超現実数

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A visualization of the surreal number tree.

数学における超現実数(ちょうげんじつすう、テンプレート:Lang-en-short)の体系は、全順序付けられた真のクラスとして実数のみならず(任意の正実数よりも絶対値が大きい)無限大および(任意の正実数よりも絶対値が小さい)無限小まで含む。超現実数の体系は、四則演算(加減乗除)など実数が持つ多くの性質を共有しており、順序体を成すテンプレート:Efn 超現実数をフォンノイマン–ベルナイス–ゲーデル集合論 (NBG) において定式化するならば、超現実数体は(有理数体、実数体、有理函数体、レヴィ゠チヴィタ体準超実数体超実数体などを含む)すべての順序体をその部分体として実現できるという意味で普遍的な順序体となる[1]。超現実数は、すべての超限順序数も(その算術まで込めて)含む。あるいはまた、(NBGの中で構成した)超実体の極大クラスが超現実体の極大クラスに同型であることが示せる(テンプレート:Ill2を持たない理論では必ずしもそうならないし、またそのような理論において超現実数体が普遍順序体になるとも限らないことに注意する)。

概念史

1907年にハンス・ハーンは、形式冪級数の一般化としてテンプレート:Ill2を導入した。またフェリックス・ハウスドルフは、順序数テンプレート:Mvar に対する テンプレート:Ill2と呼ばれる順序集合を導入し、それと両立する順序群や順序体の構造を求めることができるかを問うた。テンプレート:Harvtxt は修正された形のハーン級数を用いて適当な順序数 テンプレート:Mvar に対してそのような順序体を構成し、テンプレート:Mvar をすべての順序数全体の成すクラスを亙って動かすことで、超現実数体に同型な順序体のクラスを与えた。

それとは別の定義および構成法が、ジョン・ホートン・コンウェイにより、囲碁寄せについての研究から導かれている[2]。コンウェイの構成法は1974年にドナルド・クヌースの著書 Surreal Numbers: How Two Ex-Students Turned on to Pure Mathematics and Found Total Happinessテンプレート:Efn に取り入れられた。対話形式で書かれたこの本においてクヌースは、コンウェイが単に「数」と呼んでいたものに「超現実数」という新たな名を付けた。のちにコンウェイもクヌースのこの造語を受け入れ、1976年には超現実数を用いてゲームを解析する テンプレート:Ill2 を著したテンプレート:Sfn

概観

コンウェイの構成法テンプレート:Sfnでは、超現実数は、大小関係を表す順序 テンプレート:Math(二つの超現実数 テンプレート:Mvar に対し テンプレート:Math または テンプレート:Math が成立する。テンプレート:Math かつ テンプレート:Math がともに成立するとき テンプレート:Mvarテンプレート:Mvar は同値であると言い、同じ数を表すものと理解する)を伴って、段階を踏んで構成される。各段階における数は、既に構成された既知の超現実数からなる部分集合のの形をしており、そのような数からなる部分集合 テンプレート:Mvar が与えられ、テンプレート:Mvar のすべての元が テンプレート:Mvar のすべての元よりも真に小さいときに、対 テンプレート:Mathテンプレート:Mvar のすべての元と テンプレート:Mvar のすべての元との間に値を持つ中間数を表すものとなる。

このとき、全く異なる部分集合の対が結局は同じ数を定義するということが起こり得る —たとえ テンプレート:Math かつ テンプレート:Math となる場合であってさえも、二つの対 テンプレート:Math が同じ数を定義しうる—(同様の現象は、有理数を整数の商として定義するときにもあったことである。例えば テンプレート:Mathテンプレート:Math は同じ有理数の異なる表現である)。ゆえに厳密を期すならば、超現実数とはそのような同じ数を指す テンプレート:Math なる形式の表現からなる同値類のことと言うべきである。

構成の緒段(第零世代)では、既存の数は何もないのだから、表現には空集合しか用いようがない。表現 テンプレート:Mathテンプレート:Mvar および テンプレート:Mvar が空集合という意味であり、これを テンプレート:Math と呼ぼう。段階を踏んでいけば {0}=:1,{1}=:2,{2}=:3,{0}=:1,{1}=:2,{2}=:3, のような形式が次々に生まれてくる。こうして整数は全て超現実数の集合に含まれる(上記は右辺の名称を左辺の式で定義するという意味の定義式であることに注意する。これらの各名称が実際に適切なものであることは、後で述べる超現実数の四則演算が定義されたときに根拠が与えられるであろう)。同様に {01}=:1/2,{01/2}=:1/4,{1/21}=:3/4, のようなものも生じるから、テンプレート:Ill2(分母が2の冪であるような有理数)もまた全てが超現実数の集合に含まれる。

無限に段階を踏んだ後であれば、無限部分集合も使ってよいということになり、任意の実数 テンプレート:Mvar が、テンプレート:Mvar より小さい(ここでの大きい・小さいは、実数としての大小関係で言うことに注意)二進分数全体の成す集合 テンプレート:Mvarテンプレート:Mvar より大きい二進分数全体の成す集合 テンプレート:Mvar を用いて テンプレート:Math と表現される(これはあたかもデデキントの切断の如きである)。そうして任意の実数もまた超現実数の集合に埋め込まれる。

あるいはまた、{0,1,2,3,}=:ω および {01,1/2,1/4,1/8,}=:ε なる表現も作られ、テンプレート:Mvar は任意の整数よりも大きい超限数として、テンプレート:Mvar は任意の正実数より小さいが テンプレート:Math よりは大きい無限小として解釈できるが、これらもまた超現実数として与えられる。さらに言えば、通常の算術における四則演算(加減乗除)が、これらの実数でないような量まで含めて、超現実数全ての集まりが一つの順序体となるような仕方で拡張できる。よって、この枠組みの中では テンプレート:Mathテンプレート:Math などのような無限大を数として扱った議論もできるということになる。

構成法

超現実数は、超現実数からなる集合の(ただし一方の集合の各元が他方の集合の任意の元よりも真に小さいという制約が付く)に関する同値類として帰納的に定義される。この構成は、相互に依存する三種類のルール(構成規則比較規則同値規則)からなる。

形式

形式 (form) は左集合および右集合と呼ばれる超現実数からなる集合の対を言う。左集合を テンプレート:Mvar, 右集合を テンプレート:Mvar とする形式は テンプレート:Math と書き、また テンプレート:Mvar および テンプレート:Mvar が元のリスト(文字列)として与えられているときには、それらを括る波括弧は省略する。左集合または右集合の何れかまたは両方が空集合となることもあり得る。例えば両者空集合となる形式 テンプレート:Mathテンプレート:Math とも書く。

テンプレート:Vanc
形式 テンプレート:Math が数値的(数的)であるとは、テンプレート:Mvarテンプレート:Mvar に交わりが無く、かつ テンプレート:Mvar の各元が テンプレート:Mvar の任意の元よりも真に大きいときに言う。ただし、大小関係は後で述べる順序 テンプレート:Math の意味で言う。

数値形式の同値類

数的な形式を同値類に分けるとき、その各々の同値類が「超現実数」である。形式における左集合と右集合は(形式ではなくその同値類としての)超現実数のなす宇宙からとることができる。

テンプレート:Vanc
二つの数形式 テンプレート:Mvar が同じ数を表す(同じ同値類に属する)ための必要十分条件は テンプレート:Math および テンプレート:Math が同時に満たされることである。

