ハウスドルフ次元

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フラクタル図形の一種であるシェルピンスキー・ガスケットの構成過程の様子。この過程を無限回繰り返して得られる図形のハウスドルフ次元は テンプレート:Sfrac = 1.5849… である。

ハウスドルフ次元(ハウスドルフじげん、テンプレート:Lang-en-short)は、フェリックス・ハウスドルフが導入した非負実数値の次元である。フラクタルのような複雑な図形ないし集合の次元を表す道具として用いられる。ハウスドルフ測度を使って定義される次元で、ある集合のハウスドルフ次元は、その集合のハウスドルフ測度が テンプレート:Math から テンプレート:Math へ移る不連続点から定義される。

ハウスドルフの後に、テンプレート:仮リンクが研究を深めて更に明確化した。そのため、ハウスドルフ・ベシコビッチ次元(ハウスドルフ・ベシコビッチじげん、テンプレート:Lang-en-short)とも呼ばれる。フラクタル幾何学実解析で重要な役割を果たし、特にフラクタル幾何学では最重要概念の一つである。一般的に与えられた集合のハウスドルフ次元を決定するのは困難であるが、自己相似集合などの一部のクラスの集合では求め方が確立している。確定的な定義ではないが、ハウスドルフ次元が位相次元より大きな集合がフラクタルと定義づけられる。

背景

一般的な「次元」という言葉は、現実世界の空間が高さ・幅・奥行きの3つから成るので3次元と呼ぶ考え方に立脚しているテンプレート:Sfn。この考え方の延長上で、平面は縦・横から成るので2次元で、直線や線分は1次元であるという風に考えられてきたテンプレート:Sfn。数学の世界でも、19世紀終わり近くまで、点が 0 次元、直線が 1 次元、平面が 2 次元、…という素朴な次元の概念しか存在しなかったテンプレート:Sfn。しかし、19世紀後半に、ゲオルク・カントールが平面上の点と直線上の点が1対1対応を持つことを、ジュゼッペ・ペアノが単位区間から正方形の上への連続写像を構成できることを発見し、数学界で次元の概念の再考が迫られたテンプレート:Sfnm[1]。その後、位相不変で整数値を取る位相次元(正確には被覆次元大きな帰納的次元小さな帰納的次元があるテンプレート:Sfn)が、次元の精密な定義として導入されたテンプレート:Sfnm

フェリックス・ハウスドルフ

一方、「長さ」「面積」「体積」といった直感的概念についても一般の集合に拡張させる動きが、19世紀末から20世紀初頭にかけてエミール・ボレルアンリ・ルベーグによって進められたテンプレート:Sfnm。1914年、コンスタンティン・カラテオドリテンプレート:Mvar 次元ユークリッド空間内の テンプレート:Mvar 次元測度を定義したテンプレート:Sfn。カラテオドリの定義では テンプレート:Mvar は整数値であった[2]。1919年、カラテオドリの仕事を引き継いだフェリックス・ハウスドルフは、カラテオドリの定義は非整数の テンプレート:Mvar に対しても意味があることを指摘し、後にハウスドルフ次元テンプレート:Lang-en-short)と呼ばれる非整数次元を導入したテンプレート:Sfnm。ハウスドルフは、カントールの3進集合のハウスドルフ次元が テンプレート:Math であることを実際に示してみせたテンプレート:Sfn

ハウスドルフの後に、ハウスドルフ次元およびハウスドルフ測度の概念を明確化を担ったのはテンプレート:仮リンクである[3]。そのため、彼の名も取ってハウスドルフ次元はハウスドルフ・ベシコビッチ次元テンプレート:Lang-en-short)とも呼ばれる[3]。ハウスドルフ測度とそれを使った幾何学の数学的成果の多くはベシコビッチによって与えられたテンプレート:Sfnブノワ・マンデルブロは「ハウスドルフが標準的でない次元の父であったのに対し、ベシコビッチは、その母であった」と評しているテンプレート:Sfn

