集合
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集合(しゅうごう、テンプレート:Lang-en-short, テンプレート:Lang-fr-short, テンプレート:Lang-de-short)とは数学における概念の1つで、大雑把に言えばいくつかの「もの」からなる「集まり」である。集合を構成する個々の「もの」のことを元 (げん、テンプレート:Lang-en-short; 要素) という。
集合は、集合論のみならず現代数学全体における最も基本的な概念の一つであり、現代数学のほとんどが集合と写像の言葉で書かれていると言ってよい。
慣例的に、ある種の集合が系 (けい、テンプレート:Lang-en-short) や族 (ぞく、テンプレート:Lang-en-short) などと呼ばれることもある。実際には、これらの呼び名に本質的な違いはないが細かなニュアンスの違いを含むと考えられている。たとえば、方程式系(「相互に連立する」方程式の集合)、集合族(「一定の規則に基づく」集合の集合)、加法族(「加法的な性質を持つ」集合族)など。
導入
テンプレート:JIS2004 集合は「ものの集まり」である[1]。集合の元(要素)として、集められる対象となる「もの」は、数、文字、記号などをはじめ、どんなものでも(当然、集合でも)構わない。
一方で、どんな「集まり」でも集合と呼んでよいわけではない。その「集まり」が集合と呼ばれるためには、対象が「その集まりの元であるかどうかが不確定要素なしに一意に決定できる」ように定義されていなければならない。
例えば、ジョーカーやコマーシャルカードを除いたトランプのスート全体 {♠(スペード), ♦(ダイヤ), ♣(クラブ), ♥(ハート)} やトランプの数字全体 {A, 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8, 9, 10, J, Q, K} は集合の例である(A,J,Q,Kは数字では無いが、多くのトランプゲームでは数字として解釈される。)。トランプはこれらの組
- {(♠, A), ..., (♠, K), (♦, A), ..., (♦, K), (♣, A), ..., (♣, K), (♥, A), ..., (♥, K)}
を符牒とする、4×13=52枚のカードであるが、これもまた集合の一例である。特に、トランプはスートの集合と数字の集合との直積集合と同一視でき、「52」はこの集合の濃度を表している。また、先のスートの集合、数字の集合の濃度はそれぞれ 4, 13 である。
| A | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | J | Q | K | |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| ♠ | (♠,A) | (♠,2) | (♠,3) | (♠,4) | (♠,5) | (♠,6) | (♠,7) | (♠,8) | (♠,9) | (♠,10) | (♠,J) | (♠,Q) | (♠,K) |
| ♦ | (♦,A) | (♦,2) | (♦,3) | (♦,4) | (♦,5) | (♦,6) | (♦,7) | (♦,8) | (♦,9) | (♦,10) | (♦,J) | (♦,Q) | (♦,K) |
| ♣ | (♣,A) | (♣,2) | (♣,3) | (♣,4) | (♣,5) | (♣,6) | (♣,7) | (♣,8) | (♣,9) | (♣,10) | (♣,J) | (♣,Q) | (♣,K) |
| ♥ | (♥,A) | (♥,2) | (♥,3) | (♥,4) | (♥,5) | (♥,6) | (♥,7) | (♥,8) | (♥,9) | (♥,10) | (♥,J) | (♥,Q) | (♥,K) |
個々の集合を表すには、しばしばラテン文字の大文字 A, B, ..., E, F, ..., M, N, ..., S, T, ..., X, Y, ... などを使う[注釈 1]。集合の元はラテン小文字 a, ..., e, ..., m, ..., s, ..., x, ... とすることが多く[注釈 2]、特に集合を表す大文字に対応する小文字を使う。
帰属と包含

