近代三角形幾何学

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ファイル:Lemoine.jpg
エミール・ルモワーヌ (1840–1912)

数学において、テンプレート:訳語疑問点範囲(きんだいさんかくけいきかがく、 テンプレート:Lang-en)は19世紀後半から急激に発展した、三角形の性質に関連する研究の体系である。

三角形の諸性質はユークリッドの時代から研究され続けてきた。ユークリッド原論では、三角形の重要な心として重心(幾何中心)、内心外心垂心が記述されている。17世紀ブレーズ・パスカルジョバンニ・チェバ18世紀レオンハルト・オイラー19世紀カール・フォイエルバッハなど多くの数学者により三角形の研究が成された。19世紀前半から後半にかけてのテンプレート:仮リンクは近世三角形幾何学と呼ばれる[1][2][3]

1873年のエミール・ルモワーヌの論文 On a remarkable point of the triangleネイサン・アルトシラー・コートによって

laid the foundations...of the modern geometry of the triangle as a whole

と評価されている[4][5][6]。ルモワーヌの著作を出版したテンプレート:仮リンク

To none of these [geometers] more than Émile-Michel-Hyacinthe Lemoine is due the honor of starting this movement of modern triangle geometry

と宣言している[7] 。ルモワーヌのこの論文は、19世紀の最後の四半世紀以後の三角形の性質への関心を非常に高めることとなった。1914年に出版された テンプレート:仮リンクは100ページを超える三角形幾何学の記事で、このような高まりを物語っている一例である[8][9]

「new triangle geometry」は、ただ三角形に関する図形などの対象を指すこともあった。例えばルモワーヌ点ブロカール円ルモワーヌ線が挙げられる。後に、幾何的な変換から派生した結果をまとめる理論も開発された。この理論の発展から 「new triangle geometry」は単に対象を指す言葉ではなく、対象の分類や研究の方法に対しても使われる言葉になった。1887年のヨーロッパとアメリカで使われた幾何学の教科書 Teaching new geometrical methods with an ancient figure in the nineteenth and twentieth centuries では

Being given a point M in the plane of the triangle, we can always find, in an infinity of manners, a second point M' that corresponds to the first one according to an imagined geometrical law; these two points have between them geometrical relations whose simplicity depends on the more or less the lucky choice of the law which unites them and each geometrical law gives rise to a method of transformation a mode of conjugation which it remains to study

との記述がある[10]

しかし、この高まりは一度収束して、20世紀まで、完全に姿を見せなかった。 エリック・テンプル・ベルDevelopment of Mathematics 内で、三角形幾何学についてこのような言及がある[9]

The geometers of the 20th Century have long since piously removed all these treasures to the museum of geometry where the dust of history quickly dimmed their luster.

フィリップ・J・デイヴィスは三角形幾何学の衰退に以下のようないくつかの理由があると述べた[9]

  • 専門性が低く初等的だと感じる
  • 研究方法の可能性の枯渇
  • 視覚的な複雑さ
  • 解析的な手法が優先されたこと
  • タイル張りフラクタルグラフ理論など他の視覚的な分野との競合

近代的なコンピュータの登場は、三角形幾何学の復興に大きな影響を与えた。熱心な幾何学者らによって、三角形幾何学は再び活発な分野となった。 その典型例として、テンプレート:仮リンク三角形の心をまとめたウェブサイト Encyclopedia of Triangle Centers や、Bernard Gibertの三角形の三次曲線をまとめたウェブサイト、Catalogue of Triangle Cubics が挙げられる[11][12]。他にも、フロリダ・アトランティック大学パウル・ヨウによるジャーナル Forum Geometricorum が近代の三角形幾何学の発展に貢献している。