そのマンデルブロは、自然の海岸線や樹木の形の数学的理想化として、カントールの3進集合やコッホ曲線ワイエルシュトラス関数などの以前より報告されていた特異な数学的集合の総称として、フラクタルという概念と名称を与えたテンプレート:Sfnm。マンデルブロは、1977年のエッセイ「Fractals: Form, Chance and Dimension」で、ハウスドルフ次元が位相次元よりも大きい集合をフラクタルの数学的な定義としたテンプレート:Sfn。1982年の著書「The Fractal Geometry of Nature」でフラクタルの概念は一躍有名となり、フラクタルは各分野で研究され始めたテンプレート:Sfn。次元はフラクタル幾何学の中心的概念であり、その中でも最重要なのがハウスドルフ次元であるテンプレート:Sfn。ハウスドルフ測度およびハウスドルフ次元はフラクタル幾何学や実解析で重要な役割を果たすテンプレート:Sfn

定義

ハウスドルフ測度

部分集合 X直径 テンプレート:Abs

次元を定義したい図形として、テンプレート:Mvar-次元ユークリッド空間 テンプレート:Math 上のではない部分集合 テンプレート:Mvar を考えるテンプレート:Sfnm。ユークリッド空間に限定せずに、一般の距離空間でもよいテンプレート:Sfnテンプレート:Mvar 上の 2 点 テンプレート:Mathユークリッド距離テンプレート:Math で表す。集合 テンプレート:Mvar直径を次で定義する。

|X|=sup{d(x,y) | x,yX}

ここで テンプレート:Math上限を意味し、テンプレート:Mathテンプレート:Mvarテンプレート:Mvarユークリッド距離であるテンプレート:Sfnm。単純に言えば、直径とは集合 テンプレート:Mvar の中のもっとも離れた2点間の距離を意味しているテンプレート:Sfn

部分集合 X に対する δ 被覆の例

ある テンプレート:Mvar が与えられたとき、それに対する可算個の集合族 テンプレート:Math による被覆を考える。ただし、テンプレート:Math それぞれの直径は、ある正の実数 テンプレート:Mvar 以下とする。このような テンプレート:Mathテンプレート:Mvar 被覆と呼ぶ。すなわち、

Xi=1Ui かつ |Ui|δ

である。テンプレート:Math は有限個でもよいテンプレート:Sfn

さらに、各々の テンプレート:Math の直径を正の実数 テンプレート:Mvar冪乗したものの総和 テンプレート:Math を取る。そして、テンプレート:Mvarテンプレート:Mvar の値を固定し、テンプレート:Mvar に対して可能なあらゆる テンプレート:Mvar 被覆 テンプレート:Math を考えた場合の テンプレート:Math下限を取る。これを

Hδs(X)=infi=1|Ui|s

と定義するテンプレート:Sfn

被覆を抑える2つの直径 テンプレート:Mvarテンプレート:Math という大小関係にあるとする。このとき、直径を テンプレート:Mvar 以下とする被覆は、直径を テンプレート:Mvar 以下とする被覆を含んでいる。よって、テンプレート:Mvar の値は、テンプレート:Mvar よりも小さいか等しいかのいずれかとなる。結局、

δ2<δ1 ならば Hδ2s(X)Hδ1s(X)

であるから、テンプレート:Mvarテンプレート:Mvar の減少とともに単調増加するテンプレート:Sfn。したがって、

Hs(X)=limδ0infi=1|Ui|s

という極限値が、 テンプレート:Math の場合まで含めると常に存在するテンプレート:Sfn。この テンプレート:Math外測度の条件を満たし、テンプレート:Mvar 次元ハウスドルフ外測度ハウスドルフ テンプレート:Mvar 次元外測度と呼ばれるテンプレート:Sfnm。さらに、可測集合(または [[完全加法族|テンプレート:Mvar-集合体]])に制限した テンプレート:Mvar[[ハウスドルフ測度|テンプレート:Mvar 次元ハウスドルフ測度]]ハウスドルフ テンプレート:Mvar 次元測度と呼ばれるテンプレート:Sfnm