集合と元、集合と集合などの間には含んだり含まれたりといった素朴な関係を考えることができる。
- 帰属関係
- 対象 テンプレート:Mvar が集合 テンプレート:Mvar を構成するものの一つであるとき、「テンプレート:Mvar は集合 テンプレート:Mvar に属す」「テンプレート:Mvar は集合 テンプレート:Mvar の要素(あるいは元)である」「集合 テンプレート:Mvar は テンプレート:Mvar を要素として持つ」などといい、テンプレート:Mvar ∈ テンプレート:Mvar あるいは テンプレート:Mvar ∋ テンプレート:Mvar と表す。
- 包含関係
- 2 つの集合 テンプレート:Mvar, テンプレート:Mvar について、テンプレート:Mvar に属する元がすべて テンプレート:Mvar にも属するとき、すなわち テンプレート:Mvar ∈ テンプレート:Mvar ⇒ テンプレート:Mvar ∈ テンプレート:Mvar が テンプレート:Mvar の取り方に依らずに成り立つとき、「テンプレート:Mvar は テンプレート:Mvar の部分集合である」「テンプレート:Mvar は テンプレート:Mvar に集合として含まれる」「テンプレート:Mvar は テンプレート:Mvar を包含する」などといい、テンプレート:Mvar ⊂ テンプレート:Mvar または テンプレート:Mvar ⊆ テンプレート:Mvar あるいは テンプレート:Mvar ⊃ テンプレート:Mvar または テンプレート:Mvar ⊇ テンプレート:Mvar と記す。
帰属関係と包含関係は異なる概念であって、混同してはならない。例えば、テンプレート:Mvar ⊂ テンプレート:Mvar ⊂ テンプレート:Mvar ならば必ず テンプレート:Mvar ⊂ テンプレート:Mvar であるが、テンプレート:Mvar ∈ テンプレート:Mvar ∈ テンプレート:Mvar からは テンプレート:Mvar ∈ テンプレート:Mvar は必ずしも導かれない。また、テンプレート:Mvar ∈ テンプレート:Mvar ⊂ テンプレート:Mvar ならば テンプレート:Mvar ∈ テンプレート:Mvar であるが、テンプレート:Mvar ⊂ テンプレート:Mvar ∈ テンプレート:Mvar からは テンプレート:Mvar ∈ テンプレート:Mvar を帰結することは一般にはできない。
記法
集合の記法には、おおまかに2通りの方法がある。論理的な概念として「内包と外延」というものがあるが、ほぼそれに相当するもので、その要素をすべて列挙するという方法と、その集合に含まれるのであれば必ず満たされ、含まれないのであれば必ず満たされない条件を明示するという方法である。
「外延」に相当する、すべて列挙する方法では、例えば、1, 3, 5, 7, 9 からなる集合は、
と表記する。
「内包」に相当する、属するために満たすべき条件を明示する方法では、例えば、10 未満の正の奇数全体の集合を、
- { テンプレート:Mvar | テンプレート:Mvar は 10 未満の正の奇数 }
と表記する。一般に、条件 テンプレート:Mvar(テンプレート:Mvar) があったとき、それをみたす対象だけを全て集めた集合を、
と表記する。ここでは テンプレート:Mvar という変数を用いているが、{ テンプレート:Mvar | テンプレート:Mvar(テンプレート:Mvar)} と書いても { テンプレート:Mvar | テンプレート:Mvar(テンプレート:Mvar)} と書いても構わない。set-builder notation(en:Set-builder notation)やset comprehension、日本語では内包表記などとも言う。前述のようにそれぞれ、論理的な概念の外延と内包に由来するものであり日本語圏では数学分野でも今もそれらの語がよく使われているが、英語圏ではそれぞれの原語であるextensionとintensionはこの分野では今はあまり見なくなっている。
条件 テンプレート:Mvar(テンプレート:Mvar) は「テンプレート:Mvar が テンプレート:Mvar の元であって、さらに条件 テンプレート:Mvar(テンプレート:Mvar) を満たす」というような形で与えられることが多い[注釈 3]が、このとき定まる集合を {テンプレート:Mvar | テンプレート:Mvar ∈ テンプレート:Mvar かつ テンプレート:Mvar(テンプレート:Mvar)} のように書く代わりに、しばしば簡単に
