余因子行列

数学の線形代数学において、テンプレート:Mvar次正方行列 テンプレート:Mvar の余因子行列（よいんしぎょうれつ、テンプレート:Lang-en-short）あるいは古典随伴行列（こてんずいはんぎょうれつ、テンプレート:Lang-en-short）とは、テンプレート:Math2成分が テンプレート:Math2余因子である行列の転置行列のことであり、記号で $\mathrm{adj}(A)$, $\mathrm{Cof}(A)$, $\tilde{A}$ などで表す。これはテンプレート:Mvar次正方行列になる。

単に テンプレート:Math2成分が テンプレート:Math2余因子である行列（転置をしない）を「余因子行列」と呼ぶ場合もある。随伴行列や随伴作用素とは異なる。

余因子行列により、正則行列の逆行列を具体的に成分表示することができる。

定義

可換環 テンプレート:Mvar 上の テンプレート:Mvar次正方行列 テンプレート:Math2 の余因子行列とは、テンプレート:Math2成分が テンプレート:Math2余因子である テンプレート:Mvar次正方行列のことであり、記号で $\mathrm{adj}(A)$, $\tilde{A}$ などで表す。

テンプレート:Mvar の テンプレート:Math2小行列式を テンプレート:Math で表すことにする。これは、テンプレート:Mvar の第テンプレート:Mvar行、第テンプレート:Mvar列を除いてできる テンプレート:Math2次小正方行列の行列式である：

$\mathrm{adj}(A)=(b_{i,j}),b_{i,j}=(-1{)}^{i+j}{M}_{j,i}$

テンプレート:Mvar の テンプレート:Math2余因子を テンプレート:Math2 で表すと、

${\tilde{a}}_{i,j}=(-1{)}^{i+j}{M}_{i,j}$

$\mathrm{adj}(A)=(b_{i,j}),b_{i,j}=({\tilde{a}}_{j,i})$

テンプレート:Mvar を余因子展開は、テンプレート:Mvar の余因子行列 テンプレート:Math により、次のように表せる：

$A\tilde{A}=\tilde{A}A=(\det (A))I$

ここで テンプレート:Mvar は単位行列である。

テンプレート:Mvar が特に正則行列のとき、テンプレート:Mvar の逆行列は余因子行列 テンプレート:Math で表せる：

$A^{-1}=\frac{1}{\det (A)}\tilde{A}$

例

1次

テンプレート:Math次正方行列 テンプレート:Math2 の余因子行列は、テンプレート:Mvar が零行列でないときは、テンプレート:Math次単位行列

$I=\left[\begin{array}{c}1\end{array}\right]$

である。$\mathrm{adj}(0)$ は慣習上 テンプレート:Math とする。

2次

テンプレート:Math次正方行列

$A=\left[\begin{array}{cc}a& b\\ c& d\end{array}\right]$

の余因子行列は

$\mathrm{adj}(A)=\left[\begin{array}{cc}d& -b\\ -c& a\end{array}\right]$

なお、この テンプレート:Math次の場合は $\mathrm{adj}\mathrm{adj}A=A$ が成り立つ。

3次

テンプレート:Math次正方行列

$A=\left[\begin{array}{ccc}{a}_{11}& a_{12}& a_{13}\\ a_{21}& a_{22}& a_{23}\\ a_{31}& a_{32}& a_{33}\end{array}\right]$

の余因子行列を考える。テンプレート:Math2成分に テンプレート:Math2余因子を並べたものは、

$C=\left[\begin{array}{ccc}+\left|\begin{array}{cc}{a}_{22}& a_{23}\\ a_{32}& a_{33}\end{array}\right|& -\left|\begin{array}{cc}{a}_{21}& a_{23}\\ a_{31}& a_{33}\end{array}\right|& +\left|\begin{array}{cc}{a}_{21}& a_{22}\\ a_{31}& a_{32}\end{array}\right|\\ & & \\ -\left|\begin{array}{cc}{a}_{12}& a_{13}\\ a_{32}& a_{33}\end{array}\right|& +\left|\begin{array}{cc}{a}_{11}& a_{13}\\ a_{31}& a_{33}\end{array}\right|& -\left|\begin{array}{cc}{a}_{11}& a_{12}\\ a_{31}& a_{32}\end{array}\right|\\ & & \\ +\left|\begin{array}{cc}{a}_{12}& a_{13}\\ a_{22}& a_{23}\end{array}\right|& -\left|\begin{array}{cc}{a}_{11}& a_{13}\\ a_{21}& a_{23}\end{array}\right|& +\left|\begin{array}{cc}{a}_{11}& a_{12}\\ a_{21}& a_{22}\end{array}\right|\end{array}\right],$

