三角形に関する不等式の一覧
三角形に関する不等式(triangle inequalities)の一覧。辺だけでなく、周長、半周長、角、三角法、面積、内半径、外半径や角の二等分線、頂垂線の長さなども不等式内に含まれることがある。
特に断りのない限り、ユークリッド平面上の三角形の不等式について言及する。
変数の表記
以下に、本記事で扱う三角形の各値の表記を並べる。
- 三角形の辺長テンプレート:Mvar
- 周長テンプレート:Mvar、半周長テンプレート:Mvar
- 角テンプレート:Mvar(それぞれ辺テンプレート:Mvarの対角)
- 面積テンプレート:Mvar
- 中線の長さテンプレート:Mvar
- 頂垂線の長さテンプレート:Mvar
- 角の二等分線の長さテンプレート:Mvar
- 垂直二等分線の長さテンプレート:Mvar(中点から他の辺との交点まで)
- 内半径テンプレート:Mvarと傍接円半径テンプレート:Mvar
- 外半径テンプレート:Mvar
辺長
三角不等式または、
変形すれば、ここで右辺は極限値、つまり三角形を線分へ退化させた場合に等号が成立する[1]。また左辺はネスビットの不等式。
テンプレート:Mathが鈍角であるとき、
テンプレート:Mathが鋭角であるとき、
テンプレート:Mathが直角であるとき、ピタゴラスの定理。
二等辺三角形が線分へ退化するときこの等号が成立する。
重心が内接円の内側にあるとき、
ただし、三角不等式より、上の式は常に成立する。
これは調和平均、相乗平均、相加平均の関係式である[1]テンプレート:Rp。等号成立条件はテンプレート:Math。
ガーファンクルの不等式(Garfunkel's Inequality)によれば、三角形の頂点と、それぞれ内心と重心を結ぶ線分と内接円の交点が成す三角形について、重心の方の三角形の周長は、内心の方の三角形の周長以上である[4]。
角
この式の等号成立条件は三角形が正三角形であるとき[2]テンプレート:Rp。
ここで つまり黄金比。
テンプレート:Mvarについて、
等号成立条件は三角形が頂角60°以上の二等辺三角形であるとき[8]テンプレート:Rp。
等号成立条件は三角形が頂角60°以下の二等辺三角形であるとき[8]テンプレート:Rp。
左辺との等号成立条件はテンプレート:Mathの頂角60°超過の三角形であるとき。右辺との等号成立条件はテンプレート:Mathの頂角60°以下の三角形であるとき[8]テンプレート:Rp。
また、テンプレート:Mathとテンプレート:Mathは同値テンプレート:Enlink。
外角定理によれば、次の式が成立する[1]テンプレート:Rp。三角形の内部の点テンプレート:Mvarについて、
ただし、鋭角三角形については、逆向きの不等式が成立する。
更に鈍角三角形でない三角形について[9]テンプレート:Rp、
等号成立条件はテンプレート:Math。
Klamkinの不等式によれば、任意の実数テンプレート:Mvarと非負整数テンプレート:Mvarについて、[10][11]
フランダースの不等式(Flanders's inequality)またはAbi-Khuzam Inequalityによれば、次の式が成立する[12]。
等号成立は正三角形の場合[13]。
フランダースの定理の類似物としてYffの不等式がある[14][15]。ここでテンプレート:Mvarはブロカール角。
面積
等号成立条件は三角形が正三角形であるとき。また、この不等式はハドヴィッガー・フィンスラー不等式の不等式の系である。
最右辺の上界とAM-GM不等式を用いれば、三角形の等周不等式を得る。
これを三角形の周長テンプレート:Mvarに置き換えれば
を得る。等号成立条件は正三角形であるとき[17]。また、次式はこの不等式のより強力な不等式である。
等周不等式によれば、
更に、ボンネゼンの不等式はこの上の不等式より強力である。
また、面積と辺長について
を得る。等号成立は正三角形。半周長を用いれば次の式が成立する。
また、
オノの不等式は鋭角三角形について成り立つ。
内接円の面積と三角形の面積の比について、次の式が成り立つ。
等号成立は正三角形[18]。
基準三角形とそれに内接する三角形について、以下の不等式が成立する[16]テンプレート:Rp。
基準三角形と内心三角形テンプレート:Mvarについて、以下の不等式が成立する[2]テンプレート:Rp。
三角形の重心を通る直線は三角形を、基準三角形の4/9以上の面積を持つ三角形に分ける[19]。
中線と重心
中線は頂点と、その対辺の中点を通る直線である。中線の長さテンプレート:Mvarについて、次の式が成り立つ[1]テンプレート:Rp
等号成立は正三角形。内半径については次の式が成り立つ[2]テンプレート:Rp。
中線を含む外接円の弦の長さをテンプレート:Mvarとすれば、次の式が成立する[2]テンプレート:Rp。
