一般化量化子

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形式意味論における一般化量化子(いっぱんかりょうかし、テンプレート:Lang-en-short、GQ)とは、集合の集合を表す表現である。これは量化された名詞句に与えられる標準的な意味論である。たとえば、一般化量化子 every boy(すべての少年)は、すべての少年がその成員であるような集合全体の集合を表す。 {X∣∀x(x is a boy→x∈X)} このような量化子の扱いは、量化子を含む文についての合成的な意味論を実現するうえで不可欠であった[1][2]。

モデル理論

定義

一階述語論理には二つの量化子 ∀,∃ がある。それらは一階述語論理のモデル論的意味論(すなわち集合論的意味論)において、以下のように固定された意味をもつ。

一階の言語、その言語のモデル ℳ、および変数の解釈 I が与えられたとき、ℳ⊨I∀xψ と書いて「量化された論理式 ∀xψ が、解釈 I のもとでモデル ℳ によってモデル化される」ことを意味するものとする。定義により、 ℳ⊨I∀xψ⟺∀a∈M,ℳ⊨I[a/x]ψ である。ここで M はモデル ℳ の領域である。

同様に、 ℳ⊨I∃xψ⟺∃a∈M,ℳ⊨I[a/x]ψ である。これは集合論的記法で次のように書ける。 ℳ⊨I∀xψ⟺{a∈M:ℳ⊨I[a/x]ψ}∈{M}ℳ⊨I∃xψ⟺{a∈M:ℳ⊨I[a/x]ψ}∈{S∈𝒫(M):S≠∅} ここで 𝒫 は冪集合演算を表す。

集合論は通常(ZFC集合論のように)一階述語論理において形式化されるため、これはいくぶん循環的に見えるかもしれない。しかし、そのような集合論を所与の基盤として取るならば、この基盤集合論の上に他の一階述語論理を構築することができる。これはモデル理論において典型的にとられる視点である。

次に、∀,∃ それ自体をモデル化される記号とみなす。これは、等号自体が等号付き一階述語論理において二項関係記号として解釈されるのと同様である。そこで再び書き換えると、 ℳ⊨I∀xψ⟺{a∈M:ℳ⊨I[a/x]ψ}∈∀ℳℳ⊨I∃xψ⟺{a∈M:ℳ⊨I[a/x]ψ}∈∃ℳ となる。ここで ∀ℳ:={M} はモデル ℳ における記号 ∀ のモデルであり、∃ℳ:={S∈𝒫(M):S≠∅} はモデル ℳ における記号 ∃ のモデルである。

したがって、一般化量化子のモデルを次のように定義できる。一般化量化子 Q1,Q2,… によって拡張された一階の言語が与えられたとき、その言語のモデル ℳ は各 Qn を集合 Qnℳ⊂𝒫(M) としてモデル化し、次を満たす。 ℳ⊨IQnxψ⟺{a∈M:ℳ⊨I[a/x]ψ}∈Qnℳ より一般に、量化子 Q は k 個の変数を量化しうる。その場合、そのモデルは集合 Qℳ⊂𝒫(Mk) となる。このような量化子の型は ⟨k⟩ である。

同値なことだが、Mk の部分集合は M 上の k 項関係とみなせるため、k 個の変数を量化する量化子は、M 上の k 項関係についての述語とみなすことができる。

さらに一般に、量化子 Q は次のように用いられる。 Qx1,1,…,x1,m1;x2,1,…,x2,m2;…;xn,1,…,xn,mn(ψ1,…,ψn) これは、M 上の m1 項関係、m2 項関係、…、mn 項関係に関する n 項関係によってモデル化される。この一般的な一般化量化子の定義はリンドストレーム量化子と呼ばれることがある。

そのような量化子はシグネチャ ⟨m1,m2,…,mn⟩ をもつという。そのシグネチャが ⟨1,1,…,1⟩ という形であれば単項的(monadic)であり、そうでなければ多項的(polyadic)である。

例

型 ⟨1⟩ のもの:

  • 「ちょうど1個存在する」を意味する ∃=1 は ∃=1ℳ:={{a}:a∈M} によって定義される。
  • より一般に、∃=2,∃=3,… を ∃=2ℳ:={{a,b}:a∈M,b∈M,a≠b} などによって定義できる。
  • 「高々 n 個存在する」を意味する ∃≤n は ∃≤nℳ:={S:S⊂M,|S|≤n} によって定義される。
  • 「無限個存在する」を意味する ∃≥ω は ∃≥ωℳ:={S:S⊂M,S is infinite} によって定義される。
  • 「過半数である」を意味するレッシャー量化子は QRℳ:={S:S⊂M,|S|>|M∖S|} によって定義される。

型 ⟨2⟩ のもの:

  • 「整列順序である」を意味する W は Wℳ:={S:S⊂M×M,S is a well-ordering of M} によって定義される。たとえば Wxy,x<y は「< は整列順序である」を意味する。Wxy,x<y のモデル ℳ が与えられると、構造 (M,<ℳ) は整列された半順序集合となる。特筆すべきことに、整列性は標準的な一階述語論理では公理化できないため、論理言語の表現力が拡張されたことが示される。
  • ラムゼー量化子 Q2 は、無限集合 A⊂M であって ∀x≠y∈A,(x,y)∈S を満たすものが存在するとき、かつそのときに限り S∈(Q2)ℳ であると定義される。たとえば無限ラムゼーの定理は、無限集合 M をとり、任意の2点間に辺を引き、各辺を有限個の色のいずれかで彩色すると、同色の無限クリークが存在すると述べる。C1,…,Cm を、Ci(x,y) が「x≠y かつ辺 (x,y) が i 番目の色で彩色されている」ことを意味する2項関係とする。このとき無限ラムゼーの定理は ⋁i=1mQ2(Ci) と述べられる。

型 ⟨n⟩ のもの:

  • ラムゼー量化子 Qn は、無限集合 A⊂M であって、任意の大きさ n の部分集合 {a1,…,an}⊂A について (a1,…,an)∈S が成り立つものが存在するとき、かつそのときに限り S∈(Qn)ℳ であると定義される。無限ラムゼーの定理は Qn を用いて述べることができる[3]。

型 ⟨1, 1⟩ のもの:

  • 「All」は Allℳ:={(A,B):A⊂B,B⊂M} によって定義される。たとえば「すべての人間は死すべきものである」は All x,y,(man(x),mortal(y)) と書かれる。同様に「Some」「Not any」「Not all」も型 ⟨1, 1⟩ である。このようにして、名辞論理学における4種類の文が、一般化量化子をもつ一階述語論理において自然に表現される。
  • 同様に「少なくとも5」「ちょうど3」「偶数個の」「……より多い」なども同様である。
  • 「同数である」を意味するヘルティヒ量化子[4]。

演算

量化子は、量化子に対する演算を用いて組み合わせたり変形したりすることで、より多くの量化子を作り出すことができる。

相対化:集合 M 上の n 項関係 R は、R↾N:=R∩Nn と定義することで部分集合 N⊂M へと相対化できる。言い換えれば、 ∀a1,…,an∈N,R↾N(a1,…,an)⟺R(a1,…,an) この演算を用いると、型 ⟨m1,…,mn⟩ の量化子 Q は、最初のスロットを相対化の対象となる集合とすることで、型 ⟨1,m1,…,mn⟩ の量化子 Qrel へと相対化できる。 Qrelℳ(N,R1,…,Rn):=Qℳ(R1↾N,…,Rn↾N)

反復:二つの ⟨1⟩ 量化子 Q,Q′ が与えられると、⟨2⟩ 量化子 Q⋅Q′ が得られる。これは ∀,∃ に対する構成を一般化したものである。具体的には、二項関係 R が与えられたとき、文 ∀x∃y,R(x,y) は (∀⋅∃)xy,R(x,y) と分析できる。ここで ∀⋅∃ は ∀ を ∃ に反復して得られる ⟨2⟩ 量化子である。