ハウスドルフ次元

上記のように定義された テンプレート:Mvar 次元ハウスドルフ外測度 テンプレート:Math を、テンプレート:Mvar を固定して テンプレート:Mvar の関数として見る。テンプレート:Math を満たす任意の テンプレート:Mvarテンプレート:Mvar について、テンプレート:Mvar 被覆は、

i=1|Ui|t=i=1|Ui|ts|Ui|sδtsi=1|Ui|s

を満たすので、

Hδt(X)δtsHδs(X)

という関係が成り立つテンプレート:Sfnm。よって、テンプレート:Math である テンプレート:Mathテンプレート:Mvar単調減少関数であるテンプレート:Sfnm

s の関数としての見たときの H s(X) のグラフ

さらに、上の関係により、テンプレート:Math であるならば テンプレート:Math である。また、テンプレート:Math であるならば、テンプレート:Math であるテンプレート:Sfnm。したがって、テンプレート:Mathテンプレート:Mvar の関数として見たとき、テンプレート:Math は高々 1 つの第一種不連続点 テンプレート:Mvar を持つテンプレート:Sfnm。この不連続点を テンプレート:Mvar と表すと、

D=inf{s[0, )|Hs(X)=0}=sup{s[0, )|Hs(X)=}

を満たす テンプレート:Math が唯一定まるテンプレート:Sfnハウスドルフ次元またはハウスドルフ・ベシコビッチ次元とは不連続点 テンプレート:Mvar の値のことで、これを テンプレート:Mathテンプレート:Math などと表して

dimH(X)=inf{s[0, )|Hs(X)=0}

あるいは、

dimH(X)=sup{s[0, )|Hs(X)=}

で定義されるテンプレート:Sfnm

直感的説明

ハウスドルフ次元の意味を直感的に説明すると、ハウスドルフ外測度 テンプレート:Math の次元 テンプレート:Mvarものさしの粗さのようなもので、テンプレート:Mathテンプレート:Math となるのは、集合 テンプレート:Mvar の厚さを測るのには テンプレート:Mvar がものさしとして細か過ぎて、そのものさしからは テンプレート:Mvar は捕え切れないほど大きく見える状態であるテンプレート:Sfn。一方、テンプレート:Mathテンプレート:Math となるのは、集合 テンプレート:Mvar の厚さを測るのには テンプレート:Mvar がものさしとして粗過ぎて、そのものさしからはテンプレート:Mvar の厚さは無視できるほど小さく見える状態であるテンプレート:Sfnテンプレート:Math は、それらの中間で、テンプレート:Mvar の厚さを測るのにちょうどいい粗さのものさしであることを意味しているテンプレート:Sfn

ハウスドルフ外測度を定義するために出てきた テンプレート:Math という和は、テンプレート:Math を代入してみると、テンプレート:Math という長さ テンプレート:Math の線分の長さの合計となる。これを使って集合 テンプレート:Mvar のハウスドルフ外測度を求めるという行為は、テンプレート:Mvar の長さのような量を決めているのに等しい。集合 テンプレート:Mvar が曲線だとすれば、テンプレート:Mvar は実際に長さに相当する量を持っているので、テンプレート:Math のハウスドルフ外測度でその長さを測ることができるテンプレート:Sfn。同様に テンプレート:Math で考えると、テンプレート:Math は一辺長さが テンプレート:Math の正方形の面積の合計である。よって、集合 テンプレート:Mvar が面であれば、テンプレート:Math で適切にその面積を測ることができるテンプレート:Sfn

このように、ある集合の長さや面積のような量を測るにあたっては、適切な テンプレート:Mvar の値が存在する。適切な テンプレート:Mvar の値は、逆にその集合を特徴づけすることができる値とも捉えられる。曲線ならば テンプレート:Math で面ならば テンプレート:Math であったが、集合がもっと複雑になれば自然数ではない テンプレート:Mvar の値が最適ということもありうる。このような考え方にもとづいて、 テンプレート:Math 自体の値ではなく、テンプレート:Mvar の方の最適値に着目して定義としたのがハウスドルフ次元といえるテンプレート:Sfn

