広義固有ベクトル
線型代数学において,テンプレート:Math 行列 テンプレート:Mvar の広義(あるいは一般)固有ベクトル(こうぎこゆうベクトル,いっぱんこゆうベクトル,テンプレート:Lang-en-short)は,(通常の)固有ベクトルの定義を緩めたある条件を満たすベクトルであるテンプレート:Sfn.
テンプレート:Mvar を テンプレート:Mvar 次元ベクトル空間とする.テンプレート:Mvar を テンプレート:Mvar から テンプレート:Mvar への線型写像とする.テンプレート:Mvar をある基底についての テンプレート:Mvar の行列表示とする.
テンプレート:Mvar の完全な基底をなす テンプレート:Mvar の テンプレート:Mvar 個の線型独立な固有ベクトルがいつも存在するとは限らない.つまり,行列 テンプレート:Mvar は対角化可能とは限らないテンプレート:Sfnテンプレート:Sfn.これは少なくとも1つの固有値 テンプレート:Mvar の代数的重複度がその幾何学的重複度(行列 テンプレート:Math のテンプレート:仮リンク,あるいはその零空間の次元)よりも大きいときに起こる.この場合,テンプレート:Mvar はテンプレート:仮リンクと呼ばれ,テンプレート:Mvar はテンプレート:仮リンクと呼ばれるテンプレート:Sfn.
テンプレート:Mvar に対応する広義固有ベクトル テンプレート:Mvar は,行列 テンプレート:Math とあわせて,テンプレート:Mvar の不変部分空間の基底をなす線型独立な広義固有ベクトルのジョルダン鎖を生成するテンプレート:Sfnテンプレート:Sfnテンプレート:Sfn.
広義固有ベクトルを用いて,テンプレート:Mvar の線型独立な固有ベクトルの集合を必要ならば テンプレート:Mvar の完全な基底に拡張できるテンプレート:Sfn.この基底は テンプレート:Mvar に相似なジョルダン標準形にある「ほとんど対角な行列」テンプレート:Mvar を決定するのに用いることができ,これは テンプレート:Mvar のあるテンプレート:仮リンクを計算するのに有用であるテンプレート:Sfn.行列 テンプレート:Mvar は テンプレート:Mvar が対角化可能とは限らないときに線形微分方程式系 テンプレート:Math を解く際にも有用であるテンプレート:Sfnテンプレート:Sfn.
概要と定義
(通常の)固有ベクトルを定義するいくつかの同値な方法があるテンプレート:Sfnテンプレート:Sfnテンプレート:Sfnテンプレート:Sfnテンプレート:Sfnテンプレート:Sfnテンプレート:Sfnテンプレート:Sfn.テンプレート:Math 行列 テンプレート:Mvar の固有値 テンプレート:Mvar の固有ベクトル テンプレート:Mvar とは,テンプレート:Math なる零でないベクトルである,ただし テンプレート:Mvar は テンプレート:Math の単位行列であり,テンプレート:Mathbf は テンプレート:Mvar 次元の零ベクトルであるテンプレート:Sfn.つまり,テンプレート:Math は変換 テンプレート:Math の核に属する.テンプレート:Mvar が テンプレート:Mvar 個の線型独立な固有ベクトルを持てば,テンプレート:Mvar は対角行列 テンプレート:Mvar に相似である.つまり,ある可逆行列 テンプレート:Mvar が存在して,テンプレート:Mvar は相似変換 テンプレート:Math により対角化可能であるテンプレート:Sfnテンプレート:Sfn.行列 テンプレート:Mvar は テンプレート:Mvar のテンプレート:仮リンクと呼ばれる.行列 テンプレート:Mvar は テンプレート:Mvar の テンプレート:仮リンク と呼ばれるテンプレート:Sfn.対角化可能な行列は,その行列関数が容易に計算できるなどの特長があるテンプレート:Sfn.
