クラウゼン関数

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クラウゼン関数テンプレート:Mathのグラフ

クラウゼン関数(クラウゼンかんすう、テンプレート:Lang-en-short)は、トーマス・クラウゼンによって導入された超越的な単一変数関数である。定積分テンプレート:仮リンクなどによっても表現される。多重対数関数テンプレート:仮リンクポリガンマ関数リーマンゼータ関数ディリクレベータ関数などと深い関わりがある。

オーダー2のクラウゼン関数:単にクラウゼン関数とも呼ばれることもある。次の式で与えられる。

Cl2(φ)=0φlog|2sinx2|dx:

範囲0<φ<2πでは式中の正弦関数の値を取るから、絶対値は無視しても良い。クラウゼン関数はまた、フーリエ級数を用いて次のようにも表せる。

Cl2(φ)=k=1sinkφk2=sinφ+sin2φ22+sin3φ32+sin4φ42+

クラウゼン関数は、関数の一つとして現代の様々な分野で研究されている。特に、対数積分多重対数積分の評価に用いられる。また超幾何関数の和や中心二項係数逆数に関連する和、ポリガンマ関数の和、ディリクレのL関数にも応用される。

基本的な性質

kにおいてsinkπ=0であるから、(オーダー2の)クラウゼン関数は、π整数倍で0を取る。

Cl2(mπ)=0,m=0,±1,±2,±3,

また θ=π3+2mπ[m]最大値を取る。

Cl2(π3+2mπ)=1.01494160

θ=π3+2mπ[m]最小値をとる。

Cl2(π3+2mπ)=1.01494160

次の式の成立は、関数の定義より直ちに示される。

Cl2(θ+2mπ)=Cl2(θ)
Cl2(θ)=Cl2(θ)

詳しくは テンプレート:Harvtxtを見よ。

一般的な定義

テンプレート:Multiple image より一般に、クラウゼン関数は2つの一般化がある。

Sz(θ)=k=1sinkθkz
Cz(θ)=k=1coskθkz

ここで、定数zは実部が1より大きい複素数である。この定義は解析接続によって複素平面上に拡張できる。

z非負整数に置き換えて、フーリエ級数を用いて、一般クラウゼン関数(テンプレート:Lang)は次のように定義される。

Cl2m+2(θ)=k=1sinkθk2m+2
Cl2m+1(θ)=k=1coskθk2m+1
Sl2m+2(θ)=k=1coskθk2m+2
Sl2m+1(θ)=k=1sinkθk2m+1

SLのクラウゼン関数は、グレーシャー–クラウゼン関数Glm(θ)テンプレート:Langジェームズ・ウィットブレッドリー・グレーシャーの名を冠する)と言われる場合もある。

ベルヌーイ多項式との関係

SL-type Clausen functionθの多項式でベルヌーイ多項式と近い関係を持つ。これは、 ベルヌーイ多項式のフーリエ級数による表示より明らかである。

B2n1(x)=2(1)n(2n1)!(2π)2n1k=1sin2πkxk2n1.
B2n(x)=2(1)n1(2n)!(2π)2nk=1cos2πkxk2n.

x=θ/2πを代入して、項を並べ替えると次のような表示が得られる。

Sl2m(θ)=(1)m1(2π)2m2(2m)!B2m(θ2π),
Sl2m1(θ)=(1)m(2π)2m12(2m1)!B2m1(θ2π),

ここでベルヌーイ多項式Bn(x)ベルヌーイ数BnBn(0)を用いて次のように定義される。

Bn(x)=j=0n(nj)Bjxnj.

以上の式から分かるSLタイプのクラウゼン関数の評価は次の通り。

Sl1(θ)=π2θ2,
Sl2(θ)=π26πθ2+θ24,
Sl3(θ)=π2θ6πθ24+θ312,
Sl4(θ)=π490π2θ212+πθ312θ448.

倍角の公式

0<θ<πにおいて、クラウゼン関数の倍角の公式は積分の結果から直接証明できる。テンプレート:Harvtxtでは証明なしに使われている。

Cl2(2θ)=2Cl2(θ)2Cl2(πθ)

カタランの定数K=Cl2(π2)を用いれば、次のような関係も成り立つ。

Cl2(π4)Cl2(3π4)=K2
2Cl2(π3)=3Cl2(2π3)

より高次のクラウゼン関数の倍角公式も、上記の式で変数θを他のダミーの変数xに置き換えて、[0,θ]の範囲で積分をして求めることができる。

Cl3(2θ)=4Cl3(θ)+4Cl3(πθ)
Cl4(2θ)=8Cl4(θ)8Cl4(πθ)
Cl5(2θ)=16Cl5(θ)+16Cl5(πθ)
Cl6(2θ)=32Cl6(θ)32Cl6(πθ)