基本的性質

ハウスドルフ次元は、「次元」と呼ばれるものが当然満たすであろう次の基本的な性質を満たすテンプレート:Sfnm

また、テンプレート:Math に対して、テンプレート:Math ならば テンプレート:Math なので、常に テンプレート:Math であるテンプレート:Sfn

位相次元は同相写像に対して不変であることが一般的だが、ハウスドルフ次元はこの性質は持たない[4]。しかし、写像 テンプレート:Mathリプシッツ連続であれば、すなわち、ある正の定数 テンプレート:Mvar が存在して任意の テンプレート:Math に対して

d(f(x), f(y))cd(x, y)

を満たすならば

dimH(f(X))dimH(X)

が成り立つ[4]。さらに テンプレート:Mvar が双リプシッツであれば、すなわち、ある正の定数 テンプレート:Mathテンプレート:Math が存在して任意の テンプレート:Math に対して

c1d(x, y)d(f(x), f(y))c2d(x, y)

を満たすならば

dimH(f(X))=dimH(X)

が成り立つテンプレート:Sfn。これによって、位相幾何学で同相写像の存在によって2つの集合を「同じ」と見なすように、フラクタル幾何学では双リプシッツ写像の存在によって「同じ」と見なす取り組み方が成立するテンプレート:Sfn

テンプレート:Math の部分集合を テンプレート:Mvarとし、テンプレート:Math の部分集合を テンプレート:Mvarとすると、これらの直積集合 テンプレート:Math2 のハウスドルフ次元について一般的に成り立つ関係は

dimH(A×B)dimH(A)+dimH(B)

であるテンプレート:Sfn。しかし、後述テンプレート:Math に対して テンプレート:Math が満たされるならば、

dimH(A×B)=dimH(A)+dimH(B)

が成り立つテンプレート:Sfn

射影に関しては、テンプレート:Mvarテンプレート:Math の部分空間へ写す正射影テンプレート:Math とすると

dimH(p(X))dimH(X)

が一般的な関係として成り立つテンプレート:Sfn

計算

定義からの直接計算

一般的に、与えられた集合 テンプレート:Mvar のハウスドルフ次元を決定するのは困難であるテンプレート:Sfnm。次元を決定するためによく使われる手法は、上からの評価と下からの評価を行い、それらが同じ値を取ることを証明する手法であるテンプレート:Sfn。すなわち、テンプレート:Math(上から)かつ テンプレート:Math(下から)であることを証明すれば テンプレート:Math であるテンプレート:Sfn。上からの評価は比較的簡単で、特殊な テンプレート:Mvar 被覆を設定すれば求まるテンプレート:Sfn。特に一般的に大変なのが、ハウスドルフ測度およびハウスドルフ次元の下からの評価を得ることであるテンプレート:Sfn。下からの評価のためにはあらゆる被覆を考えて決める必要があり、難しくなるテンプレート:Sfn

カントールの3進集合の構成

数直線 テンプレート:Math 上の図形であれば、定義からの直接計算でもハウスドルフ次元の決定は比較的容易であるテンプレート:Sfn。ハウスドルフ次元が非整数を取る図形の中でもっとも有名な集合として、カントール集合があるテンプレート:Sfn。カントール集合ないしカントールの3進集合とは、線分 1 の中央から1/3の長さの線分を除去し、さらに残った2つの線分の中央のそれぞれの1/3の長さの線分を除去し、という操作を繰り返し無限回行うことで得られる図形であるテンプレート:Sfn。カントール集合を作る途中の テンプレート:Mvar 番目の操作でできる図形を テンプレート:Mvar と表すと

Ck=[0,13k][23k,33k][3k13k,1]

