ランベルトのW関数

ランベルトのW函数(ランベルトのWかんすう、テンプレート:Lang-en-short)あるいはオメガ函数 (ω function)、対数積(product logarithm; 乗積対数)は、函数 テンプレート:Math の逆関係の分枝として得られる函数 テンプレート:Mvar の総称である。ここで、テンプレート:Mvar は指数函数、テンプレート:Mvar は任意の複素数とする。すなわち、テンプレート:Mvar は テンプレート:Math を満たす。
上記の方程式で、テンプレート:Math と置きかえれば、任意の複素数 テンプレート:Mvar に対する テンプレート:Mvar 函数(一般には テンプレート:Mvar 関係)の定義方程式
を得る。
函数 テンプレート:Mvar は単射ではないから、関係 テンプレート:Mvar は(テンプレート:Math を除いて)多価である。仮に実数値の テンプレート:Mvar に注意を制限するとすれば、複素変数 テンプレート:Mvar は実変数 テンプレート:Mvar に取り換えられ、関係の定義域は区間 テンプレート:Math に限られ、また開区間 テンプレート:Math 上で二価の函数になる。さらに制約条件として テンプレート:Math を追加すれば一価函数 テンプレート:Math が定義されて、テンプレート:Math および テンプレート:Math を得る。それと同時に、下側の枝は テンプレート:Math であって、テンプレート:Math と書かれる。これは テンプレート:Math から テンプレート:Math まで単調減少する。
ランベルト テンプレート:Mvar 関係は初等函数では表すことができない[1]。ランベルト テンプレート:Mvar は組合せ論において有用で、例えば木の数え上げに用いられる。指数函数を含む様々な方程式(例えばプランク分布、ボーズ–アインシュタイン分布、フェルミ–ディラック分布などの最大値)を解くのに用いられ、またテンプレート:Math のようなテンプレート:仮リンク の解としても生じる。生化学において、また特に酵素動力学において、ミカエリス–メンテン動力学の経時動力学解析に対する閉じた形の解はランベルト テンプレート:Mvar 函数によって記述される。

用語について

ランベルト テンプレート:Mvar-函数はヨハン・ハインリヒ・ランベルトに因んで名づけられた。Digital Library of Mathematical Functions では主枝 テンプレート:Math を テンプレート:Mvar, 分枝 テンプレート:Math は テンプレート:Mvar と書いている。ここでの表記の規約(つまり テンプレート:Math)はランベルト テンプレート:Mvar に関する標準的な参考文献テンプレート:Harvtxt[2]に従った。
歴史
ランベルトは初め「ランベルトの超越方程式」に関連して1758年に考察した[3]。これはレオンハルト・オイラーの1783年の テンプレート:Mvar の特別な場合を論じた論文[4]に繋がる。
ランベルト テンプレート:Mvar-函数は、特殊化された応用において、十年程度毎に「再発見」されてきたテンプレート:Citation needed。1993年には、等電荷に対する量子力学的テンプレート:仮リンク(物理学における基本問題)の厳密解をランベルト テンプレート:Mvar-函数が与えることが報告されたとき、コーレスら計算機代数システムMapleの開発者たちはライブラリを精査して、この函数が自然界に遍く存在することを発見した[2][5]。
微分積分学
導函数
陰函数微分法により、テンプレート:Mvar の任意の枝が常微分方程式
を満たすことが示せる(テンプレート:Math では テンプレート:Mvar は微分できない)。従って、テンプレート:Mvar の導函数は
を満たす。ここで恒等式 テンプレート:Math を用いるならば、
と書きなおすこともできる。
原始函数
函数 テンプレート:Mvar(およびそれを含む多くの式)は、テンプレート:Math と置いた置換積分によって
と積分できる。
したがって、(テンプレート:Math であることも考慮して)等式
が得られる。
漸近展開
テンプレート:Math の テンプレート:Math を中心とするテイラー級数は、テンプレート:仮リンク
ダランベールの収束判定法によると、収束半径は テンプレート:分数 である。この級数の定める函数は、区間 テンプレート:Mathに沿ってテンプレート:仮リンクを入れれば、ガウス平面の全域で定義される正則函数に延長することができる。この正則函数をランベルト テンプレート:Mvar 函数の主値と定める。
テンプレート:Mvar が十分大きければ、テンプレート:Math は漸近的に
と展開される。ただし、テンプレート:Math であり、[[[:テンプレート:Subsup]]] は非負の第一種スターリング数である[6]。
もう一つの、区間 テンプレート:Math 上で定義される実函数な枝 テンプレート:Math は、テンプレート:Math と書けば、テンプレート:Mvar が十分 テンプレート:Math に近いとき同じ形の漸近展開を持つ。
テンプレート:Math なるとき、
という上下の評価が成り立つ[7]。また もう一つの枝 テンプレート:Math の評価は テンプレート:Math に対して
となる[8]。
整数冪・複素数冪の展開
テンプレート:Math の整数乗もまた テンプレート:Math において単純なテイラー級数(あるいはローラン級数)展開を持つ。例えば
より一般に、ラグランジュの反転公式を用いれば、テンプレート:Math に対して
