交換子部分群

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数学、特に抽象代数学における交換子部分群(こうかんしぶぶんぐん、テンプレート:Lang-en-short)あるいは導来部分群(どうらいぶぶんぐん、テンプレート:Lang-en-short)とは、交換子全体が生成する部分群であるテンプレート:Sfnテンプレート:Sfn

交換子部分群はアーベル群となる最小の正規部分群であるという点で重要である。すなわち、商 テンプレート:Math がアーベル群となる必要十分条件は正規部分群 テンプレート:Math が交換子部分群を含むことである。ある意味で交換子部分群はアーベル群との差異を表していて、交換子部分群が大きいほどアーベル群との隔たりが大きいと言える。

交換子

テンプレート:Mainテンプレート:Math の元 テンプレート:Math に対し、テンプレート:Mathテンプレート:Math との交換子とは元

[x,y]=x1y1xy

のことである。(交換子を テンプレート:Math と定義する流儀もある。)群の元 テンプレート:Mathテンプレート:Math とが可換である(つまり テンプレート:Math が成り立つ)必要十分条件は交換子 テンプレート:Math が単位元 テンプレート:Math と等しいことである。可換とは限らない一般の場合には テンプレート:Math が成り立つ。

テンプレート:Mvar の元 テンプレート:Mvar が交換子であるとは、適当な元 テンプレート:Math を取って テンプレート:Math と書けることを言う。単位元 テンプレート:Math は常に交換子であり、これが唯一の交換子となるための必要十分条件は テンプレート:Mathアーベル群であることである。

ここに単純だが有用な交換子恒等式を挙げる。以下 テンプレート:Math は群 テンプレート:Math の元とする。

前の二つは テンプレート:Math の交換子全体の成す部分集合が反転と共役に関して閉じていることを示すものである。三つ目の式で テンプレート:Math と取れば、交換子全体の成す部分集合が テンプレート:Math の任意の準同型で閉じていることを示すものとなる。この三つ目は実は二つ目の等式の一般化であり、実際に自己準同型 テンプレート:Mvar として共役変換 テンプレート:Math を取れば二つ目が出る。

しかし交換子二つ以上の積は必ずしも交換子とは限らない。一般的な例として、自由群の元 テンプレート:Math に対して交換子の積 テンプレート:Math が交換子に書けないことを見ればよい。二つの交換子の積が交換子とならない最小位数の有限群は位数 96 であることが知られており、実はこの性質を持つ位数 96 の群は互いに同型でないものが二種類存在するテンプレート:Sfn。一方で、たとえば有限非可換単純群の場合には交換子の積は交換子で表せる——実際にはすべての元が交換子で表せる(Ore予想[1])——ことが知られている。

定義

一般に交換子が積で閉じていないことが次の定義に繋がる。群 テンプレート:Mvar の交換子全体が生成する部分群

[G,G]={[x,y]x,yG}

テンプレート:Mvar交換子部分群という。これを導来部分群と呼ぶこともある。交換子部分群を表す記号としては他にも

G,G(1),γ2(G),D(G)

などが慣習的に用いられることがある。交換子の逆元も交換子なので、交換子部分群 テンプレート:Math の任意の元は有限個の交換子の積

[x1,y1][x2,y2][xn,yn]

の形に書くことができる。さらに共役に関しては、

([x1,y1][xn,yn])z=[x1z,y1z][xnz,ynz]

が成立するから、交換子部分群は テンプレート:Math正規部分群になる。また任意の準同型 テンプレート:Math に対して

φ([x1,y1][xn,yn])=[φ(x1),φ(y1)][φ(xn),φ(yn)]

が成立するから、交換子部分群の準同型写像による像は交換子部分群に含まれる。これにより、交換子部分群を作る操作は群のにおける函手と見ることができる(これについて、いくらかは後述する)。また、さらに テンプレート:Math と取れば、交換子部分群は テンプレート:Math の任意の自己準同型に関して保たれることがわかる。すなわち、交換子部分群 テンプレート:Mathテンプレート:Mathテンプレート:仮リンクであり、これは単に正規であるというよりも非常に強い性質である。

交換子部分群は、群 テンプレート:Math の元 テンプレート:Math を積の形 テンプレート:Math に書くとき、右辺の積の順番を適当に交換して単位元にすることができるような元 テンプレート:Math の全体で生成される部分群として定義することもできる。

導来列

導来群を作る操作を繰り返して

G(0):=G
G(n):=[G(n1),G(n1)](n)

と定義する。このとき部分群 テンプレート:Mathテンプレート:Mvar 次導来部分群、降テンプレート:仮リンク

G=G(0)G(1)G(2)

導来列 (derived series) と呼ぶ。これとテンプレート:仮リンクとを混同してはならない。降中心列の各項は テンプレート:Math であって、テンプレート:Math ではない。

有限群の場合には、導来列はテンプレート:仮リンク (perfect group) で終わる(これは自明な場合も自明でない場合もある)。無限群の場合、導来群は必ずしも有限項で終わるとは限らず、超限再帰によって無限順序数項まで続けることができて超限導来列 (transfinite derived series) となることもあるが、最終的には群のテンプレート:仮リンクで終わる。

アーベル化

テンプレート:Math とその正規部分群 テンプレート:Math に対し、剰余群 テンプレート:Mathアーベル群となる必要十分条件は テンプレート:Math が交換子部分群 テンプレート:Math を含むことである。

剰余群 テンプレート:Math は群 テンプレート:Mathアーベル化と呼ばれるアーベル群である。また剰余群としてアーベル化を得ることを、テンプレート:Math をアーベル化すると言うテンプレート:Sfnテンプレート:Math のアーベル化は テンプレート:Mathテンプレート:Math と書かれるのが普通である。

標準的な全射 テンプレート:Math には有用な圏論的解釈がある。つまり テンプレート:Mvar

群からアーベル群への群準同型に対する普遍性
任意のアーベル群 テンプレート:Math と群準同型 テンプレート:Math に対し、群準同型 テンプレート:Mathテンプレート:Math を満たすものが一意的に存在する。

を満たす。普遍性からアーベル化 テンプレート:Math自然同型を除いて一意的である。また存在性は具体的な構成 テンプレート:Math からわかる。このアーベル化函手は、アーベル群の圏から群の圏への包含函手の左随伴である。一方で群の中心はこのような函手性を持たない。

これとは別の、アーベル化 テンプレート:Math の重要な解釈は、テンプレート:Math の一次の整数係数ホモロジー群 テンプレート:Math と見做すことである。

関連する群のクラス

任意の テンプレート:Math に対して、テンプレート:Math 次導来部分群がテンプレート:Math となる群は非可解群と言う。

外部自己同型群からの準同型

導来部分群は特性部分群ゆえ、テンプレート:Math の任意の自己同型はそのアーベル化の自己同型を引き起こす。また、アーベル化はアーベル群ゆえ、内部自己同型は自明に作用する。従って準同型定理から準同型写像

Out(G)Aut(Gab)

が得られる。

脚注

テンプレート:脚注ヘルプ テンプレート:Reflist

参考文献

関連項目

外部リンク

テンプレート:Normdaten