対数

テンプレート:出典の明記 対数（たいすう、テンプレート:Lang-en-short）とは、ある数 テンプレート:Mvar を数 テンプレート:Mvar の冪乗 テンプレート:Mvar として表した場合の冪指数 テンプレート:Mvar である。この テンプレート:Mvar は「底を テンプレート:Mvar とする テンプレート:Mvar の対数（テンプレート:Lang-en-short）」と呼ばれ、通常は テンプレート:Math と書き表される。また、対数 テンプレート:Math に対する テンプレート:Mvar は真数（しんすう、テンプレート:Lang-en-short）と呼ばれる。数 テンプレート:Mvar に対応する対数を与える関数を考えることができ、そのような関数を対数関数と呼ぶ。対数関数は通常 テンプレート:Math と表される。

通常の対数 テンプレート:Math は真数 テンプレート:Mvar, 底 テンプレート:Mvar を実数として定義されるが、実数の対数からの類推により、複素数や行列などの様々な数に対してその対数が定義されている。

実数の対数 テンプレート:Math は、底 テンプレート:Mvar が テンプレート:Math でない正数であり (テンプレート:Math)、真数 テンプレート:Mvar が正数である場合 (テンプレート:Math) について定義される。 これらの条件を満たす対数は、ある テンプレート:Mvar と テンプレート:Mvar の組に対してただ一つに定まる。

実数の対数関数 テンプレート:Math は[[底に関する指数函数|底 テンプレート:Mvar に対する指数関数]] テンプレート:Mvar の逆関数である。この性質はしばしば対数関数の定義として用いられるが、歴史的には対数の出現の方が指数関数よりも先である。

対数関数のグラフの底を変えたときの様子。緑の曲線は底が テンプレート:Math、赤の曲線は底がネイピア数 テンプレート:Math、紫の曲線は底が テンプレート:Math の対数である（底 10 の対数は常用対数、底 テンプレート:Mvar の対数は自然対数と呼ばれる）。すべての曲線は点 テンプレート:Math を通り、テンプレート:Mvar 軸を漸近線に持つ。

定義

一般には複素数でも定義されるが、その解説は自然対数の項目にゆずる。

指数関数を用いた定義

テンプレート:Math でない正の実数 テンプレート:Mvar および正の実数 テンプレート:Mvar に対し

$x=a^p$

を満たす実数 テンプレート:Mvar がただ一つ定まる。この テンプレート:Mvar を テンプレート:Mvar の テンプレート:Mvar を底とする対数として定義する。テンプレート:Mvar に対して テンプレート:Mvar を底とする対数を テンプレート:Math と表わせば、上記の方程式を満たす テンプレート:Mvar は以下のように書き換えることができる。

$p={\log }_{a}x.$

この対数の定義はレオンハルト・オイラーによる（1728年）。

演算法則からの定義

正の実数 テンプレート:Math について、正の実数 テンプレート:Mvar を変数にとる実数値連続関数 テンプレート:Math として

$\begin{array}{cc}{f}_a(xy)& =f_a(x)+f_a(y)\\ f_a(a)& =1\end{array}$

を満たすものを

$f_a(x)={\log }_{a}x$

と書き、この関数 テンプレート:Math を テンプレート:Mvar を底とする対数関数と呼ぶ。

特殊な底

1 以外の正の実数であれば底に何を用いてもよいが、分野によって慣例的によく用いられる底があり、底が省略されることも多い。テンプレート:Math のように底が省略されている場合は、前後の文脈や扱われている分野によって底がいくつであるかを判断する。

底を テンプレート:Math とした対数は常用対数（テンプレート:Lang-en-short）あるいはブリッグスの対数（テンプレート:Lang-en-short）と呼ばれ、実験などの測定値に用いることが多い。ヘンリー・ブリッグスは、1617年に 1000 未満の整数について8桁、1624年には1～2万と9万～10万の整数についての14桁の常用対数表を出版した。他の対数と区別するために、"Log" のように大文字を用いたり、"lg" という記号を用いることがある (ISO 31/XI では "lg" となっている)。 "lg" は二進対数の表記でもしばしば使用される（後述）。

底を テンプレート:Math（ネイピア数） とした対数を自然対数（テンプレート:Lang-en-short）あるいはネイピアの対数（テンプレート:Lang-en-short）という。ジョン・ネイピアの名前がとられているが、ネイピア自身が計算に用いた定義は現在の自然対数とは異なる（後述）。微積分などの計算が簡単になるため、数学などの理論分野で用いられることが多い。他の対数と区別するために "ln" という記号を用いることがある。

