運動量

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テンプレート:物理量 テンプレート:Physics navigation テンプレート:読み仮名とは、物体運動状態を表す物理量ベクトル量)の1つであり、「静止した瞬間から現在までの間にその物体が受けた力積の総量」として定義される。単位は、kgm/sまたはN⋅s。静止している物体の運動量は、0 kg⋅m/s(0 N⋅s)である。

初等的には、運動量は質量速度として導入される。

この意味の運動量は後述する一般化された運動量と区別して、運動学的運動量(あるいは動的運動量[注釈 1])と呼ばれる。

また、角運動量[注釈 2]という運動量とは異なる量と対比する上で、線型運動量[注釈 3]などと呼ばれることもある。

概要

日常生活において、物体の持つ運動量は、動いている物体の止めにくさとして体感される。つまり、重くて速い物体ほど運動量が大きく、静止させるのに大きな力積が必要になる。

アイザック・ニュートンは運動量の時間的変化と力の関係を運動の第2法則として提示したテンプレート:Sfnテンプレート:Sfn

解析力学では、上述の定義から離れ、運動量は一般化座標オイラー=ラグランジュ方程式を通じて与えられる。この運動量は一般化座標系における一般化速度の対応物として、一般化運動量[注釈 4]と呼ばれる。

特にハミルトン形式の解析力学においては、正準方程式を通じて与えられる正準変数の一方を座標と呼び他方を運動量と呼ぶテンプレート:Sfn。この意味の運動量は、他と区別して、正準運動量[注釈 5]と呼ばれる。また、正準運動量は、正準方程式において座標の対となるという意味で、共役運動量[注釈 6]と呼ばれるテンプレート:Sfn。運動量は、ハミルトン形式の力学では、速度よりも基本的な量であり、ハミルトン形式で記述される通常の量子力学においても重要な役割を果たす。

共役運動量と通常の運動学的運動量の違いが際立つ例として、磁場中を運動する電子の運動の例が挙げられる(#解析力学における運動量も参照)。電磁場中を運動する電子に対してはローレンツ力が働くが、このローレンツ力に対応する一般化されたポテンシャルエネルギーには電子の速度の項があるために、共役運動量はラグランジアンのポテンシャル項に依存した形になるテンプレート:Sfn。このとき共役運動量と運動学的運動量は一致しない。また、電磁場中の電子の運動を記述する古典的ハミルトニアンでは、共役運動量の部分がすべて共役運動量からベクトルポテンシャルの寄与を引いたものに置き換わるテンプレート:Sfn

数学的表現

運動量は、運動の第2法則において、その時間に対する変化の割合がと等しい量として導入される。

つまり、運動量 テンプレート:Mvarニュートンの運動方程式テンプレート:Indent を満たす。力 テンプレート:Mvarベクトル量であり、運動量もまたベクトル量である。また、定義から明らかなように、運動量は時刻 テンプレート:Mvar関数として表される量である。

質点の運動量は、質点の速度比例する。質点の運動量は、質点の速度を テンプレート:Mvar と表し、比例係数を テンプレート:Mvar とすると、 テンプレート:Indent で与えられる。

ここで導入された比例係数 テンプレート:Mvar慣性質量 テンプレート:En と呼ばれ質点の速度の変化し難さを表す。

運動量の変化量は力積であるが、運動の間、慣性質量が一定であるとすれば、速度の変化量は力積を慣性質量で割ったものとなる。従って、同じ大きさの力積に対しては、慣性質量が大きいほど速度の変化は小さいものとなる。

時間的な変化

テンプレート:Main 時刻 テンプレート:Math から テンプレート:Math の間の物体の運動量の変化量を テンプレート:Indent とする。 この物体が時刻 テンプレート:Mvar に力 テンプレート:Math を受けながら運動していたとすると、運動方程式から運動量の時間変化率 テンプレート:Math は力 テンプレート:Math に等しいため、運動量の変化量 テンプレート:Mathテンプレート:Indent となり力 テンプレート:Math を時刻 テンプレート:Math から テンプレート:Math まで積分したものに等しい。 この力の時間積分 テンプレート:Mvar力積テンプレート:En)と呼ばれ、運動量の変化量に等しい。

時間 テンプレート:Math で物体が受ける力の時間的な平均テンプレート:Indent で定義される。力の時間平均 テンプレート:Math を用いれば力積は テンプレート:Indent となる。 特に時間 テンプレート:Math が充分に短く、力が一定であると見なせる場合には、力積は単に力と時間の積 テンプレート:Indent として表すことができる。

