スターク予想
数論において、スターク予想(テンプレート:Lang-en-short)とは、代数体のガロア拡大 テンプレート:Math に付随する[[アルティンのL-函数|アルティン テンプレート:Mvar 函数]]のテイラー展開の主要項の係数についての予想である。スターク予想はテンプレート:仮リンクがテンプレート:Harvsで提示し、後日テンプレート:Harvsが拡張した。スターク予想は、数体のデデキントのゼータ函数のテイラー展開の主要項を表す解析的類数公式を一般化して、体の テンプレート:仮リンク(S-units)に関連する単数基準と有理数との積として表すものである。スタークは テンプレート:Math がアーベル拡大で、テンプレート:Mvar 函数の テンプレート:Math における位数 が 1 の場合について予想を精密化し、テンプレート:仮リンクと呼ばれる テンプレート:Mvar 単数の存在を予想した。テンプレート:Harvs と テンプレート:仮リンクは、この精密化された予想をさらに高次の位数へ拡張した。
定式化
スターク予想の最も一般的な形式は、「アルティン テンプレート:Mvar 函数 テンプレート:Math の テンプレート:Math でのテイラー展開の先頭係数 テンプレート:Math は、スターク単数基準 テンプレート:Math の代数的数 テンプレート:Math 倍であり、この代数的数へのガロア群の作用もこういった数字を用いて書き下すことができる」という予想である。体の拡大がアーベル的で、テンプレート:Mvar 函数の テンプレート:Math における位数が 1 のとき、精密化されたスターク予想は、根が基礎体 テンプレート:Mvar のアーベル拡大となる テンプレート:Mvar のクンマー拡大を生成するスターク単数の存在を予想する(テンプレート:Mvar がアーベル拡大でない場合は、クンマー理論で拡大する)。このスターク予想の精密化には、ヒルベルトの第12問題を解くという理論的な意味がある。また、特別な場合にはスターク単数の計算が可能であるため、精密化されたスターク予想の信憑性の評価が可能であるほか、代数体のアーベル拡大を生成する重要な計算機的方法が得られる。実際、代数体のアーベル拡大を計算する標準的なアルゴリズムには、拡大を生成するスターク単数の生成操作を含むものがある(後述)。
記号と用語
スターク予想を正確に述べるための記号を準備する。テンプレート:Mvar を(有限次)代数体、テンプレート:Mvar を テンプレート:Mvar の有限次ガロア拡大、テンプレート:Mvar をそのガロア群とする。 テンプレート:Math を テンプレート:Mvar の無限素点すべての集合、テンプレート:Mvar を テンプレート:Math を含む素点の集合とする。
複素数体 テンプレート:Math の部分環 テンプレート:Math と テンプレート:Math 加群 テンプレート:Mvar に対してテンソル積 テンプレート:Math を テンプレート:Math と略記するテンプレート:Sfnm。
アルティン テンプレート:Mvar 函数の先頭係数 テンプレート:Math
ガロア群 テンプレート:Mvar の複素数体上の有限次表現を一つ取り、テンプレート:Mvar をその表現空間、テンプレート:Mvar をその指標とする。(テンプレート:Mvar 部分を除外した)アルティン テンプレート:Mvar 函数を
と定義するテンプレート:Sfn。ここで、有限素点 テンプレート:Math に対し テンプレート:Math は テンプレート:Math の惰性群、テンプレート:Math はこれによる不変部分空間、テンプレート:Math は テンプレート:Math のフロベニウス元(の一つ)、テンプレート:Math は テンプレート:Math のテンプレート:仮リンクである。この函数は有理型に解析接続され、テンプレート:Math で正則になる。
この テンプレート:Mvar 函数の テンプレート:Math でのテイラー展開の先頭係数を テンプレート:Math と書く。つまり、テンプレート:Math でのこの函数の位数を テンプレート:Math とするとき、テンプレート:Math の近傍で
が成り立つような複素数として テンプレート:Math を定義する(テンプレート:Mvar はランダウの記号)。
スターク単数基準 テンプレート:Math
テンプレート:Math を テンプレート:Mvar の素点で下にある素点が テンプレート:Mvar に含まれるものすべての集合とする。 テンプレート:Math を テンプレート:Mvar の テンプレート:Math 単数群、つまり テンプレート:Math の元で テンプレート:Math に含まれない テンプレート:Mvar のすべての素点での絶対値が1であるもの全体
とするテンプレート:Sfn。
テンプレート:Mvar を テンプレート:Math の元で生成される自由アーベル群、テンプレート:Mvar をその部分群で各 テンプレート:Math に対する係数を合計すると0になるもの全体
とするテンプレート:Sfn。テンプレート:Mvar には自然に テンプレート:Mvar が作用する。
テンプレート:Math 単数群 テンプレート:Mvar から テンプレート:Math への写像 テンプレート:Mvar を
で定義する。この写像を対数的埋め込みというテンプレート:Sfn。
単数定理により テンプレート:Math は同型であり、テンプレート:Math と テンプレート:Math は テンプレート:Math 加群として(非標準的に)同型であることがわかる。このような同型
を一つ取る。テンプレート:Math を テンプレート:Mvar の反傾表現とし、テンプレート:Math から テンプレート:Math への テンプレート:Math 加群としての準同型全体 テンプレート:Math を考える。このベクトル空間の次元は テンプレート:Math と等しい。
このベクトル空間の自己同型 テンプレート:Math を
で定義する。この自己同型の行列式
をスターク単数基準(Stark regulator)という。
スターク予想
スターク予想とは、複素数 テンプレート:Math を
と定義するとき、テンプレート:Math は テンプレート:Math に入る代数的数で、任意の テンプレート:Math に対して
が成り立つであろう、という予想であるテンプレート:Sfnm。
計算
第一位数がゼロであるという予想は、総実体のヒルベルト類体を計算するために計算機代数システムPARI/GPの最新版で用いられており、ヒルベルトの第12問題の解の一つが得られる。ヒルベルトの第12問題とは、任意の代数体上に虚数乗法によってどのように類体を構成できるか、という問題である。
進展
スタークの主予想は、様々な特別な場合について証明されている。その特別な場合とは、L-函数を定義する指標が有理数のみとなる場合である。基礎体が有理数体もしくは虚二次体の場合を除き、アーベル的なスターク予想は証明されてはいない。代数多様体の函数体では多くの進展が見られる。
テンプレート:Harvsは、スターク予想をアラン・コンヌの非可換幾何へ関連付ける[1]。マーニンの手法はスターク予想を研究する概念的なフレームワークを提供するが、現時点テンプレート:いつでこの手法が実際にスターク予想の証明を与えるかどうかは不明である。