ここで

$\left|\begin{array}{cc}{a}_{im}& a_{in}\\ a_{jm}& a_{jn}\end{array}\right|=\det \left[\begin{array}{cc}{a}_{im}& a_{in}\\ a_{jm}& a_{jn}\end{array}\right]=\det \left|\begin{array}{cc}{a}_{im}& a_{in}\\ a_{jm}& a_{jn}\end{array}\right|$

である。余因子行列はこれの転置行列であるから、

$\mathrm{adj}(A)=C^{𝖳}=\left[\begin{array}{ccc}+\left|\begin{array}{cc}{a}_{22}& a_{23}\\ a_{32}& a_{33}\end{array}\right|& -\left|\begin{array}{cc}{a}_{12}& a_{13}\\ a_{32}& a_{33}\end{array}\right|& +\left|\begin{array}{cc}{a}_{12}& a_{13}\\ a_{22}& a_{23}\end{array}\right|\\ & & \\ -\left|\begin{array}{cc}{a}_{21}& a_{23}\\ a_{31}& a_{33}\end{array}\right|& +\left|\begin{array}{cc}{a}_{11}& a_{13}\\ a_{31}& a_{33}\end{array}\right|& -\left|\begin{array}{cc}{a}_{11}& a_{13}\\ a_{21}& a_{23}\end{array}\right|\\ & & \\ +\left|\begin{array}{cc}{a}_{21}& a_{22}\\ a_{31}& a_{32}\end{array}\right|& -\left|\begin{array}{cc}{a}_{11}& a_{12}\\ a_{31}& a_{32}\end{array}\right|& +\left|\begin{array}{cc}{a}_{11}& a_{12}\\ a_{21}& a_{22}\end{array}\right|\end{array}\right]$

数値計算

例えば、実3次正方行列

$A=\left[\begin{array}{ccc}-3& 2& -5\\ -1& 0& -2\\ 3& -4& 1\end{array}\right]$

の余因子行列は、

$\mathrm{adj}A=\left[\begin{array}{ccc}-8& 18& -4\\ -5& 12& -1\\ 4& -6& 2\end{array}\right]$

となる。実際、余因子行列の テンプレート:Math成分は テンプレート:Math余因子であり、それは テンプレート:Math小行列式（第3行、第2列を除いた小行列の行列式）に符号を掛けたものに等しい：

$(-1{)}^{3+2}\det \left[\begin{array}{cc}-3& -5\\ -1& -2\end{array}\right]=-(-3\cdot -2--5\cdot -1)=-1$

性質

テンプレート:Mvar を テンプレート:Mvar次正方行列とする。

• $\mathrm{adj}(O)=O$（テンプレート:Mvar は零正方行列）
• $\mathrm{adj}(I)=I$（テンプレート:Mvar は単位行列）
• $\mathrm{adj}(cA)=c^{n-1}\mathrm{adj}(A)$（テンプレート:Mvar はスカラー）
• $\mathrm{adj}(A^{𝖳})=\mathrm{adj}(A{)}^{𝖳}$（テンプレート:Math は転置を表す）
• $\det (\mathrm{adj}(A))=(\det A{)}^{n-1}$
• テンプレート:Mvar が正則なら、$\mathrm{adj}(A)=(\det A)A^{-1}$

  これから次が導かれる：

  • テンプレート:Math は正則で、その逆行列はテンプレート:Math
  • テンプレート:Math.
• テンプレート:Math の各成分は テンプレート:Mvar の成分の多項式である。特に、実数体または複素数体上では、テンプレート:Math の各成分は、テンプレート:Mvar の成分の滑らかな関数である。

