位相共役
数学において位相共役(いそうきょうやく、テンプレート:Lang-en)とは、2つの写像の軌道が定性的に同じ関係であることを示す概念である。力学系理論における基礎的な概念の一つテンプレート:Sfn。位相共役の関係によって、解析が容易な写像から他の写像の性質を導けるといった利点がある。他には、力学系の構造安定性の定義付けを与える。
位相共役の関係は、2つの写像を関係づける同相写像の存在によって定義される。もし2つの力学系が位相共役ならば、それぞれの力学系は同じ性質の軌道を同じ数持つ。連続力学系の場合は、時間の変数変換を許す位相同値という関係も用いられる。
定義
テンプレート:Mvar と テンプレート:Mvar を位相空間とし、テンプレート:Math2 と テンプレート:Math2 を連続写像とし、これらによって定義される力学系 テンプレート:Math と テンプレート:Math を考えるテンプレート:Sfn。このとき、テンプレート:Mvar から テンプレート:Mvar への同相写像 テンプレート:Math が存在して
を充たすとき、2つの力学系 テンプレート:Math と テンプレート:Math は位相共役(テンプレート:Lang-en)であるテンプレート:Sfn、あるいは テンプレート:Mvar と テンプレート:Mvar が(テンプレート:Mvar によって)位相共役であると言うテンプレート:Sfnテンプレート:Sfn。ほかには位相的に共役や単に共役であると言ったりすることもあるテンプレート:Sfnテンプレート:Sfn。位相共役の関係を与える同相写像 テンプレート:Mvar を位相共役写像(テンプレート:Lang-en)と言うテンプレート:Sfn。

ここで、上式 (テンプレート:EqNoteN) の テンプレート:Math は写像の合成を表し、テンプレート:Math とすると テンプレート:Math2 であるテンプレート:Sfn。テンプレート:Mvar が同相写像であるとは、テンプレート:Mvar が全単射かつ連続写像で、なおかつ逆写像 テンプレート:Math も連続写像であることを言うテンプレート:Sfn。同値な定義だが、テンプレート:Mvar と テンプレート:Mvar が テンプレート:Mvar によって位相共役であるとは
を充たす同相写像 テンプレート:Mvar が存在することを言うテンプレート:Sfnテンプレート:Sfn。ここで、テンプレート:Math は テンプレート:Mvar の逆写像を表すテンプレート:Sfn。位相共役の関係によって可換図式が成立するテンプレート:Sfnテンプレート:Sfn。
写像 テンプレート:Mvar が同相写像であることを要請せず、テンプレート:Math2 と テンプレート:Math2 が単に連続写像かつ全射である テンプレート:Math によって式 (テンプレート:EqNoteN) を充たすときは、テンプレート:Mvar は テンプレート:Mvar に位相半共役あるいは半共役(テンプレート:Lang-en)と言うテンプレート:Sfnテンプレート:Sfn。半共役の関係を与える連続な全射 テンプレート:Mvar を位相半共役写像あるいは半共役写像(テンプレート:Lang-en)と言うテンプレート:Sfnテンプレート:Sfn。
微分同相写像の場合
テンプレート:Mvar と テンプレート:Mvar が テンプレート:Mvar によって位相共役であることは テンプレート:Mvar が一般的に可微分であることまでは要求しないが、場合によっては テンプレート:Mvar が可微分で、テンプレート:Math も可微分であることも考えられるテンプレート:Sfn。このような同相写像を微分同相写像と言いテンプレート:Sfn、特に、同相写像が テンプレート:Mvar 回連続微分可能で、その逆写像も テンプレート:Mvar 回連続微分可能なときは テンプレート:Math 微分同相写像と言うテンプレート:Sfn。
テンプレート:Math を実数全体の集合とし、写像 テンプレート:Mvar と テンプレート:Mvar を テンプレート:Mvar 次元ユークリッド空間 テンプレート:Math 上の テンプレート:Math 微分同相写像 テンプレート:Math2 と テンプレート:Math2 とするテンプレート:Sfn。このとき、テンプレート:Math 微分同相写像 テンプレート:Math が存在し、 式 (テンプレート:EqNoteN) を充たすとき、テンプレート:Mvar と テンプレート:Mvar は(テンプレート:Mvar によって)テンプレート:Math 共役または可微分共役であると言うテンプレート:Sfnテンプレート:Sfn。
