冪零群
テンプレート:Group theory sidebar 群論における冪零群(べきれいぐん、テンプレート:Lang-en-short)は、「ほとんど」アーベルな群である。この概念は、冪零群が可解群となるという事実に裏打ちされ、有限冪零群に対して位数が互いに素な二元は可換となる。有限冪零群はさらにテンプレート:Ill2でさえある。冪零群の概念の創始は1930年代におけるロシア人数学者テンプレート:Ill2の業績に帰せられる[1]。
冪零群はガロワ理論において、また群の分類理論において、用いられる。あるいはまた、リー群の分類においても顕著である。
冪零あるいは降中心列・昇中心列といった用語は、(導来群を作る操作を、リー括弧積で代用した類似概念を用いて)リー環の理論においても用いられる(冪零リー環の項を参照)。
定義
テンプレート:See also 考えている群が冪零であるとは、以下の同値な条件の何れか(したがってすべて)を満足するときに言う:
- 有限の長さのテンプレート:Ill2を持つ。それはすなわち、正規部分群からなる有限の系列 であって、テンプレート:Math あるいは同じことだが テンプレート:Math となるものである。
- テンプレート:Ill2が有限の長さで自明群に到達する。すなわち、テンプレート:Math および テンプレート:Math によって定まる正規部分群の系列でとできる。
- テンプレート:Ill2が有限の長さでもとの群に到達する。すなわち、テンプレート:Math および テンプレート:Math は テンプレート:Math なる テンプレート:Mvar の部分群と定めるとき、得られる正規部分群の系列でとできる。
冪零群 テンプレート:Mvar に対して、テンプレート:Mvar が長さ テンプレート:Mvar の中心列を持つとき(定義により、長さ テンプレート:Mvar を持つとは中心列に自明群と テンプレート:Mvar 自身を含めて テンプレート:Math 個の部分群が並ぶときに言う)、そのような テンプレート:Mvar の最小値を テンプレート:Mvar の冪零度 (nilpotency class; 冪零性の等級) と呼び、また テンプレート:Mvar は冪零度 テンプレート:Mvar の冪零群であるという。テンプレート:Mvar の冪零度は、降中心列または昇中心列を用いても同じ値が定められる。テンプレート:Efn
冪零度を上記のどの仕方で定義したとしても、直ちにわかることに「自明群が冪零度零の唯一の群である」ことおよび「冪零度 テンプレート:Math の群は非自明なアーベル群である」ことが挙げられるテンプレート:Sfnテンプレート:Sfn
例

- 既に述べたように、任意のアーベル群は冪零であるテンプレート:Sfnテンプレート:Sfn。
- 小位数の非アーベルな例として、最小の非アーベル [[p群|テンプレート:Mvar-群]]であるテンプレート:Ill2 テンプレート:Math を挙げることができる。その中心は位数 テンプレート:Math の テンプレート:Math であり、昇中心列 テンプレート:Math が得られるから、これは冪零度 テンプレート:Math の例ということになる。
- 実は任意の有限 [[p-群|テンプレート:Mvar-群]]が冪零である。位数 テンプレート:Mvar の テンプレート:Mvar-群に対し、最大の冪零度は テンプレート:Math である。冪零度最大の テンプレート:Math-群は、四元数群、二面体群あるいはテンプレート:Ill2の一般化と考えられる。
- 二つの冪零群の直積はまた冪零であるテンプレート:Sfn。
- 逆に、任意の有限冪零群は テンプレート:Mvar-群の直積になるテンプレート:Sfn。
- ハイゼンベルク群は非アーベルテンプレート:Sfn無限冪零群の例であるテンプレート:Sfn。
- 任意の体 テンプレート:Mvar 上の テンプレート:Mvar-次テンプレート:Ill2(単上三角行列)全体の成す乗法群は、冪零度 テンプレート:Math のテンプレート:Ill2である。
- テンプレート:Mvar 上の テンプレート:Mvar-次テンプレート:Ill2は一般には冪零群でない(が、可解群ではある)。
用語の説明
冪零群の名称は、それが任意の元による「随伴作用」が冪零となることによる。つまり、冪零度 テンプレート:Mvar の冪零群に対して、その元 テンプレート:Mvar の定める作用 が テンプレート:Mvar に依らずテンプレート:Mvar 回反復合成で自明となる(ここで、テンプレート:Math は テンプレート:Mvar の交換子である)。
これは冪零群を定義可能な特徴づけとはなっていない。実際、(既にみたように冪零度 テンプレート:Mvar の)随伴作用素 テンプレート:Math 全体の成す群は テンプレート:Mvar-次テンプレート:Ill2テンプレート:Efnと呼ばれ、一般には冪零群でない。位数有限ならば冪零であることが示され、有限生成ならば冪零であろうと予想されている。
アーベル群はちょうど、そのような群で随伴作用が冪零でも自明でもないもの(テンプレート:Math-次エンゲル群)になっている。
性質
昇中心列の連続する部分群による各剰余群 テンプレート:Math はアーベル群であり、かつ列は有限であるから、任意の冪零群は比較的単純な構造を持つ可解群である。
冪零度 テンプレート:Mvar の冪零群の任意の部分群は、冪零度高々 テンプレート:Mvar であるテンプレート:Sfn。加えて、テンプレート:Mvar が冪零度 テンプレート:Mvar の冪零群上の準同型ならば、テンプレート:Mvar の像は冪零度高々 テンプレート:Mvar の冪零群になるテンプレート:Sfn。
有限群に対して以下は同値テンプレート:Sfnであり、冪零性の有効性が顕わになる:
- (a) テンプレート:Mvar は冪零群である。
- (b) 正規化性質: テンプレート:Mvar が テンプレート:Mvar の真の部分群ならば、テンプレート:Mvar は(テンプレート:Mvar の テンプレート:Mvar における)正規化群 テンプレート:Mvar の真の正規部分群になる。
- (c) テンプレート:Mvar の任意のシロー部分群は正規部分群である。
- (d) テンプレート:Mvar はそのシロー部分群の直積である。
テンプレート:Math proof 最後の性質 (d) は無限群の場合にも拡張することができる:
- 命題
- テンプレート:Mvar が冪零群ならば、テンプレート:Mvar の任意のシロー テンプレート:Mvar-部分群 テンプレート:Mvar は正規であり、それらシロー部分群の直積は テンプレート:Mvar における位数有限な元全体の成す部分群に一致する。
冪零群の性質の多くはテンプレート:Ill2と共通している。
注
注釈
出典
参考文献
- テンプレート:Cite book
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