一方,テンプレート:Math 行列 テンプレート:Mvar が テンプレート:Mvar 個の線型独立な固有ベクトルを持たないとき,テンプレート:Mvar は対角化可能ではないテンプレート:Sfnテンプレート:Sfn.
- 定義
- ベクトル テンプレート:Math が行列 テンプレート:Mvar の固有値 テンプレート:Mvar に対応する階数 テンプレート:Mvar の広義(あるいは一般)固有ベクトル (テンプレート:Lang-en-short) であるとは, を満たすが, であることをいうテンプレート:Sfn.
明らかに,階数 1 の広義固有ベクトルは通常の固有ベクトルであるテンプレート:Sfn.すべての テンプレート:Math 行列 テンプレート:Mvar は テンプレート:Mvar 個の線型独立な広義固有ベクトルを持ち,ジョルダン標準形の「ほとんど対角」な行列 テンプレート:Mvar に相似であることを示すことができるテンプレート:Sfn.つまり,可逆行列 テンプレート:Mvar が存在して,テンプレート:Math となるテンプレート:Sfn.このときの行列 テンプレート:Mvar は テンプレート:Mvar の テンプレート:仮リンク と呼ばれるテンプレート:Sfn.テンプレート:Mvar が代数的重複度 テンプレート:Mvar の固有値ならば,テンプレート:Mvar は テンプレート:Mvar に対応する テンプレート:Mvar 個の線型独立な広義固有ベクトルを持つテンプレート:Sfn.これらの結果は,テンプレート:Mvar のある種の行列関数を簡易に計算する際に有用となるテンプレート:Sfn.
与えられた テンプレート:Mvar に対するすべての広義固有ベクトルによって張られる集合は テンプレート:Mvar の広義(あるいは一般)固有空間 (テンプレート:Lang-en-short) をなすテンプレート:Sfn.
例
広義固有ベクトルの概念を説明するいくつかの例を挙げる.詳細のいくつかは後で記述される.
例 1
まず,固有値が重複しても異なる(通常の)固有ベクトルが得られる例について示す.
とする.テンプレート:Mvar の固有値は,テンプレート:Math を満たす テンプレート:Mvar であり,これを解くと, となり,ただ1つの固有値 テンプレート:Math が得られる.その代数的重複度は である.この固有値 テンプレート:Math に対する(通常の)固有ベクトルを求めてみよう. とおき, を満たすゼロでないベクトルを求めると,
となり,テンプレート:Math, テンプレート:Math とも任意でよい.たとえば, も,もいずれも固有値 テンプレート:Math に対する固有ベクトルとなる.この2つの固有ベクトルは互いに線形独立である.
なお,
であり,幾何学的重複度は テンプレート:Math である.実際に,固有値 テンプレート:Math に対して,2つの互いに線形独立な固有ベクトルが得られることがわかる.
例 2
固有値が重複する場合に異なる(通常の)固有ベクトルが得られない例について示すテンプレート:Sfnテンプレート:Sfnテンプレート:Sfn.
とする.テンプレート:Mvar の固有値は,テンプレート:Math を満たす テンプレート:Mvar であり,これを解くと,テンプレート:Math となり,ただ1つの固有値 テンプレート:Math が得られる.その代数的重複度は テンプレート:Math である.例 1 と異なり,
で,幾何的重複度は テンプレート:Math である.すなわち,例 1 とは異なり,固有値 テンプレート:Math に対する(通常の)固有ベクトルは1つしかない.
では,この固有値 テンプレート:Math に対する(通常の)固有ベクトルを求めよう.今, とおき,テンプレート:Math を満たすゼロでないベクトルを求めると,
となり,テンプレート:Math は任意であるが,テンプレート:Math でなくてはならない.したがって,たとえば, は固有値 テンプレート:Math に対する固有ベクトルとなる.なお,テンプレート:Math は任意であるから, もまた固有ベクトルであるが, と は互いに独立ではないことにも注意されたい.