となることが示せる(これは一般に、位数 テンプレート:Mvar のローラン級数になっている)。あるいは同じことだが、この式を テンプレート:Mvar の冪に関するテイラー級数として
と書くことができる。これは任意の テンプレート:Math と テンプレート:Math に対して成立する。
特殊値
任意の非零代数的数 テンプレート:Mvar に対して テンプレート:Math は超越数になる。実際、テンプレート:Math が零ならば テンプレート:Mvar も零でなければならず、また テンプレート:Math が非零代数的数ならばリンデマン–ワイエルシュトラスの定理により テンプレート:Math は超越的でなければならず、従ってテンプレート:Math もまた超越的でなければならない。
- (オメガ定数)
等式
いくつかの等式は定義から直ちに得られる:
ここで、テンプレート:Math は単射でないから、テンプレート:Math は常には成り立たないことに注意すべきである。テンプレート:Math かつ テンプレート:Math なる テンプレート:Mvar を固定して、方程式 テンプレート:Math は テンプレート:Mvar に関して二つの解を持ち、その一方はもちろん テンプレート:Math である。もう一方の解は、テンプレート:Math の場合 テンプレート:Math に、テンプレート:Math の場合 テンプレート:Math にある。これらを踏まえて、次の式を導くことができる。
- [9]
- (これは正しく枝を選べば他の テンプレート:Mvar に対しても拡張できる)
テンプレート:Math を反転すれば
を得る。
オイラーの反復指数函数 テンプレート:Math を用いれば
を得る。
テンプレート:Mvar を含む有用な積分公式がいくつか存在し、例えば以下のようなものが挙げられる: テンプレート:Ordered list 分岐切断 テンプレート:Math に沿う テンプレート:Mvar を除けば(そのような テンプレート:Mvar では以下の積分が確定しない)、ランベルト テンプレート:Mvar 函数の主枝は、以下の積分
によって計算できる[10]。この二つの積分の値が等しいことは被積分函数の対称性による。
応用
指数関数を含む方程式の多くは、W関数を用いることで解くことができる。主な方針は、未知数を含む項を方程式の左辺(あるいは右辺)に寄せ、W関数で解を表現できる の形にすることである。例えば、方程式 を解くには、両辺に を掛け、を得る。
ここで、両辺のW関数をとれば、、即ち となる。
同様の方法で、xx = z の解は、 テンプレート:Indent あるいは テンプレート:Indent となる。
複素数の無限回の累乗 テンプレート:Indent が収束するとき、ランベルトのW関数を用いれば、その極限値を次のように表現できる。 テンプレート:Indent ただし、log(z) は複素対数函数の主値とする。
一般化
通常のランベルト テンプレート:Mvar は テンプレート:Mvar に関する テンプレート:Numblk の形(ただし、テンプレート:Math は実定数)の「超越代数」方程式の厳密解 テンプレート:Math を記述することができる。
ランベルト テンプレート:Mvar 函数の一般化[11][12][13][14]として以下のようなものを挙げることができる:
- 低次元における一般相対論および量子力学(量子重力)(実は、両分野の繋がりは、以前には知られていなかった[15])への応用では、式 テンプレート:EquationNote の右辺を今度は テンプレート:Mvar の二次多項式とした
- を考える。ここで、この二次多項式の根 テンプレート:Math は相異なる実定数とする。この方程式の解は一つの引数 テンプレート:Mvar を持つ函数だが、テンプレート:Mvar や テンプレート:Math のような項は解函数のパラメータとして働く。そのような側面で見れば、この一般化は超幾何函数やテンプレート:仮リンクを作るのと似たような方式とも思えるが、これらの函数とは異なる「クラス」に属する。テンプレート:Math のときは、式 テンプレート:EquationNote の両辺は因数分解できて、テンプレート:EquationNote に帰着されるから、解函数も通常の テンプレート:Mvar 函数に還元される。式 テンプレート:EquationNote はディラトン場を支配する方程式を表すから、それにより不等静止質量の場合に対する テンプレート:Math-次元(空間一次元・時間一次元)における テンプレート:仮リンクあるいは「直列」(lineal) 二体重力問題の計量や、一次元の不等電荷に対する量子力学的テンプレート:仮リンクの固有エネルギーが導かれる。
- 量子力学的テンプレート:仮リンクの特別の場合、具体的には(三次元)水素分子イオン[16]の固有エネルギーの解析解の場合、今度は式 テンプレート:EquationNote の(あるいは式 テンプレート:EquationNote の)右辺を テンプレート:Mvar に関する無限次多項式の比とした
- を考える。各 テンプレート:Mvar は実定数、テンプレート:Mvar は固有エネルギーと核間距離 テンプレート:Mvar の函数である。式 テンプレート:EquationNote は、その特別の場合として式 テンプレート:EquationNote および テンプレート:EquationNote も含めて、テンプレート:仮リンクの成す大きなクラスに関係する。
(1)式で表現される標準的な場合においても、原子・分子・光物理学[17] などの分野>からリーマン仮説[18]に対するKeiper-Li基準に至るまで、ランベルトのW函数の応用分野についての議論は十分尽くされたとは言えていない。
