アボガドロ定数
テンプレート:物理定数 アボガドロ定数(アボガドロていすう、テンプレート:Lang-en-short )は、国際単位系 (SI)において定義されている定数で、物質量(分子、原子、イオンなどの個数)の単位モル(mol)を定義するために用いられる。記号はテンプレート:Math または テンプレート:Mathで表す[1]。
アボガドロ定数は歴史的には分子量1の分子1グラム分の物質量を想定したもので、2019年まではテンプレート:Valの炭素12に含まれる原子の数として定義されていた。
2019年のSIの改定以降、アボガドロ定数は正確にテンプレート:Valと定義されている[2][3][4]。
物質量の単位モル(mol)は
- モル=粒子の個数/アボガドロ定数
により定義されている。
アボガドロ定数とアボガドロ数
アボガドロ定数を単位 molテンプレート:Sup- で表したときの数値は、アボガドロ数(アボガドロすう)と呼ばれる[5][6]。
すなわち、
- アボガドロ定数(テンプレート:Lang-en-short) テンプレート:Math = テンプレート:Val
- アボガドロ数(テンプレート:Lang-en-short) テンプレート:Val (無次元量)
アボガドロ数は正確に上記の値であるので、24桁の整数であり、正確に、テンプレート:Val である。
歴史

定数の名称は、イタリア出身の化学者、アメデオ・アヴォガドロにちなんだものである。アヴォガドロは、気体の体積は(同一の気圧かつ同一の温度の下では)気体の種類に関わらずそれに含まれる原子または分子の数に比例することを1811年に初めて発見した(アボガドロの法則)[7]。1909年、フランスの物理学者であるジャン・ペランがアヴォガドロにちなんで定数の名前を付けることを提案した[8]。ペランは、いくつかの異なる方法でアボガドロ定数を決定した業績により、1926年にノーベル物理学賞を受賞した[9]。
アボガドロ定数の値は、ドイツの物理学者、ヨハン・ロシュミットによって初めて示された。彼は1865年に、与えられた体積の気体中の粒子の数を計算することと等価の方法によって、空気中の分子の平均直径を推定した[10]。この値、理想気体中の粒子の数密度 n0 は、彼の名前をつけて現在はロシュミット数と呼ばれており、アボガドロ定数 NA とは次の関係がある。
ここで、p0 は圧力、 R は気体定数、 T0 は絶対温度である。ロシュミット数との関連は、アボガドロ定数に使用されることがある記号 L の起源であり、ドイツ語圏においてはアボガドロ定数のことも「ロシュミット数」と呼ぶことがあり、つける単位によって区別をする[11]。
アボガドロ定数を正確に決定するには、同じ測定単位を使用して、原子スケールと巨視的スケールの両方で同一の量を測定する必要がある。これは、1910年にアメリカの物理学者・ロバート・ミリカンが電子の電荷を測定したときに初めて可能になった。電子1モルあたりの電荷はファラデー定数と呼ばれる定数で、マイケル・ファラデーが電解に関する研究を発表した1834年から知られていた。1モルの電子の電荷(ファラデー定数)を1つの電子の電荷(電気素量)で割ることによって、アボガドロ定数の値が得られる[12]。1910年、より新しい計算によりファラデー定数と電気素量の値がより正確に決定された(下記の#測定節を参照)。
ペランは元々アボガドロ数(N)を酸素1グラム分子(周期表の定義によれば正確に32グラム)中の分子の数を指す値として提案した[8]。
1969年のIUPAC総会で「アボガドロ数」から「アボガドロ定数」に名称が変更された。
1971年にモルを国際単位系(SI)の基本単位として導入する[13]のに伴い、アボガドロ数は単なる数ではなく毎モル(mol−1)の単位を有する定数となった。
2018年11月のCGPMの決議により、2019年5月にモルの定義が変更され、その中で「アボガドロ定数」の定義と「アボガドロ数」の定義が明確になった。
2019年の再定義
テンプレート:Main 旧来の定義では、物質量の単位モルの定義はキログラムに関連づけられていた。2019年5月20日から施行された新しい定義では、この関連性を解消し、系に含まれる構成要素の数を定義値とすることでモルを定義する。
- 旧定義: モルは、テンプレート:Valの炭素12に含まれる原子と等しい数の構成要素を含む系の物質量である。モルを使うときは、構成要素が指定されなければならないが、それは原子、分子、イオン、電子、その他の粒子またはこの種の粒子の特定の集合体であってよい。
この新定義を受けて、日本の計量法におけるモルの定義は、次のようになった[14]。 テンプレート:Quotation
この新しい定義によって、モルはキログラムの定義に依存しないものになった。
この再定義により、テンプレート:Chem原子のモル質量、統一原子質量単位(ダルトン)、キログラム、アボガドロ定数の間の関連性はなくなった。
モル質量定数は、以前の定義では正確に 1 g/mol であった。しかし2019年5月20日に、モルの定義が変更されたので、モル質量定数は定義値ではなくなり、実験値となった。その値は、テンプレート:Val である[15]。
また、1 molの炭素12の質量(molar mass of carbon-12)も12 gではなくなり、テンプレート:Val という実験値となった[16]。
測定