ルモワーヌ幾何学

ルモワーヌ点

テンプレート:Mathの重心をテンプレート:Mvarとする。テンプレート:Mvarをそれぞれテンプレート:Mvar角の二等分線鏡映した線は類似中線(Symmedian)と呼ばれる。3本の類似中線は共点で、この点を類似重心(ルモワーヌ点、グリーブ点)という。テンプレート:Mathのそれぞれの辺をテンプレート:Mvarとして、類似重心の重心座標テンプレート:Mathである。 類似重心は「one of the crown jewels of modern geometry」と言われている[13]。 この点に関する文献にはテンプレート:仮リンクの「history of the symmedian point」などがある[14]

類似重心と重心のような関係は等角共役として一般化されている。テンプレート:Mathと点テンプレート:Mvarについて、テンプレート:Mvarをそれぞれテンプレート:Mvarの角の二等分線で鏡映した直線は、一点で交わる。これをテンプレート:Mvar等角共役点という。

ルモワーヌ円

類似重心を通り各辺に平行な直線と他二辺の交点、計6点は同一円上にある。この円を第一ルモワーヌ円という。円の中心は、類似重心と外心中点である。また、この性質も一般化されている(三角形の円錐曲線を参照)

類似重心を通る各辺の逆平行線と、他二辺の交点も共円である。この円を第二ルモワーヌ円または余弦円(cosine circle)という。中心は類似重心である。

ルモワーヌ軸

テンプレート:Mathとその接線三角形(類似重心の反チェバ三角形)の配景の軸をルモワーヌ軸という。これは類似重心の三線極線である[15][16]

初期の近代三角形幾何学

ルモワーヌの論文が発表された後の三角形幾何学に関する発見を挙げる(1910年のウィリアム・ゲラトゥリの書籍と1929年のロジャー・アーサー・ジョンソンの書籍に基づく)[17][18]

Poristic triangles

内接円外接円を共有する三角形はPoristic triangles(条件付不定[19]三角形)と呼ばれる。オイラーの定理によれば、外接円、内接円の半径をそれぞれテンプレート:Mvarとして外心と内心の距離の二乗はテンプレート:Mathで表される。Poristic trianglesに対して、重心などいくつかの点の軌跡または点となる(ヴァイルの定理ポンスレの閉形定理も参照)[20]

シムソン線

テンプレート:Mathの外接円上の点テンプレート:Mvarについて、テンプレート:Mvarから各辺に降ろした垂線の足は共線である。この線はシムソン線と呼ばれる[21]

垂足三角形と反垂足三角形

テンプレート:Mvarから各辺に降ろした垂線の足が成す三角形をテンプレート:Mvar垂足三角形という[22]テンプレート:Mvarを通り、それぞれテンプレート:Mvar垂直な直線の成す三角形を反垂足三角形という。 テンプレート:Mvarの垂足三角形とテンプレート:Mvarの反垂足三角形がテンプレート:仮リンクにある且つ、テンプレート:Mvarの垂足三角形とテンプレート:Mvarの反垂足三角形が相似の位置にある場合、テンプレート:Mvarcounter pointsと呼ばれる[23][24]

直極点

任意の直線テンプレート:Mvarについて、テンプレート:Mvarからテンプレート:Mvarに降ろした垂線の足をテンプレート:Mvarとする。テンプレート:Mvarを通るテンプレート:Mvar垂線は一点で交わる。これをテンプレート:Mvar直極点と言う。近代の三角形幾何学の文献には直極点を扱ったものが多く存在する[25][26]

ブロカール点

テンプレート:Mvar接して、それぞれテンプレート:Mvarを通る円は一点で交わる。同様にテンプレート:Mvarを通る円も共点である。この2点をブロカール点という。Ω,Ωで表される場合が多い。接弦定理から示すことができる[27]。また、この時テンプレート:Mathは等しい。この角をブロカール角といい、ωで表される。ブロカール角に関して、以下の等式が成り立つ。

cotω=cotA+cotB+cotC.

