五次方程式

提供: testwiki
ナビゲーションに移動 検索に移動

五次方程式ごじほうていしきテンプレート:Lang-en)とは、次数が5であるような代数方程式のこと。

概要

一般に一変数の五次方程式は

テンプレート:Math

の形で表現される。

代数学の基本定理によれば、任意の複素数係数方程式は複素数の中に根が存在する。その一方、五次以上の一般の方程式に対する代数的解法は存在しない。すなわち、一般の五次方程式に対して代数的な根の公式は存在しない。もう少し詳しく書くと、五次の一般方程式の根を、その式の各項の係数と有理数の、有限回四則演算及び有限回根号をとる操作の組み合わせで表示することはできない。

これはルフィニアーベルらによって示された(アーベル–ルフィニの定理参照)。 またガロアによって方程式が代数的に解ける条件が裏付けられている(ガロア理論参照)。

なお、代数的ではないが、楕円関数などを用いた根の公式は存在する。

解の公式

五次方程式の解を超越的な手続を許して構成する方法としては、

  • レベル5のモジュラー方程式の解を利用する方法
  • 超幾何級数を利用する方法

の2つが知られている。 前者はエルミートによって、後者はクラインによって導出された[1][2]

エルミートによる解法

五次方程式の解を構成するためには、まず、次の3つの事実を知っておく必要がある。

  • 任意の五次方程式は代数的操作のみによってブリング-ジェラード(テンプレート:Lang)の標準形に変形できる。
  • レベル5のモジュラー方程式の解が具体的に求められる。
  • それらの解のある特定のコンビネーションが五次方程式を満足し、ブリング-ジェラードの標準形と関係付けることができる。

これらを結合することで五次方程式の解を構成することができる[3]

ブリング-ジェラードの標準形

任意の五次方程式

x5+a4x4+a3x3+a2x2+a1x+a0=0

チルンハウス変換

y=x4+b3x3+b2x2+b1x+b0

において係数 bj をうまく選ぶことにより、ブリング-ジェラードの標準形

y5+y+b=0

への変換が可能であるので、まずこの形へ帰着させる。係数bjb は元の方程式の係数 al から複雑な代数的な演算(四則と冪根の組み合わせ)で表されたものとなる。

レベル5のモジュラー方程式

テンプレート:仮リンクの周期をそれぞれ ω1,ω2 として、τ

τ=ω2ω1

で定義する。ただし、τ純虚数と仮定する。また、

q=eiπτ

と定義する[注釈 1]。この時 qqn が満足する関係式、または同値だが τnτ とが満たすべき関係式のことを「レベル n のモジュラー方程式」と言う。この方程式は次の形をとる[4]

LL=nKK.

ただし、K,L はそれぞれ母数が k,l の第1種完全楕円積分K,L はそれぞれ母数が k:=1k2[注釈 2]l:=1l2 の第1種完全楕円積分を表す[注釈 3]。この方程式によって、2つの母数 k,l が満たすべき方程式が決まる。n=5 のとき τ5τ は次の関係式を満足することが分かっている。

F[κ(5τ)4,κ(τ)4]=0,F(x,y)=x6y6+5x2y2(x2y2)4xy(x4y41)=0,

ただし、κ(τ)は母数を表す。また、この式の証明の途中で次の2つの命題が証明される。

  • K=[κ4(τ)] と定義すると、F[x,κ4(ω)][κ4(ω)][x]=K[x]K 上で既約である。
  • この方程式の解が α=κ(5τ)4,αl=κ(τ+16l5)4l{1,2,3,4}

で与えられる[3]

解の構成

今、

r0=(αα0)(α1α4)(α2α3)κ4(τ)r1=(αα1)(α2α0)(α3α4)κ4(τ)r2=(αα2)(α1α3)(α0α4)κ4(τ)r3=(αα3)(α2α4)(α1α0)κ4(τ)r4=(αα4)(α0α3)(α1α2)κ4(τ)

と定義すると、riK(5) 上の方程式

x52453κ2(1κ2)2x26552κ2(1κ2)2(1+κ2)=0

の解であることが証明できる[注釈 4]。この式とブリング-ジェラードの標準形とを結合することで五次方程式の解が構成できる。具体的には、

b=i2(1+κ2)554κ(1κ2)

の変換で互いに移り変わる。これより、複素数 κ(τ) は、四次方程式を解くことで決定できる。ri を決定するには、この他に τ そのものの値も必要であるので、残されている手続はパラメータ τ の決定である。そして、この部分が超越的操作を含んでいる。κ(τ)τ とは、楕円曲線 C

y2=(1x2)(1κ2x2)

上の第1種積分

ξ=dxy=dx(1x2)(1κ2x2)

の周期の比、すなわち第一種完全楕円積分

K=K(κ)=01dx(1x2)(1κ2x2),K=K(κ)=K(κ)=01dx(1x2)(1κ2x2),κ=1κ2

を用いて、

τ=iKK

の関係で結ばれている。これが κ(τ)から τ を決定する式である。この式は代数的には解けないが、この方程式を満足する τri に代入して五次方程式の解が得られる。