現在はSIにおいて不確かさのないアボガドロ定数であるが、定義値となる以前の測定の仕方として、初期のものとしてはヨハン・ロシュミット (テンプレート:De) による気体の分子数の測定(最初の測定、1865年)や、ブラウン運動から求められていたが、定義値となる直近では以下の方法が用いられていた。
- ファラデー定数と素電荷との比から求める。
- プロトン(陽子)の核磁気回転などから求める。
- X線回折と結晶の密度から求める。
- X線と光干渉計を組み合わせた実験による測定(単結晶の格子定数を精密に求める)。
以上のうち、最後の方法が他のものより若干精度的に優れている。問題は現実の結晶には不純物や欠陥があることで、これが格子定数の精度を落としている。いかに完全結晶に近い結晶を作成し、観測するかが求めるアボガドロ定数の精度の鍵となっている[17][18]。
現在の技術で製造可能な結晶中、もっとも不純物が少なく、且つ欠陥も少ない結晶は単結晶シリコンであるテンプレート:要出典。テンプレート:SupSi製単結晶の格子定数 テンプレート:Mvar をテンプレート:仮リンクで計測し、 この単結晶から作った真球の体積と質量から密度 テンプレート:Mvar を計測すると、テンプレート:SupSiのモル質量 テンプレート:Mvar およびシリコン単位格子中の原子数 テンプレート:Mvar を用いて、アボガドロ定数 テンプレート:Math を 10テンプレート:Sup- の相対不確かさで決定できる。この方法により測定された値 テンプレート:Val が2011年1月に発表された[19]。
その他
- 人類の歴史を通じて全ての計算機で行われた演算の回数は,西暦2000年の世紀の変わり目において、およそ1モル回であるというのである。すなわちアボガドロ数 6 × 10テンプレート:Sup (およそ 10テンプレート:Sup とみよう)がその回数である。ここで演算とは and などの論理演算に加えて、たし算、かけ算などを含む基本的な演算のことを指している。[20]
脚注
参考文献
- テンプレート:Cite book
- テンプレート:Cite web フランス語及び英語による完全版
- テンプレート:Cite journal
関連項目
- SI基本単位
- 国際単位系
- ロシュミット数
- モル
- 規定度
- ファラデー定数 - アボガドロ定数と電気素量の積。
- 気体定数 - アボガドロ定数とボルツマン定数の積。
- モルプランク定数 - アボガドロ定数とプランク定数の積。
- モル質量定数 - アボガドロ定数と原子質量定数の積。
- モルの日 - アボガドロ定数に由来する非公式の祝日。10月23日の午前6:02から午後6:02に祝われる。
外部リンク
- ↑ テンプレート:GoldBookRef
- ↑ 国際単位系(SI)第9版(2019)日本語版 国際度量衡局(BIPM)、産業技術総合研究所計量標準総合センター翻訳、pp.96-97,p.102
- ↑ テンプレート:Cite journal
- ↑ テンプレート:Cite journal
- ↑ [[#SI-9ed|Le Système international d'unités 9テンプレート:Sup édition 2019 (v1.06)]], p.21, p.134
- ↑ 国際単位系(SI)第9版(2019)日本語版 国際度量衡局(BIPM)、産業技術総合研究所計量標準総合センター翻訳、p.102 「・・・この数は、アボガドロ定数 テンプレート:Math を単位 mol-1 で表したときの数値であり、アボガドロ数と呼ばれる。」
- ↑ テンプレート:Cite journal English translation.
- ↑ 8.0 8.1 テンプレート:Cite journal Extract in English, translation by Frederick Soddy.
- ↑ Oseen, C.W. (December 10, 1926). Presentation Speech for the 1926 Nobel Prize in Physics.
- ↑ テンプレート:Cite journal English translation.
- ↑ テンプレート:Cite journal
- ↑ テンプレート:Cite web
- ↑ Resolution 3, 14th General Conference on Weights and Measures (CGPM), 1971.
- ↑ 計量単位令の一部を改正する政令案 新旧対照条文、2019年5月14日 別表第一(第二条関係)、項番六、物質量の欄
- ↑ molar mass constant The NIST Reference on Constants, Units, and Uncertainty. US National Institute of Standards and Technology. 2019-05-20. 2018 CODATA recommended values
- ↑ molar mass of carbon-12 The NIST Reference on Constants, Units, and Uncertainty. US National Institute of Standards and Technology. 2019-05-20. 2018 CODATA recommended values
- ↑ テンプレート:Cite web
- ↑ テンプレート:Cite web
- ↑ Andreas (2011).
- ↑ 素数全書 計算からのアプローチ 朝倉書店2010年発行 P6