順序関係反対称でなければならない。つまり テンプレート:Math かつ テンプレート:Math という意味で テンプレート:Math であるのは、テンプレート:Mvarテンプレート:Mvar が同じものであるときに限る。これは超現実数を形式として捉えた場合には正しくないが、その同値類を取って作ったものであれば真となる。

空な形式 テンプレート:Math の属する同値類を テンプレート:Math とラベル付ける。すなわち、超現実数の テンプレート:Math は形式 テンプレート:Math によって表現される。

超現実数の再帰的定義は、以下で定義する比較規則に対して完全 (completed) である:

テンプレート:Vanc
数値形式 テンプレート:Math に対して、テンプレート:Math が成り立つとは
という条件がともに成立することをいう。

形式 テンプレート:Mvar と超現実数 テンプレート:Mvar との間の比較 テンプレート:Math は、同値類 テンプレート:Mvar の代表元となる形式 テンプレート:Mvar を取って テンプレート:Math を評価するならば意味を持つ。同様に形式 テンプレート:Mvar との比較 テンプレート:Math や超現実数同士の比較 テンプレート:Math も定義できる。

帰納法による定義

この一連の定義は再帰的であり、形式や数といった対象の成す宇宙を定めるためにはある種の数学的帰納法が必要になる。「有限な帰納法」を通じて到達できる超現実数はテンプレート:Ill2(二進有理数)に限られるから、より広い宇宙へ到達するには何らかの形での超限帰納法を与えなければならない。

テンプレート:Vanc
初期条件: 第零世代 テンプレート:Math はただ一つの形式 テンプレート:Math のみからなる テンプレート:Math だけを含む集合とする。
帰納ステップ: 任意の順序数 テンプレート:Mvar に対し、第 テンプレート:Mvar-世代 テンプレート:Math は、それより前の世代全ての合併 i<nSi から構成規則によって生成されるすべての超現実数からなる集合である。

初期条件は実際には(添字の テンプレート:Math を最小の順序数とみなして)帰納ステップの特別な場合と見ることもできる。これは、テンプレート:Math を満たす テンプレート:Mvar は存在しないから、そのようなものの合併 i<nSi もまた空であり、空集合の部分集合は空集合しかないから、したがって テンプレート:Math は左右ともに空なただ一つの形式 テンプレート:Math のみが属する同値類 テンプレート:Math のみからなる。

任意の有限順序数 テンプレート:Mvar に対して テンプレート:Mvar は、超現実数の比較規則によって誘導される順序に関して整列順序付けられる。

帰納規則を一回施すと、三種類の数形式が得られ、大きさ順にすると テンプレート:Math と書ける(形式 テンプレート:Math も出てくるがこれは数的でない: テンプレート:Math)。これらの属する同値類に対し、テンプレート:Math を含むものには テンプレート:Mathテンプレート:Math を含むものには テンプレート:Math をラベルとして割り当てる。この三種にこのようなラベル付けをすることは、の公理を満たすことを確認するうえで特別に重要である(これらはちょうど、加法単位元 テンプレート:Math, 乗法単位元 テンプレート:Math および テンプレート:Math の加法逆元 テンプレート:Math を表すものとして、後で定義する超現実数の四則演算と整合する)。

任意の テンプレート:Math に対して、テンプレート:Mvar で有効な任意の形式は テンプレート:Mvar においても有効であるから、テンプレート:Mvar に属する任意の数は テンプレート:Mvar にも(テンプレート:Mvar におけるそれらの数の表現の上位集合として)現れる(帰納ステップにおいて、テンプレート:Mvar は一つ前の テンプレート:Math からではなく、それより前のすべての合併という形で構成されているから、この帰納的定義は テンプレート:Mvar極限順序数であるときにも意味を為すことに注意する)。テンプレート:Mvar に属する数のうち、テンプレート:Mvar に属する適当な数の上位集合となっているようなものは、第 テンプレート:Mvar-世代から「遺伝した」と言う。与えられた超現実数に対し、それが属する テンプレート:Mvar の中で最小となる テンプレート:Mvar のことを、その超現実数のテンプレート:Vancと呼ぶ。例えば テンプレート:Math の誕生日は テンプレート:Math であり、テンプレート:Math の誕生日は テンプレート:Math である。

帰納ステップの繰り返し二回目では、以下のように順序付けられた同値類が得られる:

テンプレート:Math
テンプレート:Math
テンプレート:Math
テンプレート:Math
テンプレート:Math
テンプレート:Math
テンプレート:Math

これら同値類の大小比較が、それを代表する形式の選び方に依らず無矛盾であることに注意。三つほどわかることがある:

  1. 第二世代 テンプレート:Math で新たに加わった超現実数は四つあり、その中に極端なものが二つある。ひとつは テンプレート:Math で右集合に前世代の数をすべて含み、いまひとつの テンプレート:Math は左集合に前世代をすべて含む。残りの二つは、前世代を二つの空でない集合に分割する形になっている。
  2. 前世代に存在したすべての超現実数 テンプレート:Mvar が全てこの世代にもあり、それぞれに対してそれを表す新たな形式を少なくとも一つ持っている。それは前世代の テンプレート:Mvar 以外のすべての数を、テンプレート:Mvar より小さい数は左集合に、テンプレート:Mvar より大きい数は右集合にそれぞれ入れた分割の形をしている。
  3. 一つの超現実数の同値類は、左集合の極大元と右集合の極小元のみに依存して決まる。

略式的には テンプレート:Math および テンプレート:Math はそれぞれ "テンプレート:Math の直後の数" および "テンプレート:Math の直前の数" と解釈できる。それら同値類には テンプレート:Math および テンプレート:Math のラベルを付ける。同様に略式的には テンプレート:Math および テンプレート:Math はそれぞれ "テンプレート:Mathテンプレート:Math の中間の数" および "テンプレート:Mathテンプレート:Math の中間の数" と解釈できるので、それら同値類には テンプレート:Math および テンプレート:Math とラベルを付ける。これらのラベルも後で述べる超現実数の加法および乗法に関する規則で正当化される。

帰納法の各第 テンプレート:Mvar-世代における同値類は、その左集合と右集合に直前の世代の元を可能な限り多く含む テンプレート:Mvar-完全形式 (テンプレート:Mvar-complete forms) によって特徴付けることができる。これら完全形式は、直前世代のすべての数をその左集合または右集合のいずれか一方だけにもつ(例えば第一世代はこのような数だけが生じる)か、さもなくば直前世代の数をただ一つを除いて全て含む(この場合、その完全形式は、この除かれたただ一つの数を表す新たな形式を与えていることになる)。さて、前世代の数には既に与えたラベルをそのままつけるものとして、新たにつけたラベルとともに大小関係に従って並べれば、第二世代は 2<1<12<0<12<1<2 となる。

三番目の観察は、有限な左集合および右集合を持つ任意の超現実数に対して拡張できる(無限集合は極小元や極大元をもたないかもしれないから、左集合または右集合が無限集合である場合には修正が必要である)。だから例えば、形式 テンプレート:Math の表す超現実数は テンプレート:Math が表すものと同じである。第三世代における形式に関して同様のことを見るには、帰納規則の系として得られる「誕生日性質」(birthday property) が利用できる:

テンプレート:Vanc
テンプレート:Mvar-世代において生じる形式 テンプレート:Math がそれより前の世代 テンプレート:Math から遺伝するための必要十分条件は、テンプレート:Mvar の適当な元をとれば、それが テンプレート:Mvar の任意の元より大きく、かつ テンプレート:Mvar の任意の元より小さくできることである(言葉を換えて言えば、テンプレート:Mvarテンプレート:Mvar が以前の段階で既知となっている数によって既に隔たれているならば、テンプレート:Mvar は新たな数を表すものではなく、既に得られた数である)。テンプレート:Mvarテンプレート:Mvar より前の任意の世代から来る数を表すとき、そのような世代 テンプレート:Mvar に最小値(つまり テンプレート:Mvar の誕生日)が存在して、その最小値を実現する数 テンプレート:Mvarテンプレート:Mvarテンプレート:Mvar の間にただ一つ存在する。テンプレート:Mvar はこの テンプレート:Mvar を含む形式(つまり、テンプレート:Mvar において テンプレート:Mvar の属する同値類)として第 テンプレート:Mvar-世代における テンプレート:Mvar の表現を部分集合として含む。

超現実数の算術

超現実数の加法、符号反転(反数)および乗法は、形式 テンプレート:Math に対して、以下のように再帰的に定義される。

反数

集合 テンプレート:Mvar の反数集合 テンプレート:Math を、その元の反数全体の成す集合 テンプレート:Math とすれば、与えられた超現実数の「形式」 テンプレート:Math に対してその反数は x={XLXR}:={XRXL} で与えられる。

この定義式の中には、テンプレート:Mvar の左集合や右集合に現れる超現実「数」の反数も現れるが、これはそれら数の代表元となる形式を選んで形式に対する符号反転をとって得られた形式の属する同値類をとったものという意味である。ただし、この定義が意味を持つためには、結果として得られる数が被演算子となる形式のとりかたに依存しないことを示す必要がある。そのことは、テンプレート:Mvar に現れる全ての数が、テンプレート:Mvar が初めて現れるよりも前の世代において生じるものであるという事実を用いれば、その特別の場合として テンプレート:Math は確定であることと合わせて帰納的に示される。

加法

同様に加法もまた x+y={XLXR}+{YLYR}={XL+y,x+YLXR+y,x+YR} と帰納的に定義される。ただし、テンプレート:Math および テンプレート:Mathテンプレート:Ill2である。

この定義式には、もととなる被演算子の一方(これは数ではなく「形式」である)と、他方の左集合または右集合からとった超現実「数」との和が現れているが、これはその数に対してはそれを表す形式を一つ選んで形式の間での和を計算し、その結果得られる形式の属する同値類をとった超現実数を意味するものと理解する。これもやはり、結果として得られる数が被演算子となる数を表す形式の選び方に依存しない場合にのみ矛盾なく定義可能となるが、これはその特別の場合である テンプレート:Math および x+0=x+{}:={XL+0XR+0}={XLXR}=x,0+y={}+y:={0+YL0+YR}={YLYR}=y が成り立つことから帰納的に示せる(後ろ二つの式それ自体も帰納的に証明されるものであることに注意する)。

乗法

超現実数の乗法の定義式には、被演算子と左集合および右集合に対する算術が含まれる(例えば テンプレート:Math のような式が テンプレート:Mvar の積の左集合に現れる)。これは、式に現れる各集合から数を任意に選び、それら数に対する演算(各々の計算の時点では、各集合から選ばれる数はただひとつであり、もとの式の集合が書かれている場所にそのとき選んだ数を代用して得られる式を評価する)を施して得られる超現実数全体からなる集合とする。ただしこれが矛盾の無い定義であるというために、

  • (a): テンプレート:Mvar の左右の集合から取った超現実「数」の対を掛け合わせて超現実数を得たりそれを反数にしたりするとき;
  • (b): テンプレート:Mvar と、それらの左右の集合から取った超現実「数」とを掛け合わせて超現実数を得るとき;
  • (c): 定義式で決まる形式から数を得るとき

の各々において形式の選び方に依存する可能性が無いか確かめなければならない。これもやはりその特別の場合、今度は テンプレート:Math, 乗法単位元 テンプレート:Math およびその反数 テンプレート:Math の存在は確定するから xy={XLXR}{YLYR}:={XLy+xYLXLYL,XRy+xYRXRYRXLy+xYRXLYR,xYL+XRyXRYL} で帰納的に乗法が矛盾なく定義されることは(やはり帰納的に)確認できる。

除法

除法は、逆数(乗法逆元)をとり、それを掛ける操作 テンプレート:Math に分けてしまえば、正の テンプレート:Mvar に対する反転を 1y:={0,1+(yRy)(1y)LyR,1+(yLy)(1y)RyL|1+(yLy)(1y)LyL,1+(yRy)(1y)RyR} と帰納的に定義することに帰着されるテンプレート:Sfnテンプレート:Rp。この式において、上付きの テンプレート:Mvar は左集合 テンプレート:Mvar において正の値のみ残して、非正の値は捨てたものであることを意味するものとする(テンプレート:Mvar は(右集合 テンプレート:Mvar の各項は常に正だからそのままでもよいが)左集合の記法と合わせて上付きになっているだけである)。

さてこの定義式は、テンプレート:Mvar の左集合および右集合から取った数で割り算するという意味で再帰的であるばかりでなく、テンプレート:Math それ自身の左集合および右集合の元をとらないといけないという意味でも再帰的になっていることに注意する。

テンプレート:Mathテンプレート:Math の左集合に常に入っているから、それを使って(左集合や右集合に入る)ほかの項を再帰的に順番に求めていくことは可能である。例えば テンプレート:Math の場合を考えるテンプレート:Efnならば、テンプレート:Math の左の項に テンプレート:Math があることは、定義式の右項にある テンプレート:Mathテンプレート:Math から テンプレート:Math, テンプレート:Mvar から テンプレート:Math を取ってきて代入した テンプレート:Mathテンプレート:Math の右集合に入ることを意味する。この テンプレート:Math の存在を利用して今度は、定義式の左項の テンプレート:Math を見れば、テンプレート:Mathテンプレート:Math の左集合に入ることが分かる。これをさらに利用すれば、テンプレート:Math は右集合の項であるとわかり、というように以下これを続ければ、13={0,14,516,12,38,} を得る。

負の テンプレート:Mvar に対する テンプレート:Math は、テンプレート:Math で与えられる。テンプレート:Math ならば テンプレート:Math は定義されない (undefined)。

これら算術の一貫性

さてこれらの四則は以下に述べる意味で「うまく行っている」(consistent):

  • 加法および符号反転は、それぞれの帰納法において「より単純な」帰納ステップの加法および符号反転から再帰的に定義されているから、誕生日が テンプレート:Mvar である数に対する演算は、結局は誕生日が テンプレート:Mvar より小さい数に対する同じ演算によって全く言い表される。
  • 乗法は、加法・符号反転と「より単純な」乗法のステップから再帰的に定義されているから、誕生日が テンプレート:Mvar である数に対する演算は結局誕生日が テンプレート:Mvar より小さな数から成す積の和や差として全く書き表されている。
  • 被演算子が矛盾なく定義された超現実数形式(左集合の各元が右集合の各元より小さい)である限り、これら演算の結果はふたたび矛盾なく定義された数形式になる。
  • 形式に対するこれら演算を超現実数(形式の同値類)に「拡張」できる。すなわち、超現実数 テンプレート:Mvar を符号反転したり、超現実数の対 テンプレート:Mvar を足したり掛けたりした結果は、テンプレート:Mvarテンプレート:Mvar を表す形式の選び方とは無関係に、同じ超現実数を与える。
  • これら演算は、加法単位元 テンプレート:Math および乗法単位元 テンプレート:Math を伴って、の定義における可換律結合律反数律および分配律の各公理に従う。

