小行列式

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数学線型代数学において、行列 テンプレート:Mvar小行列式(しょうぎょうれつしき、テンプレート:Lang-en-short)とは、テンプレート:Mvar から1列以上の行または列を除いて得られる小さい正方行列行列式のことである。

正方行列から行と列をただ1つずつ取り除いて得られる小行列式(first minors; 第一小行列式)は行列の余因子 (cofactor) を計算するのに必要で、これは正方行列の行列式や逆行列の計算に有用である。

定義と説明

正方行列 テンプレート:Mvarテンプレート:Math 小行列式 (minor, first minor[1]) とは、第 テンプレート:Mvar 行と第 テンプレート:Mvar 列を除いて得られる小行列行列式のことである。この数はしばしば テンプレート:Mvar と書かれる。テンプレート:Math余因子 (cofactor) とは、テンプレート:Math小行列式に テンプレート:Math を掛けて得られる値のことである。

例えば、次の 3次正方行列を考える:

[1473051911]

小行列式 テンプレート:Math と余因子 テンプレート:Math を計算するため、上の行列から第2行と第3列を除いた小行列の行列式を求める。

M2,3=|1419|=|1419|=(9(4))=13

したがって テンプレート:Math 余因子は

a~2,3=(1)2+3M2,3=13

一般の定義

テンプレート:Math 行列 テンプレート:Mvar に対して、正の整数 テンプレート:Mvarテンプレート:Math2 を満たすとき、テンプレート:Mvar小行列式 (minor determinant of order テンプレート:Mvar)テンプレート:Efnとは、テンプレート:Mvarテンプレート:Mvar個の行から選んだ テンプレート:Mvar個の行に属し、テンプレート:Mvar個の列から選んだ テンプレート:Mvar個の列にも属する成分からなる テンプレート:Mvar次小正方行列の行列式のことである。このことは、テンプレート:Mvar から テンプレート:Math個の行と テンプレート:Math 個の列を除いて得られる テンプレート:Mvar次小正方行列の行列式ということもできる。

テンプレート:Math行列の小行列(式)の作られ方は、全部で (mk)(nk)個ある。

零次の小行列式 (Minor of order zero) はしばしば テンプレート:Math と定義される(空積も参照のこと)。

対照的に、正方行列に対する第零小行列式 (zeroth minor) とは、単にその行列の行列式のことを言う[2][3]

元々の テンプレート:Mvar の行・列を具体的に指定して表記するには、テンプレート:Math2 に対して、それらをそれぞれ テンプレート:Math2 と呼ぶことにすると、これらの添え字から得られる小行列式 det((Aip,jq)p,q=1,,k)

detI,JA, [A]I,J

などと書かれる(テンプレート:Math は添え字の列 テンプレート:Mvar を表す)。注意しないといけないのは、文献・著者によって全く逆の2種類の意味を指すことがあることである。著者[4]によっては、テンプレート:Math2 のどちらにも属している成分から作られる行列の行列式を意味し、著者[2]によっては、テンプレート:Math2 に対応する行・列を除いて得られる行列の行列式を意味する。この記事では前者(テンプレート:Mvar の行と テンプレート:Mvar の列から元を選ぶ)の方の定義を用いる。例外的な場合は テンプレート:Math小行列式の場合である;この場合、取り除く方の表記 Mi,j=det((Ap,q)pi,qj) がどの文献でも標準的であり、この記事においても用いる。

補小行列式

正方行列 テンプレート:Mvar の小行列式 テンプレート:Mvar の補小行列式 テンプレート:Mvar とは、テンプレート:Mvar から第テンプレート:Math行と第テンプレート:Math列を除いて得られる小行列の行列式のことである。例えば、テンプレート:Math小行列式の補小行列式は単に テンプレート:Math 成分である[5]

小行列式と余因子の応用

行列式の余因子展開

テンプレート:Main 余因子により、行列式を余因子の線形結合で表すことができる(余因子展開)。これにより、行列式は次数が テンプレート:Math 小さい行列式から計算できる。任意の テンプレート:Mvar次正方行列 テンプレート:Math2 の行列式 テンプレート:Math は、行列の任意の行か列の余因子にそこの成分を掛けたものの総和に等しくなる。つまり、第テンプレート:Mvar列に沿った余因子展開は

det(A)=a1ja~1j+a2ja~2j++anja~nj=i=1naija~ij

であり、第テンプレート:Mvar行に沿った余因子展開は

det(A)=ai1a~i1+ai2a~i2++aina~in=j=1naija~ij

である。

余因子行列と逆行列

テンプレート:Main 余因子により、正則行列の逆行列の成分を書き下すことができる。正方行列 テンプレート:Mvar の全ての余因子を成分とする正方行列の転置行列余因子行列 (adjungate matrix) あるいは古典随伴行列 (classicical adjoint matrix) と呼ばれ、テンプレート:Mathテンプレート:Math で表す:

A~=adj(A)=[a~11a~21a~n1a~12a~22a~n2a~1na~2na~nn]

テンプレート:Mvar の余因子展開より、次の式が成り立つ:

AA~=A~A=(det(A))I

特に、テンプレート:Math, つまり テンプレート:Mvar が正則のとき、テンプレート:Mvar の逆行列は余因子行列に テンプレート:Mvar の行列式の逆数を掛けたものである:

A1=1det(A)A~

上の公式は次のように一般化できる:

テンプレート:Mvar次正方行列に対して、テンプレート:Math2 個ずつの添え字集合(小さい順とする)を

テンプレート:Math2  ただし テンプレート:Math2
テンプレート:Math2  ただし テンプレート:Math2

とすると

[A1]I,J=(1)s=1kis+s=1kjsdetA[A]J,I

ここで、テンプレート:Math2 はそれぞれ テンプレート:Math2 の全体集合 テンプレート:Math2 における補集合を表す。

また、[A]I,J は、テンプレート:Mvar の小行列で行の添え字が テンプレート:Mvar で列の添え字が テンプレート:Mvar であるものの行列式を表す。つまり、[A]I,J=det(Aip,jq)p,q=1,,k である。

単純な証明はウェッジ積を用いて与えることができる。実際、

[A1]I,J(e1en)=±(A1ej1)(A1ejk)ei'1ei'nk

である。ただし e1,,en は基底ベクトルである。テンプレート:Mvar を両辺に作用させると

[A1]I,JdetA(e1en)=±(ej1)(ejk)(Aei'1)(Aei'nk)=±[A]J,I(e1en)

符号は (1)s=1kis+s=1kjs であることが計算できる。(証明終)

他の応用

(例えば、実数体、複素数体)の元を成分とする テンプレート:Math行列に対して、テンプレート:Math でない小行列式の最大次数は行列の階数 テンプレート:Mvar に等しい(つまり、テンプレート:Math でない テンプレート:Mvar次小行列式が少なくとも1つ存在し、それより大きい次数の小行列式は全て テンプレート:Math である)。

記号 テンプレート:Math は上の通りとする.

コーシー・ビネの公式は、テンプレート:Math行列と テンプレート:Math 行列の積の行列式について成り立つ等式であるが、これを次の一般的な主張に拡張することができる:

テンプレート:Math行列 テンプレート:Mvarテンプレート:Math 行列 テンプレート:Mvar に対して、テンプレート:Mvarテンプレート:Mvar個の元からなる テンプレート:Math部分集合とし、テンプレート:Mvarテンプレート:Mvar 個の元からなる テンプレート:Math の部分集合とする。このとき

[AB]I,J=K[A]I,K[B]K,J

が成り立つ。ただし、総和の添え字 テンプレート:Mvarテンプレート:Mvar 個の元を持つ テンプレート:Math の部分集合全体を走る。この公式はコーシー・ビネの公式の直截的拡張である.

多重線型代数アプローチ

よりシステマティックには、小行列式の概念の代数学的な扱いはウェッジ積を用いて多重線型代数において与えられる:行列の テンプレート:Mvar次小行列式は テンプレート:Mvar外冪写像の成分である。

行列の列が一度に テンプレート:Mvar回一緒にウェッジされると、テンプレート:Mvar次小行列式は得られる テンプレート:Mvar次元ベクトルの成分として現れる。例えば、行列

[143121]

テンプレート:Math次小行列式は テンプレート:Math(最初の2行から)、テンプレート:Math(最初と最後の行から)、テンプレート:Math(最後の2行から)である。さてウェッジ積

(𝒆1+3𝒆2+2𝒆3)(4𝒆1𝒆2+𝒆3)

を考えよう。ただし2つの式は我々の行列の2つの行に対応する。ウェッジ積の性質を用いて、すなわち双線型性

𝒆i𝒆i=0

𝒆i𝒆j=𝒆j𝒆i

を用いて、この数式は

13𝒆1𝒆27𝒆1𝒆3+5𝒆2𝒆3となる。ここで係数は先に計算した小行列式と一致する。

異なる表記についての注意

文献や著者によっては、余因子行列 (adjugate matrix) の代わりに "cofactor matrix" が使われている。この表記では、逆行列は次のように書かれる:

A1=1det(A)[a~11a~12a~1na~21a~22a~2na~n1a~n2a~nn]𝖳

注釈

テンプレート:Reflist

参照

テンプレート:Reflist

関連項目

外部リンク

テンプレート:線形代数

  1. Burnside, William Snow & Panton, Arthur William (1886) Theory of Equations: with an Introduction to the Theory of Binary Algebraic Form.
  2. 2.0 2.1 Elementary Matrix Algebra (Third edition), Franz E. Hohn, The Macmillan Company, 1973, ISBN 978-0-02-355950-1
  3. 3.0 3.1 3.2 Minor. Encyclopedia of Mathematics. http://www.encyclopediaofmath.org/index.php?title=Minor&oldid=30176
  4. Linear Algebra and Geometry, Igor R. Shafarevich, Alexey O. Remizov, Springer-Verlag Berlin Heidelberg, 2013, ISBN 978-3-642-30993-9
  5. Bertha Jeffreys, Methods of Mathematical Physics, p. 135, Cambridge University Press, 1999 ISBN 0-521-66402-0.