モノイド圏
テンプレート:Confuse 数学におけるモノイド圏(モノイドけん、テンプレート:Lang-en-short; モノイド的圏、モノイダル圏)あるいはテンソル圏(テンソルけん、テンプレート:Lang-en-short)は、(自然同型の違いを除いて結合的なテンプレート:仮リンク テンプレート:Math と、テンプレート:Math について(再び自然同型の違いを除いて)左および右単位元となる対象 テンプレート:Mvar を備えた圏 テンプレート:Math である。この圏における自然同型は、関連する全ての図式を可換にすることを保証したテンプレート:仮リンク(一貫性条件、整合条件)に従わなければならないテンプレート:Sfn。したがって、モノイド圏は抽象代数におけるモノイドの圏論的な緩い類似物である。
ベクトル空間、アーベル群、テンプレート:Mvar-加群、テンプレート:Mvar-多元環などの間に定義される通常のテンソル積は、それぞれの概念に付随する圏にモノイド構造を与える。ゆえにモノイド圏をこれら、あるいは他の例の一般化として見ることもできる。
圏論において、モノイド圏はモノイド対象の概念とそれに付随する作用を定義する。また、豊穣圏を定義する際にも使われる。
モノイド圏は圏論以外の分野において多数の応用を持つ。直観的線型論理の multiplicative fragment のモデルを定義し、物性物理学においてトポロジカル秩序相の数学的な基盤を与え、テンプレート:仮リンクは場の量子論やひも理論に応用をもつ。
形式的定義
モノイド圏 テンプレート:Math は、以下に挙げる構造を備える圏 テンプレート:Math を言う:
- テンソル積あるいはモノイド積と呼ばれる双函手 テンプレート:Math,
- モノイド単位あるいは単位対象と呼ばれる対象 テンプレート:Mvar,
- テンソル積が以下の条件を満足するという事実を表す、ある種の整合性条件を満足する三つの自然同型 テンプレート:Mvar および テンプレート:Mvar:
- 結合律: 各三対象 テンプレート:Mvar に対する成分が同型 で与えられる、結合子 (associator) と呼ばれる自然同型 テンプレート:Mvar が存在する。
- 左単位律および右単位律: 成分がそれぞれ で与えられ、それぞれ左単位子、右単位子 (unitor) と呼ばれるふたつの自然同型 λ, ρ が存在する。
ここで、これらの自然変換に対する整合性条件とは次のようなものである。
自然変換 テンプレート:Math が恒等変換である(すなわち結合律、単位律が同型でなく等号で成立する)ようなモノイド圏は、強モノイド圏、狭義モノイド圏、厳密モノイド圏 テンプレート:Lang などと呼ぶ。任意のモノイド圏は、ある強モノイド圏にモノイド同値である。
例
- 有限積を持つ圏は、いずれも積をモノイド積、終対象を単位対象としてモノイド圏の構造を持つ。これをしばしばデカルトモノイド圏と呼ぶ。
- 集合の圏 テンプレート:Math は直積をモノイド積、一元集合を単位対象とするモノイド圏になる。
- 小さい圏の圏 テンプレート:Math はテンプレート:仮リンクとして、テンプレート:仮リンク をモノイド積、単対象離散圏(対象も射もただ一つの圏)を単位対象とするモノイド圏である。
- 双対的に、有限余積を持つ圏は、いずれも余積をモノイド積、始対象を単位対象としてモノイダル圏の構造を持つ。
- 可換環 テンプレート:Mvar 上の加群の圏 テンプレート:Math は加群のテンソル積 テンプレート:Math をモノイド積、テンプレート:Mvar を単位対象としてモノイド圏を成す。
- 特に、体 テンプレート:Mvar 上のベクトル空間の圏 テンプレート:Math は テンプレート:Mvar を単位対象としてモノイド圏の構造を持つ。
- 可換群の圏 テンプレート:Math は整数の加法群 テンプレート:Math を単位対象としてモノイド圏の構造を持つ。
- 可換環 テンプレート:Mvar 上の多元環の圏 テンプレート:Math は テンプレート:Mvar を単位対象としてモノイド圏の構造を持つ。
- 点付き位相空間の圏(の例えばテンプレート:仮リンクに対象を制限したもの)はスマッシュ積をモノイド積、点付き 0-次元球面(つまり相異なる二点)を単位対象としてモノイド圏の構造を持つ。
- 圏 テンプレート:Math 上のテンプレート:仮リンク全体からなる圏は函手の合成をモノイド積、恒等函手を単位対象として強モノイド圏の構造を持つ。