複素数体上では、

• $\mathrm{adj}(\bar{A})=\overline{\mathrm{adj}(A)}$（テンプレート:Math は複素共役を表す）
• $\mathrm{adj}{A}^{*}=(\mathrm{adj}A{)}^{*}$（テンプレート:Math は随伴行列を表す）

テンプレート:Mvar をもう1つの テンプレート:Mvar次正方行列とする。

• $\mathrm{adj}(AB)=\mathrm{adj}(B)\mathrm{adj}(A)$

この証明には、2つの方法がある。1つは、コーシー・ビネの公式により直接計算する方法である。もう1つの方法は、正方行列 テンプレート:Math2 に余因子展開の等式を利用する方法である：

$\begin{array}{cc}(\det AB)\widetilde{AB}& =(\det A)I\times (\det B)I\times \widetilde{AB}\\ & =(\det A)I\times \tilde{B}B\times \widetilde{AB}\\ & =\tilde{B}\times (\det A)I\times B\times \widetilde{AB}\\ & =\tilde{B}\times \tilde{A}A\times B\times \widetilde{AB}\\ & =\tilde{B}\tilde{A}\times (AB)\widetilde{AB}\\ & =\tilde{B}\tilde{A}\times \det (AB)I\\ & =\det (AB)\tilde{B}\tilde{A}\\ \end{array}$

両辺を多項式として　テンプレート:Math で割ると テンプレート:Math2 を得る。（証明終）

これより、行列の冪乗について次が成り立つ：

• $\mathrm{adj}(A^k)=(\mathrm{adj}A{)}^k$（テンプレート:Mvar は テンプレート:Math 以上の整数）
  • テンプレート:Mvar が正則なら、この等式は テンプレート:Mvar が負の整数の場合についても成り立つ。
• $A\mathrm{adj}(A+B)B=B\mathrm{adj}(A+B)A$

等式

$(A+B)\mathrm{adj}(A+B)B=\det (A+B)B=B\{\mathrm{adj}(A+B)\}(A+B)$

から導かれる。

• テンプレート:Math のとき、テンプレート:Math
• テンプレート:Math のとき、テンプレート:Math

（テンプレート:Mvar のある小行列式は テンプレート:Math でない、故に テンプレート:Math は テンプレート:Math でなく、したがって、階数は テンプレート:Math 以上である。等式 テンプレート:Math は、テンプレート:Math の核の次元は テンプレート:Math 以上であることを意味する。故に、テンプレート:Math の階数は テンプレート:Math 以下である。）

このとき、テンプレート:Math は次のように表せる：

テンプレート:Math2（テンプレート:Math2 は $A𝒙=𝒐$ かつ ${}^{t}A𝒚=𝒐$ を満たすベクトルである）

列の置き換えとクラメルの公式

テンプレート:See also テンプレート:Mvar の列ベクトル表示を

$A=({𝒂}_1\cdots {𝒂}_n)$

とし、テンプレート:Mathbf を テンプレート:Mvar次列ベクトルとする。固定された テンプレート:Math2 に対し、テンプレート:Mvar の第 テンプレート:Mvar列を テンプレート:Mathbf で置き換えた行列を次の記号で定義する：

$(A\stackrel{j}{\leftarrow }𝒃)\stackrel{\text{def}}{=}\left(\begin{array}{ccccccc}{𝒂}_1& \cdots & {𝒂}_{j-1}& 𝒃& {𝒂}_{j+1}& \cdots & {𝒂}_n\end{array}\right)$

