拡大実数

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テンプレート:Unreferenced 数学における拡大実数(かくだいじっすう、テンプレート:Lang-en-short)あるいはより精確にアフィン拡大実数テンプレート:En)は、通常の実数に正の無限大 テンプレート:Math と負の無限大 テンプレート:Math の2つを加えた体系を言う。

新しく付け加えられた(無限大、無限遠点)は(通常の)実数ではないが、文脈によってはこれらを含めた全ての拡張実数を指して便宜的に「実数」と呼ぶこともあり、その場合、通常の実数は有限実数と呼んで区別する[1]

拡張実数の概念は、微分積分学解析学(特に測度論積分法)において種々の函数の極限についての記述を簡素化するのに有効である。(アフィン)拡張実数全体の成す集合 テンプレート:Math} は、その上の適当な順序構造や位相構造などを持つものとして補完数直線(ほかんすうちょくせん、テンプレート:Lang-en-short)と呼ばれ、テンプレート:Mathテンプレート:Math と書かれる。

文脈から明らかな場合には、正の無限大の記号 テンプレート:Math はしばしば単に テンプレート:Math と書かれる。

意義

極限

函数 テンプレート:Mvar において、引数 テンプレート:Mvar や函数値 テンプレート:Math がある意味で「非常に大きく」なるときのふるまいを記述したい場面というのはよくある。例えば函数

f(x)=x2

を考えると、グラフは g(x) = 0 を水平漸近線に持つ。幾何学的に、テンプレート:Mvar-軸を右へどんどん辿って行けば、1/x2 の値は 0 へ近づく。この極限的な振る舞いというのは、テンプレート:Mvar が何らかの実数へ近づくときの函数の極限と、テンプレート:Mvar が近づく実数がないことを除けば同じである。

仮に、実数の集合 テンプレート:Math に二つの元 テンプレート:Mathテンプレート:Math を添加するとすれば、「無限遠における極限」を テンプレート:Math におけると同様の位相的性質を以って定式化することができる。

事を完全に厳密にするには、テンプレート:Math有理コーシー列による定義において、さらに任意の テンプレート:Math に対して十分大きな番号の項で テンプレート:Mvar を超えるものが取れるような有理コーシー列全体の成す集合として テンプレート:Math を、同様の仕方で テンプレート:Math を、それぞれ定義することにすればよい。

測度論および積分

測度論において、測度無限大の集合や値が無限大になる積分の存在を許すことが有効であることがよくある。

このような測度は微分積分学でも自然に表れてくる。例えば、テンプレート:Math における測度として、各区間の測度が区間の通常の長さと一致するようなものを考えると、全空間 テンプレート:Math の測度というのはどんな有限実数よりも大きいものでなければならない。あるいはまた、

1dxx

のような無限積分を考えるとき、値は「無限大」になる。他にも、

fn(x)={2n(1nx),if 0x1n0,if 1n<x1

のような函数列の極限を考えることも有用であることは多く、函数値が無限大となることを許容しない場合には単調収束定理優収束定理のような本質的な結果が意味を成さない。

順序構造および位相的性質

任意の(有限)実数 テンプレート:Mvar に対して テンプレート:Math と置くことにより、実数直線 テンプレート:Math における順序の拡張として、補完数直線 テンプレート:Math全順序集合になる。この順序に関して テンプレート:Math は「任意の部分集合が上限下限を持つ」(完備束を成す)という良い性質を持つ。

この順序から導かれる テンプレート:Math 上のテンプレート:仮リンクでは、集合 テンプレート:Mvar が正の無限大 テンプレート:Math近傍となる必要十分条件は テンプレート:Mvar が適当な実数 テンプレート:Mvar に対する集合 テンプレート:Math を含むことであり、負の無限大 テンプレート:Math についても同様のことが言える。補完数直線 テンプレート:Math は、単位閉区間 テンプレート:Math に同相なコンパクトハウスドルフ空間であるから、単位閉区間の通常の距離から同相を通じて距離化可能であるが、しかし テンプレート:Math 上の通常の距離の延長となるような距離を入れることはできない。