底を テンプレート:Math とした対数は二進対数 (テンプレート:Lang-en-short) といい、情報理論の分野で情報量などを表現するのに用いられることが多い。また、音楽の分野においても、1オクターヴとは周波数比 1：2 のことであり、さらに、平均律においては半音が周波数比 1：2^1/12、全音が周波数比 1：2^2/12 と定義されているため、二進対数を用いると計算が簡便になる。他の対数と区別するために "lb" という記号を用いることがある (ISO 31/XI)。また二進対数では"テンプレート:Math"と表記されることがよくある。

歴史

テンプレート:Main テンプレート:See also 対数の概念は、16世紀末にヨスト・ビュルギ（1588年）やジョン・ネイピア（1594年）によって考案され、便利な計算法として広まった。天文学や航海学では膨大な数値計算がすでに必要とされており、三角関数表についてはヒッパルコスのころから存在していたとされテンプレート:Sfn、ティコ・ブラーエは三角関数表を応用して掛け算を足し算に変換して計算する手法を使用していたテンプレート:Sfn。ネイピアは、20年かけて対数表を作成し1614年に発表した。エドマンド・ガンターは対数の値を長さに換算した目盛りを持つ物差しを利用し、以上の計算手順を簡単に行えるようにした計算尺を発明した。対数は煩雑な計算にかける労力を大幅に減らし、ヨハネス・ケプラーによる天体の軌道計算をはじめとして、その後の科学の急激な発展を支えた。

記号としては1624年にケプラーが"Log"を使い、その後オイラーが常用対数に"log"を、それ以外の底の対数に"l"を使った。用語としての対数（logarithm）はネイピアがギリシャ語のロゴス（関係）とアリトモス（数）を組み合わせたものだという。

対数表の近似精度を高めることはネイピア以降もしばしば行われ、産業政策にも利用された。1790年にフランスで ガスパール・ド・プロニー が失業中の理髪師たちを集めて雇用し計算させたのをはじめに、チャールズ・バベッジの階差機関への挑戦（1827年）や20世紀初頭アメリカ・ニューディール政策における公共事業促進局の実施するプロジェクト (Mathematical Tables Project) において精度向上の試みが行われた。

指数関数的に変化する量を対数に変換してみると、線型性などの綺麗な性質が浮かび上がる。また、双曲線などの面積を求める積分法にも対数があらわれる（たとえば、テンプレート:Math である）。これらの例の他にも対数はいろいろな場面であらわれ、単なる「簡便な計算法」以上の意味を持つことも多い。そのため対数は、詳しく研究されてきた関数の一つでもある。

テンプレート:Anchors オリジナルの定義

ネイピアらが示した対数の定義は現在用いられているものとは異なっていた。

ネイピアによる対数の定義は次のようなものである：正の実数 テンプレート:Mvar に対して

$x=10^7{(1-\frac{1}{10^7})}^p$

を満たす実数 テンプレート:Mvar がただ一つ定まる。この テンプレート:Mvar のことを ネイピアの対数（テンプレート:Lang-en-short）という。この値は、テンプレート:Math と 7 桁の精度で一致する。ネイピアは、1594年に対数の概念に到達し、この定義を用いて20年間計算を続け、7 桁の数の対数表を完成させて1614年に発表した。

ビュルギもまた対数の発見者であるが、ビュルギが用いた定義はネイピアのものとはわずかに異なっている。ビュルギによる対数の定義は次のようなものである：正の実数 テンプレート:Mvar に対して

$x=10^8{(1+\frac{1}{10^4})}^p$

を満たす実数 テンプレート:Mvar がただ一つ定まる。この テンプレート:Mvar のことをビュルギの対数という。この値は、テンプレート:Math と4桁の精度で一致する。ビュルギは、ネイピアよりも早く1588年に対数の概念を発見したが、1620年まで公表しなかったため、対数の発見者としてはネイピアが称えられることが多い。

冪の表記

三角関数において例えば テンプレート:Math の意味で テンプレート:Math と書くのと同様に、対数関数に対しても、2 以上の整数 テンプレート:Mvar に対して テンプレート:Math という表記が使われることがあるテンプレート:Sfnテンプレート:Sfn。