線型写像の場合
写像 テンプレート:Mvar と テンプレート:Mvar が位相共役で、その位相共役写像 テンプレート:Mvar が線型写像であるとき テンプレート:Mvar と テンプレート:Mvar は線型共役(テンプレート:Lang-en)であると言うテンプレート:Sfnテンプレート:Sfnテンプレート:Sfn。テンプレート:Math 上の場合、写像 テンプレート:Math が線型写像であるとは
- テンプレート:Math ただし テンプレート:Math
- テンプレート:Math ただし テンプレート:Math
を充たすことであるテンプレート:Sfn。
テンプレート:Math 上の線型写像 テンプレート:Mvar は、実数を成分とする テンプレート:Math 行列 テンプレート:Mvar を用いて、
と表わされるテンプレート:Sfn。ここで、テンプレート:Mvar は テンプレート:Math の要素で、テンプレート:Math 列ベクトルであるテンプレート:Sfn。一般的に、異なる正方行列 テンプレート:Math と テンプレート:Math があって、
を充たすような正則行列 テンプレート:Mvar が存在するとき、テンプレート:Math と テンプレート:Math は相似であると言うテンプレート:Sfnテンプレート:Sfn。
テンプレート:Math 上の線型写像 テンプレート:Math2 と テンプレート:Math2 が線型共役で、その位相共役写像を テンプレート:Math2 で表すとする。このとき、式 (テンプレート:EqNoteN) より
となるので、テンプレート:Math 上の線型写像 テンプレート:Math と テンプレート:Math が線型共役であるとは、それらを定義する行列 テンプレート:Math と テンプレート:Math が相似で、式 (テンプレート:EqNoteN) を充たすような行列 テンプレート:Mvar が存在することとも言い換えられるテンプレート:Sfnテンプレート:Sfn。
連続力学系の場合
以上の説明は、反復合成から定義される離散力学系の場合であった。一方、力学系の時間を実数として、位相群 テンプレート:Math の位相空間 テンプレート:Mvar への作用として定まるのが連続力学系であるテンプレート:Sfn。連続力学系は流れとも呼ばれ、連続写像 テンプレート:Math あるいは テンプレート:Math2(テンプレート:Math)によって与えられるテンプレート:Sfnテンプレート:Sfn。流れを テンプレート:Math2(テンプレート:Math)とも表し、全ての テンプレート:Mvar と テンプレート:Mvar で定義されていると仮定するテンプレート:Sfn。
テンプレート:Mvar と テンプレート:Mvar を位相空間とし、テンプレート:Math と テンプレート:Math を流れとする。 このとき、同相写像 テンプレート:Math が存在して
を充たすとき、テンプレート:Mvar と テンプレート:Mvar は位相共役であると言うテンプレート:Sfn。
流れは、典型的には微分方程式(あるいは微分方程式によって定義されるベクトル場)によって生成されるテンプレート:Sfn。テンプレート:Mvar を テンプレート:Mvar 級ベクトル場 テンプレート:Math によって生成される流れとし、テンプレート:Mvar を テンプレート:Mvar 級ベクトル場 テンプレート:Math によって生成される流れとするとき、テンプレート:Mvar 微分同相写像 テンプレート:Mvar が式 (テンプレート:EqNoteN) を充たすとき、テンプレート:Mvar と テンプレート:Mvar はテンプレート:Mvar 共役であると言うテンプレート:Sfn。
流れの位相共役は、時間 テンプレート:Mvar の変数変換も許さずに片方の軌道をもう片方の軌道に重ね合わせることができるというであり、制約が強いテンプレート:Sfnテンプレート:Sfn。そのため流れの場合には、制約がもう少し弱い位相同値という位相的分類がよく用いられるテンプレート:Sfn。流れ テンプレート:Math と テンプレート:Math について、同相写像 テンプレート:Math があって、テンプレート:Mvar の各軌道が テンプレート:Mvar の各軌道の上へ、向きが保たれながら テンプレート:Mvar によって写されるとき、テンプレート:Mvar と テンプレート:Mvar は位相同値であると言うテンプレート:Sfn。また、このような同相写像 テンプレート:Mvar を位相同値写像と言うテンプレート:Sfnテンプレート:Sfn。テンプレート:Mvar の軌道を テンプレート:Math2 とし、テンプレート:Mvar の軌道を テンプレート:Math2 とする。正確には、すべての テンプレート:Math に対して テンプレート:Mvar が