などと略記する。集合 {テンプレート:Mvar ∈ テンプレート:Mvar | テンプレート:Mvar(テンプレート:Mvar)} は テンプレート:Mvar の部分集合となる。また、条件 テンプレート:Mvar(テンプレート:Mvar) が「条件 テンプレート:Mvar(テンプレート:Mvar) を満たすようなある テンプレート:Mvar を用いて テンプレート:Mvar = テンプレート:Mvar(テンプレート:Mvar) と表すことができる」というような形のときは、集合 { テンプレート:Mvar | テンプレート:Mvar(テンプレート:Mvar)} を
のように表すこともある。
要素を外延的に書きつくせないような集合、例えば自然数全体の集合を
のように書き表すこともあるが、"..." による省略部分は誤解を生じる余地があるため、このような記法はその省略された内容の意味が明らかである場合に限られる。
外延性の公理
テンプレート:Mvar, テンプレート:Mvarを任意の集合とするとき、もし任意の集合テンプレート:Mvarについて「テンプレート:Mvarがテンプレート:Mvarの要素であるならば、そのときに限りテンプレート:Mvarはテンプレート:Mvarの要素である」が成り立つならば、テンプレート:Mvarとテンプレート:Mvarは等しい、とする。すなわち、
である。 テンプレート:See 直感的な説明としては、たとえば、 {1, 3, 5, 7, 9} と { テンプレート:Mvar | テンプレート:Mvar は 10 未満の正の奇数 } は異なる表現だが、どちらも自然数 1, 3, 5, 7, 9 を要素とする集合であるので、等しい集合だとする、ということである。
特別な集合
数学では、1 つも要素を持たないような集合も考える。外延性の原理によれば、このような集合はただ一つしか存在しないので、これを空集合 (テンプレート:Lang-en-short) といい ∅ で表す。∅ は任意の集合 テンプレート:Mvar の部分集合である。なぜなら、任意の対象 テンプレート:Mvar に対して テンプレート:Mvar ∉ ∅ より テンプレート:Mvar ∈ ∅ ⇒ テンプレート:Mvar ∈ テンプレート:Mvar は真だからである。空集合の他にも決まった記号によって表される集合がいくつかある。日常的には一個だけ要素を持つものは集合とは呼ばれないが、数学ではそれも集合と呼ぶ(英語のsetやフランス語のensembleも日常的な用語では空集合や一個だけの集合に対しては使われない。) :
濃度
テンプレート:Main 有限個の元からなる集合を有限集合 (ゆうげんしゅうごう、テンプレート:Lang-en-short) と呼び、集合 テンプレート:Mvar の元の個数を #(テンプレート:Mvar), |テンプレート:Mvar|, card(テンプレート:Mvar) などの記号で表すことが多い。有限集合でない集合を無限集合 (むげんしゅうごう、テンプレート:Lang-en-short) という。無限集合に対しても「個数」の概念を広げて、濃度 (のうど、テンプレート:Lang-en-short) 、または基数 (きすう、テンプレート:Lang-en-short, テンプレート:Lang-en-short) というものを考える。個数を数える代わりに、ある集合を使って、その元で別の集合をラベル付け (テンプレート:Lang-en-short; 添字付け) して、一対一の対応がとれるかどうかを調べるのである。そうすると有限集合の濃度はちょうど元の個数で決まるので、ちゃんと無限集合への「個数」の拡張となる概念が定まっていることが確認できる。
無限集合はどれも「無限個」の元を持っているわけだが、どの無限もみな同じというわけではなく、濃度の概念ではたくさんの無限を区別して扱うことになる。たとえば、自然数と有理数が同じ濃度を持つ、自然数と実数は真に異なる濃度を持つといったような事実は数学を学ぶ者にとってよく知られた内容である。同様の事実に、平面 テンプレート:Mvar2 と数直線 テンプレート:Mvar は同じ濃度を持ち、平面を覆いつくす平面充填曲線と呼ばれる不思議な平面曲線が何種類も存在することが述べられる。より次元の高い空間でも同様で、空間を埋め尽くす空間充填曲線が構築される。異なる次元をもつ空間が同じ濃度をもつというのは、次元や濃度が一方が他方を測るようなものではない異なる尺度であることを表しているのである。
集合の演算
いくつかの集合を扱い、その関係性について論じるとき、もともと考えていた集合たちから新しい集合を作って調べるというのは有効な手段の一つである。これらの操作は、集合に対する演算と見なすことによって、集合族に関するいくつかの代数系を提供する。それらの代数系を抽象代数系と見なせば、抽象代数学の一般論を適用することでまたいくつかの概念を提供することになる。
基本的な集合演算
- 結び・合併・和
- テンプレート:Main

