ヘーグナー数

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数論におけるヘーグナー数 (: Heegner number)(コンウェイとガイによる命名)とは、虚二次体 [d]類数1 となる平方因子を持たない正の整数 d のことである。言い換えれば、その整数環一意な分解を持つ[1]

このような数は類数問題の特別なケースから定まるとともに、数論におけるいくつかの注目すべき結果の根底にある。

(ベイカー・)スターク・ヘーグナーの定理によれば、ヘーグナー数は正確に9つ存在する。

1,2,3,7,11,19,43,67,163 テンプレート:OEIS

この結果はガウスによって予想され、1952年にテンプレート:仮リンクによって軽微な誤りを含む証明がなされた。 アラン・ベイカーテンプレート:仮リンクは1966年に結果を独立して証明し、スタークはさらにヘーグナーの証明の誤りは軽微であることを示した[2]

オイラーの素数生成多項式

n = 1, ..., 40 に対して素数を与えるオイラーのテンプレート:仮リンク

n2n+41

は、ヘーグナー数 163 = 4・41 − 1 と対応している。

オイラーの式において n が 1, ..., 40 の値をとるとすると、 n が 1, ..., 39 の値をとる以下の式と等価である。

n2+n+41

テンプレート:仮リンク [3]

n2+n+p

について、判別式 14p がヘーグナー数にマイナスを付けたものの場合、またそのときに限り、n=0,,p2 に対して素数を与えることを証明した。

(なお p1 を代入すると p2 となるため、p2n の最大値となる。)

4p1=1,2,3 を満たす p が存在しないため、機能するヘーグナー数は 7,11,19,43,67,163 であり、これらはオイラーの形の素数生成式における p=2,3,5,11,17,41 にそれぞれ対応する。特にこれらの p は、テンプレート:仮リンクによってテンプレート:仮リンクと呼ばれている[4]

ほとんど整数とラマヌジャンの定数

ラマヌジャンの定数とは超越数[5] eπ163 のことであり、整数にテンプレート:仮リンクという点でほとんど整数である。

eπ163=262537412640768743.99999999999925 [6] 6403203+744.

この数は、1859年に数学者シャルル・エルミートによって発見された[7]サイエンティフィック・アメリカン誌の1975年エイプリルフールの記事[8] 「数学的ゲーム」のコラムニストであるマーティン・ガードナーは、「その数は実際に整数であり、インドの天才数学者シュリニヴァーサ・ラマヌジャンが予測していた」という話をでっち上げたことから、この名前がついた。

この偶然性は、 虚数乗法j-不変量q-展開によって説明できる。

詳細

簡単に言えば、ヘーグナー数 d に対して j((1+d)/2) は整数であり、eπdj((1+d)/2)+744q -展開によって示される。

もし τ が二次無理数とすると、j-不変量は次数 |Cl(𝐐(τ))|代数的整数であり、𝐐(τ)類数𝐐(τ) が満たす最小(モニック整数)多項式は、「ヒルベルト類多項式 (Hilbert class polynomial)」と呼ばれる。 したがって、虚数の2次拡大体 𝐐(τ) の類数が 1 であれば(つまり d はヘーグナー数)、 j-不変量は整数となる。

フーリエ級数展開を q=exp(2πiτ)ローラン級数として表した jq-展開は、最初の3項は以下のとおりである:

j(τ)=1q+744+196884q+

ローラン級数の係数 cn は漸近的に ln(cn)4πn+O(ln(n)) のように増大し、また低次の係数の増大が 200000n よりも遅いため、 q1/200000 において、 j は最初の2つの項で非常によく近似される。τ=(1+163)/2 とすると q=exp(π163) つまり 1q=exp(π163) となる。ここで j((1+163)/2)=(640320)3 とすると、以下の式が得られる。

(640320)3=eπ163+744+O(eπ163).

