アレクサンドロフ拡大
テンプレート:参照方法 数学の一分野位相空間論におけるアレクサンドロフ拡大(アレクサンドロフかくだい、テンプレート:Lang-en-short)は、一点を追加することにより非コンパクト位相空間を拡大してコンパクト空間を得る方法である。名称はロシア人数学者パヴェル・アレクサンドロフに因む。
より精確に、位相空間 テンプレート:Mvar に対し、テンプレート:Mvar のアレクサンドロフ拡大とは、適当なコンパクト空間 テンプレート:Mvar と開埋め込み テンプレート:Math の組で、埋め込まれた テンプレート:Mvar の テンプレート:Mvar における補集合が一点(それをふつう テンプレート:Math と書く)となるようなものを言う。埋め込み写像 テンプレート:Mvar がハウスドルフ埋め込みとなるための必要十分条件は、テンプレート:Mvar がコンパクトでない局所コンパクトハウスドルフ空間であることである。そのような空間に対するアレクサンドロフ拡大は一点コンパクト化(いってんコンパクトか、テンプレート:Lang-en-short)あるいはアレクサンドロフコンパクト化 (Alexandroff compactification) と呼ぶ。アレクサンドロフコンパクト化を考えることの優位な点は、それが単純な操作であること、大抵幾何学的に意味のある構造となること、および任意のコンパクト化の中で極小であるという事実にある。不利な点は、それがハウスドルフコンパクト化を与えるのがコンパクトでない局所コンパクトハウスドルフ空間のクラスに限られることであり、この点は任意の位相空間というより広範なクラスにおいて存在するテンプレート:Ill2とは異なる特徴ということになる。
動機付け
- 例 (逆立体射影)
- 一点コンパクト化の幾何学的によく実感できる例は、立体射影の逆を考えることで与えられる。立体射影 テンプレート:Mvar は北極点 テンプレート:Math を除く単位球面からユークリッド平面への同相写像を陽に与えるものであったことを思い出そう。その逆写像(逆立体射影)テンプレート:Math は開写像かつ、追加の点 テンプレート:Math を添加して得られるコンパクトハウスドルフ空間への稠密な埋め込みとなる。立体射影により緯線円 テンプレート:Math は平面円 テンプレート:Math へ写されるから、北極点 テンプレート:Math の基本近傍系を取り除いて得られる穴あき球冠 テンプレート:Math は平面閉円板 テンプレート:Math の補集合に対応する。より定性的に述べれば、テンプレート:Math における基本近傍系は、テンプレート:Mvar が テンプレート:Math のコンパクト部分集合を亙るときの テンプレート:Math によって与えられる。
この例はすでに一般の場合の鍵となる考え方を含んでいる。
位相空間 テンプレート:Mvar からコンパクトハウスドルフ空間 テンプレート:Mvar への埋め込み テンプレート:Math で稠密な像を持ち、埋め込み像の補集合 (remainder) が一点: テンプレート:Math となるならば、テンプレート:Math はコンパクトハウスドルフ空間において開、したがって局所コンパクトハウスドルフであるから、それに同相な原像 テンプレート:Mvar も局所コンパクトである。さらに言えば、テンプレート:Mvar がコンパクトならば テンプレート:Math は テンプレート:Mvar において閉であり、したがって稠密でない。よって、一点コンパクト化ができる空間は、コンパクトでなく、局所コンパクトかつハウスルドルフであることが必要十分である。さらに言えば、そのような一点コンパクト化において各 テンプレート:Math の基本近傍系の像は テンプレート:Math の基本近傍系を与え、また(コンパクトハウスドルフ空間の部分集合がコンパクトとなるための必要十分条件はそれが閉であることだから)テンプレート:Math の開近傍はちょうど テンプレート:Mvar の補コンパクト部分集合の テンプレート:Mvar による像に テンプレート:Math を添加して得られる集合でなければならない。
定義
- 定義 [アレクサンドロフ拡大]
- 集合として テンプレート:Math とし、テンプレート:Mvar の任意の開集合 テンプレート:Mvar および テンプレート:Mvar の任意のコンパクト閉集合 テンプレート:Mvar に対する テンプレート:Math の全体を開集合系とする位相を与えて テンプレート:Mvar を位相空間にする。ただし、テンプレート:Math は差集合である。テンプレート:Mvar が テンプレート:Math の開近傍であり、したがって テンプレート:Math の任意の開被覆が テンプレート:Mvar のコンパクト部分集合 テンプレート:Mvar を除く全ての点を含むことから、テンプレート:Mvar がコンパクトであることが導かれるテンプレート:Sfn。包含写像 テンプレート:Math を テンプレート:Mvar のアレクサンドロフ拡大と呼ぶテンプレート:Sfn。