つまり、物体に一定の力を加えて、物体の運動量の変化を大きくするには、力が作用する時間を長くすればよい。逆に、大きな力を加えたとしても、それがごく短期間のものであれば、物体に与える力積は小さくなる。

質点系の運動

運動量は加法的な量であり、系の全運動量は部分の運動量の和で表される。

質点系の全運動量 テンプレート:Mvar は、質点 テンプレート:Math の運動量 テンプレート:Math とすれば テンプレート:Indent となる。 ここで質点系の全質量 テンプレート:Mvar質量中心 テンプレート:Mathテンプレート:Indent により導入すれば テンプレート:Indent となる。 即ち、質点系の全運動量は、質量中心に全質量が集中していると考えたときの運動量に等しい。

質点 テンプレート:Mvar の運動量 テンプレート:Mvar の時間変化は、質点 テンプレート:Mvar に作用する力 テンプレート:Mvar に等しく テンプレート:Indent を満たす。 ここで質点 テンプレート:Mvar に作用する力は、質点系の外部から作用する外力と、系に含まれる他の質点との内部相互作用に分けられる。 質点 テンプレート:Mvar に作用する外力を テンプレート:Mvar、質点 テンプレート:Mvar から質点 テンプレート:Mvar に作用する内力を テンプレート:Mvar とすれば テンプレート:Indent と表される。 ただし、質点 テンプレート:Mvar から質点 テンプレート:Mvar 自身に作用する力は テンプレート:Math とする。 全運動量の時間変化を考えると テンプレート:Indent となる。 ここで運動の第3法則から、質点 テンプレート:Mvar から質点 テンプレート:Mvar に作用する力 テンプレート:Mvar と 質点 テンプレート:Mvar から質点 テンプレート:Mvar に作用する力 テンプレート:Mvar は大きさが等しく符号が逆なので テンプレート:Indent が成り立ち、内力を全て足し合わせたものは テンプレート:Math となる。 従って テンプレート:Indent となり、質点系の全運動量の時間変化は作用する外力の総和と等しい。 これは、重力などの単純な外力の下では質量中心の運動が相対位置の運動から分離できることを意味している。

保存則

テンプレート:Main 質点系の運動において、特に作用する外力が釣り合っている場合は テンプレート:Indent テンプレート:Indent が成り立つ。 つまり、この系では系の全運動量は時間的に変化しない。これは運動量保存の法則 テンプレート:En と呼ばれる。運動量保存の法則は、ニュートン力学においては作用反作用の法則から導かれるが、運動量保存則自体は作用反作用の法則より一般的に成り立つ法則であるテンプレート:Sfn。たとえば、電磁気学などの場の理論では近接作用論の立場をとり、遠隔作用論的な法則である作用反作用の法則をその基礎には置かない。しかしながら、電磁気学においても運動量保存の法則は成り立ち、それに伴い運動量の定義も拡張されるテンプレート:Sfn

モーメント

テンプレート:Main 物理学において、ベクトルで表される物理量とある原点に対する位置の外積モーメントという。運動量のモーメントは、角運動量 テンプレート:En と呼ばれ、次のように定義される。 テンプレート:Indent 古典的な角運動量の大きさは、位置ベクトル テンプレート:Mvar の大きさと、運動量 テンプレート:Mvarテンプレート:Mvar直交する成分の大きさの積として表される。2 つのベクトル テンプレート:Math が載っている平面上の、2 つのベクトル テンプレート:Math の間の角度を テンプレート:Mvar とすれば、角運動量の大きさは次のように表される。 テンプレート:Indent

解析力学においては、角運動量は角度に対応した一般化運動量として得られる。

角運動量は、ニュートンの運動方程式と同様な方程式、 テンプレート:Indent を満たす。ここで テンプレート:Math は物体に作用する力のモーメントである。

解析力学における運動量

解析力学において、一般化座標 テンプレート:Mvar に対応する一般化運動量 テンプレート:En テンプレート:Mvar はそのラグランジアン テンプレート:Math の一般化速度 テンプレート:Math による偏微分として定義される。 テンプレート:Indent ここで、ラグランジアン テンプレート:Math は、運動エネルギー テンプレート:Mvarポテンシャル テンプレート:Mvar の差として定義される。 テンプレート:Indent