これはすなわち

eπ163=6403203+744+O(eπ163)

であり、誤差の線形項は

196884/eπ163196884/(6403203+744)0.00000000000075

となるため、eπ163 が上記の範囲でほぼ整数である理由となる。

円周率の式

1987年、テンプレート:仮リンクは以下の式を発見した。

1π=126403203/2k=0(6k)!(1633344418k+13591409)(3k)!(k!)3(640320)3k

これは、 j(1+1632)=6403203 という事実を用いている。同様の式については、テンプレート:仮リンクを参照せよ。

その他のヘーグナー数

大きい方から4つのヘーグナー数について、以下の近似が得られる[9]

eπ19963+7440.22eπ439603+7440.00022eπ6752803+7440.0000013eπ1636403203+7440.00000000000075

あるいは、 [10]

eπ19123(321)3+7440.22eπ43123(921)3+7440.00022eπ67123(2121)3+7440.0000013eπ163123(23121)3+7440.00000000000075

ここで2乗の理由は、特定のアイゼンシュタイン級数によるものである。d<19 のヘーグナー数についてはほとんど整数となる近似を得られず、 d=19 さえ注目に値しない[11]。整数の j-不変量は細かく因数分解可能であるが、これは 123(n21)3=(223(n1)(n+1))3 ということに従う。素因数は以下のとおりである。

j((1+19)/2)=963=(253)3j((1+43)/2)=9603=(2635)3j((1+67)/2)=52803=(253511)3j((1+163)/2)=6403203=(26352329)3.

これらの超越数は、(単に次数 1 の代数的数である)整数によるよい近似のほかに、次数 3 の代数的数によってもよく近似できる[12]

eπ19x2424.00031;  x32x2=0eπ43x2424.00000031;x32x22=0eπ67x2424.0000000019;x32x22x2=0eπ163x2424.0000000000000011;x36x2+4x2=0

3次式のは、24番目の根を含むモジュラー関数であるデデキントのイータ関数 η(τ)の商によって正確に与えられ、これが近似における数値 24 の理由となる。また、次数4の代数的数によっても近似できる[13]

eπ1935(32(196/24+1319))212.00006eπ4335(92(1960/24+7343))212.000000061eπ6735(212(15280/24+31367))212.00000000036eπ16335(2312(1640320/24+24133163))212.00000000000000021

括弧内の式を x とおくと(例: x=32(196/24+1319) )、x はそれぞれ四次方程式を満たす。

x443x3+23(96+3)x2233(966)x3=0x449x3+23(960+3)x2  239(9606)x3=0x4421x3+23(5280+3)x2 2321(52806)x3=0x44231x3+23(640320+3)x223231(6403206)x3=0

整数 n=3,9,21,231 の再出現と、以下の事実に注意せよ。

263((196/24)2+12319)=962263((1960/24)2+72343)=9602263((15280/24)2+312367)=52802263((1640320/24)2+241323163)=6403202

これは、適切な分数累乗を与えれば、正確に j-不変量である。

同様に、次数 6 の代数的数では以下のようになる。

eπ19(5x)36.000010eπ43(5x)36.000000010eπ67(5x)36.000000000061eπ163(5x)36.000000000000000034

ここで、x はそれぞれ六次式の適切な根によって与えられる。

5x696x510x3+1=05x6960x510x3+1=05x65280x510x3+1=05x6640320x510x3+1=0

ここで j-不変量が再び現れる。これらの六次方程式は代数的であるだけでなく、拡大体 (5)[14] の上で2つの三次式に因数分解される(最初の因数はさらに2つの二次式に分解できる)ので、冪根によって解ける。これらの代数的近似は、デデキント・イータ商で正確に表現できる。例として、 τ=(1+163)/2 とすると、

eπ163=(eπi/24η(τ)η(2τ))2424.00000000000000105eπ163=(eπi/12η(τ)η(3τ))1212.00000000000000021eπ163=(eπi/6η(τ)η(5τ))66.000000000000000034

ここで、イータ商は上記の代数的数である。

類数 2 の数値

類数 2 を持つ虚二次体 [d] を与える3つの数字 88,148,232 は、ヘーグナー数とは見なされないが、 ほとんど整数という点で同様の特性を有する。たとえば、

eπ88+874425089522.077eπ148+87441991486482.00097 eπ232+8744245912577522.0000078

そして

eπ2224(6+42)6+.00011eπ37+24(12+237)6.0000014eπ5824(27+529)6.0000000011

連続素数

p を奇素数として、k=0,1,,(p1)/2 に対して k2(modp) を計算すると((pk)2k2(modp) なので、k の範囲はこれで十分である)、 p がヘーグナー数である場合、またそのときに限り、連続する素数に続いて連続する合成数が得られる[15]

詳細については、リチャード・モリン(Richard Mollin)の "Quadratic Polynomials Producing Consecutive Distinct Primes and Class Groups of Complex Quadratic Fields" を参照せよ[16]

脚注

外部リンク