であり、カントール集合を テンプレート:Mvar と表すと

C=k=1Ck

と定義されるテンプレート:Sfn。カントール集合はハウスドルフ次元を正確に決定できる少ない例のうちの一つであるテンプレート:Sfn

カントール集合のハウスドルフ測度およびハウスドルフ次元の場合、テンプレート:Mvarテンプレート:Mvar に対する テンプレート:Mvar 被覆と考えれば、上からの評価が得られるテンプレート:Sfnm。この被覆について テンプレート:Math と仮定すると、 テンプレート:Math および テンプレート:Math であることが得られるテンプレート:Sfnm。また、少し技巧的な証明を要するが、任意の閉区間による被覆に対して テンプレート:Math および テンプレート:Math であることが得られるテンプレート:Sfnm。したがって、テンプレート:Math であるテンプレート:Sfnm

自己相似集合の場合

フラクタルの中でも、ハウスドルフ次元を正確かつ簡単に決定できるクラスの集合があるテンプレート:Sfnm。写像 テンプレート:Math2 が、ある定数 テンプレート:Math が存在して、

|f(x)f(y)|ci|xy|

が任意の テンプレート:Math2 について成り立つとき、テンプレート:Mvar縮小写像というテンプレート:Sfnmテンプレート:Math 個の縮小写像の組 テンプレート:Math2 が与えられたとき、

Ui=1mfi

を満たすコンパクト集合 テンプレート:Math自己相似集合というテンプレート:Sfnm。自己相似集合 テンプレート:Mvar

i=1mfiU

かつ任意の テンプレート:Mvarテンプレート:Math について

fi(U)fj(U)=

を満たすとき、テンプレート:Mvar開集合条件を満たすというテンプレート:Sfn

さらに、テンプレート:Math 個の縮小写像の組における各写像 テンプレート:Mvar について、ある定数 テンプレート:Math が存在し、

|fi(x)fi(y)|=ci|xy|

が任意の テンプレート:Math2 について成り立つとき、テンプレート:Mvar相似縮小変換などと呼ばれるテンプレート:Sfnm。定数 テンプレート:Mvar縮小率と呼ばれるテンプレート:Sfnm。すなわち、テンプレート:Mvar は縮小、回転、平衡移動、反転などの変換を組み合わせて、テンプレート:Math 上の部分集合を幾何学的に相似な集合に写す線形変換であるテンプレート:Sfn

以上のように、縮小写像が相似縮小変換でなおかつ開集合条件を満たすとき、その縮小写像の組から定まる自己相似集合 テンプレート:Mvar のハウスドルフ次元は

i=1m(ci)s=1

を満たす テンプレート:Mvar と等しいことが定理として成り立つテンプレート:Sfnm。この定理より、多くの自己相似フラクタルのハウスドルフ次元が求まるテンプレート:Sfn。カントールの3進集合は テンプレート:Math2 という開集合条件を満たす相似縮小変換で構成できるため、上記の定理からハウスドルフ次元 テンプレート:Math を求めることもできるテンプレート:Sfn

コッホ曲線の構成

カントールの3進集合のハウスドルフ次元は テンプレート:Math であったが、一般化したカントール集合、例えば線分の真ん中を テンプレート:Math 除去する場合は、ハウスドルフ次元は テンプレート:Math であるテンプレート:Sfn。カントール集合と同様に再帰的な手続きから構成できるフラクタル図形の単純な例には、コッホ曲線 テンプレート:Mvarシェルピンスキー・ガスケット テンプレート:Mvar などがあるテンプレート:Sfn。これらも開集合条件を満たす相似縮小変換であり、それぞれのハウスドルフ次元は テンプレート:Math2テンプレート:Math2 であるテンプレート:Sfn

力学系でもフラクタルが様々な形で現れるテンプレート:Sfnテンプレート:Mvar 倍に縮む散逸系のパイこね変換アトラクターはハウスドルフ次元 テンプレート:Math2 であるテンプレート:Sfn複素力学系マンデルブロ集合は非常な複雑な図形だが連結で、その境界はハウスドルフ次元 テンプレート:Math であるテンプレート:Sfn