を充たし、さらに テンプレート:Mvar と テンプレート:Mvar が定める軌道の向きを保つとき、テンプレート:Mvar と テンプレート:Mvar は位相同値であると言うテンプレート:Sfn。テンプレート:Mvar が テンプレート:Mvar 微分同相写像で式 (テンプレート:EqNoteN) を充たすときは、テンプレート:Mvar と テンプレート:Mvar はテンプレート:Mvar 同値であると言うテンプレート:Sfnテンプレート:Sfn。
時間の変数変換を明示的に使った位相同値の定義は次のようになる。時間の変数変換を表す連続関数を テンプレート:Math とする。テンプレート:Mvar と テンプレート:Mvar が位相同値であるとは、同相写像 テンプレート:Mvar と連続関数 テンプレート:Math が存在して、すべての テンプレート:Math と テンプレート:Math について
を充たすときを言うテンプレート:Sfn。ただし、軌道の向きを保つという条件のために、テンプレート:Math は テンプレート:Mvar を固定したときに テンプレート:Mvar に関して単調増加であるテンプレート:Sfnテンプレート:Sfn。
基本的な性質
位相共役であることは同値関係に該当する。すなわち、写像 テンプレート:Mvar と テンプレート:Mvar に対してテンプレート:Math を充たすようなある同相写像 テンプレート:Mvar が存在することを一つの二項関係として テンプレート:Math と表せば、関係 テンプレート:Math は
- 反射律:テンプレート:Math2
- 対称律:テンプレート:Math2 ならば テンプレート:Math2
- 推移律:テンプレート:Math2 かつ テンプレート:Math2 ならば テンプレート:Math2
という同値律を充たすテンプレート:Sfn。したがって、位相空間 テンプレート:Mvar 上の連続写像全体の集合を テンプレート:Math と表すと、同値関係 テンプレート:Math による テンプレート:Math の同値類は位相的には同じである力学系の集まりを意味するテンプレート:Sfn。
力学系理論の主な興味関心は、軌道の性質を理解することにあるテンプレート:Sfnテンプレート:Sfn。もし2つの力学系が位相共役ならば、それぞれの力学系は同じ性質の軌道を同じ数持つテンプレート:Sfn。具体的には テンプレート:Math2 より、テンプレート:Math2 であるから、任意の テンプレート:Math について
および
が成り立つテンプレート:Sfnテンプレート:Sfnテンプレート:Sfn。したがって、テンプレート:Mvar の軌道を テンプレート:Math2 とし、テンプレート:Mvar の軌道を テンプレート:Math2 とすれば、
テンプレート:NumBlk
が成り立ち、テンプレート:Mvar は テンプレート:Mvar の軌道を テンプレート:Mvar の軌道の上へ写像するテンプレート:Sfn。したがって、位相共役写像 テンプレート:Mvar により、テンプレート:Mvar の不動点、周期点、[[極限集合|テンプレート:Mvar 極限点]]、テンプレート:Mvar 極限点などは、テンプレート:Mvar の同種の相空間上の点へ写されるテンプレート:Sfn。テンプレート:Mvar によって、テンプレート:Mvar の不動点の全体集合、周期点の全体集合、極限集合、非遊走集合、鎖回帰集合などが、テンプレート:Mvar の同種の集合へと写されるテンプレート:Sfnテンプレート:Sfn。テンプレート:Mvar が稠密な周期点の集合を持つならば、テンプレート:Mvar も稠密な周期点の集合を持つテンプレート:Sfn。テンプレート:Mvar が位相推移的ならば テンプレート:Mvar も位相推移的で、テンプレート:Mvar が拡大的(分離的)ならば テンプレート:Mvar も拡大的となるテンプレート:Sfnテンプレート:Sfn。最終的に周期的な軌道や漸近的な軌道が テンプレート:Mvar に存在すれば、テンプレート:Mvar はそれらを テンプレート:Mvar の同種の軌道に写すテンプレート:Sfn。
