ガウス積分

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関数 テンプレート:Math のグラフと テンプレート:Mvar 軸で囲まれた部分の面積 (テンプレート:Math) がガウス積分を表す。

ガウス積分(ガウスせきぶん、テンプレート:Lang-en-short)あるいはオイラー=ポアソン積分(オイラーポアソンせきぶん、テンプレート:Lang-en-short[1])はガウス関数 テンプレート:Math の実数全体での広義積分

+ex2dx=π

のことである。名称は、数学・物理学者のカール・フリードリヒ・ガウスに由来する。

この積分の応用は広い。例えば、変数の微小変化に伴う正規分布正規化定数の計算に用いられる。積分の上の限界を有限な値に替えることで、誤差関数や正規分布の累積分布関数とも深く関連する。

誤差関数を表す初等関数リッシュのアルゴリズムにより存在しないことが証明できるが、ガウス積分の値は微分積分学の道具立てを用いて解析的に求めることが可能である。つまり、初等関数としての不定積分 ex2dx は存在しないが、定積分 +ex2dx は評価することができるのである。

ガウス積分は物理学で非常に頻繁に現れ、またガウス積分の様々な一般化が場の量子論に現れる。

積分値の計算

極座標を用いて

ガウス積分を求める標準的な方法として、以下のアイデアはポアソンまで遡れる[2]

平面 テンプレート:Math 上の函数 テンプレート:Math を考え、これを2通りの方法で計算する。

  1. 一つは直交座標系に関する二重積分として計算し、その値は求める値の平方になることを確かめる。
  2. いま一つは極座標系に関する二重積分(いわゆるバウムクーヘン積分)として計算し、その値が テンプレート:Math となることを確かめる。

広義積分が現れることに注意して、これら2つの計算を比較して積分の値が求まる。即ち、面積要素 テンプレート:Mathテンプレート:Mvar-直交座標系では テンプレート:Math, テンプレート:Mvar-極座標系では テンプレート:Math で与えられることに注意すれば、

2exp((x2+y2))dA=e(x2+y2)dxdy=(exp(t2)dt)2,

と計算でき(フビニの定理を用いる。そのための正当性については下記を参照)、および

2exp((x2+y2))dA=02π0exp(r2)rdrdθ=2π0rexp(r2)dr=π0esds=π

と計算できる。後者では テンプレート:Math なる置換を行って、テンプレート:Math となることを用いている。さてこれらの結果から

(exp(x2)dx)2=π

であり、符号を考慮して

exp(x2)dx=π

を得る。

上記の考察において、広義二重積分や二つの式を等しいとおいたことに対する正当性を再考しておこう。まずは近似函数

I(a)=aaexp(x2)dx

を考える。求めるガウス積分が絶対収斂ならば、それはコーシー主値、即ち

limaI(a)

なる極限によって求められることになる。これを見るには、

|exp(x2)|dx<1xexp(x2)dx+11exp(x2)dx+1xexp(x2)dx<

が成り立つという事実を確かめればよい。故に テンプレート:Math の平方をとれば

I(a)2=aaaaexp((x2+y2))dxdy

と書くことができて、フビニの定理により、これは テンプレート:Mvar-座標平面における面積分

exp((x2+y2))dA

に等しいことが確かめられる。ただし、積分域は テンプレート:Math を頂点集合とする正方形である。

指数函数は全実数に対して正の値を取るから、上記の積分域の内接円上での積分は テンプレート:Math よりも小さく、同様に外接円上での積分は テンプレート:Math よりも大きい。これら二つの円板上での積分は、直交座標系から極座標系へ

x=rcosθ,y=rsinθ,dxdy=rdrdθ

なる標準的な変換でうつれば容易に計算できるから、積分を実行して

π(1ea2)<I(a)2<π(1e2a2)

なる評価を得ることができる。テンプレート:Math なる極限をとれば、はさみうちの原理によって等式

(exp(x2)dx)2=π

が正当化できる。

直交座標を用いて

ガウス積分を計算する別な方法として、以下はラプラス (1812) にまで遡れる[2]

y=xs,dy=xds

と置くと、テンプレート:Mvarテンプレート:Math へ近づけるとき テンプレート:Mvar の極限は テンプレート:Mvar の符号で決まるから、テンプレート:Math偶函数ゆえに実数全体にわたる積分が正の実数全体にわたる積分の テンプレート:Math 倍となること、つまり

ex2dx=20ex2dx

であることを利用すれば計算が簡単になる。即ち、積分範囲を テンプレート:Math に限れば、変数 テンプレート:Mvarテンプレート:Mvar とは同じ極限を持ち、