この行列の行列式を第テンプレート:Mvar列に関して余因子展開し、それらを集めてできる列ベクトルは、積 テンプレート:Math に等しくなる：

${(\det (A\stackrel{j}{\leftarrow }𝒃))}_{j=1}^n=\mathrm{adj}(A)𝒃$

この等式は、具体的な結果を生む。線形方程式系

$A𝒙=𝒃$

を考える。テンプレート:Mvar を正則と仮定する。この方程式に左から テンプレート:Math を掛け、テンプレート:Math2 で割ると

$𝒙=\frac{1}{\det A}(\mathrm{adj}A)𝒃$

ここでクラメルの公式を適用すると、

$x_i=\frac{\det (A\stackrel{i}{\leftarrow }𝒃)}{\det A}$

ここで テンプレート:Mvar は テンプレート:Mathbf の第テンプレート:Mvar成分である。

固有多項式

テンプレート:Mvar の固有多項式を

$p(s)=\det (sI-A)=\sum _{i=0}^n{p}_i{s}^i\in R[s]$

とすると、 テンプレート:Mvar の第一差商は、テンプレート:Math次対称式になる：

$\mathrm{\Delta }p(s,t)=\frac{p(s)-p(t)}{s-t}=\sum _{0\le j+k<n}{p}_{j+k+1}{s}^j{t}^k\in R[s,t]$

テンプレート:Math の余因子行列積は、ケイリー・ハミルトンの定理 テンプレート:Math2 より、

$\mathrm{adj}(sI-A)=\mathrm{\Delta }p(sI,A)$

特に、テンプレート:Mvar の レゾルベントは次の式で定義される：

$R(z;A)=(zI-A{)}^{-1}$

さらに上記の等式より、これは次の式に等しい：

$R(z;A)=\frac{\mathrm{\Delta }p(zI,A)}{p(z)}$

ヤコビの公式

テンプレート:Main 行列式を微分すると、ヤコビの公式 (Jacobi's formula) により、余因子行列が現れる。テンプレート:Math は連続的微分可能なら、

$\frac{d}{dt}(\det A(t))=\mathrm{tr}(\mathrm{adj}(A(t))A^{\prime }(t))$

これより、行列式の全微分は、余因子行列の転置になる：

$d(\det A{)}_{A_0}=\mathrm{adj}(A_0{)}^{𝖳}$

ケイリー・ハミルトンの定理

テンプレート:Main テンプレート:Math を線形変換 テンプレート:Mvar の固有多項式とする。ケイリー・ハミルトンの定理とは、テンプレート:Mvar を テンプレート:Mvar に置き換えて得られる正方行列が零行列になることをいう：

$p_A(A)=O$

定数項を分離し両辺に テンプレート:Math を掛けることで、余因子行列は テンプレート:Mvar と テンプレート:Math の係数だけで表される。完全指数関数的ベル多項式を使うと、これらの係数はテンプレート:Mvar の冪の跡の項で具体的に表せ、次のようになる：

$\mathrm{adj}(A)=\sum _{s=0}^{n-1}{A}^s\sum _{k_1,\cdots ,k_{n-1}}\prod _{\ell =1}^{n-1}\frac{(-1{)}^{k_{\ell }+1}}{{\ell }^{k_{\ell }}{k}_{\ell }!}\mathrm{tr}(A^{\ell }{)}^{k_{\ell }}$

ここで テンプレート:Mvar は テンプレート:Mvar の次数、総和 テンプレート:Math の テンプレート:Mvar, 数列 テンプレート:Math は次の 1次ディオファントス方程式を満たしながら取るものとする：

$s+\sum _{\ell =1}^{n-1}\ell k_{\ell }=n-1$

特に テンプレート:Math次の場合は、次のようになる：

$\mathrm{adj}(A)=I_2(\mathrm{tr}A)-A$

テンプレート:Math次の場合は

$\mathrm{adj}(A)=\frac{1}{2}{I}_3((\mathrm{tr}A{)}^2-\mathrm{tr}{A}^2)-A(\mathrm{tr}A)+A^2$

テンプレート:Math次の場合は

$\mathrm{adj}(A)=\frac{1}{6}{I}_4((\mathrm{tr}A{)}^3-3\mathrm{tr}A\mathrm{tr}{A}^2+2\mathrm{tr}{A}^3)-\frac{1}{2}A((\mathrm{tr}A{)}^2-\mathrm{tr}{A}^2)+A^2(\mathrm{tr}A)-A^3$

上記の表示式は、テンプレート:Mvar の固有多項式を効率良く求めることのできる、Faddeev–LeVerrier algorithmの最後の段階からも直接導出することができる。

