充填ジュリア集合

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テンプレート:Math における充填ジュリア集合

複素力学系における充填ジュリア集合(じゅうてんジュリアしゅうごう、テンプレート:Lang-en-short または テンプレート:Lang-en-short)は、多項式複素函数繰り返し適用したときに無限に発散しない複素数集合である。反復する複素函数が2次函数のような簡単な場合でも、充填ジュリア集合は複素平面上に複雑で多様な構造を持ったものとして現れる。

コンピュータを使えば複素平面上の充填ジュリア集合を近似的に描くことができる。充填ジュリア集合の境界は大抵の場合でフラクタルと呼ばれる自己相似形状となっており、ジュリア集合と呼ばれる。複素定数を持つ2次函数を考え、その充填ジュリア集合が連結した集合になるような定数の集まりは、マンデルブロ集合の名で知られる。

定義

テンプレート:Math における簡単な例。緑の部分と白線の部分の和が充填ジュリア集合。白線がジュリア集合。紫の部分が発散点集合

テンプレート:Mvar複素数テンプレート:Math複素平面テンプレート:Math を2次以上の複素多項式函数テンプレート:Mvarテンプレート:Math2 で定まる テンプレート:Mvarテンプレート:Mvar反復合成とする 。この反復合成を使って

{zn}=z, P(z), P2(z), 

というような無限に続く複素数列(複素平面上の点列)を考えるとき、与える テンプレート:Mvar に依存して点列は様々なものになるテンプレート:Sfn。与える テンプレート:Mvar によっては、点列は原点から限りなく遠ざかっていく(つまり絶対値 テンプレート:Math が限りなく大きくなっていく)テンプレート:Sfn。点列 テンプレート:Math が無限大へ発散しない テンプレート:Mvar を全て集めた集合が、充填ジュリア集合であるテンプレート:Sfn

定式化すると、充填ジュリア集合(テンプレート:Lang-en-short または テンプレート:Lang-en-short)とは

KP={zlimnPn(z)}

で定義される集合 テンプレート:Mvar であるテンプレート:Sfnテンプレート:Sfn。もし任意の テンプレート:Mvar について テンプレート:Math がある有限値未満であるとき、点列 テンプレート:Math有界であるというテンプレート:Sfn。言い換えると、充填ジュリア集合とは、有界な点列を与える テンプレート:Mvar の集合であるテンプレート:Sfn。一般に、函数 テンプレート:Mvar の充填ジュリア集合は テンプレート:Mvarテンプレート:Math と書かれるテンプレート:Sfnテンプレート:Sfn

充填ジュリア集合は、次で定義される発散点集合

IP={zlimnPn(z)}

とは補集合の関係 テンプレート:Math にあるテンプレート:Sfn。また、充填ジュリア集合の境界 テンプレート:Mathジュリア集合というテンプレート:Sfn

簡単な例で言うと、テンプレート:Math の場合は

なので、原点を中心とする単位円板 テンプレート:Math が充填ジュリア集合になっているテンプレート:Sfn。加えて、テンプレート:Math が発散点集合、テンプレート:Math がジュリア集合であるテンプレート:Sfn

性質

2次以上の多項式函数 テンプレート:Mvar では、ある テンプレート:Mathテンプレート:Math ならば テンプレート:Mathテンプレート:Math となるような数 テンプレート:Mvar の存在が保証されているテンプレート:Sfnテンプレート:Sfn。 このため、2次以上の テンプレート:Mvar では充填ジュリア集合 テンプレート:Mvar空集合ではない有界な集合であることが分かるテンプレート:Sfnテンプレート:Math定数とする2次函数 テンプレート:Math の例では、テンプレート:Mathテンプレート:Math いずれかの大きな方が テンプレート:Mvar に相当するテンプレート:Sfnテンプレート:Math を定数とする3次函数 テンプレート:Math の例では、テンプレート:Mathテンプレート:Math いずれかの大きな方が テンプレート:Mvar に相当するテンプレート:Sfn

以上のことから、テンプレート:Mvar を原点を中心とする半径 テンプレート:Mvar閉円板とすると、

KP=n0Pn(D)

が成り立つテンプレート:Sfn。ここで、テンプレート:Mathテンプレート:Math逆像、つまり テンプレート:Math を意味するテンプレート:Sfn

テンプレート:Math について テンプレート:Math の範囲で テンプレート:Mvar を変化させたときの充填ジュリア集合(黒い部分)の様子。黒い部分が存在しないときは、最も明るい色が集積している部分が充填ジュリア集合に近い