これらの規則を用いれば、最初のほうのいくつかの世代に対して、それが完全にラベル付けできているかどうかの確認ができる。構成規則を繰り返せば、超現実数の更なる世代についても同様である。

算術で閉じていること

自然数(有限順序数)テンプレート:Mvar に対し、テンプレート:Mvar において生成されたすべての数がテンプレート:Ill2(すなわち、既約分数に書いたとき適当な整数 テンプレート:Mvar (テンプレート:Math) を用いて テンプレート:Math の形に書ける有理数)である。

有限な テンプレート:Mvar に対する適当な テンプレート:Mvar において生成される超現実数全体の成す集合を S*:=nSn と書くことにする。三種類の異なる形、S0:={0}, S+:={xS*:x>0}, S:={xS*:x<0} に分類すれば、テンプレート:Mvar はこれらの合併である。個々の テンプレート:Mvar は(テンプレート:Math 以外は)加法および乗法について閉じていないが、テンプレート:Mvar は閉じている(これは二進分数全体の成す有理数体の部分環である)。

適当な無限順序数 テンプレート:Mvar が存在して、誕生日が テンプレート:Mvar より小さい超現実数全体の成す集合が別の算術演算で閉じているようにすることができるテンプレート:Sfn。任意の順序数 テンプレート:Mvar に対し、誕生日が テンプレート:Mathω の冪節を参照)より小さい超現実数全体の成す集合は加法のもとで閉じていて、を成す。テンプレート:Mvar より小さい誕生日に対しては、乗法のついても閉じており、を成すテンプレート:Efn。また誕生日が(順序)イプシロン数 テンプレート:Mvar より小さいとすれば乗法逆元をとる操作でも閉じていて、を成す。この最後の集合は Kruskal および Gonshor によって定義された指数函数のもとでも閉じているテンプレート:Sfnテンプレート:Sfnテンプレート:Rp

しかし、与えられた集合の任意の元より大きな超現実数を構成することは(構成子の左集合にその集合を含めることにより)常に可能であり、したがって超現実数全てからなる集まりは真のクラスとなる。このクラスは(それが集合でないという但し書きの上で)その大小比較を定める順序関係とこれら算術の四則に関して順序体を成す。実はこれは、最も大きな順序体という非常に特別なものになっている(ほかの任意の順序体は、超現実数体に演算と順序まで込めて埋め込める)。超現実数全体の成すクラスは テンプレート:Mathbf で表される。

無限大

前掲テンプレート:Mvar の任意の部分集合から構成規則によって生成される超現実数全体の成す集合を テンプレート:Mvar とする(順序数 テンプレート:Mvar は任意の自然数より大きい最小の順序数であるから、帰納ステップは前と同じ形に書けるが、そこに現れる合併集合は有限集合の無限合併が許されることになるので、そのような合併操作が展開できる集合論をとらなければならないことに注意する)。テンプレート:Mvar は無限に大きい超現実数 ω:={S*}={1,2,3,4,} をただ一つだけ含む。また、テンプレート:Mvar は(二進とは限らない任意の)有理数に同一視することのできる対象を含んでいる。例えば、分数 テンプレート:Mathテンプレート:Mvar-完全 (テンプレート:Mvar-complete) な形式は 13={yS*[3y<1]yS*[3y>1]} で与えられる。テンプレート:Math の代表元をこの形式とし、テンプレート:Math を表す任意の形式との積をとった形式は、その左集合に テンプレート:Math より小さい数のみ属し、その右集合に テンプレート:Math より大きい数のみが属するから、誕生日性質によりこの積は テンプレート:Math を表す形式であることが従う。それ以外のすべての有理数が テンプレート:Mvar において生じるが、それだけではなく有理数でない任意の有限実数もまた同様に生じる。例えば π={3,258,20164,4,72,134,5116,} である。

テンプレート:Mvar に属する無限大超現実数は テンプレート:Mvar および テンプレート:Math だけだが、テンプレート:Mvar には任意の実数の間にもほかの種類の非実数が存在している。テンプレート:Mvar における最小の正の数は ε:={SS0S+}={01,12,14,18,}={0yS*[y>0]} によって考えることができる。これは テンプレート:Math より大きいが、任意の正の二進分数よりも小さいことを意味する数であるから、これは無限小超現実数である(無限小はよく テンプレート:Mvar と書かれる)。テンプレート:Mvar (resp. テンプレート:Math) の テンプレート:Mvar-完全形式は、テンプレート:Math を表す テンプレート:Mvar-完全形式の左集合 (resp. 右集合) に テンプレート:Math を含めることで得られる。テンプレート:Mvar に属する「純」無限小は テンプレート:Mvar およびその反数である テンプレート:Math だけである。それらと任意の二進分数 テンプレート:Mvar を加えて得られる超現実数 テンプレート:Math もまた テンプレート:Mvar に入る。

この テンプレート:Mvarテンプレート:Mvar の間の関係を、それらを表す特定の形式を掛け合わせた ωε={εS+ωS++S*+εS*} から決定できる。ただし、この式は テンプレート:Mvar までの超限帰納法が意味を為す集合論でないときちんと定義できないことに注意すべきであるが、そのような系の中では、テンプレート:Mvar の左集合の元の全体が正の無限小であること、および右集合の元の全体が正の無限大であることが示され、したがって テンプレート:Mvar は最も古い(つまり、最も誕生日の小さい)正の有限数、すなわち テンプレート:Math に等しい。ゆえに 1ε=ω が帰結される。文献によっては、本項では テンプレート:Mvar と書いたものを表す記号として、体系的に テンプレート:Math を使っているものもある。

テンプレート:Mvar の元 テンプレート:Math が任意に与えられたならば、以下の状況のうち何れかただ一つだけが成り立つ:

代数学的には、テンプレート:Mvar は四則演算で閉じていないから、体ではない。例えば テンプレート:Math を形式 テンプレート:Math で表せば、これは テンプレート:Mvar に属するどのような超現実数とも一致しない。テンプレート:Mvar の中で、四則演算(の有限回の繰り返し)で閉じているような極大部分集合は実数全体の成す体 テンプレート:Mathbf であり、これには無限大超現実数 テンプレート:Math も無限小超現実数 テンプレート:Math も各非零二進分数 テンプレート:Mvar の無限小近傍 テンプレート:Math も含まれることはない。

このように実数全体を構成する方法が、標準解析学におけるデデキント切断を用いた構成法と異なるのは、一般の有理数からの構成ではなく二進分数から始めることであり、また テンプレート:Mvar において各二進分数との自然な同一視は前世代における形式を用いて記述できることである(テンプレート:Mvar の実数元を表す テンプレート:Mvar-完全形式と、デデキント切断で得られる実数との間に一対一対応が存在する。その対応のもと、デデキント実数はその切断点を左集合および右集合から取り除いた形式によって表される有理数に対応する)。超現実数の構成法では、有理数の全体 テンプレート:Mathbf を同定することのできる帰納段階ははなく、テンプレート:Mathbf とは単に テンプレート:Mvar の部分集合として、テンプレート:Mvar の適当な元 テンプレート:Mvar と同じく非零元 テンプレート:Mvar を取って テンプレート:Math とできる元 テンプレート:Mvar 全体の成す集合という意味にしかならない。テンプレート:Mathbf が超現実数の算術演算の繰り返しの各々で閉じていることを示すことにより、それが体を成していることが示せる。また テンプレート:Mathbf の各元が テンプレート:Mvar から(テンプレート:Underline四則演算)の有限回(実際には二回以上は必要ない)の繰り返しで到達できることを示すことにより、テンプレート:Mvar の部分集合として、テンプレート:Mathbf が実数全体 テンプレート:Mathbf より真に小さいことがわかる。