離散力学系の周期軌道(周期点)は、位相共役写像によって同じ周期の軌道が対応する。テンプレート:Mvar と テンプレート:Mvar が テンプレート:Mvar によって位相共役のとき、テンプレート:Mvar が テンプレート:Mvar の 周期 テンプレート:Mvar の周期点だとしたら、テンプレート:Math は テンプレート:Mvar の周期 テンプレート:Mvar の周期点であるテンプレート:Sfn。連続力学系の場合も、位相共役写像によって同じ周期の軌道が対応する。流れ テンプレート:Mvar と テンプレート:Mvar が テンプレート:Mvar によって位相共役のとき、テンプレート:Mvar の 周期 テンプレート:Mvar の周期軌道は テンプレート:Mvar によってテンプレート:Mvar の 周期 テンプレート:Mvar の周期軌道に写されるテンプレート:Sfn。しかし、テンプレート:Mvar と テンプレート:Mvar が位相同値のときは、テンプレート:Mvar の周期軌道は テンプレート:Mvar によってテンプレート:Mvar の周期軌道に写るが、周期は一致するとは限らないテンプレート:Sfn。逆に言えば、このような周期が一致しなくてよいという性質によって、位相共役よりも位相同値の制約は弱く、流れの位相的分類では位相同値の方が使いやすいことが多いテンプレート:Sfnテンプレート:Sfn。
可微分共役の場合は、不動点および周期点でのヤコビ行列の固有値も一致するテンプレート:Sfnテンプレート:Sfn。写像 テンプレート:Math のヤコビ行列を テンプレート:Math のように表す。 可微分写像 テンプレート:Math と テンプレート:Math が、微分同相写像 テンプレート:Math によって位相共役であるとき、
テンプレート:NumBlk
が成立するテンプレート:Sfnテンプレート:Sfn。一般に、正方行列が式 (テンプレート:EqNoteN) を充たすとき、行列 テンプレート:Math と テンプレート:Math の固有値は同じとなるテンプレート:Sfn。したがって、式 (テンプレート:EqNoteN) より、テンプレート:Math と テンプレート:Math の固有値は一致するテンプレート:Sfn。よって、可微分共役には不動点および周期点での微分の一致という要求が充たされる必要がある。これは、軌道の位相的特性を調べるには強過ぎる条件となるテンプレート:Sfn。そのため、力学系が定性的に同じことを表す位相共役の関係は、単なる同相写像の存在を条件としているテンプレート:Sfnテンプレート:Sfnテンプレート:Sfn。
位相的エントロピーについても位相共役であれば不変となるテンプレート:Sfn。テンプレート:Mvar と テンプレート:Mvar をコンパクトハウスドルフ空間 テンプレート:Math上の連続写像とし、同相写像 テンプレート:Math によって位相共役であるとする。それぞれの位相的エントロピーを テンプレート:Math と テンプレート:Math と表せば、テンプレート:Math であるテンプレート:Sfn。さらに、いくつかの制約のもと位相半共役でも位相的エントロピーは不変となるテンプレート:Sfn。テンプレート:Mvar と テンプレート:Mvar をコンパクト距離空間 テンプレート:Math2 上の連続写像とし、全射の連続写像 テンプレート:Math によって位相半共役であるとする。テンプレート:Mvar が一様連続で有限対1であれば、テンプレート:Math が充たされるテンプレート:Sfn。
例
2つの写像が与えられたとき、一般的に言って、それらの位相共役写像が具体的に得られることは少ないテンプレート:Sfn。例えば、実数直線上の2次関数 テンプレート:NumBlk と テンプレート:NumBlk は テンプレート:NumBlk によって位相共役であるテンプレート:Sfn。
全ての1変数2次関数同士の場合は、片方を適当に平行移動させれば、それらは線型共役になるテンプレート:Sfn。テンプレート:Math を定数係数とすれば、 テンプレート:NumBlk と テンプレート:NumBlk は、 テンプレート:NumBlk であれば、 テンプレート:NumBlk によって位相共役であるテンプレート:Sfn。