規則的に作られる自己相似フラクタルの外に、自然界で見られるようなランダムパターンから生まれる自己相似フラクタルもある[5]テンプレート:Math 上のブラウン運動の軌跡は、テンプレート:Math であれば テンプレート:Mvar の値にかかわらず確率 テンプレート:Math でハウスドルフ次元 テンプレート:Math であるテンプレート:Sfn

高木関数のグラフ

ハウスドルフ次元が位相次元よりも大であることをフラクタルの定義とすると、直感的にはフラクタルに相応しいような図形がフラクタルにならない例もあるテンプレート:Sfnm。例えば、カントールの悪魔の階段高木関数のグラフは、位相次元・ハウスドルフ次元ともに テンプレート:Math であるテンプレート:Sfnm。連続曲線でありながら平面を充填するペアノ曲線も、位相次元・ハウスドルフ次元ともに テンプレート:Math で一致するテンプレート:Sfnm。こういった集合の存在が、フラクタルの定義に改善の余地がある理由の一つであるテンプレート:Sfn

ハウスドルフ次元の決定が数学上の未解決問題となっているものには、次のようなものがある。テンプレート:Math 上の部分集合 テンプレート:Mvar有界で、全ての方向の長さ テンプレート:Math線分を含み、さらに テンプレート:Mvar 次元ルベーグ測度テンプレート:Math のとき、テンプレート:Mvarテンプレート:Mvar 次元掛谷集合と呼ぶ。テンプレート:Mvar 次元掛谷集合のハウスドルフ次元は テンプレート:Mvar であろうと予想されており、掛谷予想や掛谷問題と呼ばれる。テンプレート:Math 次元掛谷集合のハウスドルフ次元は テンプレート:Math であることは証明されたが、テンプレート:Math 次元以上は未解決であるテンプレート:Sfn

他の次元との関係

位相次元

縦・横・高さという直感的な次元は位相次元と呼ばれるテンプレート:Sfn。上で述べたように、テンプレート:Mvarテンプレート:Math 上の滑らかな テンプレート:Mvar 次元多様体であれば、テンプレート:Math であるので、ハウスドルフ次元は位相次元と矛盾しない拡張となっているテンプレート:Sfnm。位相次元と呼ばれるものは正確には被覆次元大きな帰納的次元小さな帰納的次元の3つがあるが、ユークリッド空間上では3者は常に一致するテンプレート:Sfn。以下、 テンプレート:Math 上の集合 テンプレート:Mvar の位相次元を テンプレート:Math と表す。

位相次元 テンプレート:Math とハウスドルフ次元 テンプレート:Math は一致することもあれば、異なることもあるテンプレート:Sfn。例えば、線分の テンプレート:Mathテンプレート:Math は共に 1 で、正方形の テンプレート:Mathテンプレート:Math は共に 2 であるテンプレート:Sfn。このような単純な図形では テンプレート:Mathテンプレート:Math は一致するが、図形が複雑になると相異なってくるテンプレート:Sfn。しかし一般的な関係として、任意の集合 テンプレート:Mvar の位相次元とハウスドルフ次元は

dimT(X)dimH(X)

という関係が成り立つテンプレート:Sfn。例えば、カントールの3進集合 テンプレート:Mvarテンプレート:Math だが、テンプレート:Math であるテンプレート:Sfn

フラクタルの提唱者であるブノワ・マンデルブロ自身のフラクタルの定義は、ハウスドルフ次元が位相次元よりも高い集合(図形)がフラクタルとされるテンプレート:Sfnm。ただし、マンデルブロも述べているように、このフラクタルの定義は確定的ではないテンプレート:Sfnm。「フラクタル次元」という言葉はしばしば曖昧に用いられ、定義が与えられずに用いられたり、使う人によっては定義が異なったりするがテンプレート:Sfn、一つの考え方としては非整数値を取る次元をフラクタル次元と呼ぶテンプレート:Sfn[6]。マンデルブロはハウスドルフ次元のことをフラクタル次元と言い換えており[7]、文献によってはフラクタル次元とはハウスドルフ次元を指すテンプレート:Sfnm