集合 テンプレート:Mvar は実数全体 テンプレート:Mathbf と同じ濃度を持つ。このことは、テンプレート:Mvar から テンプレート:Mathbf単位閉区間 テンプレート:Mvar への全射およびその逆向きの全射を実際に示すことで証明できる。テンプレート:Mvar から テンプレート:Mvar の上への写像は大したことは必要なく、テンプレート:Math を含めた テンプレート:Mvar 以下の数を テンプレート:Math に写し、テンプレート:Math 以上の数は テンプレート:Math に写し、テンプレート:Mvarテンプレート:Math の間の数は テンプレート:Mvar における同値の数に写す(二進分数 テンプレート:Mvar の無限小近傍は テンプレート:Mvar 自身がそうであるのと同じく テンプレート:Mvar へ写す)ことで与えられる。テンプレート:Mvar から テンプレート:Mvar の上への写像は、テンプレート:Mvar の真ん中三分の一の開区間 テンプレート:Open-openテンプレート:Math へ写し、右三分の一区間のさらに真ん中三分の一開区間 テンプレート:Open-openテンプレート:Math に写し、以下同様に繰り返すと、これは テンプレート:Mvar の空でない開区間を テンプレート:Mvar の各元へ単調に写す。テンプレート:Mvar の残りの部分はカントール集合 テンプレート:Math で、その各点は中心三分の一区間を左集合 テンプレート:Mvar および右集合 テンプレート:Mvar に分割することによって一意に同定でき、それがちょうど テンプレート:Mvar における形式 テンプレート:Math に対応する。これによってカントール集合は、誕生日が テンプレート:Mvar となる超現実数全体の成す集合に一対一対応するものと位置づけられる。

超限帰納法

テンプレート:Mvar を超えて超限帰納法を適用することを続ければ、より大きな順序数 テンプレート:Mvarテンプレート:Mvar を誕生日とする最大の超現実数を表すものとして取り出せる(これは本質的に、超限帰納法から得られる順序数の定義である)。そのような順序数の最初のものは テンプレート:Math である。第 (テンプレート:Math)-世代における正の無限大超現実数は他にも テンプレート:Math がある。この テンプレート:Math が順序数でないことを見るのは重要である—順序数 テンプレート:Mvar はどのような順序数の後継にもならない。これは誕生日 テンプレート:Math の超現実数であって、これを テンプレート:Math とラベル付けるのはそれが テンプレート:Mathテンプレート:Math との和に一致することに基づく。同様に、第 (テンプレート:Math)-世代に属する二つの無限小超現実数 テンプレート:Math および テンプレート:Math が新たに生じる。

超限帰納法も後のほうの段階では、任意の自然数 テンプレート:Mvar に対する テンプレート:Mvar よりも大きな超現実数 テンプレート:Math が存在する。この数に テンプレート:Mvar と付けることの正当性は、その誕生日が テンプレート:Mvar(つまり、テンプレート:Mvar から後継をとる操作によって到達できない最小の順序数)であることと、超現実数としての テンプレート:Mvarテンプレート:Mvar の超現実数の和に一致することの両方の理由からくる。これをまた テンプレート:Math と書くことも、それが超現実数 テンプレート:Mathテンプレート:Math との超現実数の積に一致することで正当化できる。これは二番目の極限順序数になる(テンプレート:Mvar から構成ステップを通じてこれに到達するには k<ωSω+k 上の超限帰納法が必要になる)。これには無限集合の無限合併が、ここまでに用いてきた超限帰納法で必要とされた集合演算「よりも強い」演算として、含まれることになる。

順序数の演算はそれらを超現実数として表したときの超現実数としての演算とは必ずしも一致しないことに注意すべきである。順序数の和としての テンプレート:Mathテンプレート:Mvar に等しいが、超現実数の和は可換であり テンプレート:Math が成り立つ。順序数の付随する超現実数の加法および乗法は、順序数の演算としてはテンプレート:Ill2に一致する。

テンプレート:Math が任意の自然数 テンプレート:Mvar に対する テンプレート:Mvar よりも大きいことと同じく、超現実数 テンプレート:Math は無限大超現実数だが、任意の自然数 テンプレート:Mvar に対する テンプレート:Mvar より小さい。つまり、テンプレート:Mathテンプレート:Math によっても定義できる。ただし、右辺の記法 テンプレート:Mvarテンプレート:Mvar は数で、テンプレート:Mvar は集合)は テンプレート:Math の意味で用いた。これは テンプレート:Mvarテンプレート:Math を表す形式 テンプレート:Math との積と同一視できる。テンプレート:Math の誕生日は極限順序数 テンプレート:Math である。

ω の冪

超現実数の無限大および無限小の「度合」(order) の分類(アルキメデス類とも呼ばれる)のために、コンウェイは各 テンプレート:Mvar に対して超現実数 ωx:={0,rωxLsωxR} を対応させた。ただし、テンプレート:Mvar は何れも正の実数すべてに亙るものとする。テンプレート:Math ならば テンプレート:Mvar は(どのような テンプレート:Mvar に対する テンプレート:Mvar よりも大きいという意味で)テンプレート:Mvar よりも「無限に大きい」。この「テンプレート:Mvar の冪」は以下の指数法則

を満足するから、これは冪として期待される性質のもとで振る舞っていると言ってよい。

テンプレート:Mvar の個々の冪は、そのアルキメデス類における「もっとも単純な」超現実数となるべきものとしての補完性質も持つ。逆に、各アルキメデス類は超現実数の中にもっとも単純な数を一意に含む。すなわち、任意の正超現実数 テンプレート:Mvar に対し、常に適当な正実数 テンプレート:Mvar と超現実数 テンプレート:Mvar が存在して、テンプレート:Mathテンプレート:Mvar よりも「無限に小さい」ようにすることができる。このときの冪指数 テンプレート:Mvar は「テンプレート:Mvarテンプレート:Mvar を底とする対数 テンプレート:Math」であり、この対数函数は正の超現実数全体で定義される。テンプレート:Math が正の超現実数の全体を超現実数全体の上へ写すこと、および対数法則 テンプレート:Math の成立などを確かめることができる。

これを超限帰納法によって拡張することにより、任意の超現実数に対し(順序数に対するテンプレート:Ill2の類似対応物となる)「テンプレート:Vanc」を持つことがわかる。すなわち、任意の超現実数は x=:r0ωy0+r1ωy1+ なる形に一意的に書くことができる。ここに、各 テンプレート:Mvar は非零実数で テンプレート:Mvar は超現実数の狭義単調減少列である。しかし、この右辺の「和」は無限個の項(その長さは一般には任意の順序数となる)を持ち得る(もちろん テンプレート:Math はこの係数列が空集合となる場合に相当し、最高次の冪を持たない唯一の超現実数である)。

さてこのような標準形に書いてしまえば、超現実数の全体はある種の冪級数体と見ることができる(通常の形式冪級数では冪の無限減少列は適当な順序数で長さが抑えられなければならず、順序数全体の成すクラスと同じ長さになることが許されない、という点には目をつぶることになるが)。これは超現実数をハーン級数として定式化するための基礎となる。