外積代数との関係

余因子行列は、外積代数の抽象的な用語を使うことで表示することができる。テンプレート:Mvar を テンプレート:Mvar次元ベクトル空間とする。ベクトルの外積により双線形対が得られる：

$V\times {\wedge }^{n-1}V\to {\wedge }^{n}V$

ベクトルの外積は完全対である。それ故、それは同型写像を引き起こす：

$\varphi :V\stackrel{\cong }{\to }\mathrm{Hom}({\wedge }^{n-1}V,{\wedge }^{n}V)$

明示すると、この対は、テンプレート:Math2 を ${\varphi }_{𝒗}$ に写す：

${\varphi }_{𝒗}(\alpha )=𝒗\wedge \alpha (\alpha \in {\wedge }^{n-1}V)$

テンプレート:Math2 を線形変換とする。テンプレート:Mvar のテンプレート:Math次外冪による引き戻しは線形変換空間の射を作る。このとき テンプレート:Mvar の余因子変換は次の合成で定義される：

$V\stackrel{\varphi }{\to }\mathrm{Hom}({\wedge }^{n-1}V,{\wedge }^{n}V)\stackrel{({\wedge }^{n-1}T{)}^{*}}{\to }\mathrm{Hom}({\wedge }^{n-1}V,{\wedge }^{n}V)\stackrel{{\varphi }^{-1}}{\to }V$

テンプレート:Math に 基底 テンプレート:Math2 が与えられていて、テンプレート:Mvar のこの基底に関する表現行列は テンプレート:Mvar であるとき、テンプレート:Mvar の余因子変換は テンプレート:Mvar の余因子行列である。何故正しいのか考えてみるに、${\wedge }^{n-1}{ℝ}^n$ の基底を取る：

$\{{𝒆}_1\wedge \dots \wedge {\widehat{𝒆}}_k\wedge \dots \wedge {𝒆}_n{\}}_{k=1}^n$

テンプレート:Math の基底元 テンプレート:Math を固定する。テンプレート:Math の $\varphi$ による像は、${\wedge }^{n-1}{ℝ}^n$ の基底ベクトルの移る先を決定する：

${\varphi }_{{𝒆}_i}({𝒆}_1\wedge \dots \wedge {\widehat{𝒆}}_k\wedge \dots \wedge {𝒆}_n)=\{\begin{array}{cc}(-1{)}^{i-1}{𝒆}_1\wedge \dots \wedge {𝒆}_n,& \text{if}k=i,\\ 0& \text{otherwise.}\end{array}$

この基底で、テンプレート:Mvar の テンプレート:Math次外冪 $({\wedge }^{n-1}T{)}^{*}$ は次のように表せる：

${𝒆}_1\wedge \dots \wedge {\widehat{𝒆}}_j\wedge \dots \wedge {𝒆}_n\mapsto \sum _{k=1}^n(\det A_{jk}){𝒆}_1\wedge \dots \wedge {\widehat{𝒆}}_k\wedge \dots \wedge {𝒆}_n$

これらのそれぞれの項の ${\varphi }_{{𝒆}_i}$ による像は、テンプレート:Math2 の項を除いて テンプレート:Math になる。それ故、${\varphi }_{{𝒆}_i}$ の引き戻しは次の線形写像になる：

${𝒆}_1\wedge \dots \wedge {\widehat{𝒆}}_j\wedge \dots \wedge {𝒆}_n\mapsto (-1{)}^{i-1}(\det A_{ji}){𝒆}_1\wedge \dots \wedge {𝒆}_n$

これは次に等しくなる：

$\sum _{j=1}^n(-1{)}^{i+j}(\det A_{ji}){\varphi }_{{𝒆}_j}$

$\varphi$ の逆写像を適用することより、テンプレート:Mvar の余因子変換は次の式で与えられる線形変換であると分かる：

${𝒆}_i\mapsto \sum _{j=1}^n(-1{)}^{i+j}(\det A_{ji}){𝒆}_j$

故に、その表現行列は テンプレート:Mvar の余因子行列である。

テンプレート:Mvar に内積と体積形式が与えられていたら、この写像 テンプレート:Mvar はさらに分解される。この場合、テンプレート:Mvar はホッジ双対と双対化の合成ととらえることができる。特に、テンプレート:Mvar が体積形式のとき、それは内積とともに同型写像を引き起こす：

