交代行列

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線型代数学において、交代行列(こうたいぎょうれつ、テンプレート:Lang-en-short)、歪対称行列(わいたいしょうぎょうれつ、テンプレート:Lang-en-short)または反対称行列(はんたいしょうぎょうれつ、テンプレート:Lang-en-shortテンプレート:Sfn; 反称行列)は、正方行列 テンプレート:Mvar であってその転置 テンプレート:Math が自身の テンプレート:Math 倍となるものをいう。すなわち、転置に対して反対称性を持つ行列は交代行列である。交代行列とは逆に、転置に対して対称な行列は対称行列と呼ばれる[注釈 1]

例えば行列

[021204+i14i0]

は交代行列である。

交代行列と類似の反対称性を持つ行列として、歪エルミート行列がある。これはエルミート共役(転置複素共役)に対して反対称である。また、エルミート共役に対して対称な行列はエルミート行列と呼ばれる。実数の行列に対してはエルミート共役も転置も同じ操作になるので、実交代行列は実歪エルミート行列でもある。

交代行列は自身の転置が行列の反元になるものをいうが、自身の転置が乗法逆元、すなわち逆行列になる行列を直交行列という。また、エルミート共役が逆行列になる行列をユニタリー行列という。

定義

テンプレート:Mvar正方行列 テンプレート:Math2歪対称テンプレート:En)あるいは交代的 (テンプレート:En) であるとは、以下の関係

A=A(ai,j=aj,i(i,j))

を満足するときに言う。成分を用いない形では、テンプレート:Math標準内積テンプレート:Math と書けば、テンプレート:Mvar次実正方行列 テンプレート:Mvar が歪対称であるための必要十分条件は

Ax,y=x,Ay(x,yn)

を満たすことである。これはまた、交代的であるための必要十分条件は

x,Ax=0(xn)

が成り立つことであるとも言い表せる[注釈 1]

性質

自由度

歪対称行列の和およびスカラー倍は再び歪対称である。したがって、テンプレート:Mvar次歪対称行列の全体 テンプレート:Mathベクトル空間を成す。交代行列の主対角成分は必ず テンプレート:Math であり、上三角成分を決めれば下三角成分はその符号反転として定まるから、ベクトル空間 テンプレート:Math の次元は テンプレート:Math である。

歪対称成分

任意の テンプレート:Mvar次正方行列 テンプレート:Mvar に対し、その歪対称成分 テンプレート:Lang[注釈 2]

A=12(MM)Skewn

で与えられる。行列の和への分解

M=A+S,(A=12(MM),S=12(M+M))

は一意的に定まり、ベクトル空間の直和分解

Matn=SkewnSymn

を与える(ここに テンプレート:Mathテンプレート:Mvar-次正方行列の全体、テンプレート:Mathテンプレート:Mvar-次対称行列の全体)。

交代行列の行列式

テンプレート:Mvarテンプレート:Math 交代行列とすると、テンプレート:Mvar行列式

det(A)=det(A)=det(A)=(1)ndet(A)

を満足する。特に テンプレート:Mvar が奇数ならばこれは テンプレート:Math に等しい。この結果はカール・グスタフ・ヤコビに因んでヤコビの定理と呼ばれるテンプレート:Sfn

偶数次元の場合はもっと興味深い結果がある。次数 テンプレート:Mvar が偶数であるときの テンプレート:Mvar の行列式は テンプレート:Mvar の成分に関する斉次多項式(代数形式)の完全平方式

det(A)=Pf(A)2

として書くことができる[1]。ゆえに、実交代行列の行列式は常に非負である。ここで現われた形式 テンプレート:Mathテンプレート:Mvarパフ多項式(パフ式、パフ形式)と呼ばれるテンプレート:Sfn

スペクトル論

交代行列の固有値は常に テンプレート:Math のような対として得られる(奇数次の場合に、テンプレート:Math を固有値に加えて考えることもあるが、ここでは除いている)。実交代行列の非零固有値はすべて純虚数であり、それらを テンプレート:Math2(各 テンプレート:Mvar は実数)の形に書くことができる。

実交代行列は正規行列(つまり、自身の随伴可換)であり、それゆえスペクトル論の対象として任意の実交代行列がユニタリ行列によって対角化可能であることを述べることができる。実交代行列の固有値は複素数となるから実行列によって対角化することはできないが、それでも適当な直交変換によって区分対角化することができる。特に、任意の テンプレート:Math次交代行列は直交行列 テンプレート:Mvar と行列

