等化子

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数学における等化子(とうかし、テンプレート:Lang-en-short)は、与えられた複数の写像に対してそれらの値が等しくなるような引数全体の成す集合を言う。従って各等化子は特定の形の方程式のテンプレート:仮リンクとして得られる。特定の文脈では、ちょうど二つの写像の等化子を、それら写像の差核 (difference kernel) と呼ぶ。

定義

集合 テンプレート:Mvar と二つの写像 テンプレート:Math に対し、テンプレート:Mvarテンプレート:Mvar との等化子(ここでは テンプレート:Math と書く)とは、テンプレート:Mvar において テンプレート:Math が成り立つような テンプレート:Math 全体の成す集合、記号で書けば

Eq(f,g):={xXf(x)=g(x)}

を言う。等化子を表す記号は文脈によって違いうるが、例えば情報理論の文脈ではふつう テンプレート:Math という記法が用いられる。

上記定義においては テンプレート:Mvar 二つの写像しか用いていないが、二つと限らず、さらに言えば有限個と限らず無数の写像に対してそれらの等化子を定義することができる。一般に、テンプレート:Mvar から テンプレート:Mvar への写像からなる任意の集合 テンプレート:Mvar に対し、テンプレート:Mvar のどの二元 テンプレート:Mvar に対しても テンプレート:Mvar において テンプレート:Math が成り立つような テンプレート:Math 全体の成す集合

Eq():={xXf,g,f(x)=g(x)}

テンプレート:Mvar(に属する元たち)の等化子と呼ぶ。これは テンプレート:Math のような集合であるときには テンプレート:Math のように書くこともできる。情報理論の文脈では テンプレート:Math のようにも書かれる。

この一般化した定義において テンプレート:Mvar単元集合 テンプレート:Math退化した場合を考えると、テンプレート:Math は常に自分自身と等しいから、その等化子は テンプレート:Math となる。さらに退化して テンプレート:Mvar空集合 テンプレート:Mvar のときは、定義におけるテンプレート:仮リンク自明な意味で真となるから、やはり定義域全体 テンプレート:Math となる。

差核

二変数の等化子(つまり、ちょうど二つの写像の等化子)は差核とも呼ばれ、テンプレート:Math などのようにも書かれる。最後の記法は「テンプレート:Mvar の差核とは単に差 テンプレート:Mathのことである」ことによるもので、この用語の由来でもあり、これが抽象代数学の文脈で後半に現れる理由を説明するものである。さらに言えば、単一の写像 テンプレート:Mvar に対する核は、零写像すなわち値 テンプレート:Math定値写像との差核 テンプレート:Math として定式化しなおすことができる。

もちろんこれらの議論は写像の核が テンプレート:Math逆像となっているような代数学的な文脈でのことであって、どんな場合にも成り立つというわけではないが、「差核」という用語法に他意はない。

圏論における等化子

等化子は普遍性によって定義することもできるので、集合の圏から任意のに一般化することができる。この一般の文脈において、テンプレート:Mvar は想定する圏の対象であり、テンプレート:Math はその圏の射である。等化子は単に、これら対象と射からなる特定の図式極限として定義される。

より明示的に書けば、等化子は適当な対象 テンプレート:Mvar と射 テンプレート:Mathテンプレート:Math を満たすものの組 テンプレート:Math であって、普遍性「任意に対象 テンプレート:Mvar と射 テンプレート:Math の組 テンプレート:Mathテンプレート:Math を満たすものが与えられたとき、射 テンプレート:Math で図式

等化子の普遍性
等化子の普遍性

を可換にする(すなわち テンプレート:Math を満たす)ものがテンプレート:仮リンクする」を満足するものを言う。射 テンプレート:Mathテンプレート:Math を満たすとき、テンプレート:Mvarテンプレート:Mvar等化する (equalise) という[1]

差核が用いられる圏を含む任意の普遍代数学的圏において、集合の圏のとき同様に、対象 テンプレート:Mvar は常に通常の集合としての等化子として取ることができ、この場合の射 テンプレート:Mathテンプレート:Mvar部分集合としての テンプレート:Mvar に関する包含写像として取ることができる。

この圏論的な定義は二つより多くの射に関するものへ直接的に一般化することができる(単に上記の図式と同様の、複数の射を含むより大きな図式を用いればよい)。退化して一つの射しかない場合も同様で、テンプレート:Math は対象 テンプレート:Mvar から テンプレート:Mvar への任意の同型射として取れる。一方、退化して射が一つもない場合に対する正確な図式は少々微妙である。普通に対象 テンプレート:Mvar からなり射を持たない図式を書くと、この図式の極限は等化子ではなく テンプレート:Mvarテンプレート:Mvarとなる(そして実際に、例えば集合論的に定義した積と上述の如く集合論的に定義した等化子とは一致しないので、積と等化子とは相異なる概念である)から、この図式は等化子に対するものとしては正しくない。そうではなく、テンプレート:Mvar は図式に現れる射の余域に過ぎないのであるから、任意の等化子図式は基本的に テンプレート:Mvar に注目するのが適切なのである。このように見るとき、図式に射がないならば テンプレート:Mvar も図式に現れず、等化子図式は テンプレート:Mvar のみからなり、そしてこの図式の極限は テンプレート:Mvarテンプレート:Mvar の間の任意の同型射となる。

任意の圏において任意の等化子が単型射(圏論的単射)であることが示せる。この逆が与えられた圏において成り立つならば、その圏は(単型射の意味において)正則 (regular) であるという。より一般に、任意の圏におけるテンプレート:仮リンクとは、適当な射集合の等化子と一致するような任意の射 テンプレート:Mvar のことを言う。より狭義に、二項の等化子(つまりちょうど二つの射の等化子)に限って正則と呼ぶ文献もあるが、考えている圏が完備ならば両者の定義は一致する。

差核の概念も圏論的文脈において意味を成し、任意の二項等化子に対して「差核」と呼ぶ用語法は圏論全体を通じて広く用いられる。前加法圏(つまりアーベル群の圏で豊饒化された圏)の場合には射の差が意味を持つから、「差核」という用語は文字通り差の(圏論的な)核 テンプレート:Math として解釈することができる。

ファイバー積 (引き戻し) とを持つ任意の圏は等化子を持つ。

性質

関連項目

テンプレート:Reflist

参考文献

外部リンク

テンプレート:圏論