部分和分

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テンプレート:簡易区別 数学における部分和分(ぶぶんわぶん、テンプレート:Lang-en-short)は、積の和分を計算あるいは評価しやすい特定の形に変形する方法の一種である。数列の定和分に関する部分和分法はニールス・アーベルに因んでアーベルの補題あるいはアーベルの級数変形法とも呼ばれる。

部分和分法

函数 テンプレート:Math に対し、テンプレート:Math不定和分とすると、

xf(x)(g(x+1)g(x))=f(x)g(x)xg(x+1)(f(x+1)f(x))

が成り立つ。これを不定和分に関する部分和分の公式と呼ぶ。テンプレート:Math前進差分作用素とすれば、

xf(x)Δg(x)=f(x)g(x)x(g(x)+Δg(x))Δf(x),

あるいは

xf(x)Δg(x)+xg(x)Δf(x)=f(x)g(x)xΔf(x)Δg(x)

と書ける。

不定和分に関する部分和分は、不定積分に関する部分積分

fdg=fggdf

の離散的なアナロジー(類似対応物)である。比較して部分和分の方は テンプレート:Math の項が余分に加わっていることに注意。これは部分積分の方では対応する項 テンプレート:Math は二次の微分として消えることによる。

同様の公式はいわゆる「定和分」についても成立する。すなわち 二つの数列 テンプレート:Math に対して、

k=mnfk(gk+1gk)=[fn+1gn+1fmgm]k=mngk+1(fk+1fk),

あるいは前進差分を用いて書けば

k=mnfkΔgk=[fn+1gn+1fmgm]k=mngk+1Δfk,

が成立する(後述)。

ニュートン級数を用いた表示

定和分に関する公式を少し違った形に書くことができる。即ち、部分和分の公式を繰り返し適用することにより、

k=0nfkgk=f0k=0ngk+j=0n1(fj+1fj)k=j+1ngk=fnk=0ngkj=0n1(fj+1fj)k=0jgk,

あるいはより一般に、

k=0nfkgk=i=0M1f0(i)Gi(i+1)+j=0nMfj(M)Gj+M(M)==i=0M1(1)ifni(i)G~ni(i+1)+(1)Mj=0nMfj(M)G~j(M)

が成り立つ(テンプレート:Math とすると先の式)。ここで補助的に用いた数列 テンプレート:Mathテンプレート:仮リンク

  • fj(M):=k=0M(1)Mk(Mk)fj+k,
  • Gj(M):=k=jn(kj+M1M1)gk,
  • G~j(M):=k=0j(jk+M1M1)gk

である。ただし、(nk)二項係数

特に テンプレート:Math として得られる等式

k=0nfkgk=i=0nf0(i)Gi(i+1)=i=0n(1)ifni(i)G~ni(i+1)

は有用なものとして著しい。

アーベルの級数変形法

部分和分を特に級数に対して考えたものは、ふつうアーベルの級数変形法 (Abel transformation) と呼ばれるものである。すなわち、二つの数列 テンプレート:Math に対して、それらの項ごとの積から得られる和

SN=n=0Nanbn

の振舞いを知りたいとする。ここで テンプレート:Math と置けば、テンプレート:Math であって、かつ

SN=a0b0+n=1Nan(BnBn1)=a0b0a0B0+aNBN+n=0N1Bn(anan+1)

すなわち

n=0Nanbn=aNBNn=0N1Bn(an+1an)

が得られるが、このような変形を施すことをアーベルの級数変形法と呼ぶのである。これは テンプレート:Mvar のいくつかある収束判定法の証明に用いられる。

ここで、特に、 an が微分可能な関数 f(x) によって an=f(n) と定義されているとき、Bn を実数全体に拡張して B(x)=kxbk,N=x とおくことで

Sx=SN=aNBN0NB(t)f(t)dt=f(x)B(x)0xB(t)f(t)dt

が導かれる。これをアーベルの総和公式という(この方法自体を単に部分和分と呼ぶこともある)。

定積分に対する部分積分の公式

abf(x)dg(x)=[f(x)g(x)]ababg(x)df(x)

境界条件をさておけば、左辺の積分記号下で掛けられた二つの函数が、右辺の積分記号下では一方は積分され (つまり テンプレート:Mvarテンプレート:Mvar に) 他方は微分される (つまり テンプレート:Mvarテンプレート:Mvar に) という形になっている。アーベルの級数変形法でも同様に、左辺の掛けられた二つの数列のうち、右辺では一方が総和され (つまり テンプレート:Mvarテンプレート:Mvar に) 他方は差分される (つまり テンプレート:Mvarテンプレート:Math に)。前進差分作用素 テンプレート:Math を用いて書けば上式は

n=0NanΔBn=aNBNn=0N1BnΔan

となり、部分積分との類似性は見易い。

なお、アーベルの級数変形法を応用する場面ではほとんどの場合において級数の収束性を問題にすることになるが、ここで述べた変形法自体は純代数的なものであり、従って「数列」の成分を任意のの元としてもそのまま成り立つ。あるいは一方をベクトル空間におけるベクトル列とし、他方をそのベクトル空間の係数体に成分を持つスカラー列としたような場合などでも有効である。

応用

アーベルの級数変形法はある種の級数の収束判定法の証明に用いられる。

判定法 1
テンプレート:Math収斂級数 で、テンプレート:Mvar有界テンプレート:仮リンク ならば、テンプレート:Math は収束する。
判定法 2
以下の三条件
  1. 部分和 テンプレート:Mvarテンプレート:Mvar によらず有界数列を成す。
  2. n=0|an+1an|<. (従って n=NM1|an+1an|0( as N)
  3. liman=0
がすべて満たされるならば テンプレート:Math は収束する。

何れの場合においても、収束値 テンプレート:Math

|S|=|n=0anbn|Bn=0|an+1an|

なる評価を得る。ただし、テンプレート:Mvar は部分和 テンプレート:Math の成す列の(テンプレート:Mvar に依らない)上界とする。

実際に上記の判定法が成り立つことを見よう。テンプレート:仮リンクを用いるために テンプレート:Math を計算すれば、アーベルの級数変形法を適用して

SMSN=aMBMaNBN+n=NM1Bn(an+1an)

と書ける。後者の判定法においては テンプレート:Math の適当な上界 テンプレート:Mvar を取れば

|SMSN||aM|B+|aN|B+Bn=NM1|an+1an|0(as N)

であるからよい。前者の場合にはさらに テンプレート:Mvar の極限を テンプレート:Mvar として

SMSN=(aMa)BM(aNa)BN+a(BMBN)+n=NM1Bn(an+1an)

と書きなおせば、テンプレート:Math が収束することにより テンプレート:Mvar に依らず テンプレート:Mvar は有界ゆえ、その上界を テンプレート:Mvar として最初の二項は

|(aMa)BM(aNa)BN||aMa|B+|aNa|B0(as N,M)

であり、また第三項は テンプレート:Math に対するコーシーの判定法により 0 へ行き、残りは テンプレート:Mvar の単調性により

n=NM1|Bn||an+1an|Bn=NM1|an+1an|=B|aNaM|

と評価できて所期の結果を得る。

参考文献

テンプレート:Reflist

関連項目

外部リンク