つぎに,この(通常の)固有ベクトル を テンプレート:Math として,一般固有ベクトル テンプレート:Math を求めよう.これは, とおき, を解くことによって求めることができる.具体的には,
を解くと,テンプレート:Math は任意であり,テンプレート:Math となる.すると階数 2 の一般固有ベクトルは である,ただし テンプレート:Mvar は任意のスカラー値である.テンプレート:Math とするのが最も単純である.
テンプレート:Math と テンプレート:Math は線型独立であり,ベクトル空間 テンプレート:Mvar の基底をなす.
行列 テンプレート:Mvar は,対角化可能ではないことに注意されたい.この行列は1つの テンプレート:仮リンク成分があるから,階数が 1 よりも大きい一般化固有ベクトルが1つある(あるいは,ベクトル空間 テンプレート:Mvar の次元は 2 だから階数が 1 よりも大きい広義固有ベクトルは高々1つであることも分かる).あるいは,テンプレート:Math の零空間の次元が テンプレート:Math であることを計算でき,したがって階数が 1 よりも大きい広義固有ベクトルは テンプレート:Math 個ある.
さて,求めた(通常の)固有ベクトルと(一般)固有ベクトルを並べた行列
に対して,
となり,テンプレート:Mvar は対角化はできていないが,テンプレート:Mvar には テンプレート:Mvar の固有値が対角成分に現れ,右上に“1” が配置されたジョルダン標準形となっていることがわかる.
例 3
この例は例 2 よりも複雑である.低い次数のよい例題を構成することはやや少し難しいテンプレート:Sfn.
行列
の固有値は
の解なので,固有値 テンプレート:Math と テンプレート:Math を持ち,その代数的重複度はそれぞれ テンプレート:Math と テンプレート:Math である.テンプレート:Math に対して,
となるので,幾何学的重複度は テンプレート:Math である.テンプレート:Math に対して,
となるので,幾何的重複度は テンプレート:Math である.
はじめに,テンプレート:Math に対する(通常の)固有ベクトル テンプレート:Math を求める.幾何学的重複度は テンプレート:Math なので,残りの一般固有ベクトルは,テンプレート:Math から逐次的に求められる.具体的には,次のように求めた.
つぎに,テンプレート:Math に対する(通常の)固有ベクトル テンプレート:Math を求め,幾何学的重複度は テンプレート:Math なので,残りの一般固有ベクトル テンプレート:Math と テンプレート:Math は,テンプレート:Math から逐次的に求められる.具体的には,次のように求めた.
- 。
これは テンプレート:Mvar の各広義固有空間の基底となる.広義固有ベクトルの2つの鎖と合わせて5次元列ベクトル全体の空間を張る.
テンプレート:Mvar に相似な「ほぼ対角」なジョルダン標準形の行列 テンプレート:Mvar は以下のようにして得られる:
ただし テンプレート:Mvar は テンプレート:Mvar の テンプレート:仮リンク であり,テンプレート:Mvar の列は テンプレート:Mvar のテンプレート:仮リンクであり,テンプレート:Math である。 テンプレート:Sfn
ジョルダン鎖
- 定義
- テンプレート:Math を行列 テンプレート:Mvar の固有値 テンプレート:Mvar に対応する階数 テンプレート:Mvar の広義固有ベクトルとする.テンプレート:Math によって生成される鎖とは次で与えられるベクトルの集合 である:
したがって,一般に,
(テンプレート:EquationNote) によって与えられるベクトル テンプレート:Mvar は固有値 テンプレート:Mvar に対応する階数 テンプレート:Mvar の広義固有ベクトルである.鎖はベクトルの線型独立な集合であるテンプレート:Sfn.
標準基底
テンプレート:Main 定義:テンプレート:Mvar 個の線型独立な広義固有ベクトルの集合が標準基底 (canonical basis) であるとは,ジョルダン鎖の全体からなることをいう.
