慣性モーメント
テンプレート:Physics navigation テンプレート:物理量 慣性モーメント(かんせいモーメント、テンプレート:Lang-en-short)あるいは慣性能率(かんせいのうりつ)、イナーシャ テンプレート:Mvar とは、物体の角運動量 テンプレート:Mvar と角速度 テンプレート:Mvar との間の関係を示す量である。
定義
質点系がある回転軸まわりに一様な角速度ベクトル テンプレート:Mvar で回転するとき、質点系の持つ角運動量ベクトル テンプレート:Mvar は次のように書ける。 テンプレート:Indent ここでテンプレート:Mvar は テンプレート:Mvar 番目の質点の質量、テンプレート:Mvar は回転軸上の原点との相対座標でありテンプレート:Mvarはその大きさである。この式からわかるように、テンプレート:Mvar は テンプレート:Mvar と向きは必ずしも一致しないが、テンプレート:Mvar を線形変換したものになっている。つまり、その線形変換をテンプレート:Mvarとすると、 テンプレート:Indent と表せる。この変換 テンプレート:Mvar は2階のテンソルであり、テンプレート:Mvarとテンプレート:Mvarの各成分は
という形に表される[1]。ここに テンプレート:Mvar はクロネッカーのデルタ、テンプレート:Mvar はベクトル テンプレート:Mvar の テンプレート:Mvar 成分である。テンプレート:Mvar を行列表示すると テンプレート:Indent となる。この定義から テンプレート:Mvar は対称テンソルである。この2階のテンソル テンプレート:Mvar を慣性モーメントテンソル、または簡単に慣性テンソルと呼ぶ[1]。また、慣性テンソルの対角成分 テンプレート:Mvar、テンプレート:Mvar、テンプレート:Mvar を(それぞれ テンプレート:Mvar、 テンプレート:Mvar、 テンプレート:Mvar 軸に関する)慣性モーメント係数(テンプレート:Lang-en-short)と呼び、 テンプレート:Mvar、テンプレート:Mvar、テンプレート:Mvar は 慣性乗積(テンプレート:Lang-en-short)と呼ぶ[2]。
なお、質量分布が連続的に広がっている場合には、その物体の慣性テンソルは密度 テンプレート:Mvar を用いて テンプレート:Indent となる[3]。
ある軸まわりの慣性モーメント
物体をある回転軸まわりに回転させたとき、テンプレート:Mvarと同じ向きをもつ単位ベクトルテンプレート:Mvarをもちいると、回転軸にそった角運動量成分は次のように与えられる。
ここで、テンプレート:Mathは角速度の大きさである。
ここに与えられたスカラー量 をその軸まわりの慣性モーメントと呼ぶ[4]。
慣性主軸と主慣性モーメント
慣性テンソル行列は実対称行列なので、適当な直交座標系 テンプレート:Mathを選ぶことで対角化(すなわち テンプレート:Math と)することができ、そのときの座標軸を慣性主軸、慣性モーメント テンプレート:Mathを主慣性モーメントと呼ぶ[5]。慣性主軸座標系では角運動量は
と単純に表すことができる。
計算例
棒の両端の質量
重さの無視できる長さ テンプレート:Mvar の棒の両端に、質量 テンプレート:Mvar 、テンプレート:Mvar の物体がくっついたものを考える。棒の適当な位置に回転の中心となる点を定め、そこから両端までの腕の長さをそれぞれ テンプレート:Mvar、テンプレート:Math とする。このとき、中心に対する慣性モーメント テンプレート:Mvar は、
と、計算される。この式から分かるように、慣性モーメントは、中心(回転軸)のとり方によってその値が変わる。中心として系の重心をとったとき、慣性モーメントは最小となる。すなわちもっとも回しやすい。
円板
半径 テンプレート:Mvar 、全質量 テンプレート:Mvar の、一様な密度 テンプレート:Math をもつ円板の、中心軸まわりの慣性モーメントは テンプレート:Indent となる。
これは中心から半径 テンプレート:Mvar 、幅 テンプレート:Math のリングの質量 テンプレート:Math を考えると テンプレート:Indent より、このリングの慣性モーメント テンプレート:Math が テンプレート:Indent だから テンプレート:Indent より求めることができる。
リング状円板
円板外半径 テンプレート:Mvar 、くり抜き内半径 テンプレート:Mvar 、全質量 テンプレート:Mvar のリング状円板では、前出の テンプレート:Math を用いて テンプレート:Indent となる。
性質
テンプレート:節スタブ 一般に、剛体の慣性モーメントは、剛体の質量に比例し、質量が軸から遠くに分布しているほど大きくなる。
また、回転軸が重心を通るとき慣性モーメントは最小値 テンプレート:Mvar をとり、軸が重心から距離 テンプレート:Mvar だけ離れている場合、その軸の周りの慣性モーメント テンプレート:Mvar は テンプレート:Indent となる[6]。
慣性テンソル テンプレート:Mvar の物体が角速度 テンプレート:Mvar で回転しているとき、その回転に伴う運動エネルギー テンプレート:Mvar は テンプレート:Indent と表示できる[7]。
関連する物理量
- 回転半径
- 慣性モーメント テンプレート:Mvar は物体の質量 テンプレート:Mvar に比例するから、
- と書くことができる。この テンプレート:Mvar は長さの次元を持ち、回転半径と呼ばれる[6]。
- はずみ車効果
- 慣性モーメントと同じ意味を持つ物理量として、直径 テンプレート:Mvar を用いて定義されるはずみ車効果 テンプレート:Math がある。
- 重力単位系では、剛体の重量 テンプレート:Mvar[kgf] と直径 テンプレート:Mvar[m] を用いた量 テンプレート:Math をはずみ車効果と呼び、単位は [kgf m2] である。慣性モーメント テンプレート:Mvar とは次元が異なり、テンプレート:Math で換算する(テンプレート:Mvar は重力加速度)[8][9][10]。
- 国際単位系では、剛体の質量 テンプレート:Mvar[kg]と直径 テンプレート:Mvar[m] を用いた量 テンプレート:Math をはずみ車効果と呼び、単位は [kg m2] である。慣性モーメント テンプレート:Mvar と、テンプレート:Math で換算する[11][12][13][14][15]。
応用
工学での応用として、回転軸に慣性モーメントの大きい回転体を取り付けた装置をフライホイール(はずみ車)という。これは、回転速度の急激な変化を抑止したり、回転によるエネルギーを保存する目的で使用される。
脚注
参考文献
関連項目
| 量 | 回転運動 | 並進運動 | ||
|---|---|---|---|---|
| 力学変数(ベクトル) | 角度 | 位置 | ||
| 一階微分(ベクトル) | 角速度 | 速度 | ||
| 二階微分(ベクトル) | 角加速度 | 加速度 | ||
| 慣性(スカラー) | 慣性モーメント | 質量 | ||
| 運動量(ベクトル) | 角運動量 | 運動量 | ||
| 力(ベクトル) | 力のモーメント | 力 | ||
| 運動方程式 | ||||
| 運動エネルギー(スカラー) | ||||
| 仕事(スカラー) | ||||
| 仕事率(スカラー) | ||||
| ダンパーとばねに発生する力を 考慮した運動方程式 |
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