三角形の重心をテンプレート:Mvar、circum-medial triangleをテンプレート:Mathとすれば、
が成立する[2]テンプレート:Rp。加えて、[2]テンプレート:Rp
ただしテンプレート:Mvarは外半径。鈍角三角形では不等式の向きが逆になる。
テンプレート:Mvarを内心と各頂点の距離とすると、[2]テンプレート:Rp
中線の長さを持つ三角形を作ることができる[20]テンプレート:Rp。つまり、
頂垂線
頂垂線の長さテンプレート:Mvarについて、次の不等式が成立する[1]テンプレート:Rp。
内角の二等分線の長さをテンプレート:Mvar、内半径と外半径をそれぞれテンプレート:Mvarとすると[2]テンプレート:Rp、
頂垂線の長さの逆数の長さを持つ三角形を作ることができる[22]。つまり
内角の二等分線と内心
内角の二等分線の長さ、つまり頂点と、その内角の二等分線と対辺の交点の距離をそれぞれテンプレート:Mvarとする。次の式が成立する。
他の長さを用いれば
となる[1]テンプレート:Rp。更に、 [2]テンプレート:Rp
テンプレート:Mvarを内角の二等分線を含む外接円の弦の長さとする。このとき、[2]テンプレート:Rp
等号成立は正三角形。また、
等号成立条件は三角形が正三角形であるとき。更に、次の式が成立する[2]。
内心をテンプレート:Mvarとする。
各辺の中点をテンプレート:Mvarとすると、[2]テンプレート:Rp
正三角形でない三角形の内心をテンプレート:Mvar、重心をテンプレート:Mvar、外心をテンプレート:Mvar、テンプレート:仮リンクをテンプレート:Mvar、垂心をテンプレート:Mvarとすれば、それらの距離や成す角について以下の式が成立する[23]テンプレート:Rp。
ただしテンプレート:Mvarは最も長い中線の長さ。
- > > 90° , > 90°.
鈍角三角形について、
オイラーによって示された次の式は上の2つ目の不等式より、強力である[24][25]。
内角の二等分線の長さの大小と角の大小は対応する[26]テンプレート:Rp。
垂直二等分線
以下では、三角形の辺の二等分線の三角形の内部における長さテンプレート:Mvarを扱う。ただし とする。このとき[27]、
かつ
任意の点における不等式
内部の点
点テンプレート:Mvarを三角形の内部の点とする。
更に一般的に、(テンプレート:Mvar)が最短辺とすれば、[1]テンプレート:Rp
テンプレート:Mvarを並び替えても成立する。
テンプレート:Mvarの三角形の辺に対する垂足をテンプレート:Mvarとすれば、[1]テンプレート:Rp
エルデシュ・モーデルの不等式によれば、[28] [29]
等号成立条件は正三角形の場合。
更に強い不等式にバローの不等式がある。テンプレート:Mathの二等分線とテンプレート:Mvarの交点をテンプレート:Mvarとして、[30]
他のエルデシュ・モーデルの不等式より強い不等式に、外接三角形に対するテンプレート:Mvarの垂足をテンプレート:Mvarとして、[31]
がある。また、
が成り立つ[32]。ほかにも次の不等式がある[2]テンプレート:Rp。
任意の正の数テンプレート:Math(テンプレート:Mvarは1以下)について、[33]
内部または、外部の点
任意の点テンプレート:Mvarに関する不等式は多数存在する[34]テンプレート:Rp。
k = 0, 1, ..., 6について、
k = 0, 1, ..., 9について、
三角形テンプレート:Mvarについて、テンプレート:Mvarを各辺の中点として、
円の半径
内接円と外接円の半径
オイラーの不等式によれば外接円と内接円の半径をそれぞれテンプレート:Mvarとして、
右辺は正の値にも負の値にもなり得る。
更に別の形には、次のようなものがある。[2]テンプレート:Rp
面積との関係には次の式が挙げられる[2]テンプレート:Rp。
次の二つの不等式は、 最右辺は60°以上の頂角を持つ二等辺三角形で、最左辺は60°以下の頂角を持つ二等辺三角形で成立する。更に正三角形の場合すべての等式が成立する[8]テンプレート:Rp。
ただし外心が内接円外にあるとき 、内接円内にある時 。外心が内接円内にある必要十分条件は、
である。
Blundonの不等式によれば[6]テンプレート:Rp[40][41]
鋭角三角形について、[42]
内心をテンプレート:Mvar、circummidarc triangle の頂点をテンプレート:Mvarとして、[2]テンプレート:Rp
三角形の頂点で外接円に接しさらに対辺と接する円の半径をそれぞれとして
また、
どちらも等号成立条件は正三角形であるとき。
外半径と線分長
外半径をテンプレート:Mvarとする。
外心をテンプレート:Mvar、外心のチェバ三角形の頂点をテンプレート:Mvarとして、
