ゾンマーフェルト展開

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テンプレート:翻訳直後 ゾンマーフェルト展開(ゾンマーフェルトてんかい、テンプレート:Lang-en-short)は、アルノルト・ゾンマーフェルトにより開発された、物性物理学およびテンプレート:Ill2において頻出する特定の種類の積分を近似する手法である。これらの積分は物理的には、フェルミ・ディラック分布を用いた統計平均を表わしている。

逆温度 β が大きいとき、これらの積分は β について以下のように展開できる[1][2]

H(ε)eβ(εμ)+1dε=μH(ε)dε+π26(1β)2H(μ)+O(1βμ)4

ここで、H(μ)H(ε)導関数ε=μ における値を表わし、 O(xn)xnのオーダーの極限挙動を表わす。この展開は H(ε)ε において 0 に収束し、かつ ε において ε の多項式よりも早く発散しないときにのみ有効である。この積分が 0 から無限の場合、この展開の第一項の積分は 0 から無限となり、第二項の積分は不変である。

自由電子モデルへの応用

この種類の積分は、自由電子模型における固体のテンプレート:Ill2など、電子の物性を算出する際に頻出する。これらの計算において、上述の展開は物理量 H(ε) の期待値を表わす。このとき、 β逆温度μ化学ポテンシャルに相当する。したがって、ゾンマーフェルト展開は逆温度 β の高い(温度の低い)系に有効である。

温度について二次の項までの導出

温度について二次の項まで展開式を求めたい。ここで、 β1=τ=kBT を温度とボルツマン定数の積とする。まず、変数変換 τx=εμ により次を得る。

I=H(ε)eβ(εμ)+1dε=τH(μ+τx)ex+1dx,

積分範囲をわけて I=I1+I2 とし、 I1 xx を施すと次を得る。

I=τ0H(μ+τx)ex+1dxI1+τ0H(μ+τx)ex+1dxI2.
I1=τ0H(μ+τx)ex+1dx=τ0H(μτx)ex+1dx

次に、I1

1ex+1=11ex+1,

すると、次を得る。

I1=τ0H(μτx)dxτ0H(μτx)ex+1dx

変数変換 τdx=dε により I1 の第一項を元の変数に戻し、I=I1+I2 により次を得る。

I=μH(ε)dε+τ0H(μ+τx)H(μτx)ex+1dx

第二項の分子は、τ が十分に小さく H(ε) が十分に滑らかなとき一次導関数を用いて次のように近似することができる。

ΔH=H(μ+τx)H(μτx)2τxH(μ)+,

これを代入し、次を得る。

I=μH(ε)dε+2τ2H(μ)0xdxex+1

この定積分の値は次のように得られることが知られている[3]

0xdxex+1=π212.

したがって、最終的に次を得る。

母関数

フェルミ分布のモーメント母関数は以下のような形である。

dϵ2πeτϵ/2π{11+eβ(ϵμ)θ(ϵ)}=1τ{(τT2)sin(τT2)eτμ/2π1},0<τT/2π<1.

ここで、 kBT=β1 であり、ヘヴィサイドの階段関数 θ(ϵ) は発散的な絶対零度分布を引き去っている。これを τ のべき乗で展開した結果の一部を以下に示す[4]

dϵ2π{11+eβ(ϵμ)θ(ϵ)}=(μ2π),
dϵ2π(ϵ2π){11+eβ(ϵμ)θ(ϵ)}=12!(μ2π)2+T24!,
dϵ2π12!(ϵ2π)2{11+eβ(ϵμ)θ(ϵ)}=13!(μ2π)3+(μ2π)T24!,
dϵ2π13!(ϵ2π)3{11+eβ(ϵμ)θ(ϵ)}=14!(μ2π)4+12!(μ2π)2T24!+78T46!,
dϵ2π14!(ϵ2π)4{11+eβ(ϵμ)θ(ϵ)}=15!(μ2π)5+13!(μ2π)3T24!+(μ2π)78T46!,
dϵ2π15!(ϵ2π)5{11+eβ(ϵμ)θ(ϵ)}=16!(μ2π)6+14!(μ2π)4T24!+12!(μ2π)278T46!+3124T68!.

ボース分布関数の偶数次モーメントの母関数は、以下の形である。

0dϵ2πsinh(ϵτ/π)1eβϵ1=14τ{1τTtanτT},0<τT<π

脚注

参照文献