写像 (テンプレート:EqNoteN) はロジスティック写像とも呼ばれ、テント写像と呼ばれる写像とも位相共役な関係にあることで知られるテンプレート:Sfn。すなわち、単位区間 テンプレート:Math 上のテント写像を テンプレート:Math2 とすると、 テンプレート:NumBlk と テンプレート:NumBlk は、 テンプレート:NumBlk によって位相共役であるテンプレート:Sfnテンプレート:Sfn。写像 (テンプレート:EqNoteN) は テンプレート:Mvar から テンプレート:Mvar への同相写像で テンプレート:Mvar 上の至る所で微分可能だが、その逆写像 テンプレート:Math は テンプレート:Math と テンプレート:Math で微分可能ではないテンプレート:Sfnテンプレート:Sfn。つまり、この例は、位相共役だが可微分共役ではない例となっている。このように多くの場合では単に同相な位相共役写像が存在する。それでも2つの力学系の軌道を対応付けるのに充分に役立つので、力学系理論では通常の位相共役の定義に微分同相写像までは要求しないテンプレート:Sfn。
力学系では、与えられた系を記号力学系で表現して調べるという手段が有効であるテンプレート:Sfn。テント写像 (テンプレート:EqNoteN) に対して、その テンプレート:Mvar 回反復合成がテンプレート:Math2 ならば テンプレート:Math とし、 テンプレート:Math2 ならば テンプレート:Math とし、 初期値 テンプレート:Mvar の軌道を テンプレート:Math と テンプレート:Math の無限列に置き換えるテンプレート:Sfn。この置き換えを
という写像で表すテンプレート:Sfn。あらゆる テンプレート:Math と テンプレート:Math の無限列の全体の集合を テンプレート:Math で表せば、テンプレート:Math は テンプレート:Mvar から テンプレート:Math への写像となっているテンプレート:Sfn。列を一つずつ左にずらす テンプレート:Math からそれ自身のシフト写像
を用意すると、テント写像 テンプレート:Mvar と テンプレート:Mvar は テンプレート:Mvar によって位相共役であるテンプレート:Sfn。
位相半共役の関係の場合は次のような例がある。テンプレート:Math を テンプレート:Math2 で定義される複素平面上の単位円とし、テンプレート:Math 上の点を テンプレート:Mvar で代表させるテンプレート:Sfn。このとき、テンプレート:Math 上の写像 テンプレート:Math テンプレート:NumBlk と、単位区間 テンプレート:Mvar 上の2次写像 テンプレート:Math2 テンプレート:NumBlk は、余弦関数 テンプレート:Math テンプレート:NumBlk によって位相半共役であるテンプレート:Sfn。ほとんどの テンプレート:Mvar について テンプレート:Mvar は2対1写像であり、テンプレート:Mvar は同相写像ではないテンプレート:Sfn。
応用
構造安定性
位相共役の概念を使って、構造安定の概念が定式化できるテンプレート:Sfnテンプレート:Sfn。構造安定とは、ある力学系に小さい変化あるいは摂動が加わったとしても本質的に同じ挙動が保たれるという力学系自体の安定性の表すもので、数学以外での応用の点でも重要となるテンプレート:Sfn。例えば、物理学、生物学、工学で使われる微分方程式では係数が近似的にしか定まらないことが多いテンプレート:Sfn。よって、係数がわずかに異なった程度では解の挙動が本質的に変わらない(=構造安定な)微分方程式が重要となるテンプレート:Sfn。
大雑把に言うと、ある力学系 テンプレート:Mvar が構造安定であるとは、テンプレート:Mvar に充分近い力学系 テンプレート:Mvar は必ず テンプレート:Mvar と位相共役であることをいうテンプレート:Sfnテンプレート:Sfn。正確に定義するためには、力学系の集合に テンプレート:Mvar 位相という位相を入れる必要があるテンプレート:Sfn。ここでは離散力学系の場合について述べる。多様体 テンプレート:Mvar 上の テンプレート:Mvar 級可微分同相写像全体が成す集合を テンプレート:Math と表すとする。 テンプレート:Math2 のテンプレート:Mvar 位相に関する近傍 テンプレート:Mvar を適当にとれば、テンプレート:Mvar のすべての写像 テンプレート:Math が テンプレート:Mvar と位相共役になるとき、テンプレート:Mvar は テンプレート:Mvar 構造安定であると言うテンプレート:Sfn。
固定点周りの挙動