その他の基本的な性質としては、テンプレート:Mvar閉集合であるテンプレート:Sfn。よって テンプレート:Mvarコンパクト集合であるテンプレート:Sfn。さらに テンプレート:Mvar完全集合であり、孤立点を含まないテンプレート:Sfn。また、テンプレート:Mvar完全不変集合で、テンプレート:Math2 が成り立つテンプレート:Sfn

テンプレート:Mvar内部 テンプレート:Mathを持つとき、内部の各連結成分単連結であるテンプレート:Sfnテンプレート:Math は吸引的な不動点や吸引的な周期点といったアトラクターの吸引領域となっているテンプレート:Sfnテンプレート:Mvar によっては相異なるアトラクターと吸引領域が併存し、テンプレート:Mvar はそれら吸引領域と境界の和集合になるテンプレート:Sfn

充填ジュリア集合の境界 テンプレート:Math すなわちジュリア集合上も完全不変で、境界の点は反復合成を続けても境界に留まり続けるテンプレート:Sfnテンプレート:Sfn。境界(ジュリア集合)上の点はカオス的に振るまうテンプレート:Sfnテンプレート:Sfn。大抵のジュリア集合はフラクタルと呼ばれる自己相似形状となるテンプレート:Sfnテンプレート:Math のような単純な多項式関数であっても、大変複雑で多種多様な構造の充填ジュリア集合が出現し得るテンプレート:Sfn

テンプレート:Math を満たす テンプレート:Mvar臨界点という。テンプレート:Mvar が全ての(有限な)臨界点を含むとき、テンプレート:Mvar連結であるテンプレート:Sfnテンプレート:Sfn。逆に テンプレート:Mvar が臨界点を1つも含まないとき、テンプレート:Mvar全不連結であるテンプレート:Sfnテンプレート:Sfn。また、テンプレート:Mvar が全不連結のとき、テンプレート:Mvarカントール集合同相で、なおかつジュリア集合と一致するテンプレート:Sfnテンプレート:Sfnテンプレート:Math では テンプレート:Math が臨界点になるテンプレート:Sfn。この2次函数の充填ジュリア集合が連結であるような定数 テンプレート:Mvar の集合を、また同値なことだが充填ジュリア集合が テンプレート:Math を含まないような定数 テンプレート:Mvar の集合をマンデルブロ集合というテンプレート:Sfn

コンピュータによる描写

コンピュータを用いると、充填ジュリア集合を描くことは比較的簡単であるテンプレート:Sfn。描写は、充填ジュリア集合の定義そのものを使って行えるテンプレート:Sfn。与えた点の反復合成が無限大へ発散するかどうかを判別し、無限大へ発散しない点と発散する点を塗り分ければ、前者で塗った範囲が近似的な充填ジュリア集合になるテンプレート:Sfnテンプレート:Math の例では、反復した数値が テンプレート:Mathテンプレート:Math いずれかの大きな数値を超えれば無限大に発散すると判別できるテンプレート:Sfn。実際の処理手順では、これらの数値を超えるか否か(以下、逃走判断規準と呼ぶ)を有限回の反復回数で判断するテンプレート:Sfn。すなわち、最大反復回数を テンプレート:Mvar として、テンプレート:Mvar 回目までの反復計算で逃走判断規準を満たしたら無限大へ発散する点、テンプレート:Mvar 回目までの反復計算で逃走判断規準を満たさなければ充填ジュリア集合に属する点と判断するテンプレート:Sfn

ただし、無限大への発散を有限の反復回数で判断する点は、不正確な描写の原因にもなりうるテンプレート:Sfn。通常は打ち切りの反復回数を30回から40回としても十分だが、拡大した図を得るには反復回数を増やす必要があるテンプレート:Sfn。また、充填ジュリア集合が全不連結のときはうまく働かないこともあるテンプレート:Sfn

充填ジュリア集合のカラフルな描写を行うときは、充填ジュリア集合の外側の点を逃げていく速さで色付けすることがあるテンプレート:Sfnテンプレート:Sfn。つまり、逃走判断基準に達したときの反復回数が

  • 少なければ、赤
  • 中程度であれば、黄や緑
  • 多ければ、青や紫

などのように充填ジュリア集合の外側の領域を色付けするテンプレート:Sfnテンプレート:Sfn

出典

テンプレート:Reflist

参照文献

外部リンク

テンプレート:Fractals