この位相に関して、実変数 テンプレート:Mvarテンプレート:Mathテンプレート:Math へ近づく極限や、函数の値が テンプレート:Mathテンプレート:Math へ近づく極限を、一般的な極限の位相的定義を簡略化して定義することができる。

算術演算

実数全体 テンプレート:Math における四則演算は、以下の規約により部分的に テンプレート:Math まで拡張することができる。

a+=(+)+a=+(a)a=()+a=(a+)a(±)=(±)a=±(a(0,+])a(±)=(±)a=(a[,0))a±=0(a)±a=±(a+)±a=(a)

ここで、式 "テンプレート:Math" は "テンプレート:Math" の意味でもあり "テンプレート:Math" の意味でもある。また、式 "テンプレート:Math" は "テンプレート:Math" の意味でもあり "テンプレート:Math" の意味でもある。

しかし、所謂テンプレート:仮リンク テンプレート:Math, テンプレート:Math, テンプレート:Math などはやはりテンプレート:仮リンクとするのが普通である。これらの規約は函数の無限大に関する極限についての法則をモデル化するものになっているが、確率論および測度論ではさらに、"テンプレート:Math" を規約に追加することが多い(確定した テンプレート:Math を掛けた テンプレート:Math の形の式の極限としての意味を持つことが多いため[2])。

また、数式 テンプレート:Mathテンプレート:Math とも テンプレート:Math とも定めることができない。これは連続函数 テンプレート:Mathテンプレート:Math を満たすとすると、これは逆数函数 テンプレート:Math が集合 テンプレート:Math の任意の近傍に殆ど含まれる (eventually contained in) ことは意味するけれども、必ずしも テンプレート:Mathテンプレート:Mathテンプレート:Math の何れか一方に収斂することを意味しないことによる(それでも、その絶対値 テンプレート:Mathテンプレート:Math へ近づく)。何となれば テンプレート:Math) を考えるとよい。

代数的性質

今までの定義に従えば、拡張実数の全体 テンプレート:Mathにもにもならない。それでも以下のような十分扱いやすい性質が成立する:

一般に、現れる式がすべてきちんと定義される限りにおいて、テンプレート:Math における四則演算の法則は R におけると同様にすべて成り立つ。

その他の性質

実函数の中には極限をとることで テンプレート:Math まで連続的に延長することができるものもある。例えば指数函数 テンプレート:Math自然対数 テンプレート:Mathテンプレート:Mathテンプレート:Math として連続的に延長できる。

また実函数に対する不連続性の中には テンプレート:Math を考えることで除くことができるようになるものもある。例えば、函数 テンプレート:Mathテンプレート:Math および テンプレート:Math と置くことにより(連続性の定義にもよるが)連続にすることができる。一方、函数 テンプレート:Mathテンプレート:Mvar が左から テンプレート:Math へ近づけば テンプレート:Math となり、右から テンプレート:Math に近づけば テンプレート:Math となるから、連続にすることができない。

正の無限大 テンプレート:Math と負の無限大 テンプレート:Math とを区別できない実射影直線と比べれば、結果として実射影直線上では極限 テンプレート:Math を持つ函数が、片や補完数直線上では絶対値をとらなければ極限を持つようにならないという場合があり得る(例えば 函数 テンプレート:Mathテンプレート:Math における極限)。他方、

limxf(x) および limx+f(x)

なる極限は実射影直線上では テンプレート:Math でのそれぞれ右側および左側極限に対応し、極限が存在するというためには両者が一致しなければならないから、指数函数 テンプレート:Math や逆正接函数 テンプレート:Math は実射影直線上の テンプレート:Math において連続にすることはできない。

関連項目

注記

  1. ブルバキ, p.115
  2. 伊藤『ルベーグ積分入門』p.12

参考文献

外部リンク


テンプレート:巨大数