- 任意の圏 テンプレート:Mvar に対してその任意の一対象が張る充満部分圏がモノイドとなるのとまったく同様にして、任意のテンプレート:仮リンク テンプレート:Math に対して任意の対象 テンプレート:Math に対し テンプレート:Mvar の張る テンプレート:Math の充満部分 2-圏はモノイド圏を成す。テンプレート:Math の場合には上で述べた自己函手の圏の例を得る。
- 上に有界な下半束は交わりをモノイド積、最大元を単位対象として強対称モノイド圏の構造を持つ。
性質と関連概念
- 定義の節に挙げられた三つの図式に関する条件から、そのような(すなわち、射が テンプレート:Mvar, 恒等射, テンソル積の組合せからなる任意の)図式の成す大きいクラスが可換となることが従う(やや不正確だが、そのような図式が「すべて」可換となるともいう)。これをマックレーンのテンプレート:仮リンクというテンプレート:Sfn。
- モノイド圏において、抽象代数学における通常のモノイドの概念を一般化する、モノイド対象の一般概念が与えられる。通常のモノイドはちょうど集合の圏 テンプレート:Math におけるモノイド対象である。さらに言えば、任意の厳密モノイド圏は圏の圏 テンプレート:Math における(圏の直積の定めるモノイド構造に関する)モノイド対象と見なすことができる。
- テンプレート:仮リンクとはテンソル積を保つモノイド圏の間の函手を言い、またテンプレート:仮リンクとはそのような(つまりテンソル積と両立する)函手の間の自然変換を言う。
- 任意のモノイド圏は、ただ一つの対象 □ のみを持つテンプレート:仮リンク テンプレート:Math の射対象圏 テンプレート:Math とみなせる。
- 圏 テンプレート:Math がモノイド圏 テンプレート:Mvar で豊饒化されているとは、テンプレート:Math の対象からなる対の間の射の集合という概念を、テンプレート:Math の対象からなる対の間の射の成す テンプレート:Math-対象の概念に置き換えるものである。
テンプレート:Anchors自由強モノイド圏
任意の圏 テンプレート:Math に対して、テンプレート:Math を含む自由強モノイド圏 テンプレート:Math が次のように構成される。
- テンプレート:Math の対象は テンプレート:Math の対象の有限列 テンプレート:Math である。
- テンプレート:Math の対象 テンプレート:Math から テンプレート:Math への射は、テンプレート:Math ならば射の列 テンプレート:Math として定義され、かつ定義されるのはその場合に限る。
- テンプレート:Math の対象 テンプレート:Math と テンプレート:Math のテンソル積は列の結合 テンプレート:Math であり、同様にふたつの射のテンソル積も射の列の結合によって与えられる。
テンプレート:Math を テンプレート:Math に写す作用素 テンプレート:Math は テンプレート:Math 上の強 2-モナドまで拡張することができる。
モノイド圏の特殊化
- モノイド圏において積 テンプレート:Math と テンプレート:Math の間には一貫性条件に整合する形で自然同型が存在するならば、それをテンプレート:仮リンクと呼ぶ。さらにもしこの自然同型が自身を逆に持つならば、テンプレート:仮リンクが得られる。
- 閉モノイド圏はモノイド圏であってそのテンソルをとる函手が右随伴を持つ(それにより「内部射函手」("internal Hom-functor") の概念を生じる)ものをいう。
- テンプレート:仮リンク(あるいはコンパクト閉圏、テンプレート:仮リンク)は、よい性質を持つ双対を持つモノイド圏である。これは有限次元ベクトル空間の圏 テンプレート:Math を抽象化した概念である。
- テンプレート:仮リンクはダガー函手を追加で備えた対称モノイド圏で、有限次元ヒルベルト空間の圏 テンプレート:Math の抽象化である。これにはテンプレート:仮リンクも含まれる。
- 淡中圏は体で豊饒化されたモノイド圏で、線型代数群の表現圏と非常によく似ている。
関連項目
注
参考文献
- テンプレート:Cite journal
- テンプレート:Cite journal
- テンプレート:Cite journal
- テンプレート:Cite book
- テンプレート:Cite journal
- テンプレート:Cite book 日本語訳: テンプレート:Cite book