間隙と連続性

実数全体の成す集合の場合と対照的に、超現実数からなる(真)部分集合は(それが極大元あるいは極小元を持つのでない限り)上限あるいは下限を持たない。テンプレート:Harvtxt は間隙 (gap) を テンプレート:Math で定義する(この場合、テンプレート:Mvar のどちらかは真のクラスにならないといけないから、これは超現実数を定めるものではないことに注意する)。この間隙はデデキントの切断に似ていて、とはいえ全く同じものと考えるわけにはいかないテンプレート:Efnのだけれども、それでもなお超現実数体の自然な順序に関する完備化 テンプレート:Math について考えることができ、これは(真クラスサイズを持つ)線型連続体になる[3]

実例として、最小の無限大超現実数は存在しないが、間隙 テンプレート:Math は任意の実数より大きく、任意の正の無限大超現実数より小さい。だからこれは、実数全体の成す集合の テンプレート:Math における上限である。同様に、間隙 テンプレート:Math は任意の超現実数よりも大きい(テンプレート:Mathbf は順序数全体の成すクラスの名前でもあるが、テンプレート:Mathbfテンプレート:Mathbf においてテンプレート:Ill2であるから、テンプレート:Math もそうで、これは順序数 テンプレート:Mvarテンプレート:Mvar より小さい順序数全体の成す集合と同値であるという事実を拡張するものである)。

ちょっとした集合論的注意[3]テンプレート:Efnを加えて、テンプレート:Mathbf にはその開集合全体の(真の集合で添字付けられた)合併が開区間となるような位相をいれることができ、その位相に関する連続函数を定義することができる。コーシー列の同値性も(コーシー列が順序数全体の成すクラスによって添字付けられる必要があるけれども)定義できる。これらコーシー列は常に収束するけれども、その極限は超現実数かもしれないし テンプレート:Math(ただし テンプレート:Mvar は単調減少で テンプレート:Mathbf において下限を持たない)で表される間隙となるかもしれない(そのような間隙はコーシー列自身として理解することができるが、上で見た テンプレート:Mathテンプレート:Mathbf のようなコーシー列の極限とは別の種類の間隙も存在する)。

指数函数

Kruskal の未出版の研究に基づき、(超限帰納法による)構成で、(e を底とする)実変数の指数函数 テンプレート:Math の超現実数を引数とする拡張が テンプレート:Harvtxtテンプレート:Rp によって与えられた。

個別の冪

上で述べた[[#ω の冪|テンプレート:Mvar の冪]]もある種の指数函数と思えるが、実数体上定義された指数函数の延長として望ましい性質を持つものではない。しかしこれも テンプレート:Mvar を底とする指数函数を作るうえで必要であり、以下 テンプレート:Mvar と書いたときには、この指数函数を意味するものとする。

テンプレート:Mvar が二進分数であるとき、テンプレート:Math を変数とする冪函数 テンプレート:Math は、それぞれが帰納的に定義できる乗法・乗法逆元・平方根を使って、それらの合成によって得られる。この函数の値は、基本関係式 テンプレート:Math から完全に決定され、ただしそれは存在できるほかの任意の冪と必然的に一致するように定められる。

基本帰納法

超現実数変数の指数函数を定めるための帰納ステップは、実指数函数の場合の級数展開 テンプレート:Math に基づく。より具体的には、展開を途中で切った部分和が(基本的な代数学的操作のみで)残りの項の和よりも小さい正の値となることが示せる事実を利用する。正の テンプレート:Mvar については テンプレート:Math と書いて全ての部分和を含める。テンプレート:Mvar が負の有限値のときは テンプレート:Math が初期値を実数成分が正の級数(常に存在する)としたときの奇数番目の部分和を表すものとする。負の無限大 テンプレート:Mvar については、奇数番目の部分和だけ見れば狭義単調減少で テンプレート:Math は空集合となるが、これはこの帰納法においてこれらの元が必要ないということに対応するので問題ない。

利用する関係式は、テンプレート:Math なる実数に対して テンプレート:Math および テンプレート:Math が成り立つこと、またこれは exp(z):={0,exp(zL)[zzL]n,exp(zR)[zzR]2n+1exp(zR)/[zRz]n,exp(zL)/[zLz]2n+1} なる定義のもとで超現実数を引数とするものへ延長することができる。これは任意の超現実数引数に対して矛盾なく定義される(つまり、この右辺の値は超現実数として存在して、その値は テンプレート:Mvar の選び方に依らない)。

得られた指数函数の性質

この定義を用いて以下の性質が満足されることが示せるテンプレート:Efn:

超現実数の指数函数は、本質的には テンプレート:Mvar の正冪上での振る舞い(すなわち、上で見た函数 テンプレート:Math)が分かれば(有限値に対してはよく知られた指数函数であるから、その振る舞いと合わせて)決定される。前者の例のみ以下に与えるが、加えてその変域の大部分において テンプレート:Math が満足される(例えば、実数成分が正と任意の有限数の場合や、適当な回数反復した テンプレート:Mvar の冪の塔 テンプレート:Mvar の場合はそうである)。

一般の冪

一般の冪は テンプレート:Math として定義することができ、テンプレート:Math のような式の解釈が与えられる。この場合でもやはり(特に テンプレート:Mvar を底とするときには)この定義と「ω の冪」として与えられるものとは絶対に区別をつけるべきものである。

超現複素数

超現複素数 (surcomplex number) は、二つの超現実数 テンプレート:Mvar に対して テンプレート:Mathテンプレート:Mvar虚数単位)の形をした数を言う[4]テンプレート:Sfn。超現実数の全体は(それが真のクラスとなることを除いて)代数閉体を成す。それは有理数体にテンプレート:Ill2超越元の成す適当な真クラスを添加して生成される体の代数閉包に同型である。この事実は、任意に固定した集合論の中で、体の同型を除いて超現複素数を特徴付けるものであるテンプレート:Sfnテンプレート:Rp

ゲーム

テンプレート:Main article 超現実数の定義には一つの制約条件「テンプレート:Mvar の各元は テンプレート:Mvar の各元よりも真に小さい」があった。この制限を落とせばより一般のクラスとしてゲーム (game) を生成することができる。任意のゲームは以下の規則に従って構成される:

テンプレート:Vanc
テンプレート:Mvar がともにゲームから成す集合であるとき、テンプレート:Math はゲームである。.