I2=400e(x2+y2)dydx

が成り立つ。故に

I24=0(0e(x2+y2)dy)dx=0(0ex2(1+s2)xds)dx=0(0ex2(1+s2)xdx)ds=120ds1+s2=12arctans|0=π4

となり、所期の テンプレート:Math を得る。

ウォリスの公式を用いて

ウォリス積分における公式を用いて証明することができる。

  1. x01x2ex211+x2 が成り立つことを、微分法により示す
  2. 自然数 n に対して
    0π/2sin2n+1θdθ<0ent2dt<0π/2sin2n2θdθ
    が成り立つことを示す
  3. ex2dx=2n0ent2dtn → ∞ のとき テンプレート:Math に収束することをウォリスの公式により示す

ガンマ関数との関係

被積分関数が偶関数ゆえ

exp(x2)dx=20exp(x2)dx

が成り立ち、これに変数変換 x = tテンプレート:Sup を行えばオイラー積分

20exp(x2)dx=2012exp(t)t1/2dt=Γ(12)=π

が得られる。ここで テンプレート:Mathガンマ関数。この式は、半整数値の階乗テンプレート:Math の有理数倍となる理由を示している。より一般に、

0exp(axb)dx=1ba1/bΓ(1b)

が成り立つ。

一般化

ガウス関数の積分

テンプレート:Main 勝手なガウス函数の積分は テンプレート:NumBlk あるいは テンプレート:NumBlk で与えられる [注釈 1]

多変数化

テンプレート:Main テンプレート:Math正定値対称(従って可逆な)共変行列(二階共変テンソル)ならば テンプレート:NumBlk が成り立つ[注釈 2]。ここで積分は テンプレート:Math 全体でとる。この事実は多変数正規分布の研究に応用される。

また、 テンプレート:NumBlk が成立する。ここで、テンプレート:Mvarテンプレート:Math置換であり、右辺に現れる余分な因子は テンプレート:Mathテンプレート:Mvar 個のコピーを テンプレート:Math の組合せ対 (combinatorial pairing) の全体に亘って加えた和を意味する。

あるいはまた、テンプレート:Math として テンプレート:NumBlk

がいくつかの解析関数 テンプレート:Mvar に対して成立する。テンプレート:Mvar は増加具合が適当に制限されているとかあるいはほかの技術的な判定条件を満足する必要がある。これは特定の関数に対してはうまく行くがそうでないものもある。たとえば多項式ならば成立する。また微分作用素変数の指数関数 テンプレート:Math冪級数として理解され、あらたな微分作用素を定めるものである。

さらに無限次元への一般化としての汎関数積分には厳密な定義は無く、多くの場合それは計算的でさえないが、ガウス汎関数積分を有限次元の場合の類似物として「定義」することができる。もちろん問題はあって、単純に有限次元の場合の式を無限次元の場合に適用しようとすれば テンプレート:Math は無限大に発散してしまうし、汎函数行列式 (functional determinant) も一般には無限大となりうる。これらのことを考慮して比 テンプレート:NumBlk

のみを考えることにするならばガウス汎関数積分を扱うことができるという意味である。ドヴィット記法 (deWitt notation) を使えば、この等式は有限次元の場合と同じ形に書くことができる。

一次の項を持つ多変数ガウス積分

テンプレート:Math をやはり正定値対称行列として テンプレート:NumBlk が成り立つ。ただし、テンプレート:Mathテンプレート:Mvar行列の転置とする。

被積分函数の多項式倍

同様の積分として、 テンプレート:NumBlk が成立する。これらを導出するには積分記号下での微分法を用いるのが簡便である: テンプレート:NumBlk

冪指数が高階多項式の場合

被積分函数の冪指数がもっと別の偶数次多項式に変わった場合も、級数解は容易に計算することができる。例えば四次多項式を冪指数とする指数函数の積分は テンプレート:NumBlk で表される。テンプレート:Math であることが要求されるのは、テンプレート:Math から テンプレート:Math までの積分が各項に テンプレート:Math なる因子として寄与し、テンプレート:Math から テンプレート:Math までの積分が各項に テンプレート:Math の因子として寄与することによる。これらの積分は場の量子論に属する話題である。

関連項目

脚注

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注釈

テンプレート:Notelist

出典

テンプレート:Reflist

参考文献

テンプレート:ウィキプロジェクトリンク テンプレート:ウィキポータルリンク

  • テンプレート:MathWorld
  • David Griffiths. Introduction to Quantum Mechanics. 2nd Edition back cover.
  • Abramowitz, M. and Stegun, I. A. Handbook of Mathematical Functions, Dover Publications, Inc. New York

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