モデル ℳ が ∀x∃y,R(x,y) をモデル化するのは、∀ℳ({a∈M:∃ℳ(Rℳ(a,⋅))}) であるとき、かつそのときに限る。ここで Rℳ(a,⋅) は、M 上の2項関係 R の最初のスロットに a∈M を代入して得られる M 上の1項関係である。

一般化すると、型 ⟨1⟩、⟨1⟩ の二つの量化子 Q,Q′ が与えられたとき、それらは型 ⟨2⟩ の量化子へと反復される。 (Q⋅Q′)ℳ(Rℳ):=Qℳ({a∈M:Q'ℳ(Rℳ(a,⋅))}) 型 ⟨m1⟩,…,⟨mn⟩ の量化子 Q1,…,Qn が与えられると、それらは ⟨m1+…+mn⟩ 量化子 Q1⋅…⋅Qn へと反復される。

再開(resumption):型 ⟨1,…,1⟩ の量化子 Q は、集合 M 上の k 項関係 R が Mk 上の1項関係と同じであるという事実を用いて、型 ⟨k,…,k⟩ の量化子 Resk(Q) へと再開できる。 Resk(Q)ℳ(R1,…,Rn)⟺Qℳ(R1,…,Rn) 形式的には同じであっても、それらの型は異なることに注意されたい。これを見るには ∃ の再開を考えればよい。論理式 ∃x,first(x)=second(x) は「first」と「second」が定義されているモデル、とりわけ領域が M×M の形をもつモデルの上で解釈される論理式であるのに対し、Res2(∃)x1x2,x1=x2 は素のモデルの上で解釈される論理式である。

型理論

さまざまな種類の表現の意味論を明示するために、しばしば型理論の一種が用いられる。標準的な構成では、型の集合が再帰的に次のように定義される。

  1. e と t は型である。
  2. a と b がともに型であれば、⟨a,b⟩ も型である。
  3. 上の1と2に基づいて構成できるもの以外に型は存在しない。

この定義により、単純型 e と t に加えて、可算無限個の複合型が得られる。そのいくつかを挙げる。 ⟨e,t⟩;⟨t,t⟩;⟨⟨e,t⟩,t⟩;⟨e,⟨e,t⟩⟩;⟨⟨e,t⟩,⟨⟨e,t⟩,t⟩⟩;…

  • 型 e の表現は言論領域、すなわち談話が対象とする実体の集合の元を表す。この集合はふつう De と書かれる。型 e の表現の例としては John や he がある。
  • 型 t の表現は真理値を表し、ふつう集合 {0,1} として表される。ここで0は「偽」、1は「真」を表す。型 t であるといわれることのある表現の例としては、文や命題がある。
  • 型 ⟨e,t⟩ の表現は、実体の集合から真理値の集合への関数を表す。この関数の集合は DtDe と表される。そのような関数は集合の指示関数である。それらは、集合の元であるすべての個体を「真」に、それ以外のすべてを「偽」に写す。厳密には後者のほうが正確であるものの、それらが指示関数ではなく集合を表すと言われることが一般的である。この型の表現の例としては、述語、名詞、および一部の形容詞がある。
  • 一般に、複合型 ⟨a,b⟩ の表現は、型 a の実体の集合から型 b の実体の集合への関数を表す。これは DbDa と書ける。

これにより、先の文(Every boy sleeps)の各語に次のように型を割り当てられる。

  • Type(boy) = ⟨e,t⟩
  • Type(sleeps) = ⟨e,t⟩
  • Type(every) = ⟨⟨e,t⟩,⟨⟨e,t⟩,t⟩⟩
  • Type(every boy) = ⟨⟨e,t⟩,t⟩

したがって、この例における一般化量化子は型 ⟨⟨e,t⟩,t⟩ であることがわかる。

このように every は、集合から「集合から真理値への関数」への関数を表す。言い換えれば、集合から集合の集合への関数を表す。それは、任意の二つの集合 A, B について、A⊆B であるとき、かつそのときに限り every(A)(B) = 1 となるような関数である。