ハミルトン形式の力学では、一般化速度の代わりに一般化運動量が力学変数として用いられる。ハミルトニアン テンプレート:Math は、ラグランジアン テンプレート:Mathルジャンドル変換として定義されるテンプレート:Sfn。ルジャンドル変換テンプレート:Sfn テンプレート:Indent の右辺を最大化する テンプレート:Math を考えると、ルジャンドル変換をする領域 テンプレート:Mvar の中でラグランジアンがでありかつ充分滑らかなら、そのような テンプレート:Math は以下の関係を満たす。 テンプレート:Indent これはすなわち、ハミルトニアンの変数 テンプレート:Mvar が一般化運動量に等しいことを意味する。

直交座標系

3 次元の直交座標系 テンプレート:Math においては、ポテンシャル速度 テンプレート:Math に依存しないときには テンプレート:Indent テンプレート:Indent であり、このとき一般化運動量 テンプレート:Mvar は質量と速度の積となっている。これはニュートン形式の運動量に一致する。

極座標系

一般化座標として二次元極座標 テンプレート:Math を選ぶと、ラグランジアン及び テンプレート:Math に共役な運動量 テンプレート:Math はそれぞれ テンプレート:Indent テンプレート:Indent テンプレート:Indent となる。ここで、テンプレート:Mvar に共役な運動量は角運動量となっている。また テンプレート:Mvar の共役運動量は動径方向への運動量を表している。

一般化されたポテンシャル

ポテンシャルが速度に依存するときもある。このとき直交座標系における一般化運動量はニュートン力学におけるものとは異なっている。 テンプレート:Indent

このような系の例として、電磁場中を運動する電荷を持つ粒子非相対論的な運動が挙げられる。 この系のラグランジアンは具体的に テンプレート:Indent である。ここで テンプレート:Mvar は物体の持つ電荷テンプレート:Mvarスカラーポテンシャルテンプレート:Mvarベクトルポテンシャルである。このとき、共役運動量は テンプレート:Indent となる。このときの共役運動量は質量と速度の積の普通の運動量に、電磁場との相互作用による テンプレート:Mvar の項が加わる。 このとき、ハミルトニアンは、ルジャンドル変換 テンプレート:Indent より、 テンプレート:Indent となる。ベクトルポテンシャルのない系と比べると、形式的には共役運動量 テンプレート:Mvar を運動学的な運動量 テンプレート:Math に置き換えたものとなっているテンプレート:Sfn

相対性理論

相対性理論において運動量とエネルギーミンコフスキー空間における四元ベクトルを為し、

pμ=mdxμdτ

である(テンプレート:Mvar は質量、テンプレート:Mvar固有時間)。これの空間成分は

pj=mdxjdtdtdτ=mvj1v2c2

となる。非相対論的極限 テンプレート:Math において前述の運動量(質量と速度の積)に一致する。

運動量とエネルギーは

m2c2=E2c2+p2

の関係を満たしている。運動量が テンプレート:Math の場合は有名な テンプレート:Math の式になっている。

量子論

テンプレート:Main (あるいは電磁波)はであるが、実験によりエネルギーと運動量を持つ粒子でもあると考えられている。 そのエネルギーと運動量は

E=hν=ω
p=hνc=hλ=k

である。(ここで テンプレート:Mvarプランク定数テンプレート:Mvar振動数テンプレート:Math角振動数テンプレート:Mvar真空中の光速テンプレート:Mvar波長テンプレート:Mvar波数である)

前述のエネルギーと運動量の関係式にこの関係を入れると、テンプレート:Math からこの粒子の質量は テンプレート:Math であることが分かる。この質量 テンプレート:Math の粒子を光子という。

量子力学では、上記の古典論的運動量 p は、波動関数 ψ(t,x)=ψ(t,x,y,z) に対する、

pi=(ix,iy,iz)

という演算子であるとみなされる。ここに、i虚数単位ナブラである。

或いはエネルギーとまとめて四元ベクトルで表すと、

pμixμ

である。これらは対応原理と呼ばれ、解析力学における作用積分 S汎関数微分

δSδxμ=pμ

であることなどから類推された。

また、正準量子化という方法によれば、位置と運動量は正準交換関係

[xμ,pν]=iδνμ
[xμ,xν]=0,[pμ,pν]=0

を満たす物理量として量子化される。

対称性との関係

運動量は空間の一様性(並進対称性)に対応する保存量である。 時間の一様性に対応するエネルギー、空間の等方性に対応する角運動量とともに、基本的な物理量であるテンプレート:Sfnテンプレート:See also

脚注

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注釈

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出典

テンプレート:Reflist

参考文献

関連項目

テンプレート:Commonscat

テンプレート:古典力学のSI単位 テンプレート:Physics-stub

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