加法、減法および大小比較は、すべて超現実数とゲームの両方に共通の仕方で定義される。

任意の超現実数はゲームとなるが、任意のゲームは超現実数であるとは限らない(例えばゲーム テンプレート:Ill2 は超現実数ではない)。ゲーム全体の成すクラスは超現実数全体よりも一般であり、より簡素な定義を持つ代わりに、超現実数の持つよい性質のいくつかは抜け落ちてしまう。例えば、超現実数全体の成すクラスはを成すが、ゲーム全体の成すクラスはそうでない。あるいは超現実数の全体は全順序(任意の二つの超現実数は、等しいかさもなくば一方が他方より大きい)を持つが、ゲームの全体には半順序(ゲームの対で相等しくも何れか一方が他方よりも大きいということもないものが存在する)しか入らない。各超現実数は正または負さもなくば零の何れかになるが、各ゲームは正・負・テンプレート:Ill2のほかにテンプレート:Ill2テンプレート:Math のように零と比較不能なもの)が生じる。

ゲームにおける一手 (move) はその手番においてプレイヤーが テンプレート:Mvar(先手; left player の場合)または テンプレート:Mvar(後手; right player の場合)から利用できるゲームを選び、その選んだゲームを相手プレイヤーに渡すという形で作用する。選択できるものが空となり手を打てないプレイヤーは負け (lost) である。正のゲームは先手の勝利を、負のゲームは後手の勝利をそれぞれ表し、零ゲームは後手の手番をファジーゲームは先手の手番を意味する。

テンプレート:Mvar が超現実数であるとき、テンプレート:Math ならば必ず テンプレート:Math が成り立つが、テンプレート:Mvar がゲームのときには テンプレート:Math でも必ずしも テンプレート:Math であるとは言えない。ここでの等号 "テンプレート:Math" は「値が等しい」(equality) という意味であって、「同一」(identity) という意味ではないことに注意。

組合せゲーム理論への応用

超現実数はそもそも囲碁の研究に動機づけられたもの[2]であり、定番ゲームと超現実数の間には様々な関連性がある。この節では便宜のために、数学的対象 テンプレート:Math のことはゲーム (Game)、チェス囲碁のような遊興のことは遊技 (game) と呼び分けることにする。

ここで考えたい遊技は以下のような性質を持つものである:

  • プレイヤー(試技者)は二人(便宜上 LeftRight とする)
  • 決定論的(ゲームの各手番はランダム要素なしにプレイヤーのメイクする選択で完全に決まる)
  • (プレイヤーの隠し札や隠しマスのような)秘匿された情報はない
  • プレイヤーには交互に手番 (turn) が回ってくる(遊技によって、一回の手番に複数手 (move) を許すものも許さないものもある)
  • 遊技の各取組(一番)は有限回の手数で終了しなければならない
  • プレイヤーに正規の指し手が何も残されていない状態になったら即座に取組は終了しそのプレイヤーの負けとなる

大抵の遊技にとって、初期盤面配置はどちらかのプレイヤーに大きな有利となることはないが、試技の進行の過程で一方のプレイヤーが勝利に近づくにつれて、盤面はそのプレイヤーに明らかに有利となっていく。遊技の分析のためには、ゲームを任意の盤面に結び付けるのが有効である。与えられた盤面の値がゲーム テンプレート:Math であるとは、テンプレート:Mvar は Left の単一手で達成可能な盤面の値全体の成す集合、テンプレート:Mvar は Right の単一手で達成可能な盤面の値全体のなす集合となるように与えるものとする。

零ゲーム テンプレート:Mathテンプレート:Mvar がともに空集合となるゲームであるから、次の手を打つプレイヤーが即座に負けである。二つのゲーム テンプレート:Math の和は、テンプレート:Math というゲームとして定義され、これは各プレイヤーが手番ごとに試技 (play) を行うゲームを選べることに対応するが、正規の手が打てなくなったプレイヤーが負けとなることは変わらない。例えば、二人のプレイヤーがチェス盤を二面使って指す場面を想像しよう、プレイヤーは交互に手を指すけれども、各手番においてどちらの盤面で指すかは完全にプレイヤーの自由にゆだねられる(どちらを選んでも選んだ方に一手を打てるだけで、選ばなかった盤面には何も干渉できない)というのがゲームの和の解釈である。ゲーム テンプレート:Math に対して、テンプレート:Math とは テンプレート:Math なるゲームのことで、これは二人のプレイヤーがその役割を入れ替えたものになっている。任意のゲーム テンプレート:Mvar に対して テンプレート:Math となることは容易にわかる(ここで、ゲームの差 テンプレート:Mvarテンプレート:Math で定義する)。

このようにゲームを実際の遊技に結び付ける単純な方法でも、非常に興味深い結果が得られる。二人の完璧なプレイヤーがひとつの遊技を与えられた盤面から始めるとき、その初期盤面に付随するゲームが テンプレート:Mvar であるとすると、任意のゲームを以下の四種に分類できる:

より一般に、テンプレート:Mvar とは テンプレート:Mvar となることと定義する、テンプレート:Math についても同様。ここに、記法 テンプレート:Math とは テンプレート:Mvarテンプレート:Mvar が比較不能という意味で、テンプレート:Mvar の何れも不成立ということと等価である。比較不能な遊技は、加えられた手によってどちらのプレイヤーが優勢となるかが変わるため、互いに混迷している (confused) ということもある。零ゲームと混迷しているゲームはテンプレート:Ill2と言い、正・負・零とは対立する。ファジーゲームの例には、テンプレート:Ill2 が挙げられる。

遊技の終盤近くはときどき、相互に干渉しない複数の小さな遊技に分解する(その中の一つにしかプレイヤーの打てる手がないという場合を除いて)。例えば、囲碁において、盤面は徐々に碁石で埋まっていき、プレイヤーが手を指せる空所はいくつかの小さな島に分けられていくだろう。各島は、それ自体が区分けされた小さな盤面上の一つの囲碁のように見える。これらの小さな遊技のそれぞれを分析することができたなら、そのような分解は有効であって、そしてそれらの分析結果を繋ぎ合わせて遊技全体に対する分析を得る。しかし、そうやって分析することができると安易には言えないようにも思われる。例えば、先手必勝の二つの小さな遊技があったとして、しかしそれらを組み合わせて一つの大きな遊技としたとき、それが先手必勝の遊技であるかはもはや分からない。幸運にも、これを分析する方法がある。それには次の注目すべき定理を用いる:

定理
一つの大きな遊技をふたつのより小さな遊技に分解するとき、その小さな遊技に付随するゲームを テンプレート:Mvar および テンプレート:Mvar とすれば、もとの大きな遊技に付随するゲームは テンプレート:Mvar である。

小さな遊技の組み合わせとなる遊技は、それら小さい遊技のテンプレート:Ill2と呼ばれ、定理はここで定義したゲームの加法が、それら遊技の選言和をとることに等価であることを述べている。

歴史的なことを言えば、コンウェイは本項とは逆順に超現実数の理論を発展させたのであった。コンウェイは、囲碁の寄せを分析し、相互干渉しない小遊技の分析を繋ぎ合わせてそれらの選言和の分析とする何らかの方法があれば有用であるという実感を得ていた。そうしたことからコンウェイはゲームの概念とそれらに対する加法演算を発明した。そこからさらに符号反転および大小比較の定義へと開発は動いて行き、ゲームからなるある種のクラスが興味深い性質を持つことをコンウェイは指摘している。それが超現実数全体の成すクラスである。最終的に乗法演算を開発するに至って、超現実数の全体が実際にひとつの体を成すことおよびそれが実数の全体と順序数の全体をともに含む体系となることが証明された。

別の実現法について

surreal number という名称は テンプレート:Harvtxt が初めて用いたものだが、それ以前あるいは以後にもいくつか異なる構成法が生み出されている。

符号展開

定義

今日では超現実数の「符号展開」(sign-expansion) や「符号列」(sign-sequence) と呼ばれているやり方において、超現実数は定義域が適当な順序数で終域が テンプレート:Math であるような函数を言うテンプレート:Sfnテンプレート:Rp。これはコンウェイのLR列と同値であるテンプレート:Sfn

この意味の超現実数の上で定義された二項述語「より単純」("simpler than") は、テンプレート:Mvarテンプレート:Mvar より単純であるというのを、テンプレート:Mvarテンプレート:Mvar真部分集合となること、すなわち テンプレート:Math かつ テンプレート:Math となることと定められる。