より一般にはm,m1について

Clm+1(2θ)=2m[Clm+1(θ)+(1)mClm+1(πθ)]

一般の倍角公式を用いて、オーダー2の場合のカタランの定数に関わる式も一般化できる。 m1において、

Cl2m(π2)=22m1[Cl2m(π4)Cl2m(3π4)]=β(2m)

β(x)ディリクレベータ関数

倍角の公式の証明

定義より、

Cl2(2θ)=02θlog|2sinx2|dx

正弦関数の倍角の公式sinx=2sinx2cosx2を用いて、

02θlog|(2sinx4)(2cosx4)|dx=02θlog|2sinx4|dx02θlog|2cosx4|dx

x=2y,dx=2dyのように、変数を置換して、

20θlog|2sinx2|dx20θlog|2cosx2|dx=2Cl2(θ)20θlog|2cosx2|dx

最後にy=πx,x=πy,dx=dyと置換して余弦関数加法定理cos(xy)=cosxcosysinxsinyを用いれば、

cos(πy2)=siny2Cl2(2θ)=2Cl2(θ)20θlog|2cosx2|dx=2Cl2(θ)+2ππθlog|2siny2|dy=2Cl2(θ)2Cl2(πθ)+2Cl2(π)

となる。

Cl2(π)=0

であるから、

Cl2(2θ)=2Cl2(θ)2Cl2(πθ).

派生

クラウゼン関数のフーリエ級数展開表示の微分によって次の式の成立が分かる。

ddθCl2m+2(θ)=ddθk=1sinkθk2m+2=k=1coskθk2m+1=Cl2m+1(θ)
ddθCl2m+1(θ)=ddθk=1coskθk2m+1=k=1sinkθk2m=Cl2m(θ)
ddθSl2m+2(θ)=ddθk=1coskθk2m+2=k=1sinkθk2m+1=Sl2m+1(θ)
ddθSl2m+1(θ)=ddθk=1sinkθk2m+1=k=1coskθk2m=Sl2m(θ)

微分積分学の基本定理を使えば、次のようにも表現できる。

ddθCl2(θ)=ddθ[0θlog|2sinx2|dx]=log|2sinθ2|=Cl1(θ)

逆正接積分との関係

テンプレート:仮リンクは、0<z<1において、次のように定義される。

Ti2(z)=0ztan1xxdx=k=0(1)kz2k+1(2k+1)2

クラウゼン関数との関係は次のようになる。

Ti2(tanθ)=θlog(tanθ)+12Cl2(2θ)+12Cl2(π2θ)

逆正接積分との関係の証明

テンプレート:仮リンクの定義より、

Ti2(tanθ)=0tanθtan1xxdx
0tanθtan1xxdx=[tan1xlogx]0tanθ0tanθlogx1+x2dx=
θlogtanθ0tanθlogx1+x2dx

x=tany,y=tan1x,dy=dx1+x2を置換して、

θlogtanθ0θlog(tany)dy

y=x/2,dy=dx/2を置換して、

θlogtanθ1202θlog(tanx2)dx=θlogtanθ1202θlog(sin(x/2)cos(x/2))dx=θlogtanθ1202θlog(2sin(x/2)2cos(x/2))dx=θlogtanθ1202θlog(2sinx2)dx+1202θlog(2cosx2)dx=θlogtanθ+12Cl2(2θ)+1202θlog(2cosx2)dx.

倍角公式の証明のようにx=(πy)と置換すれば、

02θlog(2cosx2)dx=Cl2(π2θ)Cl2(π)=Cl2(π2θ)

したがって、

Ti2(tanθ)=θlogtanθ+12Cl2(2θ)+12Cl2(π2θ).

