平方完成
ファイル:Completing the square.ogv 平方完成(へいほうかんせい、テンプレート:Lang-en-short)とは、二次式(二次関数)を式変形して の形を作り、一次の項を見かけ上なくすことである。この式変形は全ての二次式に可能で、一意に決まる。
の を除けば、つまり と変換すれば
の形に帰着される。このことより、以下のことが導出できる:
- 二次方程式の解を求める(→二次方程式の解の公式)
- 二次関数のグラフの頂点の座標を求める
- 微分積分学で、冪指数に一次の項を含むガウス積分の計算
- ラプラス変換の計算
また、平方完成の考え方を応用して解く手法も見られる(#類似の手法)。
概観
二次式 において、一次の項「」があるのとないのでは、応用上の取り扱いが大きく異なる。
変数 が の形になる代わりに一次の項がなくなれば、 の違いだけで済むことができる。
ここでは、二次の係数(最高次係数)が テンプレート:Math の場合とそうでない場合に分けてみる。
- 二次の係数(最高次係数)が テンプレート:Math の場合
の一次の項「」をなくして を の形にする。
より、一次の係数を比較すると
これにより、テンプレート:Math の平方完成は次の式になる:
- 二次の係数(最高次係数)が テンプレート:Math でない場合
の一次の項「」をなくして を にする。
二次の係数が テンプレート:Math の場合で得られた等式
を利用する。
つまり、一次以上の項を二次の係数 テンプレート:Mvar で括ることにより、二次の係数が テンプレート:Math の場合を利用している。
二次形式の平方完成
1変数の二次式の平方完成を踏まえて、一般の テンプレート:Mvar 変数二次式に対しても、平方完成ができる。例えば二変数なら
である。これは二次形式
の形で書ける。
一般の テンプレート:Mvar 変数二次式は、テンプレート:Mvar を対称行列として
で書ける。
テンプレート:Mvar が対称でないときは テンプレート:Mvar と テンプレート:Mvar の式が
とやや一般になるが同じ式で書ける。
幾何学的解釈

を平方完成により解くことを考える。この過程を、面積図で表すと次のようになる。
テンプレート:Math は一辺が テンプレート:Mvar の正方形の面積、テンプレート:Mvar は縦横が テンプレート:Math2 の長方形の面積に等しい。面積 テンプレート:Mvar の長方形を2等分割して、長さ テンプレート:Mvar の辺で正方形と貼り合わせる。すると、正方形の角が欠けた形になる。
欠けている角に一辺が テンプレート:Math の正方形を補うと、全体が正方形になる。したがって、両辺に テンプレート:Math を加えると、平方 テンプレート:Math が完成する。 テンプレート:-
類似の手法
平方完成とは、テンプレート:Math の形の式に第三項 テンプレート:Math を加えて完全平方式を作る操作である。テンプレート:Math が先に与えられていても、中間項 テンプレート:Math または テンプレート:Math を加えることにより完全平方式を得ることができる。
相反式の平方完成
正の実数 テンプレート:Mvar に対して、自身とその逆数の和は
このように平方完成すると、正の数とその逆数の和は常に テンプレート:Math 以上であることが示される。
複二次式の因数分解
複二次式
を因数分解することを考える。この式は と見ることができるから、中間項 テンプレート:Math を考え、
と因数分解できる。
二次方程式の解
二次関数のグラフ
テンプレート:Multiple image 二次関数 の テンプレート:Mvar-座標平面におけるグラフは、平方完成することによりその様子がよく分かる。
関数式 を平方完成して
これのグラフは、放物線 を テンプレート:Mvar軸方向に 、テンプレート:Mvar軸方向に 平行移動したものであると分かる。特に、頂点(停留点)があり、その座標は
であることが分かる。軸の方程式は
である。
- テンプレート:Math の場合、テンプレート:Math で最小値 テンプレート:Mvar をとる。
- テンプレート:Math の場合、テンプレート:Math で最大値 テンプレート:Mvar をとる。
応用
積分
の被積分関数に平方完成を適用すれば、より基本的な積分
または
に帰着できる(は積分定数)。
複素数
テンプレート:Mvar を複素数とするとき、
- (テンプレート:Mvar は複素数、テンプレート:Mvar は実数)
- (テンプレート:Math2 はそれぞれ テンプレート:Math の複素共役)
は常に実数である。このことは、複素数に対する恒等式 テンプレート:Math を用いて、式を以下のように変形すると分かる:
別の例として、テンプレート:Math2 を実数とするとき、
は、テンプレート:Math のとき、複素数の絶対値の平方を用いて書くことができる。実際に、 と置けば
となる。
冪等行列
正方行列 テンプレート:Mvar が冪等とは テンプレート:Math が成り立つことである。
は、 ならば冪等行列である。平方完成により
テンプレート:Mvar が実行列なら、これは テンプレート:Mvar-平面において中心 テンプレート:Math、半径 テンプレート:Math の円の方程式である。角度 テンプレート:Mvar を用いて書けば、
と媒介変数表示できる。
参考文献
- Algebra 1, Glencoe, テンプレート:ISBN2, pp.539-544
- Algebra 2, Saxon, テンプレート:ISBN2, pp.214-214, 241-242, 256-257, 398-401