型付きラムダ計算

複雑な関数を書く有用な方法としてラムダ計算がある。たとえば sleeps の意味は次のラムダ式として書ける。これは個体 x から「x が眠る」という命題への関数である。 λx.sleep′(x) このようなラムダ項は、ピリオドの前にあるものを定義域とし、ピリオドの後に続くものの型を値域とする関数である。x が De の元にわたる変数であれば、次のラムダ項は個体上の恒等関数を表す。 λx.x

every の意味は、X, Y を型 ⟨e,t⟩ の変数として、次のラムダ項で書ける。 λX.λY.X⊆Y

boy と sleeps の意味をそれぞれ「B」「S」と略記すると、文 every boy sleeps は次を意味することになる。 (λX.λY.X⊆Y)(B)(S) β簡約により、 (λY.B⊆Y)(S) となり、さらに B⊆S となる。

表現 every は限定詞である。名詞と結合することで、型 ⟨⟨e,t⟩,t⟩ の一般化量化子を生み出す。

性質

単調性

単調増加のGQ

一般化量化子 GQ は、任意の集合の対 X, Y について次が成り立つとき、単調増加(上方含意的、upward entailing とも呼ばれる)であるという。

X⊆Y ならば、GQ(X) は GQ(Y) を含意する。

GQ every boy は単調増加である。たとえば「速く走る」ものの集合は「走る」ものの集合の部分集合である。したがって、以下の第一の文は第二の文を含意する。

  1. Every boy runs fast.(すべての少年は速く走る)
  2. Every boy runs.(すべての少年は走る)

単調減少のGQ

GQ は、任意の集合の対 X, Y について次が成り立つとき、単調減少(下方含意的、downward entailing とも呼ばれる)であるという。

X⊆Y ならば、GQ(Y) は GQ(X) を含意する。

単調減少のGQの例は no boy である。このGQについては、以下の第一の文が第二の文を含意する。

  1. No boy runs.(どの少年も走らない)
  2. No boy runs fast.(どの少年も速く走らない)

限定詞 no のラムダ項は次の通りである。これは二つの集合の共通部分が空であることを述べている。 λX.λY.X∩Y=∅ 単調減少のGQは、any のようなテンプレート:仮リンクを認可しうる表現に含まれる。単調増加のGQは否定極性表現を認可しない。

  1. 適格: No boy has any money.
  2. 不適格: *Every boy has any money.

非単調なGQ

GQ は、単調増加でも単調減少でもないとき非単調であるという。そのようなGQの例は exactly three boys(ちょうど3人の少年)である。以下のいずれの文も、他方を含意しない。

  1. Exactly three students ran.(ちょうど3人の学生が走った)
  2. Exactly three students ran fast.(ちょうど3人の学生が速く走った)

第一の文は第二の文を含意しない。走った学生の数がちょうど3人であることは、それらの学生の各々が速く走ったことを含意しないため、そうした学生の数は3人より少ないこともありうる。逆に、第二の文も第一の文を含意しない。単に走った(すなわちそれほど速くない)学生の数が3人より多いとしても、文 exactly three students ran fast は真でありうる。

(複合的な)限定詞 exactly three のラムダ項は次の通りである。これは二つの集合の共通部分の濃度が3に等しいことを述べている。 λX.λY.|X∩Y|=3

保存性

限定詞 D は、次の同値関係が成り立つとき保存的(conservative)であるという。 D(A)(B)↔D(A)(A∩B) たとえば、以下の二つの文は同値である。

  1. Every boy sleeps.(すべての少年は眠る)
  2. Every boy is a boy who sleeps.(すべての少年は眠る少年である)

あらゆる自然言語において、すべての限定詞は保存的であると提案されてきた[2]。表現 only は保存的ではない。以下の二つの文は同値ではない。ただし実際には、only を限定詞として分析することは一般的ではない。むしろ標準的には焦点感応的な副詞として扱われる。

  1. Only boys sleep.(少年だけが眠る)
  2. Only boys are boys who sleep.(少年だけが眠る少年である)

関連項目

脚注

参考文献

外部リンク

テンプレート:Formal semantics