離散時間フーリエ変換

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テンプレート:脚注の不足 テンプレート:読み仮名は無限長の離散時間信号フーリエ変換様に周波数領域へ変換する操作である[1]

DTFTの周波数領域の表現は常に周期的関数である。したがって1つの周期に必要な情報が全て含まれるため、DTFTを「有限な」周波数領域への変換であるということもある。

定義

ω1 を変数とし、無限長である離散時間信号 x[n] の離散時間フーリエ変換 X(ω) は次式で定義される[2][3]

X(ω)=n=x[n]eiωn

ω正規化角周波数と呼ばれ(⇒ #周期性)、X(ω)周波数スペクトルとも呼ばれる[1]

表記

DTFT X(ω) は別の表記として X(eiω) とも書かれる。

この表記には次の特徴がある。

  • 周期性の強調(⇒ #周期性
  • DTFT とその元になっている x(t) のフーリエ変換 X(f)(または X(ω))との違いを明確化
  • DTFT とZ変換との関係を強調(⇒ #Z変換との関係

性質

周期性

DTFT X(ω)周期関数である[4]

変数 ω1 をとる DTFT X(ω) は周期 2π の周期関数である。これは複素指数関数の周期性と n が整数であることを用いて以下で示される:

X(ω+2π)=n=x[n] ei(ω+2π)n=n=x[n] eiωnei2πn=n=x[n] eiωn1=X(ω)

よって DTFT の性質を示すには πωπ で十分であり、ω正規化角周波数と解釈される。

この性質は信号 x[n]離散時間信号であることと複素指数関数の周期性に由来する。

連続性

DTFT X(ω) は連続的である。

DTFTの変数 ω1 は連続的な変数である[3]

この性質は信号 x[n] が時間領域で非周期的であることと複素指数関数の周期性に由来する。

対称性

フーリエ変換は、実数成分と虚数成分に分離できる。

X(eiω)=XR(eiω)+iXI(eiω)

また、偶数成分と奇数成分に分離できる。

X(eiω)=XE(eiω)+XO(eiω)
時間領域
x[n]
周波数領域
X(eiω)
x*[n] X*(eiω)
x*[n] X*(eiω)

その他の性質

以下の表は、一般的な離散時間フーリエ変換を示したものである。以下のような記法を用いている。

  • * は、2つの信号の畳み込みを意味する。
  • x[n]* は、関数 x[n]複素共役である。
  • ρxy[n] は、 x[n]y[n]相関を表す。

最初の列は属性の説明、第二列は時間領域での関数表現、第三列は周波数領域でのスペクトル表現である。

特性 時間領域 x[n] 周波数領域 X(ω) 備考
線形性 ax[n]+by[n] aX(eiω)+bY(eiω)
時間におけるシフト x[nk] X(eiω)eiωk k は整数
周波数におけるシフト(変調) x[n]eian X(ei(ωa)) a は実数
時間逆転 x[n] X(eiω)
時間共役 x[n]* X(eiω)*
時間逆転と共役 x[n]* X(eiω)*
周波数における微分 nix[n] dX(eiω)dω
周波数における積分 inx[n] πωX(eiϑ)dϑ
時間における畳み込み x[n]*y[n] X(eiω)Y(eiω)
時間における乗算 x[n]y[n] 12πX(eiω)*Y(eiω)
相関 ρxy[n]=x[n]**y[n] Rxy(ω)=X(eiω)*Y(eiω)

特定条件下での性質

周期信号のDTFT

周期性をもち無限長である離散時間信号のDTFTは離散的である。

無限長の複素離散時間信号 x[n]周期 N+ の周期信号、つまり x[n]=x[nN] とする。 DTFTの定義式は x[n]eiωn の内積であるため、両者を同じだけシフトしても値は変わらない。そこで両者を N だけシフトすると周期性により以下が成り立つ:

X(ω)=n=x[nN]eiω(nN)=n=x[n]eiωneiωN=eiωNX(ω)

この恒等式により各 ωeiωN=1 あるいは X(ω)=0 となる必要がある。複素指数1 になるにはその偏角 ωN2π の整数倍であることが求められるため、上記の恒等式条件により周期信号のDTFTは以下の形になる:

X(ω)={n=x[n]eiωn,if ω=2πkN,k0,otherwise

つまり周期性をもち無限長である離散時間信号のDTFTは離散的(かつ周期的)である。

また上記式の複素指数部を gk(n)=exp(i2πkn/N),k とし、gk(n)N だけシフトすると、

gk(nN)=ei2πkN(nN)=ei2πkNnei2πk=ei2πkNn1=gk(n)

となり、gk(n)x[n] と同じ周期 N の周期関数と見做せる。そのため「無限長の総和」が「同じ値をもつ『長さ N の部分和』の無限倍」と見做せる。すなわち周期信号のDTFTは以下の形になる:

X(ω)={n=0N1x[n]eiωn,if ω=2πkN,k0,otherwise

これは離散フーリエ変換(DFT)としばしば対比される。

逆変換

テンプレート:読み仮名は離散時間フーリエ変換表現から離散時間信号を求める演算である[5]

離散時間信号 x[n]正規化角周波数 ω、DTFT表現 X(ω) を用いて、IDTFT は次式で定義される[6]

x[n]=12πππX(ω)eiωndω=T12T12TXT(f)ei2πfnTdf

積分区間はDTFTの一周期全体であり、これは {x[n]} の標本群がDTFTのフーリエ級数展開の係数でもあることを示している。無限区間の積分では、この変換が通常のフーリエ変換の逆変換となり、ディラックのインパルスも復元する。すなわち次のようになる。

XT(f)ei2πftdf = xT(t) = n=x[n]δ(tnT)

他の変換との関係

他のフーリエ変換との関係

基本的にDTFTはフーリエ級数の逆であり、後者は継続的だが、周期的入力と離散スペクトルを持っている。これら2つの変換の応用は全く異なる。

DFT と DTFT は、標準の連続フーリエ変換を離散的データに適用しようとして自然に生まれたと見ることもできる。そういった観点では、単に入力形式が異なるだけで、変換そのものは同じである。

  • 入力が離散的なら、フーリエ変換は DTFT となる。
  • 入力が周期的なら、フーリエ変換はフーリエ級数となる。
  • 入力が離散的かつ周期的なら、フーリエ変換は DFT となる。

DFTとの関係

テンプレート:See also DTFTの数値的評価では、有限長のシーケンスが明らかに必要とされる。実際、長いシーケンスは矩形窓関数で修正され、次のようになる。

X(ω)=n=0L1x[n]eiωn,   ここで L は修正されたシーケンス長である。

これは、修正前のシーケンスのスペクトルの便利な近似として使われる。これによって解像度が悪くなるが、L を増やすことで改善される。

X(ω) を (2π) の一周期上に一様に分布する任意の (N) 個の周波数で評価するのが一般的である。

ωk=2πNk,     ここで k=0,1,,N1

これにより、次が得られる。

X[k]=X(ωk)=n=0L1x[n]ei2πkNn

NL であるとき、次のようにも表せる。

X[k]=n=0N1x[n]ei2πkNn,   何故なら nL について x[n]=0 と定義するため。

このように変形すると、X[k] のシーケンスは離散フーリエ変換(DFT)となる。N はDTFTを標本化する際の解像度と定義され、L はDTFT自体の固有解像度である。したがって、通常これらはほぼ同じ値である。N>L を選択するのが一般的だが、値がゼロの項を総和に含める理由は、DFTを計算する高速フーリエ変換アルゴリズムを利用できるためである。そのことを強調する場合、「ゼロパディングDFT」あるいは「内挿DFT」と呼ぶ。しかし、値がゼロの項を使わずに単純に計算しても全く同じDFTが得られる。N<L の場合のDTFTも計算でき、その場合はDFTとは等価ではない。

N>L が一般的であることを示すため、次のシーケンスを考える。

x[n]=ei2π18n, ここで L=64

下に示した2つの図は、ラベルで示される通り、異なるサイズのDFTを図示したものである。どちらの場合も支配的な周波数成分は f=18=0.125 である。右の図に表れているパターンは、L=64 の矩形窓関数のスペクトル漏れである。左側の図がこのようになっているのは、右の図のゼロと交差している点と標本化した点が重なっている結果である。これは、有限長シーケンスのDTFTというよりも、無限に続く正弦波のような印象を与える。このような図になる原因は、矩形窓関数の使用と、64個の標本あたり8個という整数個の周期になるような周波数を選択しているためである(18=864)。