したがって,階数 テンプレート:Mvar の広義固有ベクトルが標準基底に入っていることを一度決定すれば,テンプレート:Math によって生成されるジョルダン鎖に入っている テンプレート:Math 個のベクトル も標準基底に入っていることが従うテンプレート:Sfn.
テンプレート:Mvar を テンプレート:Mvar の代数的重複度 テンプレート:Mvar の固有値とする.まず,行列 の階数を求める.整数 テンプレート:Mvar は の階数が テンプレート:Math となる「最初の整数」として決定される(テンプレート:Mvar は テンプレート:Mvar の行や列の個数である,つまり テンプレート:Mvar は テンプレート:Math である).
さて
と定義する.変数 テンプレート:Mvar は テンプレート:Mvar の標準基底に現れる固有値 テンプレート:Mvar に対応する階数 テンプレート:Mvar の線型独立な広義固有ベクトルの個数を表す.
に注意テンプレート:Sfn.
広義固有ベクトルの計算
これまでの節で テンプレート:Math 行列 テンプレート:Mvar に付随するベクトル空間 テンプレート:Mvar に対する標準基底の テンプレート:Mvar 個の線型独立な広義固有ベクトルを得る方法を見た.これらの方法を結合して手順を得る:
- 固有値 テンプレート:Mvar と代数的重複度 テンプレート:Mvar に対する テンプレート:Mvar の特性方程式を解く;
- 各 テンプレート:Mvar に対して:
- テンプレート:Math を決定する;
- テンプレート:Mvar を決定する;
- テンプレート:Math に対して テンプレート:Mvar を決定する;
- テンプレート:Mvar に対して各ジョルダン鎖を決定する;
例 4
行列
の固有値は
の解であり,これを解くと テンプレート:Math(代数的重複度 テンプレート:Math)および テンプレート:Math(代数的重複度 テンプレート:Math)が得られる.また,テンプレート:Math である.テンプレート:Math に対して テンプレート:Math である.
の階数が テンプレート:Math になる最初の整数 テンプレート:Math は テンプレート:Math である.
次のように定義する:
したがって,3つの線型独立な広義固有ベクトルが存在する;階数 3, 2, 1 に1つずつである.テンプレート:Math は3つの線型独立な広義固有ベクトルのただ1つの鎖に対応するので,テンプレート:Math に対応する階数 3 の広義固有ベクトルであって
なるものが存在することを知っている.方程式 (テンプレート:EquationNote) と (テンプレート:EquationNote) は テンプレート:Math について解くことができる線型方程式系を表す.
とする.すると
および
である.したがって,条件 (テンプレート:EquationNote) と (テンプレート:EquationNote) を満たすためには,テンプレート:Math かつ テンプレート:Math でなければならない.テンプレート:Math と テンプレート:Math には何の制約もない.テンプレート:Math, テンプレート:Math と選ぶことで,テンプレート:Math に対応する階数 3 の広義固有ベクトルとして
を得る.テンプレート:Math, テンプレート:Math, テンプレート:Math で テンプレート:Math なる異なる値を選ぶことによって階数 3 の他の広義固有ベクトルを無限個得ることができることに注意.しかしながら,我々の最初の選択が最も単純であるテンプレート:Sfn.
さて方程式 (テンプレート:EquationNote) を用いて,テンプレート:Math と テンプレート:Math をそれぞれ階数 2 と 1 の広義固有ベクトルとして得る,ただし
および
である.代数的重複度が 1 の固有値 テンプレート:Math は標準的な手法で扱うことができ,通常の固有ベクトル
を持つ.テンプレート:Mvar の標準基底は
である.テンプレート:Math は テンプレート:Math に伴う広義固有ベクトルである.テンプレート:Math は テンプレート:Math に伴う通常の固有ベクトルである.
