余因子展開

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テンプレート:Otheruses2 数学線型代数学における余因子展開(よいんしてんかい、テンプレート:Lang-en-short)、あるいはピエール・シモン・ラプラスの名に因んでラプラス展開とは、テンプレート:Mvar正方行列 テンプレート:Mvar行列式 テンプレート:Math の、テンプレート:Mvar 個の テンプレート:Mvarテンプレート:Math小行列式の重み付き和としての表示である。余因子展開は行列式を見るいくつかの方法の一つとして理論的に興味深く、行列式の実際の計算においても有用である。

テンプレート:Mvarテンプレート:Mathテンプレート:仮リンクとは、次で定義されるスカラーである:

a~i,j=(1)i+jMi,j

ここで テンプレート:Mathテンプレート:Mvarテンプレート:Math小行列式、つまり、テンプレート:Mvar から第テンプレート:Mvar行と第テンプレート:Mvar列を除いて得られる テンプレート:Math小正方行列の行列式である。

すると余因子展開は次で与えられる: テンプレート:Math theorem

次の行列式の余因子展開を考える:

|A|=|123456789|

行列式はその1つの行あるいは列に沿って余因子展開し計算することができる。例えば、第1行に沿って展開すると:

|A|=1|5689|2|4679|+3|4578|=1(3)2(6)+3(3)=0

第2列に沿って余因子展開すると次のようになる:

|A|=2|4679|+5|1379|8|1346|=2(6)+5(12)8(6)=0

結果が正しいことを確かめるのは易しい。実際、第1列と第3列を足すと第2列の2倍になるから行列は正則でなく、したがってその行列式は 0 である。

証明

置換による証明

テンプレート:Mvarテンプレート:Mvar次正方行列とし、テンプレート:Math2 を固定する。テンプレート:Mvarテンプレート:Math小行列 テンプレート:Math の成分を簡単のため (bs,t)1s,tn1 と書く。テンプレート:Math を因子に持つ テンプレート:Math の展開項を考えると、それは テンプレート:Math2 を満たす適当な置換 テンプレート:Math2 により

(sgnσ)a1,σ(1)ai,jan,σ(n)=(sgnσ)ai,jb1,τ(1)bn1,τ(n1)

と表すことができる。ここで テンプレート:Math2 は行列式の展開項が等しくなるように テンプレート:Mvar から導かれるものであり、対応 テンプレート:Math2テンプレート:Mathテンプレート:Math の間の全単射である。テンプレート:Mvarテンプレート:Mvar で次のように表せる:

τ=[1i1in1()jσ(1)()jσ(i1)()jσ(i+1)()jσ(n)]

ただし、テンプレート:Math はこの場だけの省略記法で、テンプレート:仮リンク テンプレート:Math を表すものとする。つまり、テンプレート:Mvar より大きい番号は 1 ずつ減らし、テンプレート:Mvarテンプレート:Mvar に写す置換(したがって、テンプレート:Mvar の像がきちんと集合 テンプレート:Math2 になる)を意味するものとする。

テンプレート:Mvar からもとの テンプレート:Mvar を以下のようにして導出することができる:テンプレート:Math2テンプレート:Math2 に拡張すると(このとき テンプレート:Math2 にならざるを得ない)、

τ=[1i1in1n()jσ(1)()jσ(i1)()jσ(i+1)()jσ(n)n]

と表せる。このとき、先に テンプレート:Math(これは巡回置換 テンプレート:Math2 のことである)を施してから テンプレート:Mvar を施す置換 テンプレート:Math2 も、テンプレート:Mvar を施してから テンプレート:Math を施す置換 テンプレート:Math も、どちらも次の置換になる:

[1i1ii+1n()jσ(1)()jσ(i1)n()jσ(i+1)()jσ(n)]

したがって テンプレート:Math, 故に テンプレート:Math2 を得る(ただし、テンプレート:Mathテンプレート:Math の逆置換である テンプレート:Math2 を表すとする)。故に

σ=(j,j+1,,n)τ(n,n1,,i)

ここに現れる2つの巡回置換はそれぞれ テンプレート:Math2個と テンプレート:Math2個の互換の積で表せるから

sgnσ=(1)2n(i+j)sgnτ=(1)i+jsgnτ

であり、また写像 テンプレート:Math2 が全単射であったから、

σSnσ(i)=j(sgnσ)a1,σ(1)an,σ(n)=τSn1(1)i+j(sgnτ)ai,jb1,τ(1)bn1,τ(n1)=ai,j(1)i+j|Mi,j|=ai,ja~i,j