L = 64 および N = 64 についての DFT
L = 64 および N = 256 についての DFT

Z変換との関係

DTFT はZ変換の特殊ケースである。両側Z変換は次のように定義される。

X(z)=n=x[n]zn

DTFT は z=eiω の場合である。このとき |eiω|=1 なので、これは複素平面での単位円付近でのZ変換の評価である。

標本化変換との関係

名称が暗に示している通り、{x[n]} は連続時間関数 x(t) の値(標本)を表している。このときの標本化間隔を T としたとき、各標本の採取時刻は t=nT であり、1/T=fsサンプリング周波数となる。DTFTは次の連続時間フーリエ変換の近似である。

X(f)=x(t)ei2πftdt

標本化定理で示されるように、次のくし型関数の変調に x(nT) の値を使用すると見ることもできる。

ΔT(t)=Tn=δ(tnT) 

その場合得られる関数のフーリエ変換は、fs の間隔で重ね合わせられた X(f) のコピーの総和である。

XT(f)=k=X(fkfs)

以下で示すように、これは周期関数のDTFTである。そして、ある明白な条件下で、k=0 の項はほとんど全く他の項からの歪み(折り返し雑音)が観測されない。変調されたくし型関数は次の通りである。

xT(t)=Tn=x(nT)δ(tnT)

したがって、

XT(f)=[Tn=x(nT)δ(tnT)]ei2πftdt=n=Tx(nT)[δ(tnT)ei2πft]dt=n=Tx(nT)ei2πfnT

このとき次が成り立つ。

x[n]=Tx(nT)
ω=2πfT=2πffs

つまり XT(f)X(ω) と同じである。

ここで、f は通常の周波数(単位時間当たりの周期数)であり、fs はサンプリング周波数(単位時間当たりの標本数)であるから、f/fs は「標本当たりの周期数」を意味する。これを正規化周波数(normalized frequency)と呼ぶ。上で定義されている ω も正規化周波数だが、こちらの単位は「標本当たりのラジアン」である。正規化周波数は、期間 2π の周期を持つ関数 X(ω) で表されるという特徴がある。そのため、逆変換では 2π の期間のみを評価すればよい。

下表は典型的な変換を示したものである。

  • n は離散時間領域(標本)を表現する整数である。
  • ω(π, π) の範囲内の実数であり、連続角周波数(標本当たりのラジアン)を表す。
    • それ以外 (|ω|>π) の変換は、X(ω+2πk)=X(ω) で定義される。
  • u[n] は離散時間単位ステップ関数である。
  • sinc(t) は正規化Sinc関数である。
  • δ(ω)ディラックのデルタ関数である。
  • δ[n]クロネッカーのデルタ δn,0 である。
  • rect(t) は、任意の実数値 t に関する次のような矩形関数である。
    • rect(t)=(t)={0if |t|>1212if |t|=121if |t|<12
  • tri(t) は任意の実数値 t に関する次のような三角形関数である。
    • tri(t)=(t)={1+t;1t01t;0<t10otherwise
時間領域
x[n]
周波数領域
X(ω)
備考
δ[n] 1
δ[nM] eiωM M は整数
m=δ[nMm] m=eiωMm=1Mk=δ(ω2πkM) M は整数
u[n] 11eiω
eian 2πδ(ω+a) a は実数
cos(an) π[δ(ωa)+δ(ω+a)] a は実数
sin(an) πi[δ(ωa)δ(ω+a)] a は実数
rect[(nM/2)M] sin[ω(M+1)/2]sin(ω/2)eiωM/2 M は整数
sinc[(a+n)] eiaω a は実数
Wsinc2(Wn) tri(ω2πW) real number W
0<W0.5
Wsinc[W(n+a)] rect(ω2πW)ejaω W, a は実数
0<W1
{0n=0(1)nnelsewhere jω 微分回路フィルタとして機能する
W(n+a){cos[πW(n+a)]sinc[W(n+a)]} jωrect(ωπW)ejaω W,a は実数
0<W1
1πn2[(1)n1] |ω|
{0;n odd2πn;n even {jω<00ω=0jω>0 ヒルベルト変換
C(A+B)2πsinc[AB2πn]sinc[A+B2πn] A, B は実数
C は複素数

脚注

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注釈

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出典

テンプレート:Reflist

参考文献

関連項目

テンプレート:デジタル信号処理