ベッツの法則

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ベッツの法則(ベッツのほうそく、テンプレート:Lang-en-short)とは、ドイツアルバート・ベッツ[1]によって導出された流体機械におけるエネルギー変換に関する法則。薄い羽根車状の回転機械を用いて、流体運動エネルギーから取り出すことのできる最大のエネルギーに言及する。ただし流体の密度は一定であると仮定し、熱力学的なエネルギーの授受は考慮しない。

風力発電で使用されるような風車の設計の指標などに応用されている。

ベッツによる業績が一般的に知られており、最大効率となる値 16/27 = 59.3 %はベッツ係数と呼ばれるが、イギリスフレデリック・ランチェスター[2]も同様の結論を明らかにしている[3]

概要

面積S の羽根車(青)の十分遠方で速度v1 の流体が左から右へ向かい、羽根車を抜けた後に速度v2 に落ち着くとする。このとき羽根車での流体速度はv1v2 の平均であるvavg で表せる。

まず途中に羽根車が設置されているチューブ状の流管を考え、はじめに速度v1 であった流体が羽根車を通過し仕事をすることによってその速度を減じ、一定速度v2 で遠方へ流れていくような状況を仮定する(v1 > v2 )。羽根車は薄い円盤状で流管の断面全体を覆っており、その面積はS とする。また、圧力差は羽根車の回転面前後で局所的に生じているだけで両遠方では互いに等しいとする。

このとき羽根車を挟んで連続的に流体速度が変化するとし、また羽根車の前後で流体の密度ρや温度が変化しないと仮定するとちょうど羽根車の位置での流体速度はv1v2 の単純な平均となる[4]ので、それをvavg とすれば以下のように書ける。

vavg=12(v1+v2)

これより単位時間当りに羽根車を通過する質量流量m˙

m˙=ρSvavg=12ρS(v1+v2)

となる。このm˙を用いると羽根車前後での単位時間当りの流体の運動エネルギー変化は以下のように書ける。

E˙=12m˙(v12v22)=14ρS(v1+v2)(v12v22)=14ρSv13{1(v2v1)2+(v2v1)(v2v1)3}
横軸x = v2 /v1 、縦軸Cp = P /P0 としたときのグラフ。x = 1/3 で最大値 16/27 を取る。

得られるE˙は流体の仕事率に相当し、損失がなければ羽根車が受け取る動力と等しい(ここでこの仕事率E˙P と置き直す)。

ところでこのE˙ ( = P ) を(v2 /v1) で微分した関数はv2 /v1 = 1/3 で0を取ることが確かめられる。これより 0 < v2 /v1 < 1 の範囲でのP の最大値は

Pmax=162712ρSv13

と分かる。これがS およびv1 が決められたときに羽根車が流体から受け取りうる最大の仕事率である。

ところで断面積S を速度v1 で通過する流体の潜在的な(物理的には利用不可能な)全仕事率P0 は以下のように書ける。

P0=12ρSv13

このP0P との比を変換効率Cp と定義すると、Cp の最大値は

Cp,max=PmaxP0=1627=0.593

となる。つまりこれは流体の運動エネルギーの59.3%を機械的なエネルギーとして取り出しうることを意味する。これがベッツの法則の帰結である。

ただし、実際は羽根車での損失や羽根車を通過しない流体の引きずりなどが伴うため、取り出しうるエネルギーの割合はもっと小さくなる。

脚注

テンプレート:Reflist

参考文献

  • Betz, A. (1966) Introduction to the Theory of Flow Machines. (D. G. Randall, Trans.) Oxford: Pergamon Press.

外部リンク

  • Perfect Turbine Performance! - ベッツの法則を用いて計算した無損失のタービンの仕事率と実際のタービンの仕事率の比較を行っている。
  1. A. Betz, Das Maximum der theoretisch moeglichen Ausnuetzung des Windes durch Windmotoren, Zeitschrift fuer das gesamte Turbinenwesen, Heft 20, Sept., 1920
  2. F. W. Lanchester, Contribution to the Theory of Propulsion and the Screw Propeller, Transactions of the Institution of Naval Architects, Vol.LVII, March, 1915, pp.98-116.
  3. テンプレート:Cite
  4. 流体の単位時間当りの運動量変化と羽根車前後での圧力差により生じる力が等しいことを利用し、ベルヌーイの定理を用いると導出できる。ただし、vavg は条件次第でv1v2 を用いた別の関数形で表現される可能性もあり、それによって最終的に導かれる変換効率の値も変わってくる。