超現実数に対して、二項関係 テンプレート:Math辞書式順序として(ただし、「定義されない値」("undefined value") は テンプレート:Math より大きく テンプレート:Math より小さいものと約束する)。すると テンプレート:Math となるのは以下の何れかひとつが満足されるときである:

あるいは同じことだが、テンプレート:Math と置けば、テンプレート:Math となるための必要十分条件は、テンプレート:Math となるから、超現実数 テンプレート:Mvar に対し、テンプレート:Math となるための必要十分条件は以下の何れか一つが満足されることである:

超現実数 テンプレート:Mvar に対し、テンプレート:Math とは テンプレート:Math となることと定める。また テンプレート:Mathテンプレート:Math であること、および テンプレート:Mathテンプレート:Math が成り立つことを意味するものとする。

この関係 テンプレート:Math推移的であり、任意の超現実数 テンプレート:Mvar に対して テンプレート:Math のうちただ一つのみが成り立つ(テンプレート:Ill2)。これは テンプレート:Math が(真のクラスを成すことを除いて)全順序であることを意味する。

超現実数の集合 テンプレート:Mvarテンプレート:Math を満たすとき、超現実数 テンプレート:Mvar が一意に存在して

とできる。さらに言えば、テンプレート:Mvarテンプレート:Mvar から超限帰納法によって構成可能である。テンプレート:Mvarテンプレート:Mvarテンプレート:Mvar の間にあるもっとも単純な超現実数となる。この唯一の数 テンプレート:Mvarテンプレート:Math で表す。

超現実数 テンプレート:Mvar に対し、その左集合 テンプレート:Math および右集合 テンプレート:Math

と定義すれば、テンプレート:Math が成り立つ。

このもう一つの実現法が優位である点は、等価性 (equality) が(帰納的に定義された関係ではなく)恒等関係 (identity) として書けることである。しかし、コンウェイによる超現実数の実現と異なり、この符号展開はあらかじめ順序数の全体が構成されている必要がある(コンウェイの実現では順序数も超現実数の特別の場合として一緒に構成されたのであった)。

それでも、順序数をあらかじめ構成する必要を除いた同様の構成法も作ることができる。実例として、定義域が超現実数の部分集合で推移律 テンプレート:Math を満たし、値域が テンプレート:Math であるような函数のクラスとして超現実数の全体を再帰的に定義する方法が挙げられる。この場合「より単純」という関係は非常に簡単に定義される—テンプレート:Mvarテンプレート:Mvar より簡単とは テンプレート:Math を満たすときに言う。全順序付けは テンプレート:Mvar を順序対の集合と見て(函数は通常の通り定義したものとして)定義される。テンプレート:Math であるか、さもなくば超現実数 テンプレート:Mathテンプレート:Mvar または テンプレート:Mvar の定義域に属す(あるいは両方に属すこともあるが、この場合符号は不一致でなければならない)から、テンプレート:Math となるのは テンプレート:Math または テンプレート:Math の何れかまたは両方が成り立つときである。これら函数を符号列に変換することは難しくない—テンプレート:Math の元をその単純さの順(つまり、包含関係の順)に並べて、テンプレート:Mvar に対して並べた元の順番に符号を書き下したものを割り当てればよい。そうすると、順序数の全体は値域が テンプレート:Math であるような超現実数として自然に生じる。

加法および乗法

二つの超現実数 テンプレート:Mvar に対しその和 テンプレート:Math は、テンプレート:Math および テンプレート:Math に関する帰納法により、テンプレート:Math で定義される。ただし

加法単位元は テンプレート:Math で与えられる(つまり、超現実数 テンプレート:Math は定義域が順序数の テンプレート:Math である唯一の函数である)。また、超現実数 テンプレート:Mvar の加法逆元は テンプレート:Math かつ テンプレート:Math に対して (x)(α):={1(x(α)=+1)+1(x(α)=1) で与えられる超現実数 テンプレート:Math である。

これにより、超現実数 テンプレート:Mvarであるための必要十分条件は、テンプレート:Math かつ テンプレート:Math となることであり、同様に テンプレート:Mvarであるための必要十分条件は テンプレート:Math かつ テンプレート:Math となることであるとわかる。

二つの超現実数 テンプレート:Mvar の積 テンプレート:Mvar は、テンプレート:Math および テンプレート:Math に関する帰納法により、テンプレート:Math で定義される。ただし

乗法単位元は テンプレート:Math で与えられる(つまり、超現実数 テンプレート:Math は定義域が順序数の テンプレート:Mathテンプレート:Math を満たす函数を言う)。

コンウェイの実現との対応

コンウェイの実現を符号展開へ写す写像は テンプレート:Math で与えられる。ただし、テンプレート:Math とする。

その逆写像として、符号展開による実現をコンウェイの実現へ写すには テンプレート:Mathテンプレート:Math と与えればよい。

公理的アプローチ

具体的な構成から完全に離れて、超現実数に対する別なアプローチが テンプレート:Harvtxt によって与えられた。これは構成法ではなく、超現実数を実現するどのような構成法もが満足する公理系の集合を与えるものである。テンプレート:Ill2と極めて同様に、この公理系は同型を除いて一意な存在を保証するものである。

三つ組 テンプレート:Math が超現実数系 (surreal number system) であるとは、以下の公理をすべて満足するときに言う:

これらに加えて、

コンウェイのオリジナルの構成も、符号展開による構成も、ともにこれら公理系を満足する。

与えられたこれら公理系から テンプレート:Harvtxt はコンウェイによるオリジナルの テンプレート:Math の定義を導き、超現実数の算術を展開した。

単純さの階層

超現実数を、単純さ (simplicity) を先祖 (ancestor) のラベルに持つ極大二分擬木 (pseudo-tree) およびその順序関係によって構成する方法は テンプレート:Harvs による。通常の木の定義と異なるのは、各頂点の先祖は整列集合を成すが、極大元(直前の先祖)は持たないかもしれないことである。すなわち、先祖集合の順序型は自然数だけではなく一般順序数となりうる。この構成もまたアリングの公理系を満足し、符号列表現に容易に引き写せる。

ハーン級数

テンプレート:Harvtxtテンプレート:Rp もまた超現実数体が実係数テンプレート:Ill2体(各級数の和の値は超現実数として解釈する)に順序体として同型となることを証明した(この級数表現は、上述した超現実数の標準形に対応するものである)。これにより、超現実数をより従来的な順序体論的アプローチに結び付けることができる。

この同型により超現実数が写された先の体は、コンウェイ標準形における最高次項の冪指数の加法逆元を付値とする付値体である(例えば テンプレート:Math)。したがって、この体の付値環は有限超現実数(実数または実数に無限小成分を加えたもの)すべてからなる。ここで付値として冪指数の符号を反転させるのは、コンウェイ標準形における冪指数が逆整列集合を成していることと、それに対しハーン級数が値群における(正順の)整列部分集合によって定式化されていることによるものである。

超実数との関係

テンプレート:Harvs はコンウェイの極大超現実数体とNBGにおける極大超実体との間に同型を構成した。

関連項目

テンプレート:Portal

テンプレート:脚注ヘルプ

注釈

テンプレート:Notelist

出典

テンプレート:Reflist

参考文献

関連文献

外部リンク

テンプレート:Infinity テンプレート:Number systems テンプレート:Infinitesimals

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