半ノルム

数学の特に線型代数学および函数解析学における半ノルム(はんのるむ、テンプレート:Lang-en-short; セミノルム)は、ベクトル空間上で定義される絶対斉次劣加法的函数で、正定値と制約しないことによるノルムの一般化である。
半ノルムの値は非負かつ符号反転に関して対称であり、函数として テンプレート:Ill2かつ凸である。
各半ノルムには、適当な剰余類をとる商構成に誘導されるノルムが付随する。半ノルムからなる族を用いて、局所凸線型空間を定義することができる。
定義
ノルム体 テンプレート:Mathbf(ふつうは実数体 テンプレート:Mathbf または複素数体 テンプレート:Mathbf)上のベクトル空間 テンプレート:Mvar に対し、テンプレート:Mvar 上の半ノルムとは、写像 テンプレート:Math で絶対斉次性および劣加法性を持つものを言うテンプレート:Sfn。式で書けば、テンプレート:Math および テンプレート:Math を任意として
- 絶対斉次性
- 劣加法性
が成り立つ。ただし、テンプレート:Math は係数体の絶対値である。半ノルム テンプレート:Mvar を備えたベクトル空間 テンプレート:Mvar はテンプレート:Ill2 テンプレート:Math と呼ぶ。
例
- 任意のノルムは、半ノルムである。
- 各ベクトルを全て零ベクトルに写す零函数 テンプレート:Math は半ノルムである。
- 実または複素数値線型函数の絶対値は半ノルムである。
- 任意の正定値実対称双線型形式(または複素半双線型形式)テンプレート:Math が誘導する テンプレート:Math は半ノルムである。
- 位相空間 テンプレート:Mvar とそのコンパクト部分集合 テンプレート:Math に対し、テンプレート:Math と置けば連続函数 テンプレート:Math 全体の成す空間上の半ノルムが定まる。ここで、函数の値をコンパクト集合上でしかとっていないから、右辺の上限は存在して有限となることに注意せよ。
- 線型空間の併呑かつ絶対凸な部分集合 テンプレート:Mvar に対するミンコフスキー汎函数も半ノルムの例である。
- ノルム空間 テンプレート:Mvar の連続的双対 テンプレート:Mvar において テンプレート:Math と置けば、テンプレート:Mvar 上の半ノルム テンプレート:Mvar が定まる。
- 連続線型写像の空間 テンプレート:Math には、テンプレート:Math および テンプレート:Math が半ノルムとして定義できる。
性質
定義から、絶対斉次性の式で テンプレート:Math とおくことにより、直ちに テンプレート:Math, すなわち零ベクトルの半ノルムが零であることが従う。しかしノルムの場合と対照的に、非零ベクトル テンプレート:Math も半ノルムが テンプレート:Math となることが起きうるテンプレート:Efn。
劣加法性(三角不等式とも呼ばれる)において テンプレート:Math と置けば、絶対斉次性によって
が従う。また テンプレート:Math を考えることで、
が分かる。 また、三角不等式を テンプレート:Math に適用して
の成立も確かめられる。 さらに、半ノルムがテンプレート:Ill2となることは、絶対連続性が正斉次性を導くことから従い、半ノルムの凸性も
と確かめられる。逆に、絶対斉次凸函数は劣線型であり、したがって半ノルムになる(それを確かめるには、凸性を表す式で テンプレート:Math と置いて全体を テンプレート:Math 倍すればよい)。
商ノルム空間
テンプレート:Main 絶対斉次性と劣加法性から、テンプレート:Nowrapのベクトル全体の成す集合
が テンプレート:Mvar の部分線型空間となることが従う。ここで テンプレート:Mvar 上の同値関係 テンプレート:Math が
によって定まる。この同値関係に関する同値類全体の成す集合 テンプレート:Mvar は、線型空間として商線型空間 テンプレート:Math であり、半ノルム テンプレート:Mvar に関してノルム空間となる。これを テンプレート:Mvar の半ノルム テンプレート:Mvar による商ノルム空間と言う。
このような構成は、例えば[[ルベーグ空間|Lテンプレート:Sup-空間]]の定義に用いられる。
半ノルム族
テンプレート:Main 函数解析学の分野において局所凸線型空間は、半ノルムの族 テンプレート:Math によってしばしば定義される。これによりもとの線型空間 テンプレート:Mvar に位相が入り、テンプレート:Mvar は位相線型空間となる。
そのためにまず、部分集合 テンプレート:Math が開であるとは、適当な テンプレート:Math に対し、テンプレート:Math と有限個の添字 テンプレート:Math が存在して、任意の テンプレート:Mvar に対して
となるときに言うと定める。
この文脈において、特定の分離性条件を満足する半ノルム族が特に注目される。半ノルム族 テンプレート:Math が分離的 (separated) あるいは完全 (total) であるとは、各 テンプレート:Math に対し、少なくとも一つの半ノルム テンプレート:Mvar が存在して テンプレート:Math となるときに言う。線型空間 テンプレート:Mvar が先に述べた半ノルム族の定める位相に関してハウスドルフ(分離的)となるのは、ちょうど半ノルム族が分離的となるときである。そのような位相線型空間は局所凸空間と呼ばれるテンプレート:Sfn
注
注釈
出典
参考文献
関連項目
- ノルムの一般化: 準ノルム / テンプレート:Ill2 / Fノルム etc.