${\omega }^{\vee }:{\wedge }^{n}V\to ℝ$

これは同型写像を引き起こす：

$\mathrm{Hom}({\wedge }^{n-1}{ℝ}^n,{\wedge }^n{ℝ}^n)\cong {\wedge }^{n-1}({ℝ}^n{)}^{\vee }$

テンプレート:Math は次の線型汎函数に一致する：

$(\alpha \mapsto {\omega }^{\vee }(𝐯\wedge \alpha ))\in {\wedge }^{n-1}({ℝ}^n{)}^{\vee }$

ホッジ双対の定義により、この線型汎函数は テンプレート:Math と双対である。つまり、テンプレート:Math は テンプレート:Math と見なせる。

高階余因子行列

テンプレート:Mvar を テンプレート:Mvar次正方行列とし、テンプレート:Math2 を固定する。テンプレート:Mvar の テンプレート:Mvar階余因子行列とは、$(\genfrac{}{}{0ex}{}{n}{r})$次正方行列であり、テンプレート:Math で表す。その成分は テンプレート:Math の テンプレート:Mvar 個元からなる部分集合 テンプレート:Math2 から番号を取るものとする。テンプレート:Math2 はそれぞれ テンプレート:Math2 の補集合を表すものとする。$A_{I^c,J^c}$ は、行番号、列番号がそれぞれ テンプレート:Math2 から取られる、テンプレート:Mvar の小行列を表すとする。テンプレート:Math の テンプレート:Math 成分は次の式で定義される：

$(-1{)}^{\sigma (I)+\sigma (J)}\det A_{J^c,I^c}$

ここで テンプレート:Math2 はそれぞれ テンプレート:Math2 の元の総和を表すとする。

高階余因子行列の基本的な性質として以下がある：

• テンプレート:Math
• テンプレート:Math
• テンプレート:Math
• テンプレート:Math
• ${\mathrm{adj}}_r(A)C_r(A)=C_r(A){\mathrm{adj}}_r(A)=(\det A)I_{(\genfrac{}{}{0ex}{}{n}{r})}$（テンプレート:Math は テンプレート:Mvar次複合行列を表す）

高階余因子行列は通常の余因子行列と同様に、抽象代数学の言葉を用いても定義できる。$V$, ${\wedge }^{n-1}V$ をそれぞれ ${\wedge }^{r}V$, ${\wedge }^{n-r}V$ に置き換えることでできる。

余因子行列の反復合成

正則行列 テンプレート:Mvar について、余因子行列の反復合成を取ることにより、テンプレート:Mvar次余因子行列を考えることができる：

$\underset{k}{\underbrace{\mathrm{adj}\cdots \mathrm{adj}}}A=(\det A{)}^{\frac{(n-1{)}^k-(-1{)}^k}{n}}{A}^{(-1{)}^k}$

$\det (\underset{k}{\underbrace{\mathrm{adj}\cdots \mathrm{adj}}}A)=(\det A{)}^{(n-1{)}^k}$

例えば、

$\mathrm{adj}\mathrm{adj}A=(\det A{)}^{n-2}A$

$\det (\mathrm{adj}\mathrm{adj}A)=(\det A{)}^{(n-1{)}^2}$

関連項目

• 小行列式
• 余因子展開
• ケイリー・ハミルトンの定理
• クラメルの公式
• en:Trace diagram
• en:Jacobi's formula
• en:Faddeev–LeVerrier algorithm

参考文献

• Roger A. Horn and Charles R. Johnson (2013), Matrix Analysis, Second Edition. Cambridge University Press, テンプレート:ISBN2
• Roger A. Horn and Charles R. Johnson (1991), Topics in Matrix Analysis. Cambridge University Press, テンプレート:ISBN2

外部リンク

• Matrix Reference Manual
• Operation with matrices in R (determinant, track, inverse, adjoint, transpose) - © Rene Vapenik 2008 Compute Adjugate matrix up to order 8
• adjugate of { { a, b, c }, { d, e, f }, { g, h, i } } - Wolfram|Alpha