既にみたように、以下のような性質が満たされる:
- 写像 テンプレート:Mvar は連続開写像であり、テンプレート:Mvar は テンプレート:Mvar の開集合として埋め込まれる;
- 空間 テンプレート:Mvar はコンパクトである;
- 像 テンプレート:Math は テンプレート:Mvar が非コンパクトのとき テンプレート:Mvar において稠密;
- 空間 テンプレート:Mvar がハウスドルフとなるための必要十分条件は テンプレート:Mvar が局所コンパクトハウスドルフとなることである。
- 定義 [一点コンパクト化]
- 特にアレクサンドルフ拡大 テンプレート:Math が テンプレート:Mvar のコンパクト化となるための必要十分条件は テンプレート:Mvar がコンパクトでない局所コンパクトハウスドルフ空間となることであり、この場合を特に一点コンパクト化あるいはアレクサンドルフコンパクト化と呼ぶ。
上で述べたように、一点を付け加える任意のコンパクト化はアレクサンドロフコンパクト化(に同型)でなければならない。また、テンプレート:Mvar がコンパクトでない任意のチホノフ空間とするとき、その任意のコンパクト化の同値類全体の成す集合 テンプレート:Math 上の自然な半順序のもと、任意の極小元はアレクサンドロフ拡大と同値になるテンプレート:Sfn。したがって、コンパクトでないチホノフ空間が極小コンパクト化を持つための必要十分条件が、それが局所コンパクトであることである。
例
離散空間のコンパクト化
- 正整数全体の成す集合 テンプレート:Mathbf の一点コンパクト化 テンプレート:Math は テンプレート:Math に順序位相を入れたものに同相である。
- 位相空間 テンプレート:Mvar における点列 テンプレート:Math が テンプレート:Mvar の一点 テンプレート:Mvar に収束するための必要十分条件は、テンプレート:Math に対し テンプレート:Math および テンプレート:Math とおいて得られる写像 テンプレート:Math が連続となることである。ここで テンプレート:Mathbf には離散位相が入っているものとする。
- テンプレート:Ill2は局所コンパクトハウスドルフな離散空間の一点コンパクト化のデカルト冪からの連続像として定義される位相空間である。
連続的空間のコンパクト化
- テンプレート:Mvar-次元ユークリッド空間 テンプレート:Math の一点コンパクト化は テンプレート:Mvar-次元球面 テンプレート:Math に同相である。これは最初の例で見たように、テンプレート:Mvar-次元の逆立体射影として埋め込み写像が与えられる。
- 半開半閉区間 テンプレート:Closed-open の テンプレート:Mvar 個のコピーの直積 テンプレート:Math の一点コンパクト化は テンプレート:Math に同相である。
- 連結部分集合の閉包もまた連結であるから、非コンパクト連結空間のアレクサンドロフ拡大も連結である。しかし、非連結空間の一点コンパクト化が「連結」となることが起こり得る。実例として、開区間 テンプレート:Open-open の テンプレート:Mvar 個のコピーからなる非交和の一点コンパクト化は テンプレート:Mvar-弁の円のブーケになる。
- コンパクトハウスドルフ空間 テンプレート:Mvar と テンプレート:Mvar の任意の閉部分集合 テンプレート:Mvar に対し、差集合 テンプレート:Math の一点コンパクト化は テンプレート:Mvar を一点につぶした等化空間 テンプレート:Mvar に同相である。[1]
- テンプレート:Mvar が二つの局所コンパクトハウスドルフ空間であるとき、それらの直積空間の一点コンパクト化は テンプレート:Math で与えられる。ここでスマッシュ積 テンプレート:Math は、一点和 テンプレート:Math に関する等化空間 テンプレート:Math として定義されるものである[1]。
函数空間のコンパクト化
- 局所コンパクトハウスドルフ空間 テンプレート:Math 上の連続函数全体の成す空間 テンプレート:Math は局所コンパクトであるが、それがコンパクトとできるための必要十分条件は、それが一点 テンプレート:Math を含むことである。
函手として
アレクサンドロフ拡大を、位相空間の圏(固有連続写像を射とする)から連続写像 テンプレート:Math を対象とする圏への函手と見ることができる。
後者の圏において テンプレート:Math から テンプレート:Math への射とは、テンプレート:Math を満たす連続写像の対 テンプレート:Math: を言う。
特に、同相写像全体の成す空間はアレクサンドロフ拡大の空間に同型である。
関連項目
脚注
- ↑ 1.0 1.1 Joseph J. Rotman, An Introduction to Algebraic Topology (1988) Springer-Verlag テンプレート:ISBN2 (See Chapter 11 for proof.)