これはかなり単純な例であることに注意すべきである.一般に,階数 テンプレート:Mvar の線型独立な広義固有ベクトルの個数 テンプレート:Mvar は必ずしも等しくない.つまり,特定の固有値に対応する異なる長さのいくつかの鎖があるかもしれないテンプレート:Sfn.
広義モード行列
テンプレート:Main テンプレート:Mvar を テンプレート:Math 行列とする.テンプレート:Mvar の広義モード行列 (generalized modal matrix) テンプレート:Mvar とは,テンプレート:Math 行列であって,その列が,ベクトルと考えたときに,テンプレート:Mvar の標準基底をなし,テンプレート:Mvar において以下の規則に従って現れるものをいう:
- 1つのベクトルからなるすべてのジョルダン鎖は テンプレート:Mvar のはじめの列に現れる.
- 1つの鎖のすべてのベクトルは テンプレート:Mvar の隣接する列に一緒に現れる.
- 各鎖は テンプレート:Mvar において階数が増える順番で現れる(つまり,階数 1 の広義固有ベクトルは同じ鎖の階数 2 の広義固有ベクトルよりも前に現れ,これは同じ鎖の階数 3 の広義固有ベクトルよりも前に現れ,……)テンプレート:Sfn.
ジョルダン標準形

テンプレート:Main テンプレート:Mvar を テンプレート:Mvar 次元ベクトル空間とする;テンプレート:Mvar を テンプレート:Mvar から自身への線型写像全体の集合 テンプレート:Math の元とする;テンプレート:Mvar をある基底に関する テンプレート:Mvar の行列表示とする.次のことを示すことができる.テンプレート:Mvar の特性多項式 テンプレート:Math が一次式に分解して
の形,ただし は テンプレート:Mvar の相異なる固有値,になれば,各 テンプレート:Mvar は対応する固有値 テンプレート:Mvar の代数的重複度であり,テンプレート:Mvar はジョルダン標準形の行列 テンプレート:Mvar に相似である,ただし各 テンプレート:Mvar は対角線上連続した テンプレート:Mvar 回現れ,各 テンプレート:Mvar の上(すなわちテンプレート:仮リンク)の各成分は 0 または 1 である;各 テンプレート:Mvar の最初の出現の上の成分はつねに 0 である.すべての他の成分は 0 である.行列 テンプレート:Mvar は テンプレート:Mvar の対角化にできるだけ近い.テンプレート:Mvar が対角化可能ならば,対角線の上のすべての成分は 0 であるテンプレート:Sfn.教科書によっては優対角成分ではなく テンプレート:仮リンク, すなわち主対角線の直下に 1 たちがあることに注意.固有値はなお主対角線にあるテンプレート:Sfnテンプレート:Sfn.
すべての テンプレート:Math 行列 テンプレート:Mvar は相似変換 テンプレート:Math によって得られるジョルダン標準形の行列 テンプレート:Mvar に相似である,ただし テンプレート:Mvar は テンプレート:Mvar の広義モード行列であるテンプレート:Sfn。
例 5
に相似なジョルダン標準形の行列を見つけよ.
解:テンプレート:Mvar の特性方程式は テンプレート:Math であるので,固有値は テンプレート:Math(代数的重複度 テンプレート:Math)である.前の節の手順に従って,
と
が分かる.したがって,テンプレート:Math と テンプレート:Math であり,テンプレート:Mvar の標準基底は階数 2 の1つの線型独立な広義固有ベクトルと階数 1 の2つの線型独立な広義固有ベクトルを含むことが分かる,あるいは同じことだが,2つのベクトルの1つの鎖 テンプレート:Math と1つのベクトルの1つの鎖 テンプレート:Math を含む.テンプレート:Math と書いて,次が分かる:
および
ただし テンプレート:Mvar は テンプレート:Mvar の広義モード行列で,テンプレート:Mvar の列は テンプレート:Mvar の標準基底で,テンプレート:Math であるテンプレート:Sfn.広義固有ベクトル自身は一意ではないから,また テンプレート:Mvar と テンプレート:Mvar の両方の列のいくつかは交換できるから,テンプレート:Mvar と テンプレート:Mvar はいずれも一意ではないことが従うことに注意テンプレート:Sfn.