ボックス次元

グレートブリテン島の海岸線をボックス次元で測る様

ハウスドルフ次元は数値の具体的な計算が難しいという欠点があるテンプレート:Sfn。これに対し、被覆する集合の直径を全て同じとしたのがボックス次元と呼ばれる次元で、ハウスドルフ次元よりも数学的には扱いにくいが計算は容易であるテンプレート:Sfnm。ボックス次元には同値な定義がいくつかあるがテンプレート:Sfn、集合 テンプレート:Mvar に対して

dim_B(X)=limϵ0inflogNδ(X)log1δ
dimB(X)=limϵ0suplogNδ(X)log1δ

とおいて、

dim_B(X)=dimB(X)=dimB(X)

が成り立つとき、テンプレート:Mathテンプレート:Mvar のボックス次元というテンプレート:Sfn。ここで、テンプレート:Mvarテンプレート:Mvar を被覆する開被覆の直径、テンプレート:Mathテンプレート:Mvar を被覆するのに必要な テンプレート:Mvar 開被覆の最小個数を表すテンプレート:Sfn。ハウスドルフ次元とボックス次元には、一般的に

dimH(X)dim_B(X)dimB(X)

あるいは

dimH(X)dimB(X)

という関係が成り立つテンプレート:Sfnm

相似次元

線分・正方形・立方体は、それ自体の中に 1/r 倍のコピーがそれぞれ r1, r2, r3 個ある
コッホ曲線は、それ自体の中に 1/3 倍のコピーが 4 個ある

上記の#自己相似集合の場合に求められる次元 テンプレート:Mvar は、相似次元とも呼ばれるテンプレート:Sfn。相似次元は自己相似性の観点から得られるテンプレート:Sfn。例えば、ある線分を テンプレート:Math 倍したコピーを考えると、元の線分はそのコピー テンプレート:Math 個から成り立っている。また、ある正方形を テンプレート:Math 倍したコピーを考えると、元の正方形はそのコピー テンプレート:Math 個から成り立っている。そして、ある立方体を テンプレート:Math 倍したコピーを考えると、元の立方体はそのコピー テンプレート:Math 個から成り立っている。線分、正方形、立方体のそれぞれの次元 テンプレート:Math2 は、コピーの個数の指数として現れている。これを一般化すると、テンプレート:Mvar 倍したコピーを考えると元の図形はそのコピーの テンプレート:Mvar 個から成り立つとき、次元 テンプレート:Mvarテンプレート:Mvarテンプレート:Mvar のあいだには

N=(1c)s

という関係があるテンプレート:Sfn。よって次元 テンプレート:Mvar

s=logNlog(1/c)

と定義でき、これを相似次元と呼ぶテンプレート:Sfn

一般的な相似次元は、縮小写像の テンプレート:Mvar 個の組 テンプレート:Math2 が与えられたときに、これに対応する自己相似集合に対して、それぞれの縮小率 テンプレート:Math2 から

i=1m(ci)s=1

を満たす テンプレート:Mvar の正の値によって与えられるテンプレート:Sfn。自己相似集合を テンプレート:Mvar として、その相似次元を テンプレート:Math と表すとする。上記のとおり、縮小写像が相似縮小変換でなおかつ開集合条件を満たすとき、その自己相似集合のハウスドルフ次元と相似次元には

dimH(X)=dimS(X)

という関係があるテンプレート:Sfn。また、相似縮小変換かつ開集合条件という条件を付与しない一般的な自己相似集合については、ハウスドルフ次元と相似次元の関係は次のようになるテンプレート:Sfn

dimH(X)dimS(X)

出典

テンプレート:Reflist

参照文献

外部リンク

テンプレート:次元 テンプレート:Fractals