ダニエル積分

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数学微分積分学周辺領域におけるダニエル積分(ダニエルせきぶん、テンプレート:Lang-en-short)は、初学者が学ぶリーマン積分のようなより初等的な積分の概念を一般化した積分法の一種である。旧来のルベーグ積分の定式化に関して主な障害となっていたのは、積分に対する十分な結果を得るまでに、まずは満足な測度論を展開する必要があったことである。しかし、テンプレート:Harvs ではこの欠点に悩まされることのない別な手法がとられ、旧来の定式化(具体的には、積分の高次元化やさらにスティルチェス積分への一般化など)に対するいくつか特徴的な優位性を見せた。基本的な考え方には、積分の公理化が含まれる。

ダニエルの公理系

ある集合 テンプレート:Mvar 上で定義される有界な実函数の族 テンプレート:Mvar で以下の二つの公理を満たすものをとる(そして テンプレート:Mvar に属する函数を基本函数 テンプレート:Lang と呼ぶ)。

  1. テンプレート:Mvar は通常の(点ごとの)加法とスカラー倍に関して線型空間を成す。
  2. 函数 テンプレート:Mvarテンプレート:Mvar に属するならばその各点の絶対値をとって得られる函数 テンプレート:Mathテンプレート:Mvar に属す。

さらに、テンプレート:Mvar の各函数 テンプレート:Mvar に対して テンプレート:Mvar基本積分 テンプレート:Lang と呼ばれる実数 テンプレート:Mvar を対応させる。ここで基本積分は次の三つの公理を満足するものをいう。

  1. 線型性: テンプレート:Mvar がともに テンプレート:Mvar の元で、テンプレート:Mvar が実数ならばI(αh+βk)=αIh+βIkが成立する。
  2. 非負性: テンプレート:Mvar の元 テンプレート:Mvarテンプレート:Math を常に満たすならば、テンプレート:Math が成立する。
  3. 連続性: テンプレート:Mvar の元の列 テンプレート:Math が非増大で、テンプレート:Mvar の各点 テンプレート:Mvar において テンプレート:Math に収束するならば、テンプレート:Math が成立する。

すなわち、基本函数全体のなす空間 テンプレート:Mvar 上に非負値連続線型汎函数 テンプレート:Mvar を定めるのである。

基本函数および基本積分には、任意の函数空間とその上の非負値連続線型汎函数をとることができる。例えば、階段函数全体の成す函数族は上記基本函数の公理系を明らかに満足する。さらに階段函数全体の成す族の基本積分を、階段函数の下にある領域の(符号付)面積として定義すれば、これが基本積分の公理系を満たすことも明らかである。後述するように、ダニエル積分の構成法を階段函数を基本函数にとって適用することで得られる積分の定義は、ルベーグ積分と同値になる。また、連続函数全体の成す族を基本函数として古典的なリーマン積分を基本積分とすることもできるが、そうして得られる積分はルベーグ積分と同値になる。同じことを、有界変動函数に対してリーマン=スティルチェス積分を用いて行うと、やはりルベーグ=スティルチェス積分に同値な積分が定まる。

零集合を基本函数の言葉で定義することができる。すなわち、テンプレート:Mvar の部分集合 テンプレート:Mvar が零集合またはテンプレート:Nowrapであるとは、任意の テンプレート:Math に対して テンプレート:Mvar の非負値基本函数列 テンプレート:Math をうまく選べば、テンプレート:Math かつ テンプレート:Mvar 上で テンプレート:Math とすることができるときに言う。

また、集合が全測度であるとは、その テンプレート:Mvar に関する補集合が零集合であることをいう。集合が、その全測度部分集合の各点で決まった性質を満たすとき、つまりある性質が適当な零集合を除いて成立するとき、その性質はその集合の殆ど至る所成立すると言う。

ダニエル積分の定義

基本函数として選んだ函数族 テンプレート:Mvar をもとに、より大きな函数のクラス テンプレート:Math を定める。これは積分 テンプレート:Mvar 全体の成す集合が有界となるような、殆ど至る所非増大な基本函数の列 テンプレート:Math の極限として得られる函数全体の成す族である。テンプレート:Math に属する函数 テンプレート:Mvar の積分 テンプレート:Mvar を、

If=limnIhn

で定めるとき、この積分が矛盾無く定義されていることが示せる。すなわち、これは テンプレート:Mvar に収束する基本函数列 テンプレート:Math の取り方に依らない。

しかし、函数のクラス テンプレート:Math は一般に、点ごとの減法と負の数によるスカラー乗法に関して閉じていないので、これをさらに広い函数のクラス テンプレート:Mvar へ拡張する。これは、テンプレート:Math の適当な函数 テンプレート:Mvar に対して適当な全測度集合上で差 テンプレート:Math として表されるような函数 テンプレート:Mvar 全体の成す族である。テンプレート:Mvar における函数 テンプレート:Mvar の積分 テンプレート:Mvar

Iφ=IfIg

で定めると、やはりこれも矛盾無く定義される。すなわち テンプレート:Mvarテンプレート:Mvarテンプレート:Mvar への分解の仕方に依らない。これでダニエル積分が洩れなく構成された。

性質

古典的なルベーグ積分論における重要な定理(例えばルベーグの優収束定理リース=フィッシャーの定理ファトゥーの補題フビニの定理など)はこの構成を用いてもやはり証明することが可能である。ダニエル積分として定式化されたルベーグ積分は旧来のルベーグ積分と同じ性質を有する。

ダニエル積分の測度

集合と写像の間の自然な対応により、ダニエル積分から測度論を構成することが可能である。すなわち、ある集合の テンプレート:Mvar 指示函数 テンプレート:Mvar をとったとき、その積分値 テンプレート:Mvar をその集合 テンプレート:Mvar の測度 テンプレート:Math と定めるのである。このダニエル積分を基にして定義される測度が、古典的なルベーグ測度と同値であることが証明できる。

旧来の定式化に対する優位性

この方法で構成される一般の積分は、特に函数解析学の分野において旧来のルベーグ式の積分に対するいくつか優位な点を持つ。既に述べたように、基本函数として有限個の値をとる通常の階段函数をとって得られるダニエル積分の構成は、ルベーグ積分の構成と同値である。しかしながら、積分をより複雑な函数に対してまで拡張するとき(例えば、線型汎函数の積分を定義しようとしたとき)、ルベーグの構成を用いる際に生じる困難を、ダニエル積分の方法は緩和することができる。

ポーランドの数学者ミクシンスキーは、さらに別のより自然なダニエル積分の定式化を、絶対収束級数の概念を用いて行った。ミクシンスキーの定式化はボホナー積分バナッハ空間に値をとる函数に対するルベーグ式の積分)に対しても通用する。ミクシンスキーの補題を用いれば、零集合に言及することなく積分が定義できる。ミクシンスキーはまた、ボホナー積分に対する多重積分の変数変換定理とボホナー積分に対するフビニの定理とをダニエル積分法を用いて証明した。テンプレート:Harv では、実数値函数に対してこの方法による明快な取り扱いがなされており、またダニエル=ミクシンスキーの方法を用いた抽象的ラドン=ニコディムの定理の証明が提示されている。

関連項目

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注釈

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出典

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参考文献

関連文献

外部リンク

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