フィロー線
幾何学において、フィロー線(フィローせん、ヒーローせん[1]、テンプレート:Lang-en-short)または、フィロン線(テンプレート:Lang)は、ある角とその内側にある点に対して定義される、その点を通り、角を成す2直線上に端点をもつ最短線分である[2][3][4]。フィローの線とも書かれる[5]。発明家のビザンチウムのフィロンに因んで名付けられた[6]。フィロンはこの線分を立方体倍積問題の解決に用いた[7][8]。フィロー線は定規とコンパスによる作図ができない[7][9]。
幾何学的な特徴づけ

フィロー線は頂角を通る垂線によって幾何学的な定義ができる。点とのフィロー線をとする。ただし。またと、の頂角を通る垂線との交点をとする。このときとなる[7]。
逆にとが、線分の端点との距離が等しく、頂角を通るの垂線がを通れば、この線分は点とのフィロー線である[7]。
代数的な構築
頂角に対するそれぞれ端点の方向との位置を適切に固定することで、以下のように代数的手法によって、フィロー線を得られる。
を原点とする直交座標系を描く。を軸、を上にある点とする。はの正接となる。内の点の座標をとして、との座標を得る事を目標とする。
傾きを持つ直線がを通るとき、その直線の方程式は
である。この直線と軸の交点は
を解けばよく、の座標は
となる。として、先の直線との交点は
を解くことで
とわかる。のユークリッド距離の自乗は次の式により求めることができる。
が負の範囲で長さが最小の時、はフィロー線となる。
導関数となるようなは最小値の候補となる。
整理して、
この式は、を通る直線束の中で最短の線分の傾きを決定する。ただし、全体の最小値はの場合であり、これはと軸の交点を通ってしまうため不適である。はの正接となる。
を代入すればは三次多項式
の根となる。したがってこの三次方程式を解くことはフィロー線と軸の交点を見つけることと等しい。1837年のピエール・ヴァンツェルの発見によれば、非自明な三次方程式の根は定規とコンパスによる作図ができないため、フィロー線も作図することはできない。
また方程式の解を次式に代入すれば、フィロー線の長さを得る。
Qの位置
はの垂線であるから、その傾きはである。したがっての方程式はである。とおいて、フィロー線との交点はを解くことによって得られ、
となる。また、との距離の自乗は
- .
で、との距離の自乗は
- .
で表される。差を取って
- .
に関する上記の三次方程式より、この式の表す値は0になりが示される。
特殊な場合:直角三角形
を通る直線束の傾きの直線は、上の式によって表すことができた。が直角であるとき、とすればよく、は軸と一致する。
軸と傾きの直線の交点の座標
である。したがって、交点の座標は
となる。のユークリッド距離の自乗は次の式により求めることができる。
が負の範囲で長さが最小の時、はフィロー線となる。導関数となるようなは
を解くことで得られる。は不適であることに注意して、解は
である。したがってフィロー線の長さは
とおいて、方程式を解けばの座標を得る。
三角法による代数的構築

が垂線であるから、三角関数を用いて、辺の長さを次のように表せる。ここで、とする。
これらより
を得る。次にの導関数を求める。
であるから、導関数の値が0になるときは、となるとき。したがって、上記のフィロー線の性質が証明された。
立方体倍積問題
フィロー線は立方体倍積問題の解決に用いられる。立方体倍積問題は2の立方根が作図可能かという問題に帰着しする。これがフィロー線を定義したフィロンの目的であった[10]。となる長方形を作る。 をと点のフィロー線とする。 をを通るフィロー線の垂線の足とすれば、三角形はを直径とする円(長方形の外接円)に内接する。
をを通る直線の垂線の足として、長方形とフィロー線の性質、三角形と比の定理から, , が従う。また、直角三角形,,は相似である。これらを用いることによって が分かる。
特にに注目する。よりこれらの比がであることが分かる[11]。同様にして、一般にのときこれらの比率はとなることが分かる。

立方体倍積問題が定規とコンパスによる作図では不可能であることから、フィロー線の作図不可能性が証明された[7][9]。

、をそれぞれ正の軸上の点とすると、の座標はそれぞれとなる。つまり、は長方形の外接円と双曲線の第一象限上の交点である。紐などを用いて円錐曲線を描くことができる場合は、これと同様にしてフィロー線を得られる。
面積の最小化
の座標をそれぞれ とする。の面積は次の式で表すことができる。
- .
となるようなを見つけることによって、面積は最小化される。
- .
は不適であるから、もう一方の解
を採用し、面積の最小値を得る。
- .
関連項目
出典
- ↑ テンプレート:Cite book
- ↑ テンプレート:Cite book
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- ↑ テンプレート:Cite book
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- ↑ テンプレート:Cite web
- ↑ 7.0 7.1 7.2 7.3 7.4 テンプレート:Cite journal
- ↑ テンプレート:Cite journal
- ↑ 9.0 9.1 テンプレート:Cite book
- ↑ Les plus grands scientifiques du bassin méditerranéen, Philon de Byzance
- ↑ テンプレート:Cite journal