指数体

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数学における指数体(しすうたい、テンプレート:Lang-en-short)は、であって、その元に対して通常の指数函数の概念を一般化した演算を追加で持つものを言う。

定義

確認
体とは、元の集合 テンプレート:Mvar とその上の二つの二項演算 "テンプレート:Math", "テンプレート:Math" を持つ組 テンプレート:Math として与えられる代数的構造で、加法 "テンプレート:Math" は単位元 テンプレート:Math を持つアーベル群、乗法 "テンプレート:Math" は テンプレート:Mvar から テンプレート:Math を除いた集合 テンプレート:Math が単位元 テンプレート:Math を持つアーベル群となり、なおかつその乗法は加法の上に分配的—任意の元 テンプレート:Mvar に対して テンプレート:Math—のことであった。

テンプレート:Math がさらに函数 テンプレート:Math で性質 E(a+b)=E(a)E(b)(a,bF),E(0F)=1F を満たすものを持つとき、テンプレート:Mvar指数体であると言い、函数 テンプレート:Mvarテンプレート:Mvar 上の指数函数と呼ぶ[1]。すなわち、体上の指数函数とは テンプレート:Mvar の加法群 テンプレート:Math から テンプレート:Mvar の乗法群 テンプレート:Math への群準同型を言う。

自明な指数函数

任意の体上には自明な指数函数(具体的には、任意の元をその体の乗法単位元へ写す零準同型)が存在する。その意味では任意の体は(自明な)指数体でもあるから、数学的な興味は非自明な指数函数を持つ体に対してこそ持たれる。

指数体の定義にその標数が零であることを課す場合もある。というのも、正標数の体では指数函数は自明なものしかない[2]からである。このことを見るには、まず標数 テンプレート:Math の体の任意の元 テンプレート:Mvar に対し 1=E(0)=E(x+x++xp terms)=E(x)E(x)E(x)=E(x)p となることに注意する。したがって、フロベニウス自己準同型も勘案して (E(x)1)p=E(x)p1p=E(x)p1=0 となるから、任意の テンプレート:Mvar に対して テンプレート:Math を得る[3]

指数環

台となる集合 テンプレート:Mvar が体となるという仮定を、単に テンプレート:Mvar という仮定に置き換えて、それと同時に指数函数に対する仮定も テンプレート:Mvar の加法群から テンプレート:Mvar単数群への群準同型に緩めれば、指数環 (exponential ring) と呼ばれる対象が定まる[2]

非自明な指数函数を持つ指数環の例が、有理整数テンプレート:Mathbf に函数 テンプレート:Mvar は偶数に テンプレート:Math, 奇数に テンプレート:Math を対応させるもの、つまり テンプレート:Math とすれば与えられる。テンプレート:Mathbf 上で指数函数の条件を満足するものは、これと自明なもののみである[5]

未解決の問題

指数体はモデル理論においてよく研究されており、テンプレート:Ill2 によるシャニュエル予想に関する仕事のように数論との間の結びつきがしばしば導かれる。1990年代には テンプレート:Mathテンプレート:Ill2であることが証明され、テンプレート:Ill2と呼ばれる。この結果とテンプレート:Ill2に関する Khovanskiĭ の定理を併せれば テンプレート:Mathテンプレート:Ill2でもあることが示される[6]。他方、テンプレート:Math はモデル完備でないことが知られている[7]決定可能性の問題は未解決である。アルフレッド・タルスキ―テンプレート:Math の決定可能性の問題を提起したので、こんにちではそれをテンプレート:Ill2と呼ぶ。実数版のシャニュエル予想が真ならば テンプレート:Math が決定可能であるということは知られている[8]

関連項目

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出典

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  1. Helmut Wolter, Some results about exponential fields (survey), Mémoires de la S.M.F. 2e série, 16, (1984), pp.85–94.
  2. 2.0 2.1 Lou van den Dries, Exponential rings, exponential polynomials and exponential functions, Pacific Journal of Mathematics, 113, no.1 (1984), pp.51–66.
  3. Martin Bays, Jonathan Kirby, A.J. Wilkie, A Schanuel property for exponentially transcendental powers, (2008), テンプレート:Arxiv
  4. Boris Zilber, Pseudo-exponentiation on algebraically closed fields of characteristic zero, Ann. Pure Appl. Logic, 132, no.1 (2005), pp.67–95.
  5. Giuseppina Terzo, Some Consequences of Schanuel's Conjecture in Exponential Rings, Communications in Algebra, Volume 36, Issue 3 (2008), pp.1171–1189.
  6. A.J. Wilkie, Model completeness results for expansions of the ordered field of real numbers by restricted Pfaffian functions and the exponential function, J. Amer. Math. Soc., 9 (1996), pp. 1051–1094.
  7. David Marker, A remark on Zilber's pseudoexponentiation, The Journal of Symbolic Logic, 71, no.3 (2006), pp. 791–798.
  8. A.J. Macintyre, A.J. Wilkie, On the decidability of the real exponential field, Kreisel 70th Birthday Volume, (2005).