補空間

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テンプレート:About 線型代数学におけるベクトル空間の与えられた線型部分空間に対し、別の部分空間がその相補部分空間(そうほぶぶんくうかん、テンプレート:Lang-en-short)または補空間(ほくうかん、テンプレート:Lang-en-short)あるいは互いに相補的 (complement) であるとは、もとの部分空間と零ベクトルのみで交わる可能な限り大きな部分空間を言う。これにより、もとのベクトル空間全体は二つの互いに線型独立な成分に分解される。

定義

テンプレート:Mvar 上のベクトル空間 テンプレート:Mvar とその部分空間 テンプレート:Mvar が与えられているとき、テンプレート:Mvar の部分空間 テンプレート:Mvarテンプレート:Mvar における テンプレート:Mvar補空間であるとは、ふたつの条件 UW={0},U+W=V が満たされるときに言う。ここに テンプレート:Math零ベクトル空間で、和空間 テンプレート:Math{u+wuU,wW} を表す。

性質

射影のとの関係

ベクトル空間 テンプレート:Mvar の部分空間 テンプレート:Mvar に対して

これにより、テンプレート:Mvar の補空間全体の成す集合と像が テンプレート:Mvar であるような テンプレート:Mvar 上の射影全体の成す集合との間に一対一対応があることがわかる。テンプレート:Mvar を像に持つ射影全体の成す空間はベクトル空間 テンプレート:Math 上のアフィン空間を成す。

テンプレート:Mvar はどれも テンプレート:Mvar の補空間である

ベクトル空間 テンプレート:Mathデカルト平面)の部分空間として テンプレート:Mathテンプレート:Mvar-軸)を考える(図を参照)。 任意の実数 テンプレート:Mvar に対して、テンプレート:Mvar原点を通る傾き テンプレート:Mvar直線とすれば、それら部分空間 テンプレート:Mvar の各々すべてが テンプレート:Mvar における テンプレート:Mvar の補空間であり、対応する射影は行列表示すれば Pa=(00a1) で与えられる(行列の第一行はすべて テンプレート:Math だから、この像が テンプレート:Mvar となることを直接確かめることは難しくない)。テンプレート:Mvar の核が テンプレート:Mvar となることは、テンプレート:Math を解けばわかるが、実際 (00)=(00a1)(xy)=(0ax+y) だから、核は テンプレート:Math を満たす テンプレート:Math の全体、すなわち原点を通る傾き テンプレート:Mvar の直線である。

直交補空間

テンプレート:Main テンプレート:Mvar 上のベクトル空間 テンプレート:Mvar対称または交代双線型形式もしくはエルミート半双線型系形式 テンプレート:Math を持つものとする。テンプレート:Mvar の部分空間 テンプレート:Mvar に対し、部分空間 U:={vVuU:u,v=0}テンプレート:Mvarテンプレート:Mvar における直交補空間と呼ぶ。直交補空間 テンプレート:Mvar は、一般には上で述べた意味での テンプレート:Mvar の補空間とは限らないことに注意すべきである。双対性定理によれば、テンプレート:Mvar有限次元で形式 テンプレート:Mathテンプレート:Mvar 上でも テンプレート:Mvar 上でも非退化ならば、テンプレート:Math が成り立つ。例えば、実または複素ベクトル空間上の内積はこの性質を常に満足する。

ヒルベルト空間の場合

テンプレート:Mvarヒルベルト空間の場合、部分空間 テンプレート:Mvar の直交補空間は、テンプレート:Mvar の閉包 テンプレート:Mvar の補空間になる。つまり、V=UU が成り立つ(テンプレート:Math はヒルベルト空間の内部直和)。

この場合の直交補空間は必ず閉であり、(U)=U を満たす。

バナッハ空間における補空間

テンプレート:Mvar は(有限または無限次元の)完備ノルム空間、すなわちバナッハ空間とし、テンプレート:Mvar をその部分空間で補空間 テンプレート:Mvar を持つものとする。すると テンプレート:Mvarテンプレート:Math の代数的な意味での線型同型 テンプレート:Math を通じて、位相的な意味での線型同型(つまり、連続かつ逆写像も連続となるような線型同型)が定まる。

バナッハ空間において、閉部分空間は常に補空間を持つが、それは閉補空間を見つけることができるということを意味しない。それはむしろヒルベルト空間の持つ位相線型空間構造を特徴付ける性質である(テンプレート:Ill2Lior Tzafririの定理による[1]):

定理 (Lindenstrauss–Tzafriri)
バナッハ空間が適当なヒルベルト空間に同型となるための必要十分条件は、その任意の閉部分空間が閉補空間を持つことである。

補空間の存在性については、次の Sobczyk の定理[2] が利用できる:

定理 (Sobczyk)
可分なバナッハ空間の数列空間 テンプレート:Math に同型な部分空間は常に閉補空間を持つ。

しかし、可分とは限らない場合にはこの主張は真とは言えない(実際、テンプレート:Mathテンプレート:Math の部分空間と見たときには、閉補空間は存在しない[3][4])。

不変補空間

ベクトル空間 テンプレート:Mvar 上の自己準同型写像 テンプレート:Mathテンプレート:Mvarテンプレート:Mvar-不変部分空間 テンプレート:Mvar(すなわち、テンプレート:Math となるような部分空間)に対し、テンプレート:Mvar は必ずしも テンプレート:Mvar-不変な補空間を持つわけではない。自己準同型 テンプレート:Mvar に対し、任意の テンプレート:Mvar-不変部分空間がテンプレート:Mvar-不変補空間を持つとき、テンプレート:Mvar半単純であると言う。この半単純性は、代数閉体上で対角化可能ということと同値である。

似た用語が表現論においても用いられる。ユニタリ表現に対して、不変部分空間の直交補空間はふたたび不変部分空間となり、したがって任意の有限次元ユニタリ表現は半単純である。

不変部分空間を部分加群として解釈することにより、不変補空間は次の節で言う意味において相補部分加群と見なせる。

一般化

補空間の定義は(体上でなくで考えれば)そのまま加群に対しても一般化することができるが、環上の加群の部分加群に対しては常に相補部分加群(補加群)が存在するとはもはや言えなくなる。任意の部分加群が相補部分加群を持つような加群は半単純加群と呼ばれる。この用語を用いれば、例えば任意のベクトル空間は半単純加群であるということができる。例えば整数の加法群 テンプレート:Mathbf を整数環 テンプレート:Mathbf 上の加群と見ると半単純ではない(実際、部分加群 テンプレート:Math は補加群を持たない)。

「補加群を持つ」と言う代わりに「直和因子である」と言うこともできる。射影加群は適当な自由加群の直和因子(に同型)となるような加群として特徴づけられる。同様に入射加群は任意の拡大加群において補加群を持つことで特徴づけられる。

上記の射影との関係だけでなく テンプレート:Mvarテンプレート:Mvar における補空間全体の成す集合上への テンプレート:Math の単純推移的な作用も、加群(あるいはもっと一般のアーベル圏)の場合に対するものへ引き写すことができる。

関連項目

参考文献

テンプレート:Reflist

外部リンク

  1. J. Lindenstrauss, L. Tzafriri: On the complemented subspaces problem, Israel Journal of Mathematics (1971), Band 9 (2), Seiten 263–269
  2. R. Meise, D. Vogt: Einführung in die Funktionalanalysis, Vieweg, 1992 ISBN 3-528-07262-8, Satz 10.10
  3. R. Meise, D. Vogt: Einführung in die Funktionalanalysis, Vieweg, 1992 ISBN 3-528-07262-8, Satz 10.15
  4. テンプレート:MathWorld