計算

対数により、積の計算を、より簡単な和の計算に置き換えることができる。いくつかの例外を除き、有限の手順では対数の値を厳密に求めることはできないため、対数の計算には近似値を用いる。予め定めた近似の精度に応じて有効数字が決定される。対数の近似計算は計算量が多く高コストであるため、対数を含んだ計算には基本的に数表が用いられる。この対数値を列挙した数表を対数表という。対数表には限られた数しか値が載っていないため、対数表から対数値を参照する場合にはしばしば補間公式が用いられる。

2つの正の実数 テンプレート:Math の積を求めたいとする。別の正の数 テンプレート:Math に対して、

$\begin{array}{cc}x& =a^p\\ y& =a^q\end{array}$

という置き換えがいつでも可能であり、指数法則

$a^p{a}^q=a^{p+q}$

が成り立つことから、以下の手順によって積 テンプレート:Mvar を求めることができる。

1. 対数表を参照するなどして テンプレート:Mvar を テンプレート:Mvar に、テンプレート:Mvar を テンプレート:Mvar に変換する。
2. 和 テンプレート:Math を計算する。
3. 対数表を逆に参照するなどして テンプレート:Math の結果を テンプレート:Math に変換する。
4. これが求める積 テンプレート:Mvar である。

具体例

常用対数表を用いて積を求める例を示す。

345 × 4560 = 3.45 × 4.56 × 10テンプレート:Sup ・・・(1)

対数の性質より

テンプレート:Math₁₀(3.45 × 4.56) = テンプレート:Math₁₀3.45 + テンプレート:Math₁₀4.56

常用対数表より

テンプレート:Math₁₀3.45 = 0.5378 , テンプレート:Math₁₀4.56 = 0.6590

これより

テンプレート:Math₁₀3.45 + テンプレート:Math₁₀4.56 = 0.5378 + 0.6590 = 1.1968 = 0.1968 + 1

常用対数表より対数 0.1968 に近い真数を探すと

0.1968 ≒ テンプレート:Math₁₀1.57

また、1 = テンプレート:Math₁₀10 であるから

テンプレート:Math₁₀(3.45 × 4.56) = テンプレート:Math₁₀3.45 + テンプレート:Math₁₀4.56 ≒ テンプレート:Math₁₀1.57 + テンプレート:Math₁₀10 = テンプレート:Math₁₀15.7

これより、3.45 × 4.56 ≒ 15.7　・・・(2)
(2)を(1)に代入して、

345 × 4560 ≒ 15.7 × 10テンプレート:Sup = 1,570,000

これは 345 × 4560 = 1,573,200 に対して上から3桁までの値が一致している。
(精度が必要な場合は有効数字の大きな対数表を用いる必要がある。一般に対数は無限小数の形で求められ、対数表の値は近似値である。)

対数の性質

以下の節において、テンプレート:Math は 1 ではない正の実数、テンプレート:Math は正の実数、テンプレート:Mvar は実数、テンプレート:Math は自然対数を表す。

基本的な演算

定義より

$a^{{\log }_{a}x}=x$

が成り立つ。

積の対数は（底が等しい）対数の和に等しい。

${\log }_{a}xy={\log }_{a}x+{\log }_{a}y$

商の対数は（底が等しい）対数の差に等しい。

${\log }_a\frac{x}{y}={\log }_{a}x-{\log }_{a}y$

テンプレート:Mvar 乗の対数は、対数の テンプレート:Mvar 倍に等しい。

${\log }_a{x}^p=p{\log }_{a}x$

また、底の テンプレート:Mvar 乗の対数は、対数の テンプレート:Mvar 倍に等しい。(テンプレート:Mvarは0でない実数)

${\log }_{a^p}x=\frac{1}{p}{\log }_{a}x$

底の変換

テンプレート:Math を用いた式から テンプレート:Math を用いた式へと変形するには、

${\log }_{b}x={\log }_b\left(a^{{\log }_{a}x}\right)={\log }_{a}x\cdot {\log }_{b}a$

となることから、

${\log }_{a}x=\frac{{\log }_{b}x}{{\log }_{b}a}$

とすればよい。これを底の変換という。

これにより、特定の底・任意の真数での対数が分かる場合に、それらの値から任意の底での対数を得ることができる。たとえば、テンプレート:Math として常用対数表から テンプレート:Math と テンプレート:Math を引くこともできるし、底 テンプレート:Mvar をネイピア数 テンプレート:Mvar として後述のマクローリン展開で テンプレート:Math と テンプレート:Math を計算してもよい。