ブロカール点、ブロカール角は多くの興味深い性質を持つ[28][29]

画像

現代の三角形幾何学

三角形の心

20世紀のもっとも重要な三角形幾何学の概念の一つに三角形の中心が挙げられる。1994年にテンプレート:仮リンクによって導入され、非常に多くの点が統一的に扱われるようになった[30]。 この概念の導入後は、三角形の中心なしでは三角形の諸性質は完結しなくなった。

三角形の心の定義

3つの実数テンプレート:Mvarについて関数テンプレート:Mvarを以下の様に定義する。

テンプレート:Mvar零関数でない且つ上の二条件を満たすならばそれをtriangle center functionと呼ぶ。テンプレート:Mvarが三角形の各の長さであるならば、重心座標または三線座標において表記された点テンプレート:Math三角形の心という。この定義によれば、傍心ブロカール点は三角形の中心でない[31]

クラーク・キンバーリングは、三角形の心をまとめたEncyclopedia of Triangle Centersを運営している。このウェブサイトには2024年現在、62000個程度 の三角形の心が登録されている。

Central line

現代の三角形幾何学のもう一つの重要な概念にCentral lineが挙げられる。Central lineは三角形の心と密接に関わっている。

central lineの定義

テンプレート:Mathにおいて、三線座標テンプレート:Mathを変数とし、以下の式で表される直線をCentral lineという[32][33]

f(a,b,c)x+g(a,b,c)y+h(a,b,c)z=0

ただしテンプレート:Mathは三角形の中心である。

幾何的なcentral lineの作図

ファイル:Construction of central lines.svg

三角形の円錐曲線

三角形の円錐曲線は三角形に対して定義される平面円錐曲線 である。代表的なものに外接円内接円シュタイナー楕円キーペルト双曲線がある。他に2点と1辺の組に対して定義されるアルツト放物線 、いくつかの円錐曲線の集合であるホフスタッター楕円イフ円錐曲線などもある。「Triangle conics」と言う語に正確な定義はされていないがMathWorldには42個の「Triangle conics」と書かれた項が存在する[34]

三角形の三次曲線

三次曲線は三角形の研究に、主に軌跡を調べる場合などに自然に出現する。 例えば、点テンプレート:Mvarを三角形の各辺テンプレート:Mvar鏡映した点テンプレート:Mathについて、テンプレート:Math共点であるとき、テンプレート:Mvarの軌跡はノイベルグ三次曲線と呼ばれる三次曲線を成す。三角形の三次曲線はBernard Gibertの運営するCatalogue of Triangle Cubicsに1200個程度登録されており、重心座標による方程式や、軌跡などのさまざまな情報が記載されている。

三角形幾何学とコンピュータ

20世紀、21世紀のコンピュータの発展は三角形幾何学の発展に大きな影響を与えた。例えばGeoGebraテンプレート:仮リンクが挙げられる。

フィリップ・J・デイヴィスはコンピュータが三角形幾何学にどのように影響したか以下のように言及している[9]

Computers have been used to generate new results in triangle geometry.[35] A survey article published in 2015 gives an account of some of the important new results discovered by the computer programme "Dircoverer".[36] The following sample of theorems gives a flavor of the new results discovered by Discoverer.

  • Theorem 6.1 Let P and Q are points, neither lying on a sideline of triangle ABC. If P and Q are isogonal conjugates with respect to ABC, then the Ceva product of their complements lies on the Kiepert hyperbola.
  • Theorem 9.1. The Yff center of congruence is the internal center of similitude of the incircle and the circumcircle with respect to the pedal triangle of the incenter.
  • The Lester circle is the circle which passes through the circumcenter, the nine-point center and the outer and inner Fermat points. A generalised Lester circle is a circle which passes through at least four triangle centers. Discoverer has discovered several generalized Lester circles.

Sava Grozdev、奥村博、Deko Dekovなどはユークリッド幾何学に特化した百科事典の運営を行っている[37]

関連項目

出典

テンプレート:Reflist

参考文献