート:Math を除く各 テンプレート:Mvar の変域は テンプレート:Closed-open であり、テンプレート:Math の変域は テンプレート:Closed-open である。球体積要素は dV=rn1sinn2(ϕ1)sinn3(ϕ2)sin(ϕn2)drdϕ1dϕ2dϕn1 で与えられる。そして求める体積は、テンプレート:Mvarテンプレート:Math から テンプレート:Mvar までと、角は取りうるすべての値に亘って取った積分 Vn(R)=0R0π02πrn1sinn2(ϕ1)sin(ϕn2)dϕn1dϕ1dr に等しい。被積分関数の各因子は一変数のみに依存するため、従ってこの逐次積分は積分の積 Vn(R)=(0Rrn1dr)(0πsinn2(ϕ1)dϕ1)(02πdϕn1) として書くことができる。動径成分の積分は テンプレート:Mvar に等しく、また偏角成分の積分区間を対称性により テンプレート:Closed-closed と書き換えれば Vn(R)=Rnn(20π/2sinn2(ϕ1)dϕ1)(40π/2dϕn1) を得る。残った各々の積分はいまやベータ関数の特定の値で、Vn(R)=RnnB(n12,12)B(n22,12)B(22,12)2B(12,12) となる。ベータ関数はガンマ関数に書き換えることができ、Vn(R)=RnnΓ(n12)Γ(12)Γ(n2)Γ(n22)Γ(12)Γ(n12)Γ(22)Γ(12)Γ(32)2Γ(12)Γ(12)Γ(22) を得るが、この積は連鎖的に約分して畳み込める。値 テンプレート:Math 関数等式 テンプレート:Math を組み合わせて Vn(R)=2πn/2RnnΓ(n2)=πn/2RnΓ(n2+1) が導かれる。

ガウス積分

体積公式はガウス積分を用いることにより直接証明することができる。関数 f(x1,,xn)=exp(12i=1nxi2) を考えると、この関数は回転不変かつ各々一変数の函数の積になっている。これが積に書けるという事実とガウス積分の公式を適用して 𝐑nfdV=i=1n(exp(xi2/2)dxi)=(2π)n/2 が得られる。ここで テンプレート:Mvarテンプレート:Mvar-次元体積要素である。回転不変性を用いれば、同じ積分を球座標に関して 𝐑nfdV=0Sn1(r)exp(r2/2)dAdr, と計算できる。ここで テンプレート:Math は半径 テンプレート:Mvarテンプレート:Math-次元球面であり、テンプレート:Mvar は表面積要素(すなわち テンプレート:Math-次元体積要素)である。球面の表面積は、球体の体積に関するのと同様の比例関係を満足する。すなわち テンプレート:Math を半径 テンプレート:Mvarテンプレート:Math-次元球面の表面積とすれば An1(r)=rn1An1(1) が成り立つ。上記の積分にこれを適用すると An1(1)0exp(r2/2)rn1dr なる式を得る。置換 テンプレート:Math を適用すれば、この式は An1(1)2n/210ettn/21dt と変形でき、これはガンマ関数の テンプレート:Math における値である。

二つの積分を併せれば An1(1)=2πn/2Γ(n2) が示される。この式から半径 テンプレート:Mvarテンプレート:Mvar-次元球体の体積を導出するには、半径 テンプレート:Mvar (テンプレート:Math) の球面の表面積を積分し、関数等式 テンプレート:Math を適用すればよい。そうして Vn(R)=0R2πn/2Γ(n2)rn1dr=2πn/2nΓ(n2)Rn=πn/2Γ(n2+1)Rn が得られる。

テンプレート:Mvar-ノルムに関する球体

次が知られていることがディリクレの時代から知られている[1]テンプレート:Rp[2]テンプレート:Rp

テンプレート:Math theorem

よって特に次が成立する: テンプレート:Math theorem

テンプレート:Math の場合は通常のユークリッドノルムであり、それ以外の テンプレート:Mvar情報理論符号理論テンプレート:仮リンクなどの様々な文脈において現れる。

特に テンプレート:Math および テンプレート:Math の場合の体積はそれぞれ

V1n(R)=2nn!Rn,
Vn(R)=(2R)n

で与えられる。これらは正軸体および超立方体の体積に一致する。

Vpn(R)は以下の漸化式 を満たす:

Vpn(R)=2(1p)!R(n1p)!(np)!Vpn1(R)

一部の例外的なテンプレート:Mvarを除き、テンプレート:Mvar-球面(テンプレート:Mvar-球体の境界)の表面積は、テンプレート:Mvar-球体の半径に関する微分として計算することはできないが、テンプレート:仮リンクを用いて、体積を表面積上の積分として表すことができる。

余面積公式には、点から点へ テンプレート:Mvar-ノルムがどのくらい変化するかを考慮した相関係数が含まれる。テンプレート:Math および テンプレート:Math に対してこの因子は テンプレート:Mvar だが、テンプレート:Math ならば相関因子は テンプレート:Math である(半径 テンプレート:Mvarテンプレート:Math-次元 テンプレート:Math-球面の表面積は テンプレート:Math 掛ける テンプレート:Math-球体の体積の テンプレート:Mvar における微分係数)。ほとんどの テンプレート:Mvar の値に対してこの定数は複雑な積分になる。

注釈

テンプレート:Notelist

参考文献

テンプレート:Reflist

関連項目

外部リンク