特に、テンプレート:Math ならば、テンプレート:Math とすることにより

${\log }_{a}x=\frac{1}{{\log }_{x}a}$

を得る。

また、テンプレート:Math とする（底を逆数にする）と、対数の符号が反転する。

${\log }_{1/a}x=\frac{{\log }_{a}x}{{\log }_a(1/a)}=-{\log }_{a}x.$

余対数

逆数の対数

${\mathrm{c}\mathrm{o}\mathrm{l}\mathrm{o}\mathrm{g}}_{a}x={\log }_a\frac{1}{x}=-{\log }_{a}x={\log }_{1/a}x$

を テンプレート:Mvar を底とする余対数（よたいすう、テンプレート:Lang-en-short）と呼ぶ。

対数の値の大きさに関する性質

底の値によらず、真数が 1 のとき対数は 0 である。

• ${\log }_{a}1=0$

テンプレート:Math の場合、対数は狭義単調増加

• $x<y\iff {\log }_{a}x<{\log }_{a}y$

であり、

• $\underset{x\to 0+}{\lim }{\log }_{a}x=-\mathrm{\infty }$
• $\underset{x\to \mathrm{\infty }}{\lim }{\log }_{a}x=\mathrm{\infty }$

が成り立つ。

テンプレート:Math の場合、対数は狭義単調減少

• $x<y\iff {\log }_{a}x>{\log }_{a}y$

であり、

• $\underset{x\to 0+}{\lim }{\log }_{a}x=\mathrm{\infty }$
• $\underset{x\to \mathrm{\infty }}{\lim }{\log }_{a}x=-\mathrm{\infty }$

が成り立つ。

対数の発散は「とても緩やか」であり テンプレート:Math に対して

• $\underset{x\to \mathrm{\infty }}{\lim }\frac{|{\log }_{a}x|}{x^p}=0$

が成り立つ。

解析学における公式

微分に関する公式

• $\frac{d}{dx}\ln x=\frac{1}{x}$
• $\frac{d}{dx}{\log }_{a}x=\frac{d}{dx}\frac{\ln x}{\ln a}=\frac{1}{x\ln a}=\frac{{\log }_{a}e}{x}$

マクローリン展開テンプレート:Refnest

• $\ln (1+x)=\sum _{n=1}^{\mathrm{\infty }}\frac{(-1{)}^{n-1}}{n}{x}^n(|x|<1)$
• $\ln (1-x)=-\sum _{n=1}^{\mathrm{\infty }}\frac{1}{n}{x}^n(|x|<1)$

積分に関する公式（以下の不定積分において テンプレート:Mvar は積分定数とする）

• $\int \frac{dx}{x}=\ln |x|+C$
• $\int \ln xdx=x\ln x-x+C$
• $\int {\log }_{a}xdx=\frac{x\ln x-x}{\ln a}+C=x{\log }_{a}x-x{\log }_{a}e+C=x{\log }_a\frac{x}{e}+C$

不等式

• $\frac{x}{1+x}<\ln (1+x)<x(x>0)$

符号位置

記号	Unicode	JIS X 0213	文字参照	名称

参考文献

• テンプレート:Cite book
• テンプレート:Cite book
• テンプレート:Cite book
• テンプレート:Cite journal
• テンプレート:Cite journal
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• テンプレート:Cite journal
• テンプレート:Cite
• テンプレート:Cite journal
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関連項目

• 指数関数
• 自然対数
• 常用対数
• 二進対数
• 離散対数
• 計算尺
• フラクタル
• 対数スケール
• デシベル
• ネーパ
• マグニチュード
• 水素イオン指数（pH）
• 酸解離定数（pK_a）
• 片対数グラフ
• 両対数グラフ
• 多重対数関数

外部リンク

• テンプレート:MathWorld
• テンプレート:Nlab
• テンプレート:PlanetMath
• テンプレート:ProofWiki
• テンプレート:SpringerEOM

• Logarithm Calculator
• Explaining Logarithms
• Jost Burgi, Swiss Inventor of Logarithms
• Translation of Napier's work on logarithms
• Logarithms - from The Little Handbook of Statistical Practice
• Algorithm for determining Log values for any base
• テンプレート:Kotobank