カラテオドリ計量
ナビゲーションに移動
検索に移動
数学の分野におけるカラテオドリ計量とは、複素バナッハ空間の開単位球上に定義される計量で、双曲幾何学におけるポアンカレ計量と類似の性質を多く持つ。ギリシャの数学者であるコンスタンティン・カラテオドリの名にちなむ。
定義
(X, ǁ ǁ) を複素バナッハ空間とし、B を X 内の単位開球とする。Δ を複素平面 C 内の開単位円板とすると、それは二次元実/一次元複素の双曲幾何のポアンカレ円板モデルと見なされる。Δ 上のポアンカレ計量 ρ を
で与える(したがって、曲率は −4 に固定される)。このとき、B 上のカラテオドリ計量 d は
と定義される。ここで、バナッハ空間上の関数が正則(holomorphic)であるということの意味については、記事テンプレート:仮リンクを参照されたい。
性質
- B 内の任意の点 x に対して
- が成り立つ。
- d は次の式でも与えられる(カラテオドリは、これはエルハルト・シュミットによって得られた結果であるとしている):
- B 内のすべての a および b に対して
- が成立する。また、この等号が成り立つための必要十分条件は、a = b であるか、あるいは ǁℓǁ = 1 と ℓ(a + b) = 0 および
- を満たすような有界線形汎関数 ℓ ∈ X∗ が存在することである。さらに、このような三条件を満たす ℓ はどのようなものであっても |ℓ(a − b)| = ǁa − bǁ を満たす。
- また、ǁaǁ = ǁbǁ および ǁa − bǁ = ǁaǁ + ǁbǁ が成立している場合にも、(1) における等号は成立する。これを成立させるための一つの方法として、b = −a とすることが考えられる。
- X 内の閉単位球の端点では無いような、X 内の単位ベクトル u が存在するならば、(1) において等号が成立するが b ≠ ±a であるような B 内の点 a と b が存在する。
接ベクトルのカラテオドリ長
球 B への接ベクトルに対するカラテオドリ長(Carathéodory length)という概念がある。x を B の点とし、v を x における B への接ベクトルとする。B はベクトル空間 X 内の開単位球であるため、接空間 TxB は自然な方法によって X と関連付けられ、v は X の元と見なされる。このとき、x における v のカラテオドリ長 α(x, v) は
と定義される。α(x, v) ≥ ǁvǁ であり、等号は x = 0 であるときに成り立つことが示される。