複素平面上のグラフ
- Plots of the Lambert W function on the complex plane
-
Superimposition of the previous three plots
数値的評価
テンプレート:Mvar 函数はニュートン法を用いて近似することができて、テンプレート:Math(したがって テンプレート:Math)に対する逐次近似は
として与えられる。また、テンプレート:仮リンク を用いた近似
を テンプレート:Harvtxt は テンプレート:Mvar の計算において与えている。
ソフトウェア実装
テンプレート:Mvar 函数の実装は:
- Mapleの
LambertW[19]、 - GPの
lambertw(PARIではglambertW)、 - MATLABの
lambertw[20]、 - GNU Octaveのspecfunパッケージの
lambertw[21]、 - Maximaの
lambert_w[22]、 - Mathematicaの
ProductLog(別名としてLambertWが用意されているテンプレート:要出典)[23]、 - SciPyの特殊関数パッケージの
lambertw[24]、 - GNU Scientific Libraryの
gsl_sf_lambert_W0とgsl_sf_lambert_Wm1関数[25]
などがある。
関連項目
脚注
参考文献
- テンプレート:Cite journal
- テンプレート:Cite journal
- テンプレート:Cite journal (Lambert function is used to solve delay-differential dynamics in human disease.)
- テンプレート:Cite journal
- テンプレート:Dlmf
- テンプレート:Cite journal
- Veberic, D., "Having Fun with Lambert W(x) Function" arXiv:1003.1628 (2010); テンプレート:Cite journal
- テンプレート:Cite journal
外部リンク
- National Institute of Science and Technology Digital Library - Lambert W
- テンプレート:MathWorld
- Computing the Lambert W function
- Corless et al. Notes about Lambert W research
- GPL C++ implementation with Halley's and Fritsch's iteration.
- Special Functions of the GNU Scientific Library - GSL
- An implementation of the Lambert W function for C99
- ↑ テンプレート:Citation.
- ↑ 2.0 2.1 テンプレート:Cite journal
- ↑ Lambert JH, "Observationes variae in mathesin puram", Acta Helveticae physico-mathematico-anatomico-botanico-medica, Band III, 128–168, 1758 (facsimile)
- ↑ Euler, L. "De serie Lambertina Plurimisque eius insignibus proprietatibus." Acta Acad. Scient. Petropol. 2, 29–51, 1783. Reprinted in Euler, L. Opera Omnia, Series Prima, Vol. 6: Commentationes Algebraicae. Leipzig, Germany: Teubner, pp. 350–369, 1921. (facsimile)
- ↑ テンプレート:Cite journal
- ↑ Approximation of the Lambert W function and the hyperpower function, Hoorfar, Abdolhossein; Hassani, Mehdi.
- ↑ http://www.emis.de/journals/JIPAM/images/107_07_JIPAM/107_07_www.pdf
- ↑ テンプレート:Cite journal
- ↑ テンプレート:MathWorld
- ↑ テンプレート:Citation
- ↑ テンプレート:Cite journal
- ↑ テンプレート:Cite journal
- ↑ テンプレート:Cite journal
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- ↑ テンプレート:Cite journal
- ↑ テンプレート:Cite journal
- ↑ テンプレート:Cite journal
- ↑ テンプレート:Cite journal
- ↑ LambertW - Maple Help
- ↑ lambertw - MATLAB
- ↑ Function Reference: lambertw
- ↑ Maxima, a Computer Algebra System
- ↑ ProductLog at WolframAlpha
- ↑ [1]
- ↑ [2]