バーンズのG関数との関係

実数0<z<1について、オーダー2のクラウゼン関数は、バーンズのG関数ガンマ関数で書くことができる。

Cl2(2πz)=2πlog(G(1z)G(1+z))+2πzlog(πsinπz)

または、

Cl2(2πz)=2πlog(G(1z)G(z))2πlogΓ(z)+2πzlog(πsinπz)

詳しくはテンプレート:Harvtxtを見よ。

多重対数関数との関係

クラウゼン関数は単位円上の多重対数関数の実部と虚部を表す。

Cl2m(θ)=(Li2m(eiθ)),m1
Cl2m+1(θ)=(Li2m+1(eiθ)),m0

これは、多重対数関数の級数による定義より簡単に示される。

Lin(z)=k=1zkknLin(eiθ)=k=1(eiθ)kkn=k=1eikθkn

オイラーの定理より、

eiθ=cosθ+isinθ

さらにド・モアブルの定理より、

(cosθ+isinθ)k=coskθ+isinkθLin(eiθ)=k=1coskθkn+ik=1sinkθkn

したがって、

Li2m(eiθ)=k=1coskθk2m+ik=1sinkθk2m=Sl2m(θ)+iCl2m(θ)
Li2m+1(eiθ)=k=1coskθk2m+1+ik=1sinkθk2m+1=Cl2m+1(θ)+iSl2m+1(θ)

ポリガンマ関数との関係

クラウゼン関数は正弦関数とポリガンマ関数線型結合によってあらわすことができる。

Cl2m(qπp)=1(2p)2m(2m1)!j=1psin(qjπp)[ψ2m1(j2p)+(1)qψ2m1(j+p2p)].

この系に、フルヴィッツのゼータ関数との関係式もある。

Cl2m(qπp)=1(2p)2mj=1psin(qjπp)[ζ(2m,j2p)+(1)qζ(2m,j+p2p)].

テンプレート:Collapse top p,q0<q/p<1を満たす正整数として、偶数のクラウゼン関数は次のように書ける。

Cl2m(qπp)=k=1sin(kqπ/p)k2m

この式を、m番目の式がkp+mと合同になるようにp個の部分の和に分ける。

Cl2m(qπp)=k=0sin[(kp+1)qπp](kp+1)2m+k=0sin[(kp+2)qπp](kp+2)2m+k=0sin[(kp+3)qπp](kp+3)2m++k=0sin[(kp+p2)qπp](kp+p2)2m+k=0sin[(kp+p1)qπp](kp+p1)2m+k=0sin[(kp+p)qπp](kp+p)2m

二重和を用いて次のように書ける。

Cl2m(qπp)=j=1p{k=0sin[(kp+j)qπp](kp+j)2m}=j=1p1p2m{k=0sin[(kp+j)qπp](k+(j/p))2m}

正弦関数の加法定理sin(x+y)=sinxcosy+cosxsinyの応用

sin[(kp+j)qπp]=sin(kqπ+qjπp)=sinkqπcosqjπp+coskqπsinqjπp
sinmπ0,cosmπ(1)mm=0,±1,±2,±3,
sin[(kp+j)qπp]=(1)kqsinqjπp

を適応して、

Cl2m(qπp)=j=1p1p2msin(qjπp){k=0(1)kq(k+(j/p))2m}

内側の総和を非交代和に変形するために、上部で式をp個の部分に分けたようにして、式を2つの部分に分ける。

k=0(1)kq(k+(j/p))2m=k=0(1)(2k)q((2k)+(j/p))2m+k=0(1)(2k+1)q((2k+1)+(j/p))2m=k=01(2k+(j/p))2m+(1)qk=01(2k+1+(j/p))2m=12p[k=01(k+(j/2p))2m+(1)qk=01(k+(j+p2p))2m]

m1において、ポリガンマ関数は次のように展開される。

ψm(z)=(1)m+1m!k=01(k+z)m+1

故に、内側の総和は次のように変形される。

122m(2m1)![ψ2m1(j2p)+(1)qψ2m1(j+p2p)]

これを元の二重和に代入して、元の式を得る。

Cl2m(qπp)=1(2p)2m(2m1)!j=1psin(qjπp)[ψ2m1(j2p)+(1)qψ2m1(j+p2p)]

テンプレート:Collapse bottom

一般化対数正弦積分との関係

一般化された対数正弦積分は次のように定義される。

snm(θ)=0θxmlognm1|2sinx2|dx

クラウゼン関数は一般化対数正弦積分の一種である。つまり、

Cl2(θ)=s20(θ)

クンマーの関係

エルンスト・クンマーとロジャースは次の式を発見した。0θ2πについて、

Li2(eiθ)=ζ(2)θ(2πθ)/4+iCl2(θ)

ロバチェフスキー関数との関係

ロバチェフスキー関数Λ(またはЛ)は本質的には、変数を変えただけで、クラウゼン関数と同義である。

Λ(θ)=0θlog|2sin(t)|dt=Cl2(2θ)/2

ただし、ロバチェフスキー関数という名はあまり正確でない。というのも、ロバチェフスキー双曲体積の公式において、わずかに異なる関数を用いている。

0θlog|sec(t)|dt=Λ(θ+π/2)+θlog2.