結びの模式図 - 二つの集合を「くっつけ」て一緒にしてしまうことで新しい集合を取り出すことができる。加法的な集合族の基本となる演算のひとつ。和集合。
- 交わり・交叉・積
- テンプレート:Main

交わりの模式図 - 二つの集合の共通した部分を見つけることで、新しい集合を取り出すことができる。乗法的な集合族の基本となる演算。共通部分。
- 差・相対補
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差集合の模式図 - 二つの集合のうちの一方の集合について、それに帰属する元のうち、同時に他方にも含まれる元を取り除いて新しい集合を作ることができる。差は一方と他方の補集合との交わりであり、乗法的な演算である。
- 補・絶対補
- テンプレート:Main

補集合の模式図 - 全体集合(普遍集合)が与えられ、任意の集合は全体集合の部分集合であるという仮定のもとで、一つの集合の全体からの差。勝手な集合はその補集合と交わりを持たず、それらの和は全体集合に一致する。
- 対称差
- テンプレート:Main

対称差の模式図 - 二つの集合の結びに帰属する元から、その交わりに属する元を取り除いて新しい集合を考えることができる。これは結びから交わりを引いた差である。結びと同様に加法的な演算。
指示関数はこれらの集合演算を 0 と 1 からなる世界の代数的な演算に置き換える手段を与える。
その他の演算
もとの全体集合の中に演算結果を求めるのではなく、むしろ引数となる集合たちをもとに新しい集合を作り出すことを目的とする演算もある。
- 冪
- テンプレート:Main

三元集合の冪の模式図 - 与えられた集合に対して、その冪集合とは与えられた集合に包含される集合全体の集合である。ある集合の冪集合はその集合の部分集合からなる集合族のなかで最大のものであると言っても同じである。
- 直積
- テンプレート:Main

直積の模式図 - 二つの集合に対し、それぞれに帰属する元の順序対を要素とする集合を作ることができる。
- 直和・非交和
- テンプレート:Main
- 二つの集合の、交わりを持たない和。
- 配置集合・写像空間
- テンプレート:Main
- ある集合から別の集合への写像を一つの元と見なすならば、その全体として新たな集合が見出される。直積集合は、順序数の各元に任意の集合を対応させる写像からなる配置集合と見ることもできる。
- 商
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集合の類別の模式図 - 集合に同値関係を与えるとき、各類をその要素とする集合を考えることができる。
いくつかの集合族
集合からなる族 テンプレート:Math を考える。テンプレート:Math が集合演算についていくつかの性質を満たすとき、それらには特別の名前が与えられることがある。
- テンプレート:Math が(有限)交叉について閉じているとき テンプレート:仮リンクであるといい、π-系が空集合を含むとき乗法族である[2]という[注釈 4](ディンキン族も参照)。さらに可算交叉について閉じているとき δ-乗法族であるという。また、乗法族が包含関係を持つ任意の二つの集合に対し、一方から有限回の非交和を行って他方へ達する列を持つとき集合半環という。
- テンプレート:Math が(有限)和と(有限)交叉について閉じているとき、集合の束あるいは集合環という。テンプレート:Math が空集合でなく(あるいは空集合を元として含み)、和と差について閉じている(あるいは同じことだが対称差と交叉について閉じている)場合に限って集合環と呼ぶ場合もある。さらに可算交叉について閉じていれば δ-集合環、可算和について閉じていれば σ-集合環という。また、これらが全体集合を含むならば代数あるいは体という。δ-集合体は σ-集合体である。
- テンプレート:Math が空集合を含み、(有限)和および補について閉じているとき加法族、特に有限加法族であるという。さらに可算和について閉じているならば完全加法族という。集合族 テンプレート:Math が加法族であることは集合体であることと等価であり、同様に完全加法族は σ-集合体の別名である。
- 単調族は包含関係に関する単調列の極限について閉じている集合族
- ディンキン族(d-族、δ-族)は全体集合を含み、包含関係を持つ集合同士の差について閉じていて、可算増大列の極限について閉じている。λ-系は全体集合を含み、補について閉じていて、可算非交和について閉じている。この二つは同じ概念を定める。
- ラミナ族はそれに属する任意の集合 テンプレート:Mvar が テンプレート:Math または テンプレート:Math または テンプレート:Math の何れか一つのみを満たす。
- ブール代数
脚注
注釈
出典
関連項目
外部リンク
テンプレート:集合論
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