リュードベリ定数
リュードベリ定数(リュードベリていすう、テンプレート:Lang-en-short)は、原子の発光および吸収スペクトルを説明する際に用いられる物理定数である。記号は テンプレート:Math などで表される。名称はスウェーデンの物理学者ヨハネス・リュードベリに因む。
リュードベリ定数の値は テンプレート:Indent である(2022 CODATA推奨値[1])。
リュードベリの公式
原子は特有な線スペクトルの配列をもつ。 水素原子の線スペクトルはもっとも簡単な配列をしており、ヨハン・ヤコブ・バルマーは可視光域の線スペクトルの波長 テンプレート:Mvar が テンプレート:Indent と表されることを発見した。
リュードベリは他の原子の線スペクトルの波長 テンプレート:Mvar が、適当な正の整数 テンプレート:Math を用いて波数が テンプレート:Indent と表されることを発見した[2]。これはリュードベリの公式と呼ばれる。 係数 テンプレート:Math は原子の種類によらない普遍定数であり、これがリュードベリ定数である。 テンプレート:Math は原子ごとの線スペクトルの系列によって近似的に一定の値をとる定数である。 水素原子では テンプレート:Math であり、バルマーが示した式は テンプレート:Math の特別の場合である。
ボーア模型からの導出
観測結果から求められたリュードベリ定数であったが、20世紀に入り量子力学が発展すると、ボーアやゾンマーフェルトによって理論的に他の物理定数と関係づけられることが示された。 ボーアの原子模型によれば、リュードベリ定数は、電子の質量 テンプレート:Math、電気素量 テンプレート:Mvar 、光速度 テンプレート:Mvar、プランク定数 テンプレート:Mvar、真空の誘電率 テンプレート:Math を用いて、 テンプレート:Indent と表すことができる。 微細構造定数 テンプレート:Mvar を用いると、 テンプレート:Indent と簡略化できる。また、ハートリーエネルギー テンプレート:Math を用いて、 テンプレート:Indent と表すこともできる[3]。
波数をエネルギーに換算した値はリュードベリ原子単位系においてエネルギーの単位リュードベリ(rydberg、記号 Ry)として用いられ、その値は テンプレート:Indent である[4]。上記の通り 1 rydberg は (1/2) hartree に等しい。
水素原子のスペクトル
水素原子の線スペクトルについて、テンプレート:Math となり、 テンプレート:Indent という関係が成り立つ。
整数 テンプレート:Mvar に関して
- テンプレート:Math: ライマン系列(1906年) (121.6nm 遠紫外線領域)
- テンプレート:Math: バルマー系列(1885年) (656.3nm 紫外可視光領域)
- テンプレート:Math: パッシェン系列(1908年) (1875.1nm 赤外線領域)
- テンプレート:Math: ブラケット系列(1922年) (4050.0nm 近赤外線領域)
- テンプレート:Math: プント系列(1924年) (7460.0nm 遠赤外線領域)
- テンプレート:Math: ハンフリーズ系列(1953年) (12370nm 遠赤外線領域)
と呼称される。
水素原子以外での重要性
原子や分子において、その中の電子の1つを主量子数 テンプレート:Mvar の大きい原子軌道に励起すれば水素型の励起状態となる。この状態をリュードベリ状態といい、その状態にある原子をリュードベリ原子という。
リュードベリ原子において、軌道半径は テンプレート:Math に比例して非常に大きく、原子・分子で最も簡単な系でありながら、長さ・時間・エネルギーの尺度について基底状態の原子・分子から大きくかけ離れた性質を示す[5]。