重複置換
数学における重複置換(ちょうふくちかん、テンプレート:Lang-fr-short)は、区別不能なものを含む対象を順番を考慮して複数の組に分ける方法を言う(対象は区別できないが、組は区別が付く)。例えば、テンプレート:Math は二つの テンプレート:Math と一つの テンプレート:Mvar を持つ重複置換である。
一部に区別のつかないものを含む テンプレート:Mvar 個の対象を並べ替えて特定の順番に並べるとき、いくつか同じものが生じる場合がある。テンプレート:Math として、テンプレート:Mvar 個の対象がつくる テンプレート:Mvar-組が テンプレート:Mvar 種類の相異なる組に分けられるとき、その各々が テンプレート:Math 個の対象を含む(ただし、テンプレート:Math を満たす)ものを考える。このような テンプレート:Mvar-組のなかで区別不能なものを入れ替えて得られる テンプレート:Mvar-組は同じものと考える。例えば、文字列 MATHÉMATIQUE のアナグラムを全て求めようとするとき、二つの A は区別が付かないのでこれらを入れ替えても文字列としては変わらないが、É と E を入れ替えたときは文字列として相異なる。
重複置換を同じものを含む順列と呼ぶことがある。
定義
位数 テンプレート:Mvar の有限集合 テンプレート:Mvar を テンプレート:Mathと書く。テンプレート:Mvar は テンプレート:Math なる自然数で、テンプレート:Math を
を満たす非負整数とする。このとき、テンプレート:Mvar の元からなる重複度 テンプレート:Math の テンプレート:Mvar-重複置換とは、テンプレート:Mvar の各元 テンプレート:Mvar がそれぞれ テンプレート:Mvar 回現れる テンプレート:Mvar-組(項数 テンプレート:Mvar の有限列)を言う。
例えば
はその一つである。
重複置換の数え上げ
- 定理
- 重複度 テンプレート:Math の テンプレート:Mvar-重複置換の総数 テンプレート:Math は
- で与えられる。この数は多項係数として知られる。
- 証明
- 所期の テンプレート:Mvar-組を作るには テンプレート:Math 個の テンプレート:Math の位置を決め、テンプレート:Math 個の テンプレート:Math の位置を決め、……、テンプレート:Math 個の テンプレート:Math の位置を決めれば十分である。
- テンプレート:Math の入る テンプレート:Math 箇所を テンプレート:Math 箇所から選ぶ方法が 通り、
- テンプレート:Math の入る テンプレート:Math 箇所を テンプレート:Math 箇所から選ぶ方法が 通り、
- …
- テンプレート:Math の入る テンプレート:Math 箇所を残りに入れる方法が 通り。
- 以上をまとめると、
- を得る。
応用
演算 "+" が可換(あるいはより一般に和の各項が "+" に関して可換)であるとき、
を、テンプレート:Math なる任意の テンプレート:Mvar について テンプレート:Mvar 番目の因子から取った項を第 テンプレート:Mvar-成分とする テンプレート:Math からなる テンプレート:Mvar-組の積の和の形に展開することを考える。任意の テンプレート:Math に対して、この テンプレート:Mvar-組に現れる テンプレート:Math の個数を テンプレート:Math とすると テンプレート:Math が成り立ち、対応する積は の形になる。自然数の列 テンプレート:Math で テンプレート:Math を満たすものを与えたとき、 の形の項の総数は重複度 テンプレート:Math の テンプレート:Mvar-重複置換の総数に等しい。
こうして多項定理:
を得る(テンプレート:Math のとき二項定理が導かれる)。