ディリクレのL関数との関係

有理数値θ/πにおいて、 sin(nθ)巡回群における元の周期軌道として捉えられている。故にクラウゼン関数Cls(θ)フルヴィッツのゼータ函数に関連する和として表現できるテンプレート:要出典。これは、ディリクレのL関数の特殊な値の計算を簡易にする。

加速度

クラウゼン関数の加速度は次のように与えられる。|θ|<2πにおいて、

Cl2(θ)θ=1log|θ|+n=1ζ(2n)n(2n+1)(θ2π)2n

ここで、 ζ(s)リーマンゼータ関数。より早く収束する形は次のように表現される。

Cl2(θ)θ=3log[|θ|(1θ24π2)]2πθlog(2π+θ2πθ)+n=1ζ(2n)1n(2n+1)(θ2π)2n.

収束は、nが大きくときζ(n)1が急速に0に近づくことより説明できる。両方の形は、テンプレート:仮リンクを求める際の再足し上げの技法で得られるテンプレート:Harv

特別な値

バーンズのG関数をG、カタランの定数をK、ギーゼキング定数Vとする。クラウゼン関数の特殊な値には、次のようなものがある。

Cl2(π2)=K
Cl2(π3)=V
Cl2(π3)=3πlog(G(23)G(13))3πlogΓ(13)+πlog(2π3)
Cl2(2π3)=2πlog(G(23)G(13))2πlogΓ(13)+2π3log(2π3)
Cl2(π4)=2πlog(G(78)G(18))2πlogΓ(18)+π4log(2π22)
Cl2(3π4)=2πlog(G(58)G(38))2πlogΓ(38)+3π4log(2π2+2)
Cl2(π6)=2πlog(G(1112)G(112))2πlogΓ(112)+π6log(2π231)
Cl2(5π6)=2πlog(G(712)G(512))2πlogΓ(512)+5π6log(2π23+1)

一般にはバーンズのG関数を用いて、

Cl2(2πz)=2πlog(G(1z)G(z))2πlogΓ(z)+2πzlog(πsinπz)

オイラーのテンプレート:仮リンクを使えば、

Cl2(2πz)=2πlog(G(1z)G(z))2πlogΓ(z)+2πzlog(Γ(z)Γ(1z))

一般の特別な値

高次のクラウゼン関数の特殊な値には次のようなものがある。

Cl2m(0)=Cl2m(π)=Cl2m(2π)=0
Cl2m(π2)=β(2m)
Cl2m+1(0)=Cl2m+1(2π)=ζ(2m+1)
Cl2m+1(π)=η(2m+1)=(22m122m)ζ(2m+1)
Cl2m+1(π2)=122m+1η(2m+1)=(22m124m+1)ζ(2m+1)

ここでβ(x)ディリクレベータ関数η(x)テンプレート:仮リンクζ(x)リーマンゼータ関数

積分

クラウゼン関数を直接積分した値は簡単に証明できる。

0θCl2m(x)dx=ζ(2m+1)Cl2m+1(θ)
0θCl2m+1(x)dx=Cl2m+2(θ)
0θSl2m(x)dx=Sl2m+1(θ)
0θSl2m+1(x)dx=ζ(2m+2)Cl2m+2(θ)

フーリエ解析の手法を用いれば、[0,π]の範囲で、クラウゼン関数Cl2(x)の自乗の積分は次のように書ける[1]

0πCl22(x)dx=ζ(4),
0πtCl22(x)dx=22190720π64ζ(5,1)2ζ(4,2),
0πt2Cl22(x)dx=23π[12ζ(5,1)+6ζ(4,2)2310080π6].

ζ多重ゼータ値

他の積分評価

多くの三角関数や、対数三角関数の積分は、クラウゼン関数、カタランの定数Klog2ゼータ関数の特殊値ζ(2),ζ(3)を用いて表すことができる。

証明には、基礎的なものよりほんの少し難しい三角関数の積分と、クラウゼン関数のフーリエ級数表示の積分が必要とされる。

0θlog(sinx)dx=12Cl2(2θ)θlog2
0θlog(cosx)dx=12Cl2(π2θ)θlog2
0θlog(tanx)dx=12Cl2(2θ)12Cl2(π2θ)
0θlog(1+cosx)dx=2Cl2(πθ)θlog2
0θlog(1cosx)dx=2Cl2(θ)θlog2
0θlog(1+sinx)dx=2K2Cl2(π2+θ)θlog2
0θlog(1sinx)dx=2K+2Cl2(π2θ)θlog2

出典

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