力学系理論では、与えられた系の軌道が定常状態に落ち着くのかという意味での安定性も関心の対象であるテンプレート:Sfn。不動点および平衡点(以下まとめて固定点と呼ぶ)の近傍の軌道の様相を調べるために、固定点近傍で線型近似することが考えられるテンプレート:Sfn。このとき、固定点が双曲型であれば、固定点近傍で線型化した系は元の非線型系とある近傍内で位相共役な関係にあることが知られているテンプレート:Sfn。
すなわち、固定点周りの線型近似には、双曲型という条件によって数学的な正当性が与えられるテンプレート:Sfn。これを明確にしているのがハートマン・グロブマンの定理であるテンプレート:Sfn。ここでは テンプレート:Math 上の離散力学系の場合についてを述べる。テンプレート:Mvar 級可微分同相写像 テンプレート:Math が双曲型不動点 テンプレート:Mvar を持つとする。テンプレート:Mvar における テンプレート:Mvar のヤコビ行列を テンプレート:Mvar で表す。このとき、テンプレート:Mvar の近傍 テンプレート:Mvar と テンプレート:Math の近傍 テンプレート:Mvar、および同相写像 テンプレート:Math2 が存在し、すべての テンプレート:Math について テンプレート:Math2 が成り立つテンプレート:Sfn。
カオスの証明
2つの写像が位相共役のとき、周期点などと同様にカオスの性質も共有されるテンプレート:Sfn。ある力学系がカオス的であることを数学的に証明する方法の一つが、位相共役の関係を利用したものであるテンプレート:Sfn。位相共役の関係の利点は、解析が容易な写像から他の写像の性質を導ける点にあるテンプレート:Sfn。
式 (テンプレート:EqNoteN) でシフト写像による記号力学系を導入したが、カオス力学系を記号力学系に帰着させる方法は、そのカオス力学系を理解する有効な方法の一つであるテンプレート:Sfn。記号空間 テンプレート:Math 上のシフト写像 テンプレート:Math はカオスの性質——具体的には位相推移性、周期点の稠密性、初期値鋭敏性——を持つテンプレート:Sfn。例で記したように、テント写像 (テンプレート:EqNoteN) はシフト写像と位相共役であるので、テント写像はカオスであることが導けるテンプレート:Sfn。
2次元写像の古典的例である馬蹄形写像も、記号力学系によってその挙動が調べられるテンプレート:Sfn。馬蹄形写像 テンプレート:Mvar はカントール集合 × カントール集合という構造の不変集合 テンプレート:Mvar を持つテンプレート:Sfn。テンプレート:Math を、ここでは 0 と 1 から成る両側無限列の全体の集合とする。不変集合 テンプレート:Mvar 上に制限した テンプレート:Math はシフト写像 テンプレート:Math と位相共役であり、馬蹄形写像は テンプレート:Mvar 上でカオス的であることが分かるテンプレート:Sfn。 さらに一般的には、横断的なホモクリニック点の存在から記号力学系と位相共役な不変集合の存在を導けるテンプレート:Sfn。多様体 テンプレート:Mvar 上の微分同相写像 テンプレート:Mvar が双曲型不動点 テンプレート:Mvar を持ち、テンプレート:Mvar の横断的ホモクリニック点 テンプレート:Mvar が存在するとき、充分大きな自然数 テンプレート:Mvar と、テンプレート:Mvar と テンプレート:Mvar を含む テンプレート:Mvar の不変集合 テンプレート:Mvar が存在して、テンプレート:Math は テンプレート:Math と位相共役であるテンプレート:Sfn。
出典
参照文献
- テンプレート:Cite book ja-jp
- テンプレート:Cite book ja-jp
- テンプレート:Cite book ja-jp
- テンプレート:Cite book ja-jp
- テンプレート:Cite book ja-jp
- テンプレート:Cite book ja-jp
- テンプレート:Cite book ja-jp
- テンプレート:Cite book ja-jp
- テンプレート:Cite book ja-jp
- テンプレート:Cite book ja-jp
- テンプレート:Cite book ja-jp
- テンプレート:Cite book ja-jp
外部リンク
- topological conjugation - PlanetMath
- Topologically Conjugate - MathWorld