ゲルマン行列
ゲルマン行列(ゲルマンぎょうれつ, テンプレート:Lang-en-short)とは、3次特殊ユニタリ群テンプレート:Math の無限小変換の生成子をなす8つの複素行列の組[1][2]。テンプレート:Math に付随するリー代数の標準的な基底として、用いられる。ゲルマン行列はハドロンの分類において、テンプレート:Math対称性に基づくテンプレート:仮リンクを提唱した米国の物理学者マレー・ゲルマンによって、導入された[3]。
定義と基本的な性質
次式で定義される8個のテンプレート:Math複素行列の組をゲルマン行列という。
ここで、テンプレート:Math は部分空間に作用するパウリ行列 テンプレート:Math を
の形で含んでおり、ゲルマン行列はパウリ行列の一般化となっている[4]。
ゲルマン行列 テンプレート:Math はエルミート行列かつトレースはゼロとなる。
また、二つのゲルマン行列の積のトレースは正規化されており、次の関係式を満たす[5]。
但し、テンプレート:Mathはクロネッカーのデルタである。
交換関係・反交換関係
ゲルマン行列の交換関係 テンプレート:Math は次のようなゲルマン行列の線形結合で表される。
ここで、テンプレート:Math は添え字 テンプレート:Math について、完全反対称な実係数である。テンプレート:Math のうち、ゼロでないものは、テンプレート:Math を満たすもので代表させて表すと、次のようになる。
一方、反交換関係 テンプレート:Math は次の形をとる。
ここで、テンプレート:Math は添え字テンプレート:Math について、完全対称な実係数である。テンプレート:Math のうち、ゼロでないものをテンプレート:Math を満たすもので代表させて表すと、
SU(3)の生成子
3次特殊ユニタリ群テンプレート:Math は行列式が1となるテンプレート:Mathユニタリ行列から構成される。テンプレート:Math は線形リー群であり、8個のゲルマン行列はその一次独立な生成子である。但し、物理学の慣習により、生成子はエルミート行列になるようにとるため、ゲルマン行列はそれ自身リー代数 テンプレート:Math の元ではなく、ゲルマン行列に テンプレート:Math を乗じたものが テンプレート:Math の元となる。通常、テンプレート:Mathの生成子としては、テンプレート:Math の代わりにテンプレート:Math を乗じた テンプレート:Math が用いられる。
コンパクトで連結なリー群テンプレート:Mathの任意の元はリー環の指数写像によって
の形で与えられる。
ゲルマン行列 テンプレート:Math、 または テンプレート:Math の線形結合で張られる線形空間は交換子積
により、リー代数となり、その構造は
で定まる構造定数 テンプレート:Math で規定される[6]。このリー代数はコンパクト・リー代数であるため、テンプレート:Math は添え字テンプレート:Math について、完全反対称である。
テンプレート:Mathの組は、
と交換子積について閉じており、テンプレート:Mathに対応する部分リー代数をなす。これ以外にもいくつかの組はテンプレート:Mathに対応する部分リー代数をなす。
このリー代数の全ての元と可換になるカシミヤ演算子は
で与えられる。
脚注
参考文献
- George B. Arfken, Hans J. Weber and Frank E. Harris, Mathematical Methods for Physicists (7th ed.) : Academic Press (2012). ISBN 978-0123846549
- H. Georgi, Lie Algebras in Particle Physics: from Isospin To Unified Theories (2nd ed.), Westview Press (1999). ISBN 978-0738202334.
関連項目
- ↑ G.B. Arfken, H.J. Weber and F.E. Harris (2012), chapter.4
- ↑ H. Georgi (1999), chapter.7-9
- ↑ Murray Gell-Mann,"Symmetries of Baryons and Mesons", Phys. Rev. 125, 1067 (1962) テンプレート:Doi
- ↑ パウリ行列は テンプレート:Math の生成子であり、ゲルマン行列は テンプレート:Math の生成子である。
- ↑ リー代数におけるカルタン計量に対応する。
- ↑ テンプレート:Math は交換関係・反交換関係の節で述べたものと同一である。