となり、ここから所期の結果が得られる。(証明終)

多重線形交代性による証明

テンプレート:Mvar次正方行列 テンプレート:Math2 の行列式を、第テンプレート:Mvar列に沿って展開することを考える。

detA=|a1,1a1,ja1,nai,1ai,jai,nan,1an,jan,n|=i=1nai,j|a1,10a1,nai,11ai,nan,10an,n|=i=1nai,j(1)(i1)+(j1)|100˘00a1,1a˘1,ja1,n0˘a˘i,1a˘i,ja˘i,n0an,1a˘n,jan,n|=i=1nai,j(1)i+j|a1,1a˘1,ja1,na˘i,1a˘i,ja˘i,nan,1a˘n,jan,n|=i=1nai,ja~i,j

テンプレート:Mvar行に沿う展開も同様である。(証明終)

補小行列式展開

余因子展開は次のように一般化できる。

正方行列

A=[12345678910111213141516]

を考える。この行列の行列式は最初の2行に沿った余因子展開を用いて次のように計算できる。まず テンプレート:Math2 には2つの相異なる数の集合が6つあることに注意。すなわち

S={{1,2},{1,3},{1,4},{2,3},{2,4},{3,4}}

をそれらの集合とする。

補余因子を

b{j,k}=|a1ja1ka2ja2k|
c{j,k}=|a3ja3ka4ja4k|

と定義し、それらの置換の符号を

ε{i,j},{p,q}=sgn[1234ijpq]

と定義することで、テンプレート:Mvar の行列式は

|A|=HSεH,HbHcH

と書き下せる。ただし テンプレート:Mvarテンプレート:Mvar の補集合である。

我々の明示的な例でこれを計算すると次のようになる。

|A|=b{1,2}c{3,4}b{1,3}c{2,4}+b{1,4}c{2,3}+b{2,3}c{1,4}b{2,4}c{1,3}+b{3,4}c{1,2}=|1256||11121516||1357||10121416|+|1458||10111415|+|2367||9121316||2468||9111315|+|3478||9101314|=4(4)(8)(8)+(12)(4)+(4)(12)(8)(8)+(4)(4)=1664+48+4864+16=0

上と同様、結果が正しいことを確かめるのは容易である。実際、第1列と第3列を足すと第2列の2倍になるから行列は正則でなく、したがって行列式は 0 である。

一般の主張

テンプレート:Math2テンプレート:Mvar次正方行列とし、テンプレート:Mvarテンプレート:Math2テンプレート:Mvar 元部分集合全体の集合とし、テンプレート:Mvar をその元とする。すると テンプレート:Mvar の行列式は テンプレート:Mvar によって指定される テンプレート:Mvar 個の行に沿って次のように展開できる:

|B|=LSεH,LbH,LcH,L

ただし テンプレート:Mathテンプレート:Mvarテンプレート:Mvar によって決定される置換の符号で

(1)hHh+L

に等しく、テンプレート:Mvarテンプレート:Mvar から添え字がそれぞれ テンプレート:Mvarテンプレート:Mvar に属している行と列を除いて得られる テンプレート:Mvar の正方部分行列で、テンプレート:Mvarテンプレート:Mvar の補行列と呼ばれる)は テンプレート:Math と定義される。ここで テンプレート:Mvarテンプレート:Mvar はそれぞれ テンプレート:Mvarテンプレート:Mvar の補集合である。

これは テンプレート:Math のとき冒頭の定理と一致する。同じことは任意の固定された テンプレート:Mvar 個の列に対しても成り立つ。

計算量

余因子展開は高次行列に対しては計算的に非効率的である。なぜならば テンプレート:Mvar次正方行列に対して計算のオーダーは テンプレート:Math だからである。したがって、余因子展開は大きい テンプレート:Mvar に対して適切ではない。LU分解にあるように三角行列への分解を用いて、行列式を テンプレート:Math のオーダーで決定できる[1]

関連項目

脚注

テンプレート:Reflist

参考文献

外部リンク

テンプレート:Linear algebra

  1. Stoer Bulirsch: Introduction to Numerical Mathematics