Σ=[0λ1λ100000λ2λ200000λrλr000]

(ただし、テンプレート:Mvar は実数)を用いて テンプレート:Math2 の形に書くことができる。ここで直交行列とは テンプレート:Math2 を満たす行列 テンプレート:Mvar のことである。行列 テンプレート:Math の非零固有値は テンプレート:Math である。奇数次の場合には、テンプレート:Math は必ず少なくとも一つの行か列が全て テンプレート:Math になる。

対応する双線型形式

テンプレート:See also 任意の テンプレート:Mvar 上の テンプレート:Mvar次元ベクトル空間 テンプレート:Mvar において、テンプレート:Mvar基底を固定すれば、テンプレート:Mvar 上の双線型形式 テンプレート:Mvar は適当な テンプレート:Mvar次正方行列 テンプレート:Mvar によって テンプレート:Math2 と表されることを思い出そう。

テンプレート:Mvar 上の双線型形式 テンプレート:Math2

テンプレート:Mvar 上の交代形式(resp.歪対称形式)は、基底を一つ固定すれば、交代行列(resp.歪対称行列) テンプレート:Mvar を用いて上記の形に表され、逆に テンプレート:Mvar 上の交代行列(resp.歪対称行列)テンプレート:Mvar は交代形式(resp.歪対称形式)テンプレート:Math2 を定める[注釈 1]

テンプレート:Mvar が交代的ならば、任意の実ベクトル テンプレート:Mvar に対して テンプレート:Math2 が成り立つ。実際、テンプレート:Math2 はスカラー値ゆえ転置と自身とが一致するが、同時に積の転置法則と テンプレート:Mvar の交代性から

xAx=(xAx)=xAx=xAx

が成り立つ。またこの逆も成り立つ。実際、テンプレート:Mvar が交代的でないならばその対称成分が テンプレート:Math でない固有値 テンプレート:Mvar を持ち、テンプレート:Mvar に属する正規化された固有ベクトルを テンプレート:Mvar とすれば テンプレート:Math2 が成立する。

無限小回転

テンプレート:Main 交代行列の全体は、直交群 テンプレート:Math単位元における接空間を成すテンプレート:Sfn。この意味で、交代行列を無限小回転 テンプレート:Lang と考えることができる。別な言い方をすれば、交代行列全体の成すベクトル空間はリー群 テンプレート:Math に付随するリー環 テンプレート:Math に一致する。この空間におけるリー括弧積は交換子

[A,B]=ABBA

で与えられる。2つの交代行列から得られる交換子が再び交代行列となることを確かめるのは難しくない。

交代行列 テンプレート:Mvar指数函数

R=exp(A)=n=0Ann!

直交行列である。リー環の指数写像の像は常に対応するリー群の単位元を含む連結成分に含まれる。リー群 テンプレート:Math の場合にはこの連結成分は行列式が テンプレート:Math の直交群全体の成す特殊直交群 テンプレート:Math である。ゆえに テンプレート:Math2 の行列式は テンプレート:Math であり、行列式が テンプレート:Math の直交行列はすべて交代行列の指数函数として書けることが分かる。

座標を用いない記述

より内在的に述べれば、ベクトル空間 テンプレート:Mvar 上の歪対称線型変換は適当な内積に関して、テンプレート:Mvar 上のテンプレート:仮リンク(これはテンプレート:仮リンク テンプレート:Math2 の和)として定義することができる。その対応は、テンプレート:Math はベクトル テンプレート:Mvar の双対ベクトルとして、写像 テンプレート:Math2 により与えられ、直交座標系に関する場合これはちょうど上で述べた意味での通常の歪対称行列に一致する。この特徴付けはベクトル場の回転(これは自然な テンプレート:Math-ベクトル)を無限小回転と解釈することに利用できる(それゆえに「回転」と呼ばれる)。

歪対称化可能行列

テンプレート:Mvar-次正方行列 テンプレート:Mvar歪対称化可能 (skew-symmetrizable) であるとは、正則な対角行列 テンプレート:Mvar および歪対称行列 テンプレート:Mvar が存在して テンプレート:Math とできるときに言う。実行列に関して言う場合、テンプレート:Mvar はさらに成分が正という条件も加える[2]

関連項目

注釈

テンプレート:Reflist

出典

テンプレート:Reflist

参考文献

関連文献

外部リンク

テンプレート:Normdaten


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