垂心をテンプレート:Mvarとして、鋭角三角形について
鈍角三角形については、不等号の向きが逆となる。
二つのブロカール点をテンプレート:Mathとして[45]
ライプニッツの不等式(Leibniz’s Inequality)によれば、[46]
内接円と外接円の半径と不等式
テンプレート:Mvarを内接円の半径、テンプレート:Mvarを各傍接円の半径として[1]テンプレート:Rp
鋭角三角形の内心と垂心の距離テンプレート:Mvarについて、
鈍角三角形では不等号が逆になる。
同様に鈍角三角形では不等号が逆になる。
内角の二等分線と対辺の交点をそれぞれテンプレート:Mvarとして、[2]テンプレート:Rp
cicummidarc triangleの頂点をテンプレート:Mvarとして、[2]テンプレート:Rp
更に、
接触三角形テンプレート:Mvarについて、[2]テンプレート:Rp
内接図形
内接する六角形
3つの辺が三角形の辺でその角対辺が3辺と平行である、三角形に内接し円に外接する六角形の周長について[2]テンプレート:Rp
内接する三角形
辺テンプレート:Mvar上の点テンプレート:Mvarによってできる4つの三角形について、以下の式が成立する。また、等号成立条件はテンプレート:Mvarが各中点であるとき[16]テンプレート:Rp。
内接する正方形
鋭角三角形は3つの内接する正方形を持つ。それぞれ1辺が三角形の辺に含まれ、その端点でない頂点が三角形の他2辺上にある(直角三角形はそのような正方形をただ1つ持つ)。3つのうち2つの、辺の長さをテンプレート:Mvar(テンプレート:Math)とすれば
オイラー線
二等辺三角形でない三角形について、オイラー線と内心の距離をテンプレート:Mvar、最長の中線と辺の長さをそれぞれテンプレート:Mvar、半周長をテンプレート:Mvarとして、次の不等式が成立する[23]テンプレート:Rp。
すべての比について、その最大値は最右辺の1/3である[23]テンプレート:Rp。
直角三角形
斜辺テンプレート:Mvar、他二辺の長さをテンプレート:MvarIとする直角三角形について、次の式が成立する。等号成立条件は直角二等辺三角形であるとき[1]テンプレート:Rp。
内接円半径について、次の式が成立する[1]テンプレート:Rp。
直角からの頂垂線テンプレート:Mvarについて、[1]テンプレート:Rp
二等辺三角形
底辺テンプレート:Mvar、等辺テンプレート:Mvar、頂角でない角の二等分線の長さをテンプレート:Mvarとする二等辺三角形について、次の式が成立する[2]テンプレート:Rp。
正三角形
正三角形テンプレート:Mvarと、その外接円上にない任意の点テンプレート:Mvarについて、次の式が成立する(ポンペイウの定理)[1]テンプレート:Rp。
テンプレート:Mvarが外接円上にある場合、ファン・スコーテンの定理である。
任意の点テンプレート:Mvarにおいて、三角形テンプレート:Mvarの各辺の距離テンプレート:Mvarと各頂点との距離テンプレート:Mvarが次の式を満たす場合、テンプレート:Mvarは正三角形である[2]テンプレート:Rp。
二つの三角形
テンプレート:仮リンクによれば、面積テンプレート:Mvar、辺長テンプレート:Mvarの三角形と面積テンプレート:Mvar、辺長テンプレート:Mvarの三角形について、以下の不等式が成立する。
等号成立条件は二つの三角形が相似であるとき。
Hinge theoremテンプレート:Enlinkによれば、2つの三角形の二辺が合同であるとき、その成す角の大きさと3つ目の辺の大小は一致する。 つまりテンプレート:Math(それぞれ辺長がテンプレート:Mvar、テンプレート:Mvar)について、テンプレート:Mathならば、
逆テンプレート:Mathも成立する。
任意の2つの三角形テンプレート:Mathの角の余接について、次の式が成立する[7]。
非ユークリッド平面
楕円幾何学のように、球面における三角形の内角について、次の式が成り立つ。
この不等式はテンプレート:仮リンクにもたらされる。
関連項目
出典
- ↑ 1.00 1.01 1.02 1.03 1.04 1.05 1.06 1.07 1.08 1.09 1.10 1.11 1.12 1.13 1.14 1.15 1.16 1.17 1.18 1.19 1.20 1.21 1.22 1.23 1.24 1.25 1.26 1.27 1.28 1.29 Posamentier, Alfred S. and Lehmann, Ingmar. The Secrets of Triangles, Prometheus Books, 2012.
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