歪エルミート行列
歪エルミート行列(わいえるみーとぎょうれつ、テンプレート:Lang-en)あるいは反エルミート行列(はんえるみーとぎょうれつ、テンプレート:Lang-en)とは、自身のエルミート共役(=随伴)が自身に負号をつけたものに等しいような複素正方行列のことである。つまり、テンプレート:Mvar 次正方行列 テンプレート:Mvar に対し、そのエルミート共役を テンプレート:Mvar で表すとき、テンプレート:Mvar が歪エルミートならば、以下の条件を満たす。
行列 テンプレート:Mvar の成分をあらわに書けば、これは次のようにも表せる。
テンプレート:Mvar 次歪エルミート行列の集合はリー代数をなし、 と表される。
歪エルミート行列と似た定義を持つ行列として、エルミート行列がある。エルミート行列は自身と自身のエルミート共役が等しい。
歪エルミート行列はエルミート行列と同じく、正規行列の特別な場合であり、テンプレート:Math をユニタリ行列 テンプレート:Mvar と見なせば、以下の正規行列の定義を満たしている。
例
例として、次の行列は歪エルミート行列である。
性質
多くの点で歪エルミート行列はエルミート行列とちょうど反対の性質を持つ。
- 歪エルミート行列の成分を虚数単位 テンプレート:Mvar で除することによりエルミート行列にできる。すなわち歪エルミート行列 テンプレート:Mvar に対して
- を満たす テンプレート:Mvar はエルミート行列となる。実際、テンプレート:Math なので テンプレート:Mvar は歪エルミートである。同様に テンプレート:Math も歪エルミートである。従って、テンプレート:Math および テンプレート:Math はエルミートである。
- 歪エルミート行列 テンプレート:Mvar の対角成分はすべて純虚数である。
- 従って、そのトレースも純虚数である。
- 歪エルミート行列 テンプレート:Mvar の固有値 テンプレート:Mvar は テンプレート:Math または純虚数である。固有値方程式 テンプレート:Math を満たす行列 テンプレート:Mvar の固有ベクトル テンプレート:Mvar について、テンプレート:Math は以下の関係を満たす。
- 従って、テンプレート:Math の実部は テンプレート:Math でなければならない。またこのとき、歪エルミート行列の異なる固有値に対応する固有ベクトルは直交する。
- 歪エルミート行列の実数倍と、歪エルミート行列の和はまた歪エルミートである。つまり、実数 テンプレート:Mvar と歪エルミート行列 テンプレート:Mvar について次の関係が成り立つ。
- 歪エルミート行列は正規行列であり、歪エルミート行列 テンプレート:Mvar は、
- を満たす。実際、テンプレート:Math であり、テンプレート:Mvar と テンプレート:Mvar は可換である。
- 任意の正方行列 テンプレート:Mvar はエルミート行列 テンプレート:Mvar と歪エルミート行列 テンプレート:Mvar の和として一意に表せる。
- 行列 テンプレート:Math はエルミートであり、テンプレート:Math は歪エルミートであるので、これらを テンプレート:Math および テンプレート:Math と定義すれば上述の関係を得る。
- 歪エルミート行列の冪乗 テンプレート:Mvar は、指数 テンプレート:Mvar が奇数なら歪エルミート、偶数ならエルミートである。
- テンプレート:Mvar が歪エルミートならば行列指数関数 テンプレート:Math はユニタリ行列になる。
- 歪エルミート行列の固有値は テンプレート:Math か純虚数なので、テンプレート:Math の固有値の絶対値は テンプレート:Math になる。