クラインによる解法

正二十面体的対称性(Icosahedral symmetry

五次方程式を正20面体方程式(60次方程式)に帰着させ、正20面体方程式の解は超幾何関数で示される。

正20面体を二次元球面 テンプレート:Mathに内接。 二次元球面 テンプレート:Mathリーマン球面(複素射影直線)を同一視。複素射影直線の斉次座標をz1,z2(z=z1/z2)とし、以下の式を得る。

f=z1z2(z110+11z15z25z210),
H=(z120+z220)+228(z115z25z15z215)494z110z210,
T=(z130+z230)+522(z125z25z15z225)10005(z120z210+z110z220).

これらを用いて(と書いているのにTは使われていない?)

q(z)=H(z1,z2)31728f(z1,z2)5=H(z,1)31728f(z,1)5

となり、 q(z)=u は(uが何であるか言及がない?)60次の方程式、いわゆる正20面体方程式

((z20+1)288(z15z5)+494z10)3+1728uz5(z10+11z51)5=0

となる。 逆を求めると F(α,β,γ;z)をガウスの超幾何関数として[5]

z=F(1160,3160,65;1u)17285F(160,1960,45;1u)

限定的な代数的解法

一般の5次方程式が代数的には解かれないということは、上記に示したとおりであるが、特定の五次方程式がどのような場合に解けるかについては分かっている。ラグランジュが3次、4次で用いた手法をそのまま持ち込んだ場合、αiを元の方程式の根として、

x=(α1+ζα2+ζ2α3+ζ3α4+ζ4α5)5 (ただし ζ は1の原始5乗根)

の置換を考察することになるが、この場合5次対称群の位数は120で、出現する式は5次巡回群の位数=5で割った24通りである。つまりその為に解かなければならないxの方程式は24次のものとなり、次数が5次よりも高くなり,困難の程度がはるかに増す。

そこでより位数の低い置換を与えるような式を考察する必要があるが、これは1861年アーサー・ケイリーが与えたものが最良となる。

x=(α1α2+α2α3+α3α4+α4α5+α5α1α1α3α2α4α3α5α4α1α5α2)2

この場合に置換により現れる式の値は6通りであり、xの6次方程式を解くことに帰着する。もちろんこれを代数的に解くことは一般的な状況では不可能であるが、根の平方が有理数となる場合に限り、実質的な次数が下がり、代数的に解ける。その後は3次、4次のラグランジュの解法と同様にして元の方程式の根が得られる。これが五次方程式が代数的に(四則と開冪で)解かれるための必要十分条件である。

超冪根による解法

テンプレート:Main 四則演算と通常の冪根をとることに加えて超冪根(すなわち既約な方程式 テンプレート:Math の唯一の実根)をとる操作も「代数的操作」として許容した場合、この拡張された意味において一般五次方程式が「代数的に」解けることが知られている。

ガロア群

方程式が係数体上で既約ならそのガロア群は推移群になる。5次の推移群は以下の 5種類である[6][7]


既約な 係数の 5 次方程式 x5+ax4+bx3+cx2+dx+e=0 のガロア群 G の位数(群の要素の数) は 120, 60, 20, 10, 5 のどれかである[8]

(同じことを、群の記号だけを変えて2度くりかえして書いているのはなぜだろうか? 既約な5次方程式のガロア群は推移群であり、係数体が標数零であればこれら5通りのうちのどれかになる。そのうちで方程式が代数的に解けるのはガロアG群が可解である群Gの位数が20、10、5の3通りの場合に限られる.Gが対称群や交代群の場合には5次方程式は代数的操作によっては解かれない。)

脚注

注釈

テンプレート:Notelist

出典

  1. F.クライン、正20面体と5次方程式改訂新版、シュプリンガー・ジャパン、2005、ISBN 978-4-431-71118-6.
  2. F.Klein, Lectures on the Icosahedron and the Solution of the Fifth Degree (English translation), Cosimo Inc., 2007, ISBN 978-1-602-06306-8.
  3. 3.0 3.1 梅村浩著、楕円関数論、東京大学出版会、2000年、ISBN 4-13-061303-0
  4. G.H.Hardy, Ramanujan---Twelve lectures on subjects suggested by his life and work(reprint), AMS Chelsy Publishing, 1999, ISBN 0-8218-2023-0, p.214.
  5. テンプレート:Cite journal
  6. エム・ポストニコフ、日野寛三(訳):「ガロアの理論」、東京図書 (1964年6月25日). ※ 5次方程式が解かれる場合の解説がある。
  7. テンプレート:Cite journal
  8. 方程式のガロア群

関連項目

外部リンク


テンプレート:代数方程式

テンプレート:Algebra-stub
引用エラー: 「注釈」という名前のグループの <ref> タグがありますが、対応する <references group="注釈"/> タグが見つかりません