例 6
例 4 において,行列 テンプレート:Mvar に対する線型独立な広義固有ベクトルの標準基底を求めた.テンプレート:Mvar の広義モード行列は
である.テンプレート:Mvar に相似なジョルダン標準形の行列は
であり,テンプレート:Math である。
応用
行列関数
テンプレート:Main 正方行列に実行できる最も基本的な演算の3つは,和とスカラー倍と積であるテンプレート:Sfn.これらは テンプレート:Math 行列 テンプレート:Mvar の多項式関数を定義するのにちょうど必要な演算であるテンプレート:Sfn.多くの関数がマクローリン級数として書けることを基本的な解析学から思い出すと,行列のより一般の関数をきわめて容易に定義できるテンプレート:Sfn.テンプレート:Mvar が対角化可能ならば,つまり
で
ならば,
であり,テンプレート:Mvar の関数のマクローリン級数の計算は大きく単純化されるテンプレート:Sfn.例えば,テンプレート:Mvar の任意の冪 テンプレート:Mvar を得るには,テンプレート:Mvar を計算し,テンプレート:Mvar を左から掛け,さらに テンプレート:Math を右から掛けるだけでよいテンプレート:Sfn.
広義固有ベクトルを用いて,テンプレート:Mvar のジョルダン標準形を得ることができ,これらの結果は対角化可能でない行列の関数を計算する直截的手法に一般化できるテンプレート:Sfn.(テンプレート:仮リンクを参照.)
微分方程式
テンプレート:Main 次の線型常微分方程式系を解く問題を考える:
ただし
行列 テンプレート:Mvar が対角行列で テンプレート:Math に対して テンプレート:Math のとき,系 (テンプレート:EquationNote) は次の形の テンプレート:Mvar 個の方程式の系に簡約される:
この場合,一般解は次で与えられる:
一般の場合には,テンプレート:Mvar を対角化し系 (テンプレート:EquationNote) を (テンプレート:EquationNote) のような系に以下のように簡約しようとする.テンプレート:Mvar が対角化可能ならば,テンプレート:Mvar を テンプレート:Mvar のモード行列として,テンプレート:Math である.テンプレート:Math を代入して,方程式 (テンプレート:EquationNote) は次の形となる: あるいは
ただし
(テンプレート:EquationNote) の解は
(テンプレート:EquationNote) の解 テンプレート:Mathbf はすると関係式 (テンプレート:EquationNote) を用いて得られるテンプレート:Sfn
一方,テンプレート:Mvar が対角化可能でなければ,テンプレート:Mvar を テンプレート:Mvar の広義モード行列に選び,テンプレート:Math を テンプレート:Mvar のジョルダン標準形とする.系 テンプレート:Math は次の形を持つ:
ただし テンプレート:Mvar は テンプレート:Mvar の主対角成分にある固有値であり,テンプレート:Mvar は テンプレート:Mvar の優対角成分にある 1 と 0 である.系 (テンプレート:EquationNote) はしばしば (テンプレート:EquationNote) よりも容易に解かれる.(テンプレート:EquationNote) の最後の方程式を テンプレート:Mvar に対して解いて, を得る.次に テンプレート:Mvar のこの解を (テンプレート:EquationNote) の最後から二番目の方程式に代入して,テンプレート:Math に対して解く.この手順を続けて,(テンプレート:EquationNote) を最後の方程式から最初までやり,テンプレート:Mathbf に対する全体の系を解く.すると解 テンプレート:Mathbf は関係式 (テンプレート:EquationNote) を用いて得られるテンプレート:Sfn.
脚注
参考文献
- テンプレート:Citation
- テンプレート:Cite book
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